ホントウの勇者

さとう

BOSS BATTLE② /【銃神ヴォルフガング】VS【吸血鬼ギョロメガラ】/集団戦・決着



 俺の相手はオニキスたち、人数は約200人


 「いくらあなたでも【特級魔術】で強化された私たちを全員倒すのは不可能よ!!」
 「そうだな。でもやり方なんていくらでもあるぜ?」


 俺は漆黒のマガジンを取り出して装填。引き金を引いた


 「【九創世獣ナインス・ビスト魂融ソウルエンゲージ】!!」


 対多人数は経験済み
 お話ばかりで一向に来ないオニキスたち
 やっぱ甘ちゃんだ、おかげで楽に変身できた


 「【骸骨神化ソウルオブナハトオルクス】 じゃあ行くぜ、もう終わりだけどな」
 「ハッタリよ、行きなさいッ!!」


 しかし、女の子たちは躊躇いが見られた
 どうやら一度叩き潰された俺にむかうのにビビってるようだな。まぁ仕方ない
 とりあえずサブウェポンを呼び出す


 「『黒玄散弾銃アスワド・シェル・ショット』 なぁオニキス、お前が来いよ?」
 「バカにしてッ!!」


 オニキスは凄まじいスピードで俺に迫り、両手両足を使った連続攻撃を仕掛けてくる


 「ほらほら、どーしたどーした?」
 「やぁぁぁぁぁっ!!」


 身体の使い方が抜群に上手い
 しなやかさと柔軟さ、そして強力さを兼ね備えた体術だ
 確かに、これなら【特級魔術師】として通用するだろう


 「おいおい、200人もいるんだから数を使えよ。向かってくるのがお前だけならもう終わらせるぜ?」
 「まだまだッ!! アミール、ルーミアッ!!」


 俺と正面から剣劇を繰り広げていたオニキスが叫ぶと、俺の背後から黒いモヤを纏った双子が上空から現れた


 「あぁ、知ってたよ」
 「はぁぁぁぁッ!!」
 「ジュートごめんッ!!」


 そう来るのは分かっていたので、俺は振り向かずに『黒玄散弾銃アスワド・シェル・ショット』を乱射した
 が、黒い散弾は全て弾かれた


 「あれっ? あ、そうか」
 「くらえぇいッ!!」
 「やぁぁッ!!」


 前方で攻撃を仕掛けようとしたオニキスを蹴り飛ばし反転
 『黒玄散弾銃アスワド・シェル・ショット』を両手で構えて双子の一撃を防御した


 「そういえば【黒】属性は無効化するんだっけ」
 「そう、ジュート殿のチカラは効きません!!」
 「だから、もうやめようよ…ッ!!」


 アミールはともかくルーミアには躊躇いが感じられた
 ほんの少しだけ心が痛んだ


 「悪いな。お前達が引けないように、俺も引けないんだッ!!」


 俺は『黒玄散弾銃アスワド・シェル・ショット』を乱射
 復活したオニキスと、覚悟を決めた200人の女の子たちから逃げ回る


 もちろん、「種」を撒きながら


 「もう諦めなさい、この人数相手じゃ何をしてもムダよ」
 「そーかい。じゃあ俺も反撃しますかね」


 俺はニヤリと笑い、勝利を確信した




 「起きろ、『髑髏死体ボーンガダベル』!!」




 漆黒のガイコツ兵士たちが、起き上がる




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 周囲で悲鳴が聞こえる
 そりゃそうだ、どんなに強くても女の子
 いきなり現れた数百のガイコツ兵士たちはショッキングな光景だろうな


 「たしか、【黒】属性は効かないんだよな」


 ガイコツ兵士たちの属性は【黒】だ
 きっとショットガンや剣は効かないだろう




 「ま、そもそも殺すつもりはない……『捕獲アレスト』!!」




 この戦いはヴリコラカスの戦いがメイン。俺たちはただの前座だ


 1人につき数体のガイコツ兵士たちが女の子達を取り押さえ始めた
 抵抗はしてるが多勢に無勢、そもそもの数が違う


 「く、はっ、離せっ!!」
 「わわわっ、キモいよぉーっ!!」
 「やだやだぁぁぁっ!?」


 あっという間に全員捕獲
 そして俺はオニキスに向き合った
 コイツは厄介だから10体のガイコツ兵士たちが取り押さえていた


 「終わりだな、オニキス」
 「…………」


 オニキスは唇を噛んで俺を睨み付けた


 「お前、何がしたかったんだ? お前なら分かってくれると思ったんだけど」
 「……王が怪しいのは、なんとなく分かってた」
 「……じゃあなんで?」
 「ロマーナ教官が………王は関係ないって、言ってたから」
 「……それだけ?」


 なんとなく分かった。コイツはとことん軍人なんだ
 上官命令には絶対服従
 それが間違っていても……上官が正しいと言えば、正しい


 「ヴリコラカスは悪なんかじゃなかった。アイツは自分でケリをつけようとしてる……これに懲りたら少しは自分で物事を考えろ」
 「…………うるさい」


 オニキスはそっぽ向く
 ま、どうでもいいか




 「ヴリコラカスッ!! こっちは終わったぜ!!」




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 「さっすがジュート、5分と経たずに終わらせるなんてな」


 ヴリコラカスは傷ひとつ負ってない綺麗な身体のまま、ボロボロになっているギョロメガラに向き直った


 「ギョロメガラ、もういいだろ? お前じゃ今のオレは倒せねーよ」
 「グ、フゥゥゥ……オ、ノレ……!!」


 身体を震わせながら頭を持ち上げるギョロメガラ
 しかし、すぐに地面に横たわってしまう


 「ギョロメガラ………」
 「ナ、ナニヲ!?」


 ヴリコラカスは静かに歩き、ギョロメガラの頭部に近づいていく


 「もうオレは逃げない。お前にも、人間にも、吸血鬼にも向き合うことを約束する。だから……いつものお前に戻ってくれ。昔みたいに飲み過ぎてぶっ倒れたオレを、頭抱えながら説教したときみたいによ」


 ヴリコラカスはヘビの頭部の少し下に向かってキバを突き立て、生気を吸い始めた


 「おい、ヴリコラカス……何を!?」
 「っぷは、心配すんな。ギョロメガラの中に渦巻いている生気を吸い取っただけだ」


 するとすぐにギョロメガラに変化が訪れる。元の人間の状態に戻った
 素っ裸だったので、俺は慌てて目を背けた


 「……っと、さすがに目に毒だな」


 ヴリコラカスは近くに垂れ下がっていた布きれを解き、ギョロメガラに架けてやる
 そしてそのまま優しく抱きしめた


 「ギョロメガラ……済まなかった」
 「ヴリコラカス、さま」


 ギョロメガラの瞳に涙が溢れ、静かにこぼれ落ちる


 「ギャルマガ、ギュステビオン、ギィーレレロ……もう、仲間を失いたくない。ギョロメガラ……あと数百年、お前には付き合ってもらうぜ?」
 「………う、うぅぅ……あぁぁ……」


 返事の変わりだろうか……ギョロメガラは嗚咽を漏らし始めた
 ヴリコラカスの〔魔性化〕が解けて、普通のじいさんの姿に戻る
 俺はヴリコラカスに出会って1日しか経ってないけど、今の姿はとても強く見えた


 「オニキス……あれが、この【黒の大陸】の王だ」
 「…………」


 俺は神器を解除する
 すると、ガイコツ兵士たちも消えて〔闇と影の舞踊ブラックハーケン〕も全員解放された


 「お前たちの敵はもういない。後は勝手にするんだな」


 俺はそのまま振り返り修練場を後にする


 「さーて、帰って昼メシにすっか」




 晴れ晴れとした気持ちで、訓練所を後にした




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 俺はそのまま宿に戻りゴハンを食べて昼寝
 そのまま夜までぐっすりだった


 「んん………寝過ぎたな、晩メシを……」


 寝ぼけ眼で起きると、ベッドの側にクロがいた


 《やっと起きたワネ……》
 「ありゃ? どうした……?」
 《そろそろこの大陸での用事も済んだ頃だと思ってネ》
 「あ~……そうだな、後はヴリコラカスがなんとかすんだろ。次は【紫の大陸ノイエパープル】か」
 《そうネ、あそこにいる【紫】の【九創世獣ナインス・ビスト】・〔インヘニュール・ニルーダ〕に会いに行くワヨ》


 インヘニュール・ニルーダか
 名前だけじゃどんなヤツかわかんねーな


 「じゃあ明日出発だ。道案内よろしくな」
 《了解、ゴハンでも食べてらっしゃい》
 「おう。お前は?」
 《ワタシは遠慮するワ》


 俺は立ち上がりドアに向かう。ミモザになんか作って貰おう
 ドアを開けて部屋を出る……すると






 《アト2匹………シロフィーネンス、もう少しネ》






 クロが何か言っていたけど、最後まで聞こえなかった




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 「え、明日出発する?」
 「ああ。もう吸血鬼の問題は解決しそうだし、俺の役目も終わったからな」
 「………そっか」


 ミモザが作った料理を食べながら会話をする
 いちいち部屋に行くのが面倒なので、ロビーにあるラウンジで食事を取っていた


 メニューはとスープと肉を挟んだパン
 夜なので量は少なめ、いい感じにお腹が膨れて大満足だ


 「ふぅ……ごちそうさま」
 「おそまつさま」


 ミモザがトレイを片付けて、湯気の立つカップを二つ運んできた


 「サンキュー」
 「うん。あのねジュート」
 「どうした?」
 「いろいろありがとね、助けてくれたこと、守ってくれたこと。一生忘れない」
 「ああ、気にすんな。俺もいろいろ世話になったしな」


 俺とミモザはお茶を啜り一息つく。すると


 「私、いつかあの町へ行くわ。それで、エレルギーンさんにお礼をしに行く」
 「お、そりゃいいな。きっとエレルギーンさんもバールベロも喜ぶぜ」
 「うん。吸血鬼も〔神の器〕も、みんないい人ばかりだって分かったからね」
 「………おう」


 ミモザの笑顔が眩しく写る。なんか照れるな




 俺とミモザは、ゆっくりと時間を過ごした




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 「じゃあミモザ、元気でな。また来るから」
 「うん。ジュートなら大歓迎よ」


 翌朝、朝食を終え宿屋を出る。するとミモザが見送りに来てくれた
 俺とミモザは抱擁を交わして向かい合う


 「じゃあな」
 「バイバイ」


 俺はゆっくりと歩き出す
 ミモザは俺が見えなくなるまで手を振ってくれた


 「さぁて、行きますか。クロ」
 《エエ。いつもだとこの辺りで〔神の器〕が》
 「や、やめろよ。シャレにならん」




 マジであり得そうだから困る。とにかく俺は町を出た




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 アウトブラッキーを走らせていると、街道のど真ん中に魔導車が停止していた


 「なんだよジャマだな……んん?」


 まるで俺が来るのを待っていたかのように扉が開き、人が降りてきた


 「ヴ、ヴリコラカス!?」


 そう、降りてきたのはヴリコラカスだった
 オニキスにアミールとルーミア、ギョロメガラことロマーナ教官もいた
 これを素通りするわけにはいかないよなぁ……?


 俺はアウトブラッキーを停車させて降車する


 「おいおいジュート、何も言わずに行くなんて水くせぇぞ?」


 ヴリコラカスはニカッと笑う
 服装はなにやら豪華な感じの物に変わっていた
 こうしてみると王様に見えないこともない


 「うっせーな、別れのキスでもして欲しかったのかよ?」
 「お!! そりゃいーな。じゃあ早速……イテテテテッ!?」
 「ヴリコラカス様……いえ、アートルム王。時間が無いので手短に」
 「おいギョロメガラ!! イテーじゃねーかっ!?」
 「今は王の秘書官・ロマーナです」


 俺とじゃれ合っていたヴリコラカスを、ギョロメガラが耳を引っ張り阻止した
 これがヴリコラカスの言ってたギョロメガラのホントの姿なんだな


 「ったく。まぁともかく……お前には世話になった。感謝する」
 「気にすんな。そうだな、今度はお前が酒をおごってくれ、それでチャラにしてやるよ」
 「へっ、ガキが。それなら早めに来いよ? オレは忙しいからよ」


 ヴリコラカスとがっしり握手する


 「さ、アートルム王。魔導車へ……決済を頂く書類が山ほどあります」
 「おいおい、男の別れに水差すなよ」


 ヴリコラカスとギョロメガラは魔導車へ戻っていった


 「………じゃあな」


 オニキスたちに俺が掛ける言葉はない
 俺は振り返りアウトブラッキーに戻る


 「待って!!」
 「……何だよ?」


 オニキスが俯いたまま大声で呼び止める


 「ジュート、その……私、まだあなたの言うことがよく分からない」


 オニキスはポツポツ語る


 「私にとって命令されたことが全て。小さい頃からずっとそうだった。だから……それが悪いって分かっても身体が動かなかった」
 「…………」
 「でも。ヴリコラカス、様…と話して、いろいろ考えたの。自分で考えて……でも、まだわからない」
 「…………」
 「これからいろいろ忙しくなるわ。吸血鬼の町や人間の町……たくさん変わる。私も成長できるように頑張る」
 「…………」
 「命令だけじゃない、自分の思いで……頑張ってみる」


 オニキスはオニキスなりに考えたのだろう
 ずっと命令されて生きてきた……自分の意思はそこにない
 そして今、考えて結論を出そうとしてる


 「………それでいいんだよ。オニキス」
 「あ、あれ……?」


 オニキスは、ポロポロと涙をこぼし始めた


 「がんばれよ。応援してる」
 「う、うん……ありがとう」


 するとアミールとルーミアもオニキスの隣に並ぶ


 「ジュート殿。世話になりました」
 「ありがとね、ジュート」


 2人も一緒だから大丈夫
 きっとオニキスは変わっていける




 「元気でな、また会おうぜ!!」




 分かり合えて、ホントに良かった




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 「さぁて、心残りはないし、これで【紫の大陸】に向かえるな」
 《そうネ、さっさと進みまショ》


 俺とクロはアウトブラッキーを走らせながら、森に入っていった














 《………おかしいワネ?》


 クロが周囲を見渡しながら確認していた


 「どうした?」


 かれこれ1時間……森の中を進んでいた時だった






 《こんな所に、森なんてなかったはずヨ……?》








 この時既に、俺たちは迷っていた・・・・・









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