ホントウの勇者

さとう

BOSS BATTLE②/【銃神ヴォルフガング】VS【樹神】・【霊神】・【呪神】・【幻神】/夢の中で・日常の中で



 「出口だッ!!」


 眩しい光に誘われて出た先で、俺は起き上がった・・・・・・


 「あ……あれ?」


 光を抜けた先にあったのは、おかしな光景
 まず、俺の服装は【友情の約束プロメッサ・アミティーエ】ではなく薄いTシャツにハーフパンツ······俺が普段寝るときの格好だ


 周囲もおかしい
 あるのは勉強机に本棚、クローゼットに小さめのテレビ、そして俺が起き上がったベッド……ここは、間違いない




 「俺の……部屋?」




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 「おいクロッ!! みんな、返事しろッ!!」


 呪いの影響なのか魔術が使えない
 この空間は間違いなく幻、そうに決まってる


 武器はないので、机の上にあった30センチ定規を片手に部屋を出る


 「落ち着け……これは夢、マボロシだ……」


 必死に自分に言い聞かせながら階段を降りる……すると


 「………あ」


 嗅ぎ慣れた匂い……これは


 「母さんの……目玉焼き」


 ポロリと、涙が零れる……そして


 「おはよう、銃斗」
 「何だお前、朝から定規片手に……まさか徹夜で勉強してたのか?」


 そこにいたのは間違いなく、父さんと母さん


 「あら銃斗、あなた泣いてるの?」
 「なに? フム…恐い夢でも見たのか?」
 「あ、いや、その……なんでもない」


 言葉が出てこない、ここは夢の世界、マボロシだって分かってるのに




 「母さん……目玉焼きは、固めで……」




 そんな言葉が、自然と出てきた




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 「い、いってきます」


 家を出て学校へ向かう……いつもの日常なのに、余りにも違和感を感じた


 「クロ、聞こえないのか······クロ!!」


 歩きながら呼びかけるが応答はない
 神器も使えないし魔力も練れない。残されたのは体術のみ
 この世界ではナイフ1本持つ事が許されない


 とはいえこの世界は間違いなく夢
 ならば何が起きても不思議じゃない、とにかく用心しなくては……そう思った矢先だった


 「おっすジュート!!」


 後ろから走ってきた男子生徒に思い切り肩を抱かれる
 考え事に夢中になっていたので気がつかなかった


 「け…剣吾、だよな?」
 「朝からなーに言ってんだよ、朝はおはようだろ?」
 「それ、いつもの俺のセリフだろ?」


 俺の親友の金村剣吾と笑いながら学校に向かう
 これは夢、敵の攻撃。気を引き締めろ


 「それでよ、今日の日付で言うと当たるのはオレかもしれねぇんだよ……勘弁してくれ」
 「仕方ないだろ、だったら予習しとけよ」


 懐かしい日常が俺の心を少しづつ蝕んでいく
 頭で、心で理解しても抗えないモノ
 俺がずっと求めていた日常がこの世界にはある


 「今日はどーすんだ? また図書館準備室で読書デートか?」
 「何だよそれ……静寂さんとはそんなんじゃねーよ。ただの読書友達だっての」
 「ほ~う、そう思ってんのはお前だけかもよ。それに弓島のヤツもいるしな」
 「弓島さん?……なんで?」
 「……バーカ」
 「あぁん!?」


 剣吾とじゃれつきながら学校へ向かう




 いつの間にか、警戒を忘れていることにも気がつかずに




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 「おはようございます、無月くん」
 「あ、おはよう。静寂さん」


 すでに席に着いていた静寂さんに挨拶し、席に着く
 静寂さんは点字の本を読んでいて、瞳を閉じたまま微笑んだ


 「いや~、剣吾のヤツがさぁ」
 「ふふふ、ホントに仲良しなんですね」
 「まぁ、小さい頃からの付き合いだし」


 他愛のない話で盛り上がる……すると、教室のドアが開く


 「おっはよ~みんな!!」


 入ってきたのは弓島黎明。騒がしいけど一応の読書仲間
 一通り挨拶を済ませると、俺たちの元にやって来た


 「おっはよ、書華ちゃん!!」
 「おはようございます、黎明さん」
 「おはよ、弓島さん」


 なぜかスルーされたが気にしない
 コイツはたまに俺にキツイ


 「あ、ジュート。今日も放課後準備室でね」
 「分かってる。静寂さんと行くよ」
 「………ふん」


 なぜか不機嫌……何でだろ?


 「ありがとうございます、無月くん」




 なぜか静寂さんは嬉しそうだった




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 放課後、静寂さんと一緒に図書館準備室に向かう


 「弓島さん、いるかな?」
 「きっと待ってます……済みません、私が遅いから……」
 「あ、そんなんじゃないって。俺の方こそゴメン」


 杖をつきながら歩く静寂さんは、俺の服の裾を掴んでいる
 これもいつもの歩き方。ここまでしてくれるのに結構かかってしまったけど、信頼されてると信じたい


 そして図書館準備室に到着。中から人の気配がした


 「あ、来た来た。購買でお菓子とジュース買って置いたよ、おやつにしよっ!!」
 「おい、ここは飲食禁止じゃないのか?」
 「カタイこと言わない。そんなコト言うジュートにはあげないからねっ」 
 「うぐ……ま、まぁたまにはいいかな」
 「最初から素直に言いなさいよ、バーカ」


 にししっ…と弓島さんが笑う
 子供っぽい笑い方だけど、弓島さんにはぴったりな感じ
 とても魅力的な笑顔だった


 「………む」


 静寂さんの袖を掴む力が強くなった気がした……気のせいか?


 「じゃ、読書でもしますか」




 久しぶりに、ゆっくりとした時間を過ごした




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 「あ、そろそろ迎えが来ますので……」
 「じゃあ今日は帰ろっか」
 「そうだな」


 2時間ほど読書をして帰る、これもいつも通り
 ゴミを片付けて簡単に掃除をして部屋を出る
 そして3人で校門に向かうと、1台の車が停まっていた


 「それではここで。無月くん、黎明さん、また明日」
 「じゃあね書華ちゃん、また明日ね~っ」
 「それじゃまた明日」


 静寂さんを乗せた車は走り去っていく


 「じゃ、あたしたちも帰ろっか」
 「そうだな、行こうか」


 2人で校門から出て歩き出す
 しばらく談笑しながら歩いていると、後ろから走ってくる生徒がいた


 「お~いッ!! オレを置いてくなよ~っ!!」


 剣吾が竹刀袋を担いで走ってきた


 「悪い悪い、すっかり忘れてたよ」
 「お前な……まぁいいや、弓島もおつかれさん」
 「おつかれ、アンタも大変ね」


 こうして今度は剣吾を交えた3人で帰宅する
 これが俺たちの日常


 俺がずっと望んでいた、大切な日常だ




 たとえマボロシでも




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 それから数週間……俺は変わらない日常を過ごしていた


 「いってきま~っす!!」
 「いってらっしゃい、気を付けてね」


 母さんの声に送り出され


 「おっすジュート!!」
 「おはよう。無月くん」
 「おっはよジュートっ!!」


 友達たちと学び、遊ぶ


 そんな日がずっと続いていた。そしてこれからも続く








 そう信じていた










 信じていたんだ








 なんで








 どうして








 どうしてなんだ……!!










 いつもと同じ朝、登校して教室に入る










 そして────────








 教室が闇に包まれ、俺は意識を失った






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 〔セーフルーム〕の深淵で、獣たちは焦っていた




 《ちっくしょう!! ジュートはどこ行きやがった!! おいクロシェットブルム、さっさと見つけろッ!!》
 《やってるワヨッ!! ものすごいスピードで森の中を移動してる……コレじゃ捕まえられないッ…!!》
 《まずいっすよ、このままじゃジュートさんが殺されちゃいますーっ‼》
 《敵の狙いはジュートの捕獲……そして精神的に追い詰めて心を壊し、最後に肉体を破壊する……真正面からぶつかっても勝てないからって、こんな手を使うなんて……ッ!!》
 《ど、どうしよう。今のわたしたちじゃ何にもできないよ~っ!!》
 《もぐーっ!!》
 《…………チッ》


 ナハトオルクスは慌てる獣たちを尻目に、杯を傾けていた
 そして、焦りの収まらない獣たちに一喝する


 《うっとおしいぞオメェらッ!! アイツが捕まったぐれぇでギャーギャー騒ぐなッ!!》


 この言葉に怒りを表したのは、やはりアグニードラだった


 《ナハトオルクス。てめぇ、もういっぺん言ってみろや……!!》
 《何度でも言ってやる、アイツが捕まったぐれぇで騒ぐんじゃねぇ。ワシは会って日が浅いからようわからんが……ジュートは今までどんなピンチもくぐり抜けてきたんじゃろ? だったら黙って見てろ。アイツを信じてやれ》
 《……でも、このままじゃジュートが死んじゃうよ~っ!!》
 《そん時はワシらも死ぬ……そんだけだ》
 《な、ナハトオルクスさん……そりゃムチャっすよ》
 《フン、ワシはアイツに命を賭けた。なら……アイツと運命を共にするまでよ》
 《ハァ……あたし、やっぱりアンタが嫌いよ、ナハトオルクス》
 《もぐ………》
 《ワシら7匹、ジュートと契約した以上、アイツと運命を共にする。だったらウマい酒でも吞んで見届けようや、なぁアグニードラ》
 《………チッ。このクソジジィが》


 アグニードラはナハトオルクスの側に腰を下ろし、杯を突きだした


 《カッカッカッカ!!》
 《フン……》


 ナハトオルクスは嬉しそうにアグニードラに酒を注いだ


 《……ジュート》




 黒猫だけが、辛そうに顔を伏せた




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 「さーて、そろそろ大詰めかな」


 篠原は、外の樹に寄りかかりながらスクリーンの映像を見ていた
 篠原の脇には、宙に浮く小型のビデオカメラがあった
 それは現代のモノとはデザインが異なり、細かい装飾が施されている


 そして、空中に投影された映像には、幸せを満喫する無月銃斗が写っていた


 幻を操り、本人の過去を投影させたり、それを改変して本人に見せつけてココロを操る幻の神器


 それが【幻神ファンタルジオ】の神器・『幻と悪夢の投射器ファンタズマ・ディビジョン』だった


 「おーい楠木、そろそろ頼むぜ」
 「わかった、無月をここに連れてくるよ」


 枝と葉っぱを操って即席のハンモックを作り、横になっていた楠木が起き上がる
 そして、読坂と三途を呼んで外に集めた


 「これでわかっただろ? 無月を倒すのにチカラはいらない。必要なのは……知恵、さ」
 「さっすが楠木。なぁオレ達さ、ご褒美もらえるかな?」
 「おい三途、まだ早いぞ」
 「うっせ読坂、いいだろ別に」


 言い争ってる読坂たちを置いて、楠木は森に命じた


 「さぁ、こっちにおいで【揺籠ゆりかご】よ」


 そう言うと周りの木々がガサガサと音を立てて動き始める
 そして、葉っぱに包まれた塊が5人の真ん中に落ちてきた


 「うわっ!?」
 「っと、大丈夫か轄俥?」
 「う、うん。ありがとう篠原くん」


 「さぁて……無月のお披露目だ」


 楠木がパチンと指を鳴らすと、うつろな表情の無月銃斗が現れた


 「ははは、無様なもんだ。バケモノのような強さを持ったキミでも、ほんの少し揺さぶるだけで簡単に壊れてしまう………」


 楠木は【樹神ウッズヴァルト】の神器・『深淵森しんえんりんセルバフォレスタ』に命じる


 「さぁ森よ……無月にトドメを」


 樹の枝が伸びて無月の身体を持ち上げる
 そして……5人が見守る中、細く尖った枝が無月の心臓に狙いをつけた




 そして………







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