ホントウの勇者

さとう

ブラックハーケン訓練所④/嫌悪の別れ・出会いと乾杯



 俺が訓練所から離れて数時間······訓練所は変わってなかった


 何人もの女の子たちが呻き、まだ無事な女の子やここにいなかった女の子たちが怪我の手当をしてる
 そして俺を見てボロボロのまま戦闘態勢を取った


 「待て、争う気はない。オニキスは‼」


 当然、返事はない······まずはここを治し直す


 俺は詠唱を始め、膨大な魔力を集める······そして贖罪を込めた全力の【神話魔術】を発動させた




 「【白】の神話魔術・【全知全能のサルベイション・アーンギル救済天使・ヘレナ・サリエール】‼」




 すると空中に超巨大な白い紋章が輝き、中から癒やしの天使が現れる······そして、その天使が翼を広げると無数の羽が舞い落ちて人間、建物を完全に治し直す


 その光景に女の子たちが唖然としていたが俺は無視、近くにいた女の子にオニキスの場所を聞いた


 「オニキスはどこだ‼」
 「ひっ、あ、あの···その」








 「だから、怯えさせないでよ······ジュート」








 その声は後ろから、迷いなく振り返る


 「オニキス······お前、俺を利用したな」
 「ええ、ごめんなさい。でも、アナタがあそこまでやるのは想定外だったけどね」


 オニキスは微笑んでる···が、もう俺はこいつを信用出来なかった










 「お前、裏切り者を炙り出すために俺を暴れさせたな?」










 俺は確信を持って聞いた。そして気が付いたのだ




 ヴリコラカスの最後の眷属、ギョロメガラがこの〔闇と影の舞踊ブラックハーケン〕に紛れ込んでいることに




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 「裏切り者がこの部隊にいることを知ってるのは私とアミール、ルーミアだけ。でも、それが誰だか分からなかったし、どうすることもできなかったわ。でも···アナタが現れた」


 オニキスは淡々と事実を告げる


 「ヴリコラカスの正体は驚いた。でもチャンスでもあるわ、アナタのことを王に報告したらすぐにロマーナ教官がアナタの捕縛を命じた。そしてアナタをここにおびき寄せて捕獲する作戦を私が立案、そして実行した。結果は······返り討ちね」


 「もし裏切り者がいるなら必ず逃げるはず、〔神の器〕であるアナタに挑むほど愚かじゃないわ。そして···真っ先に逃げ出した者が1人」
 「······誰だ」








 「見習い隊員のローエよ。現在アミールとルーミアが追跡中···あの2人から逃げられるなら間違いないわね」








 ローエって···俺がビビらせたあの女の子か。以外なもんだな


 「間違いないのか?」
 「ええ、そのためにアミールたちはここにいなかったのよ。もしローエが王城に逃げ込んだら······決まりね」
 「······そうだな」


 オニキスは手を出して俺に向き合った


 「ジュート、改めて力を貸して。ヴリコラカスとギョロメガラを倒すために」


 オニキスは真面目だ。きっとこの方法が最善と判断して迷いなく実行したのだろう······だからこそ許せなかった




 「断る」




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 「······理由を聞いても?」


 オニキスは手を出したまま聞いてくる


 「たとえ最善でも、どんな理由があろうとも······誰かを利用する人間を俺は絶対に信じない」
 「·········」
 「お前はヴリコラカスを倒すために俺を利用するんだろう? 今回お前は裏切り者を炙り出すために俺を、お前の仲間を利用した。この時点でもうお前を信用出来ない」
 「·········」
 「俺は違う、どんな理由があっても仲間を見捨てない。仲間は背中を預ける大切なもんだ。お前の冷徹さは俺とは決して相容れない」
 「·········」
 「お前を信用したら背中から刺されるかもな······あばよオニキス、俺は俺でやらせて貰う」


 俺はもうオニキスに興味がなかった
 そのまま振り返って帰路に着く


 「待って‼」


 何か聞こえるが俺は完全無視。聞く価値は無いし聞くつもりもない
 アウトブラッキーを呼び出して発進させた




 そろそろ夕食の時間だ




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 「たっだいま〜っ。あ〜あ、ハラへった」
 「おかえり、ゴハンの準備は出来てるよ」


 ミモザがにっこり笑って迎えてくれる···ああ、癒される


 「じゃあメシを頼むわ···大盛りでな‼」
 「はいはい、部屋で待っててね」


 俺はウキウキで部屋に戻って待つ···暫くするとトレイを持ったミモザが現れた


 「お待たせしました、召し上がれ」
 「おおっ、いただきまーす‼」




 まずは腹ごしらえ···考え事はその後で


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 ローエとかいう見習い隊員がギョロメガラである確率は高い
 そもそもあそこで俺が暴れるのはオニキスの計画通り、むしろ暴れた後が本番だったはず……逃げたローエをあの双子が追っかけた、そして王城に逃げ込めばかなりの確率でローエがギョロメガラだ


 でも、俺としてはロマーナとかいうオバサンも怪しい。だって真っ先に俺の捕縛を訴えた人だし……〔神の器〕の扱いからすると当然かもしれないが
 ロマーナがローエをギョロメガラと思い込ませ排除。そしてヴリコラカスを排除……そうすれば、邪魔なモノは一切いなくなる


 「うーん……わからん」


 仕方ない……この手を使うしかないな。最終手段の出番が来たようだ




 「よし、王城に侵入するか」




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 翌日、俺は城近くをうろついていた


 「えっと……侵入口は、っと」


 城はかなり大きく、見上げただけで首が痛くなりそうだ
 そして周りを大きな塀で囲い侵入者の入口は一切ない。俺は城の周りを歩いてみることにした


 塀の周りはなかなか広い森となっている
 塀は木々よりも高く、少し歩くと墓地のようなものが見えた
 このあたりなら侵入できそうだ……でも明るいうちは避けて、暗くなってから塀をよじ登ろう


 「よし、帰る………ん?」


 俺は不思議なものを見た………なんだあれ?




 「よっ……と、おぉぉぉぉっ!?」




 男の人が塀を乗り越えてそのまま落下……植込みの中に落ちた


 「あ、あの……大丈夫ですか?」
 「お!? 誰かいるのか、た、助けてくれっ!!」


 足だけが見えていてその足をバタつかせてる……なんかマヌケだな
 仕方ないので助けてやる


 「行きますよ、せーのっ!!」
 「いてててッ枝が引っかかるぅぅっ!!」


 バキバキと枝が折れる音を出しながら救出成功
 俺は改めて男性を見る


 「いや~助かった、ありがとう少年!!」


 ニカッと言う擬音が聞こえてきそうな笑顔の、初老の男性だ
 金色の少し癖の付いたロン毛を後ろで縛った髪型に、立派な口ヒゲ、どこにでも売っていそうなカジュアルな服は、この男性の顔に似合わない若々しさを引き立てていた
 が……この人、城から来たんだよな?


 「もしかして……泥棒?」
 「ちっがうッつーの⁉ 逃げ出してきたの!!」
 「…………で、アナタを兵隊に突き出せばいくらもらえるんですかね?」


 俺は少しゲスい笑顔で話しかける


 「ちょっ、おま……ウソだよね?」
 「………冗談です」
 「ウソだ、ぜーったいウソだ⁉」


 なんかメンドくさいな……さっさと帰るか


 「じゃあ俺はここで……」
 「ちょっと待った」


 なんだよ……ん? なにか聞こえる


 「………どこだ!!」
 「探せ!!」
 「捕獲しろ!!」


 おいおい、塀の向こうや森の奥から声が聞こえる……まさか


 「どうやらオレを探しに来たみたいだな……」
 「そうですか、さよなら」
 「ちょっと待てって!!」


 俺の肩をがっしり掴む男性……イヤな予感


 「よし、逃げるぞ。町の中に紛れればそうは見つからないハズだ。急げーっ!!」
 「ちょっ!? 俺は関係ないだろーっ!!」




 なぜか男性に肩を組まれて一緒に走るハメに……ホントに何で?




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 「ふぅ~……ここまで来ればだいじょーぶ。兄ちゃん平気か?」
 「ああ……って、なんで俺まで逃げなきゃいけないんだよっ!!」


 町の路地裏で一息つく……そして男性は手を差し出した


 「オレはラモン。よろしくな」
 「………ジュート」
 「おっしジュートか。まずは出会いの記念に1杯だな。行こうぜ!!」
 「ええ?」
 「酒場だよ、さ・か・ば。よっしゃ吞むぜーっ!!」


 ラモンはかなり年上
 正直俺の父さんくらいだが、なぜか敬語を使う気になれなかった


 そして一軒の酒場に到着
 今日は城に入れないな、仕方ないか


 「おーっし、まずは麦酒で乾杯だ!!」
 「はぁ……わかった、付き合うよ」




 こうして俺は謎の老人ラモンと酒を飲むことになったのだ……はぁ





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