ホントウの勇者

さとう

閑話 楠木森玖・【樹神ウッズヴァルト】



 楠木くすのき森玖りんくは、完成した「罠」の中でのんびり過ごしていた


 ちなみに彼は1人
 ほかの4人は全員、近くの町で楽しんでいるはずだ


 「はぁ……無月クン」


 楠木は1人、無月銃斗に想いを馳せていた


 「まだかなぁ……」


 会いたくてたまらない
 恋しくてたまらない


 「……バカな、ボクは男だ」


 そして急速に冷める……
 楠木は、男である無月銃斗のことを考えると妙な気分になる




 まるで、恋する女の子のような




───────────────


───────────


───────




 楠木森玖は、その女性的な容姿に身長、華奢な体躯からよくからかわれ、クラスの中では軽く浮いた存在だった
 男子よりも女子からからかわれることが多く、よく鉄間連夏てつまれんげ尼宮真冬あまみやまふゆなどの女子から弄られ、馬鹿にされていた


 しかし楠木は本来気弱な性格
 言い返せるはずもなく心に鬱憤だけがたまっていく毎日
 明確に虐められていたワケではない、ただ言葉でからかわれ、傷つけられる


 肉体的な痛みよりも心の痛みは厄介だった
 身体の痛みはいずれ消える、しかし心はそうはいかない
 言ってる本人たちはそんなつもりはない、しかし楠木に取っては心に刺さる鋭利な槍となって蝕んでいく


 「ボクは……男なのに」


 男なのに女みたい
 男なのに少女みたい
 男の癖にナヨナヨしやがって
 男なのに、男なのに、男なのに


 ぱっちりと澄んだ瞳、きめ細かい美肌、さらさらの髪、整った輪郭


 どれも楠木が望んだモノではない
 別に欲しかったワケではない


 楠木は、孤独だった




 「おはよ、楠木」
 「あ……おはよう、無月くん」




 彼に普通に接するのは、無月銃斗くらいだった




───────────────


───────────


───────




 男子生徒で楠木に近づく者はいなかった
 楠木が女子の一部に弄られていると言うのは全員知ってたし、年頃の男子は女子を敵に回す勇気はない


 しかし、無月銃斗にそんなことは関係なかった


 「おーい楠木、一緒にメシ食べようぜ!!」
 「あれ、帰るのか? じゃあ一緒に」
 「うートイレトイレ……楠木も行こうぜ」


 太陽のような笑顔で、楠木を癒やす
 無月銃斗の純粋さは、楠木にとって癒やしだった


 無月銃斗は、不思議と誰からも好かれていた
 女子から好かれ、何人もの女子から好意を持たれているのに楠木ですら気がつく


 「………いいなぁ」




 何故かそれが羨ましく……もどかしかった




───────────────


───────────


───────




 「ボクは男……そうだ、そうなんだ……ありえない」


 楠木は「罠」の中で自問自答する


 「ヤツを始末する……必ず」


 強い決意を胸に、拳に力を込める




 「せめて、ボクの手で……」




 揺れる瞳で呟いた





「ホントウの勇者」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く