ホントウの勇者

さとう

ブラックハーケン訓練所③/嘘つき・利用



 オニキスは机を叩いて立ち上がる


 「バカなこと言わないで‼ アートルム王は誰よりも吸血鬼の事で頭を悩ませていたのよ⁉ その王がヴリコラカスですって······ふざけないでよ‼」


 オニキスは肩で息をして俺を睨みつける


 「ありえない·········ありえない‼」
 「落ち着け、俺だって信じられねーんだよ。でもあの状態でギィーレレロがウソを付く理由がない。それに王様···ヴリコラカスだけじゃない、そばにギョロメガラもいるはずだ」


 あの時のギィーレレロの最後の笑顔······あれは絶対にウソじゃない


 「············やっぱり、裏切りか」


 オニキスは頭を抑えて俯いてしまう
 でも、はっきりさせないとダメだ


 「オニキス、この〔闇と影の舞踊ブラックハーケン〕が設立されたのはいつだ?」
 「·········50年前」
 「じゃあ、アートルム王が王位に就いたのは?」
 「·········50、年前」


 俺の予想が正しければ······たぶん


 「〔闇と影の舞踊ブラックハーケン〕とその制度を作ったのはアートルム王。間違いないな?」
 「······ええ、間違いないわ」
 「当時から訓練の脱走者は多かったのか?」
 「······ええ」




 「恐らく、脱走者は王のエサだ。若い女······脱走という形を取れば怪しまれないと踏んだんだろう」




 「············」




 オニキスは黙り込む······そして










 訓練所全体に警報が鳴り響いた




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 『訓練所内に侵入者が入った模様。全団員は直ちに戦闘準備‼ 侵入者は黒服に双剣を装備・・・・・・・・した少年である・・・・・・・‼ 侵入者は吸血鬼のスパイである。発見次第速やかに拘束せよ‼ 繰り返す·········』


 その警報が指す人物は、どう考えても俺だった


 「·········オニキス、お前······ッ⁉」 
 「·········ロマーナ様から指示があったの」


 オニキスは立ち上がり、両手の徹甲から刃が飛び出す


 「〔神の器〕であるアナタは危険な存在······そして、吸血鬼の町で過ごしたアナタたち・・・・・はスパイの疑いが掛けられてるわ」
 「オニ、キス······」
 「私たちに与えられた指令は、疑わしき者の処刑。そして······アナタの捕獲」
 「お前······まさか、俺が連れてきた人たちを······⁉」
 「ロマーナ様の言葉は王の言葉でもあるの。そして···任務は果たした。あの宿屋の少女もね・・・・・・・・・




 ────────ドクン




 「お願い、ムダな抵抗はしないで。アナタを傷付けたくないの」
 「······1つ聞かせろ」
 「なにかしら?」
 「なんで、俺に施設を案内したんだ?」
 「ああ、それはアナタを油断させるためよ。強いて言えばこの部屋に案内するのが目的だったの、ここなら一対一になれるし···あとは、アナタがどういう人間か見極めるためよ」
 「·········」
 「アナタが連れて来てくた人間のおかげで、吸血鬼の町の場所がわかったわ。今頃その町に偵察隊が送り込まれてるはず、王はその町の吸血鬼を滅ぼして人間の領地を取り戻す···そう仰ってたわ」
 「お前······それでいいのかよ、吸血鬼にだっていいヤツはいる。俺が助けた人間はみんな、吸血鬼たちに感謝してた···ッ‼」
 「だからなに? 吸血鬼は滅ぼすべき存在。それは変わらないわ···人間を脅かしてるのは事実よ」
 「それはヴリコラカスだけだっ‼ 吸血鬼のほとんどは争いなんて望んでない‼ ヴリコラカスを倒せば共存の道も開かれるッ‼」
 「·········もういいわ。悪いけど、大人しくして貰う」
 「なぁ、オニキス······ミモザはどうした?」










 「始末したわ。両親も抵抗したから一緒にね」










 俺の殺意が爆発した




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 6畳の狭い完全防音の部屋は文字通り爆発した
 最上階の壁が無くなり外の景色が見える


 「グッ···うう、あくまで抵こ、うっ⁉」
 「·········」


 俺は〔神化形態〕になりオニキスの右腕を掴む


 「は、離せッ···ぎゃあっ⁉」


 俺はそのままオニキスの右腕をへし折り、隣の部屋にぶん投げる
 隣の部屋はまだ壁が残っていたが、オニキスがぶつかり壁が砕けた


 「·········」


 いくつもの気配を感じる···が、ザコばかり
 頭の中がクリアになり無数の殺害手段を思いつく


 「ジュ、ジュート······アナタ、正気⁉」
 「俺の名を呼ぶな、裏切り者」


 俺は『錬鉄の神銃アイゼン・ブラスター』をオニキスの両手両足にぶち込む


 「ぎゃあァァァァっ⁉」


 何人かの雌豚どもの姿が見え、オニキスと同じ目に合わせてやった
 すると···醜い鳴き声が聞こえる


 俺はオニキスに顔を近づけて言う


 「お前を信じた俺がバカだった。ここにいる雌豚どもを全員始末してやるよ」


 俺の目にはもうオニキスは雌豚にしか見えなかった
 遠慮なく始末出来る


 「や、やめて···お、お願い······」
 「ヴリコラカスは俺が始末する。操り人形のお前はここで寝てろ」


 オニキスの顔面をぶん殴り気絶させる




 「やってやるよ、ブタどもが···‼」




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 俺は怒り過ぎて逆に冷静になっていた


 建物のほぼ全てが倒壊し、周囲はほぼ更地になっている
 そして、オニキスの言葉を思い出した


 「ロマーナ······あのババァがいない」


 オニキスが言ってたのは、ロマーナは王の信頼が厚いということ、ロマーナの言葉は王の言葉······その意味が気になる


 1500人ほどの隊員はほぼ全滅
 殺しはいていないが半殺し状態···俺は女でも容赦しない 


 「そうだ、ミモザ‼」


 俺は町へと走りだした






 瓦礫に隠れるようにいた女に気付かずに




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 俺は全力で走り宿屋に向かった




















 「おかえり、ジュート。早かったね」


















 そして、ミモザが笑顔で迎えてくれた


 宿屋は普通に営業してるし、ミモザは宿屋の前で掃き掃除をしている
 どう見てもミモザ、見間違えるワケがない


 「な、ミモザ⁉ 生きてたのか⁉」
 「······なに言ってるの?」


 俺は宿屋に飛び込む···しかしそこにいたのは変わらないミモザの両親だった


 「ど、どういうことだよ⁉」
 「ちょっとジュート静かにしてよ、お客さんが驚くでしょう?」


 ミモザに肩を叩かれて我に返る
 落ち着け······落ち着いて考えろ


 オニキスが言ったのは俺とミモザ、そして俺が連れ帰ってきた人たちにスパイ疑惑があるので全員始末した
 そして俺は捕らえる···という任務


 オニキスは任務をやり遂げた、俺の捕縛を残して···そしてオニキス自身がミモザを始末した、と


 「······オニキスが、ウソをついた?」


 何故だ。どうして······ん?






 ──やっぱり、裏切りか──






 俺の中に木霊するオニキスの言葉








 「ま、まさ···か······」 


 「ちょっ、ジュート⁉」




 俺は大急ぎで訓練所に戻った





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