ホントウの勇者

さとう

BOSS BATTLE① /【銃神ヴォルフガング】VS【吸血鬼ギョロメガラ】/哀の贖罪・愛の魔性化



 「初めて吸ったエーゼルの生気は、この世のモノとは思えなかった。狂っちまいそうなほどウマかった……そして、オレはエーゼルの生気で〔魔性化〕に目覚めちまった」


 ラモンは涙を流しながら呟く


 「あとの人生は適当さ、オレはこうして町に逃げて酒を煽る。どうにもならない現実から逃げて……眷属に全て任せて、操られた王としてな」
 「ヴリコラカス……お前は、人間をどう思ってるんだ?」
 「人間か……もちろん好きだぜ。うまい酒、いい女、吸血鬼だけじゃない。人間にしかないものを学べる」




 「じゃあ、俺がギョロメガラを倒しても問題無いな。後はお前が王としてこの【黒の大陸】をまとめればいい」




 「……正気か!? さっきも言ったが今のギョロメガラは……」
 「うっせぇ!! そんなのどうでもいい。いいか……俺はギョロメガラを倒す。お前はそれでいいのか?」
 「………ああ。オレの知ってる眷属はもういない……アイツらはもう狂ってる」
 「わかった。じゃあ、ギョロメガラの正体を言え」


 ラモンは俯いたまま言った






 「ギョロメガラの正体は……〔闇と影の舞踊ブラックハーケン〕教官のロマーナだ。ヤツは女でありながら少女の生気を好む」






 やっぱりあのオバさんだったか……ローエって子は恐らくロマーナの手下、正体がバレないようにするためのデコイでもあったんだ


 「サンキュー、ここまで聞ければ大丈夫だ。後は任せろ」
 「ああ、ありがとう……ジュート」
 「おう。今日は泊まって行けよ、どうせいつもそうしてるんだろ?」
 「まぁな。仲良くなったヤツの所で一晩明かして城に戻る……いつもの手さ」


 なぜか誇らしげ……まぁいいか


 これで敵は見えた
 ロマーナ教官、いやギョロメガラ……コイツを倒せば終わりだ


 明日、もう一度訓練所に行ってみるか




 「…………オレは……いや、オレが」




 ラモンが何か言ってたが、特に気にしなかった




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 翌朝起きるとラモンはすでにいなかった


 「あんなに酔っ払ってたのに……ん?」


 ソファの上に、小さな置き手紙が置いてあった


 「…………あんのバカがッ!!」


 俺は部屋を飛び出す……ミモザが何か言っていたが聞いてるヒマがなかった


 置き手紙にはこう書いてあった








 「決心がついた。オレがケリをつける」




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 俺の情報を鵜呑みにしてるなら、オニキスたちにとってヴリコラカスは敵だ
 そして〔闇と影の舞踊ブラックハーケン〕を率いているのがロマーナ……ギョロメガラならまずい
 ヴリコラカスを始末してしまう可能性もゼロじゃない


 「早まるんじゃねぇぞ……!!」


 俺はアウトブラッキーを走らせながら歯ぎしりをする…そして


 「着いた……っ!?」


 〔ブラックハーケン訓練所〕の門が破壊されていた
 俺は車を降りて敷地内に飛び込んだ


 「………誰も、いない?」


 周囲はとても静かだった。まるで誰もいないような
 ゆっくりと歩きながら進むと、訓練所の真ん中にそびえ立つ施設に着く


 「……武具修練場」


 不思議と殺気を感じる
 俺は意を決して修練場に中に入る


 「真っ暗だな……」


 手探りで進むと、施設の真ん中、ちょうど周囲を見渡せる場所に立っていた
 本来ならここは闘技場のように観客を入れて、おのおのの戦いを観戦することが出来るように客席が備え付けて合ったはずだ


 そして、部屋の明かりが全開になり周囲が照らされた




 「ようこそジュートくん……あなたを拘束します」




 そこにいたのは左手に剣を持ち、汚い笑みを浮かべたロマーナ教官ことギョロメガラだった 


 

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 「あなたには拘束命令が出ています。大人しくしてくれませんかね?」
 「ふざけんなこのクソババァ。てめぇはここで始末する」
 「おやおやずいぶんと反抗的だねぇ……これでどうかな?」


 ギョロメガラは右手を挙げる
 すると、黒い戦闘服を着た200人以上の少女が現れた。どうやら客席の下に隠れていたようだ
 そして、そこにはオニキスとアミール・ルーミアの姿もあった


 「オニキスッ!!」
 「…………」


 オニキスの口元が動いてる……どうやら魔術の詠唱中らしい
 俺を見てもピクリとも反応しなかった


 「ヴリコラカスはどこだ?」
 「ああ、彼ならここに………ほぉら」
 「ヴリコラカスッ!?」


 ギョロメガラは右手で軽々とヴリコラカスを持ち上げる
 ヴリコラカスの姿は……ボロボロだった


 「てめぇっ!!」
 「まさか吸血鬼の親玉が王様だったなんて……でも、もう安心です。このことを国民に公表し、この偽の王を処刑……あとは私が王女となってこの国を守ります。これもすべてあなたのおかげですよ、貴重な情報をくれたあなたのね」
 「………この、クズババァがッ!!」


 俺はたまらずにオニキスたちに話しかける


 「おいオニキスッ!! そこにいるババァがギョロメガラの正体だっ!! ヴリコラカスはそいつに利用されてるだけなんだよ、いい加減に気付けッ!! アミール、ルーミア、お前達もだっ!!」


 オニキスは俺を睨み付けたまま言う


 「もう手遅れよ。どのみちヴリコラカスは処刑される……ロマーナ教官が王女となってこの【黒の大陸】を変えていく、コレが一番いい選択よ。そのためにはあなたは邪魔よ」
 「すまんジュート殿……命令には逆らえん」
 「ジュート……ごめん」


 そして、200人以上の少女達を黒いモヤが包む……オニキスの【特級魔術】だ


 俺はこの場で唯一の仲間を怒鳴りつけた




 「おい起きろヴリコラカスッ!! お前カッコつけてきたクセになに簡単に負けてんだっ!!」




 俺の怒号に反応したのか、ギョロメガラの足下に転がっていたヴリコラカスがフラフラと立ち上がった


 「ムチャいうなよジュート……こっちはもう何年も戦いから離れてたんだぜ?」
 「関係ねぇ、お前がケリつけるんだろ。だったら最後まで気張れよ!!」


 その光景をギョロメガラはニヤニヤしながら見ていた


 「おや王様? まだ戦われるのですか?……こちらはあなたを死なせるわけにはいかないのですが」
 「ギョロメガラ、お前はそんなヤツじゃなかっただろ? お前は酒嫌いで…オレが無理矢理吞ませたとき酔っ払ってオレに襲いかかってきたよなぁ? あのときのコトは今でも覚えてるぜ?」
 「……………だから何です?」
 「あのときのお前は……エーゼル並にイカしてたぜ?」
 「………………」




 次の瞬間、ギョロメガラの剣がヴリコラカスの腹を貫いた




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 「ぐ……ご、ぼぉっ!?」
 「………腹立たしい、腹立タシィッ!!」


 ギョロメガラは腹に刺した剣をグリグリと抉っている
 現在時刻は朝の10時。吸血鬼の力は抑制されている


 「キサマ……キサマハ、始末スルッ!!!」


 ギョロメガラの姿が変わっていく
 グチュグチュと水っぽい音を立てながら、首が伸びて身体も伸びていく、そして翼が広がり手足が消失
 その姿はまるで、コウモリの羽を生やしたヘビだった


 「ギョロメガラ………お前」


 ヴリコラカスは変わり果てたギョロメガラを見つめていた
 そして、巨大な尻尾が翻り、ヴリコラカスの身体をなぎ払った


 「ヴリコラカスッ!!」
 「ぐご、ほッ……ジュート、オレは……〔魔性化〕が恐い」
 「ヴリコラカス……?」


 俯くヴリコラカス……するとオニキスが


 「ろ、ロマーナ教官……くッ」
 「オニキス、いい加減にしろッ!! まだわかんねーのか!!」
 「うるさい……うるさいッ!! 戦闘準備!!」


 オニキスの言葉に、戸惑っていた隊員達が全員戦闘準備に入る。狙いは……俺


 「オニキス……この、バッカ野郎がぁッ!!!」


 俺は神器を発動させる、そしてヴリコラカスが立ち上がった


 「ギョロメガラ、オレはお前達を見てなかった。ギャルマガ、ギュステビオン、ギィーレレロ……ずっと一緒だったのに、お前達の気持ちに気付かなかった」
 「ナニヲ……今サラッ!!」
 「お前の気が済むなら好きにしてくれ。殺されても文句は言わねーよ……オレは〔魔性化〕は使わない」
 「フザケルナッ!!」


 その言葉を聞いた俺はヴリコラカスを怒鳴りつけた


 「こんのバッカ野郎!! お前がケリつけるんだろーが。死んで終わらせるってどう言うことだよ!!」
 「うるせぇ!! これしかねーんだよ。俺がエーゼルと出会わなければこんなコトには……!!」
 「てめぇ……お前を愛したエーゼルさんの気持ちもなかったことにするつもりかよ!! お前はエーゼルさんの生気を吸ったんだろ、ずっと一緒にいるって言ったんだろ? その気持ちはどうすんだよ!!」
 「それは……!!」
 「ギョロメガラの気持ちなんてわかんねーよ。でもお前はギョロメガラに対して責任を取る責任がある!! ギョロメガラだけじゃねぇ、ギャルマガやギィーレレロ、ギュステビオン……そして、死んじまった人間達、お前は生きて償わなくちゃいけない!!」
 「………オレは」
 「まずはギョロメガラとケリつけろ!! お前の思いを、エーゼルさんの気持ちを…死んで償うなんてエーゼルさんが許すと思うなよ!!」


 ほぼ息継ぎナシで言ってやった




 自分でも何を言ってるか分からない、勝手に言葉が溢れてきた




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 ヴリコラカスはボロボロの身体で立ち上がり、己の中の気持ちと向き合った




 「オレは……償いをしなくちゃいけない」


 「オレがギョロメガラたちを見なかったから…こんな悲劇が生まれた」


 「オレが弱かったから…ギョロメガラたちが傷ついた」


 「オレが情けなかったから…エーゼルに真実を告げられなかった」


 「オレが………」










 「もういいの、ヴリコラカス………」










 そこにいたのは、ヴリコラカスの両手を握るエーゼルだった


 「エーゼル……」
 「自分を責めないで、あなたは償える……大事な仲間にも、人間にも」
 「私が側にいるわ……約束したでしょう?」
 「ああ……ずっと、側にいてくれ……」


 ヴリコラカスはゆっくりと瞳を開けて……ギョロメガラと向かい合った


 「行くぜ、ギョロメガラ……」


 「……ナ、ナニヲ」


 ヴリコラカスの身体が変化していく
 服が破れて上半身は裸になり、その肌が若々しく、筋肉質に変わっていく
 そして、顔もどんどん若返る


 その姿は20代前半の若者だった
 金髪のロン毛は逆立ち、筋肉質の上半身に黒いファイヤパターンが入る
 そして背中には漆黒の翼が広がった


 「オ、オォォォォ……ヴ、ヴリコラカス、様……!?」


 若返ったヴリコラカスはニカッと笑った


 「行くぜギョロメガラ。まずはお仕置きだ!!」


 あれがヴリコラカスの〔魔性化〕か……よし


 「おいヴリコラカス、そっちは任せるぜ!!」
 「おう、ジュートもヘマすんなよ!!」


 俺はオニキスたち〔闇と影の舞踊ブラックハーケン
 ヴリコラカスはギョロメガラ


 「殲滅開始!!」
 「グォォォォッ!!」




 「さぁ、戦闘開始だぜ!!」





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