ホントウの勇者

さとう

ブラックハーケン訓練所①/信仰・マルチウェポン



 「あ、そういえばミモザ、〔ブラックハーケン訓練所〕の場所知ってるか?」


 翌日の朝食の席で、俺はミモザに聞いた


 「もちろん。王都に住む人はみんな知ってるわよ。ある意味女の子の憧れだからね」
 「へぇ、ミモザは?」
 「私は別に。宿屋の方が性にあってるし、戦うなんて怖いしね」


 普通はそうだろうな、戦わないに越したことはない


 「それで、場所を教えてくれ」
 「わかった。じゃあ朝食のあとでね」




 俺はトレイに乗せられた美味しい朝食を平らげるのだった




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 「じゃあ行ってくる。晩メシもよろしくな」
 「うん。いってらっしゃい」


 ミモザから〔ブラックハーケン訓練所〕の場所を聞いて町を歩く
 まだ早い時間なのでのんびりと歩きながら向かう


 《コノ国の王様……吸血鬼のボス。オニキスに協力してもらえれば楽ネ》
 「そう上手く行くかなぁ……」


 クロを肩に乗せながらのんびりと歩く
 町の東の出口に向かって歩き、そこから先はほぼ一本道なので迷う心配はないそうだ


 「歩いてだいたい40分くらいか……のんびり行こうぜ」
 《そうネ、お散歩もいいカモ》


 町は朝から騒がしい
 冒険者や傭兵の集団が歩き、荷物を運搬してる魔導車も走っている
 それだけではなく、馬のような生物の馬車やリヤカーを引っ張ってる人もいる


 「王様が吸血鬼のボスだなんて誰も思ってないだろうな……」




 そんなことを考えながら、町を歩いた




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 町を出て街道をの~んびり歩く
 途中で何台か大型の魔導車とすれ違いながら進むと、見えてきた


 「あれがそうか?……なんか要塞みたいだな」
 《そうネ……》


 モンスターよけの塀だろうか、3メートル位の壁に覆われた巨大な建物がいくつか見えた
 どれも立派な作りで、立てこもれば要塞の役割も果たしそうな感じ
 入口はいくつかの門が開いていて、先ほどすれ違った魔導車も出てきた……物資でも運んでいたのかな


 俺とクロは正面の立派な門に向かって進む、すると門番か守衛の女の子が3人ほどいて俺を見た
 気のせいかな……敵意を感じる


 「あの、オニキスに呼ばれてきた冒険者なんですけど……ジュートと申します」


 低姿勢で挨拶する
 男ならどうでもいいが女の子だ、なるべくやさしく穏便に


 「はい。伺っております……オニキス団長は現在、第四演習場で訓練監督をなさっています。それではご案内します」
 「はい。お願いします」


 3人のうち1人が案内してくれる
 年齢は俺より少し下くらいの女の子、服装は黒いシャツの上にパーカー、ミニスカにスパッツとブーツと、かなり動きやすそうな感じだ
 門番の2人の子も同じだったし、制服みたいなモンかな


 「……………」
 「……………」


 無言……いや別に仲良くしたいワケじゃないが、こういう沈黙は苦手だ
 俺はなんとなく肩に乗せたままのクロをなでる


 「あの……訓練って何を?」
 「……………」


 完・全・無・視!!


 どうやらこの子は沈黙が辛いタイプではなさそうだ
 なんか俺がアホみたいじゃん……すると女の子は


 「……………アナタは」
 「へ?」


 なんだろう、この子から感じるのは………敵意、殺意?








 「アナタは、オニキス様のはじめて・・・・を奪った………許せない」








 ギロリと、睨み付けられた




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 はじめてって……まぁ確かに、アレは吸血鬼から偽装するためだったけど、オニキスにとっては初めてだったのは間違いない
 アイツが全く気にしなくても他の子はそうは思ってないみたいだ


 「オニキス様は強く、高潔で美しい……そのオニキス様をアナタは汚した」


 おいおい、いくら何でも美化しすぎだろ
 女ばっかの環境だからこうなのかよ


 「私たち見習い隊員にとってオニキス様は女神のような存在。アナタみたいな男が触れていい方じゃない……」
 「そりゃ悪かった、用事が済んだら帰るよ。俺もここは落ち着かないからな」


 中庭のような場所を歩くと隊員達がこちらを見てる……どれも似たような敵意を向けていた


 「用が済んだら帰れるとでも? アナタをここで始末するのも……ッ!?」


 その言葉に俺は反応した。相手が年下の女の子でも関係ない






 「面白いな……やってみるか?」






 俺の前を歩く女の子はいつの間にか動きを止めていた
 どうやら俺の殺気に当てられて動けなくなったようだ


 「ここにいるのは……40人くらいか。全員で来ればキズの一つは付けられるかもな」


 ナゼかは知らないが、好戦的な自分がもう1人いることを自覚する
 普段の俺じゃない、男だろうと女だろうと一切容赦のない俺が姿を現す
 自然と魔力を練り魔術の準備が出来ていた


 「お前等がオニキスを神聖視するのはいい。でもな……アイツが望まないことを俺がしたつもりはない。それでも納得できないなら………」










 「やめなさい。全くもう……アナタって人はトラブルばかり」










 頭を押さえたオニキスが、俺の背後から現れた




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 「うるせーな、先にケンカ売ってきたのはお前の親衛隊だぞ。言っとくけど俺は売られたケンカは男だろうが女だろうが買うからな」
 「親衛隊って……あのね、その子たちは見習い隊員よ。そんなに怯えさせないでちょうだい」
 「だーからぁ……はぁ、わかったよ。悪かった」


 俺の誠意ある謝罪を案内の女の子へ、するとその子は肩の力を抜いて俺から距離を取った
 その様子を見たオニキスは


 「ローエ、恐かったでしょう? 今日の夜に私の部屋へいらっしゃい」
 「あ……は、はいっ!!」
 「ふふ…さぁ、ここは私に任せて持ち場へ戻りなさい」
 「はいっ!! 失礼いたします!!」


 そう言ってローエと呼ばれた女の子は去って行った……俺の事なんてもう視界にすら入っていなかった


 「全く。ジュート、アナタって怒りっぽいのね」
 「………自覚してるよ」


 オニキスは俺を非難してる
 まぁ仕方ないよな……あんな年下の女の子を脅すような態度を取ったんだから


 「まぁいいわ。そうね……訓練でも見て頭を冷やしましょう? 話はその後でね」
 「そうだな。ホント悪かったよ」
 「もういいわ、行きましょ」


 俺とオニキスは歩き出す……このやりとりを見ていた女の子たちがまた変な気を起こさないといいけど


 「なぁ、あのローエって子を部屋に呼んでなにすんだ?」
 「ふふ、ひ・み・つ」




 うーん。知りたいような、そうでもないような




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 「せっかくだしいろいろ案内してあげるわ。それと私もアナタに聞きたいことがあるのよ」
 「なんだよ?」


 訓練所の通路はなかなか綺麗で、天井も高く横幅も広い
 俺とオニキスは並んで歩いていた


 「アナタのその武器……どこで手に入れたの?」
 「これ? ああ、〔マルチウェポン〕か。コレは【緑の大陸】の武器屋で買った掘り出し物だ、たしか【紫の大陸】の最新モデルの武器だったかな」
 「【紫の大陸】か……なるほど。ねぇ、どんな機能があるの?」
 「コイツか? そうだな、見せた方が早いな……ホレ」


 俺はまずギミックナイフを発動させる


 「なるほど、コレは隠し武器としても最適ね。相手の不意も突けるわ」
 「だな、俺もコイツには助けられた。次は……コイツだ」


 そして短弓ショートボウを発動させる


 「コイツは単発式の弓だ。普通に矢を飛ばすより速いし、矢が小さいから持ち運びも楽だ。普通の弓と比べると距離は落ちるけどな」
 「いえ十分よ。そこまで長距離の攻撃は私たちにはいらないわ。ふむ、これも使えるわね」
 「おう、最後は……よし、見てろよ」


 俺は階段の近くで上を見上げてアンカーショットを起動させる
 するとアンカーショットが上の階段の手すりに引っかかるのを確認し、魔力を込めて一気にワイヤーを巻き取った


 「おお……いいわね。これなら楽に建物の上に上がれる……うん。決めた」


 二階から降りてきた俺はオニキスに質問した……決めた?


 「何を決めたんだ?」
 「ええ、その武器を〔闇と影の舞踊ブラックハーケン〕の正式装備に採用しようと思ってね……実はアナタが使ってるのを見て考えていたのよ。アミールとルーミアからも報告書が上がってたしね」
 「お、やっぱそうか」


 そういえばあの2人そんなこと言ってたっけ


 「よし、後で報告書を作って予算を請求、あとは【紫の大陸】に買い付けの依頼を出して……ふふ、忙しくなりそうね」
 「おう。悪いな、予備があればプレゼントできたけどな」
 「あら、うれしいこと言ってくれるじゃない?」


 オニキスはにっこり笑う。うーん…やっぱコイツかわいいな




 「さて、この施設を案内してあげるわ。そういえば男の人を案内するのは初めてね」


 

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