ホントウの勇者

さとう

ブラックハーケン訓練所②/見学・正体



 「さて、まずはここからね」
 「おお……ここは?」
 「ここは武具修練場。その名の通り武器の訓練をする場所よ」


 オニキスが案内してくれたのは体育館ほどの広さの空間。ここでは数十名の女の子が武器の特訓をしていた


 武器は主に短剣やナイフ、もちろん模造刀だ。ナイフの扱いはなかなか様になっている……訓練は主に対人戦、模擬戦がメインだ。彼女達も有事の際は戦闘をしなければならない


 「お、あそこでナイフ投げやってるぞ」
 「ええ、よかったらやってみる?」
 「いいのか!? よーし、見てろよ」


 オニキスは俺の服の袖にナイフが仕込んであるのを見て、俺が投げナイフを使うことを既に見切っていたみたいだ


 「全員注目!!」


 いきなりの大声に少しびびった。するとオニキスはナイフ投げの女の子たちだけでなく、この場にいた全員を集める……10秒も掛からず全員集合した


 「これよりナイフ投げの実演を行う!! よく見ておくように!!」
 「「「はいっ!!」」」
 「ちょっと待ったぁっ⁉」


 俺はオニキスに待ったをする……おい、なんでキョトンとしてるんだよ


 「なに? 何か問題でも?」
 「…………お前………もういいわ」


 このニヤケっぷり……さては、さっきのローエって子のことを根に持ってやがるな


 「はぁ……行くぞ。ほら、好きに投げろよ」
 「え?」
 「あん? いいから好きなタイミングで的を投げろよ」


 俺は両手で10本、5本ずつナイフを構えて的の位置を確認する。的は全部で8つ、大きさはバラバラで的の高さも高いところと低いところに設置してある。それぞれの位置は正面に2つと左右に3つずつのコの字型で、特に仕掛けはなさそうだ


 俺は女の子2人が投擲用の的を構えた時点で走り出す。そして女の子2人が同時に的を上空に投げた


 「シッ!!」


 的までの距離が20メートルほどになったところで右側の的にタイミングをずらしながらほぼ同時に右手の3本投擲、そしてそのまま左手で3本投擲……さらに身体を回転させながら右手の2本を正面に、さらに左手の2本を空中に同時に投擲……この間3秒


 「ウソ……全部、命中!?」


 オニキスの声が聞こえて結果が分かった。正直今のは手応えがあったな……俺はオニキスの元へ歩きながら言う。女の子たちは全員ポカンとしてた


 「ま、こんなモンかな」
 「や、やるわね……」
 「お前もやるか?」
 「…………遠慮しとく」


 残念。オニキス様のナイフ投げは見る機会はなさそうだ


 「い、以上で実演を終了する。より訓練に励むように!!」
 「「「はいっ!!」」」


 女の子たちの視線が俺に集中する……うーん、恥ずかしい


 「さ、次に行くわよ」
 「ああ、次はどこだ?」




 「次は格闘訓練場よ」




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 次の部屋はまるで道場のような場所だった


 そこでは格闘訓練が行われ、それぞれ模擬戦を行っている。空手のような打撃技から、柔道のような投げ技、拳法のような絡め技、テコンドーのような足技。それぞれの分野での女性により指導が行われている


 「あちらの女性は引退した隊員よ。こうして見習い隊員の指導員を務めているのよ」
 「なるほどな···確かに動きが違うな」


 当然ながら全員女性
 すると年齢は30代前半ほどの1人の女性が近づいて来た


 「どうしたオニキス、部下の指導···いや、違うみたいだな」
 「はっ、こちらは対吸血鬼の情報提供者です。これから話を伺う所です」
 「なるほどな。ふむ···なかなか鍛えられている。しかもかなりの修羅場をくぐっているな」
 「ど、どうも」


 指導員の女性にジロジロ見られてしまい少し照れていると、オニキスが指導員に向かって言う


 「それでは失礼致します。また後ほど」
 「ああ、わかった」


 そして俺とオニキスはその場から離れた


 「ふぅ···あの人は20年前のオプシディアンの継承者にして歴代最強の〔闇と影の舞踊ブラックハーケン〕の団長、ロマーナ様よ。かれこれ20年間、隊員の指導に当たられて王様からの信頼も厚い方よ」
 「そ、そうなの?」


 そんな偉い人なのか。たしかにオバさんだったけどスゴい威圧感を感じた


 「なぁ、王様が一番信頼してる人ってだれだ?」
 「………なに、その質問?」
 「あー……ちょっとな」
 「……………」


 ヤバい、なんか怪しんでる気がする……でもいずれ話すことだしな


 「あとで話すよ。いいから行こうぜ」
 「………わかったわ。次は魔術修練場ね」




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 「ここでは直接的な攻撃魔術よりサポートタイプの魔術の習得に力をいれてるわ」
 「ふ~ん、そりゃなんで?」
 「隊員達は基本的に私の【特級魔術】を纏って戦うスタイルなの。だから大規模な魔術はいらないし、そもそも詠唱が長いから、そのスキに首を切った方が速いのよ」
 「ほ、ほう……なるほどね」


 なんか物騒だな……怒らせたら恐そうだ


 魔術修練場は二つの会場に分かれていて、それぞれ訓練と座学を学んでいた。訓練は指導員を含めての修行……主に魔術の発動と、その効果の持続時間を計り、後はどんどん魔術を使って魔力総量を上げる訓練。座学は別室での勉強会。その部屋は図書館のようになっていて、貴重な魔術書が置いてあるみたいだ


 「ねぇ、ジュートの【属性】はなに?」
 「え!? あ、えっと……」
 「〔神の器〕も複数属性なの?」
 「ま、まぁな……俺はヒミツだ」


 まさか【無】属性……ぜーんぶ使えまーす、なんて言えない。しかも魔力を使わないから無制限で撃てるし、【時】属性のおかげで詠唱もいりませーん。なんて言ったらどうなるかな


 「まぁいいわ。後は……寮と食堂、購買や休憩所……そんな所ね」
 「へぇ、かなり充実してんだな」
 「まぁね、この部隊は【黒の大陸】で最強の部隊だから、破格の予算を組んでいるの。全ての能力が上位の最強部隊……ヴリコラカスの所在も必ず暴いてみせるわ」
 「……………」


 そろそろ話すときが来たみたいだな………


 「オニキス、大事な話がある……俺とお前の2人で話そう」
 「いいわよ、それがアナタの本題だものね……ついてきて」




 俺は歩き出すオニキスに着いていく……この話しだいでオニキスが敵になる可能性も考えておかないとな




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 オニキスに連れられてきたのは建物の最上階。そこからさらに奥に進んだ小さな個室だった


 「ここは完全防音、しかも進入口も一切無い。カギを掛ければ完全な密室よ」


 広さは6畳ほどの小部屋で真ん中に机と椅子が2脚のみのシンプルすぎる部屋だった


 「本来はここで作戦の打ち合わせなんかをするんだけど今は使ってないわ」
 「なんで?」
 「この下にもっといい部屋があるからよ」
 「じゃあなんでここに?」
 「今は使ってないから誰も近寄らない。内緒話をするにはうってつけなのよ」


 そう言ってオニキスは椅子に座る


 「飲み物もなくて悪いわね」
 「気にすんな、それより……」
 「ええ、本題に入りましょう。それで……なんの話?」
 「……………ヴリコラカスのことについてだ」


 その言葉にオニキスの眉がピクリと反応した


 「………続きを」


 俺はオニキスを伺いながらゆっくり話す


 「ヴリコラカスの正体が……………わかったんだ」


 今度こそオニキスは動揺した


 「ウソ、だって……どうやって!?」
 「落ち着け、ヴリコラカスの眷属の1人、ギィーレレロを問い詰めてわかったんだ」
 「だ、誰なの!? 場所は!? そいつを倒せば全てが終わる!!」


 全てが終わる………そうかもな










 「ヴリコラカスの正体は…………この国の王、〔アートルム・エレ・ブラックトレマ〕だ」










 今度こそ、オニキスの呼吸は止まった





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