ホントウの勇者

さとう

王都ブラックトレマ②/帰郷・思考



 その後、ホントに15分できっちり30人集めて地下の広場に集まっていた


 「じゃあジュート、お願い」
 「ああ。あらよっと」


 俺の掛け声で〔セーフルーム〕の入口が開き、中から50人ほどの男女が現れる
 事前にミモザに話しておいたので特に騒ぐ人はいなかった


 「みなさん‼ 私は【黒の特級魔術師】のオニキスと申します。これからみなさんに簡単な検査を受けて貰い、その後は王都の出身者は開放、それ以外の方は責任を持って故郷に送り届けます‼」


 オニキスの言葉に歓声が上がる···そして、見習い隊員の女の子たちの誘導で検査を受け始めた


 「ジュート、あの······」
 「おうミモザ。よかったな、帰れるぞ‼」
 「うん。ジュート···ありがとう」
 「ああ。家は近いのか?」
 「うん、町の中の宿屋。旅行中に攫われたから、心配してるかも」
 「いや絶対に心配してるぞ。あ···そうだ、せっかくだし俺も行っていいか? 今日泊まる宿まだ見つけてないんだ」
 「ホント⁉ もちろんいいよ」


 俺はオニキスの所へ向かう


 「オニキス、少しいいか?」
 「ああジュート、悪いけど今日はムリね。明日でいいかしら?···送迎の手配や護衛の選別の準備をしないと」
 「わかった。じゃあ明日、城に行けばいいのか?」
 「そうね、よかったら訓練所に来ない? 明日は見習い隊員に実戦訓練をするから」
 「そっか、じゃあ見学ついでに話を······悪いけどこっちの話が本命なんだ」
 「······わかったわ。とにかく明日話しましょう」


 俺とオニキスは軽く拳を合わせて別れた


 「じゃあミモザ、行こうか」
 「うん。あの······お父さんやお母さんが泣いちゃうかもだから、すぐには宿に入らないで···恥ずかしい」
 「ははは、わかったよ。感動の再開の邪魔はしないよ」




 俺とミモザは、喫茶店の外に出て歩きだした




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 ミモザと雑談しながらゆっくり歩く……すると、ミモザの視線が一点で止まる


 「………あの宿屋か?」
 「うん。帰ってきた」


 ミモザは嬉しそうに微笑み、ゆっくり歩き出した


 「あ、ちょっとココで待ってて。お願い」
 「わかってる。しばらくのんびりしてるよ」
 「うん。ありがとう……行ってくる」
 「おう。それとお前は「ただいま」だろ?」
 「そういえばそうだね、ふふふっ」


 ミモザはそう言って宿屋に飛び込んだ


 「さーてと……少し歩くか、クロも来いよ」


 そう呟くとクロが現れる
 俺は近くの露店で果物ジュースを買って飲み始めると、クロが不思議そうに聞いた


 《……中に入らないノ?》
 「ああ、まだいいや。せっかくだし散歩しようぜ」


 ミモザは両親と再開……涙を流して抱きしめられてるかも知れない
 そんな感動の再会を邪魔したくないし、ミモザも見られたく無いだろう


 「ま、のんびりしたら行こうぜ。なにも知らない一般客としてな」
 《………変なノ》




 ジュースを飲みながら薄暗い空を見ると、心なしか明るく感じた




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 それから数時間後……俺は町をぶらついて買い物を済ませて宿へ戻ってきた


 「あ、いた」
 「ん? もういいのか?」
 「うん。いないからビックリした……入って」
 「おう、じゃあ頼むわ」


 宿屋の中へ入る
 規模は中くらいの宿屋だがロビーは広く清潔で、ランプ魔道具が多いせいで凄く明るい
 ロビーの隅にはラウンジが併設され、そこで飲み物を飲めるようにもなっていた


 「へぇ……いいところだな」
 「当然よ」


 ミモザは胸を張り誇らしげにしてる。じゃあさっそく受付を


 「いらっしゃいませ。ミモザのお友達ですね?」
 「はい、宿泊をお願いします」


 ミモザのお母さんだろうか
 顔はすごい笑顔だが目が赤い……まぁ気にしないでおこう


 「アナタがミモザを救ってくれたそうで………感謝の言葉では足りません。宿泊料はいりませんので存分におくつろぎ下さい」


 何かを言う前にミモザに引っ張られる……なんか悪いな


 「さぁ、部屋はこっちよ」
 「ああサンキュー」


 そして3階の一番大きな部屋へ案内され、ミモザが煎れてくれたお茶を飲んで一服した


 「どうだった? 感動の再会だったか?」
 「まぁね。他のお客さんがいてスゴく恥ずかしかったけど……うれしかった」
 「よかったな。もう攫われんなよ?」
 「うん、気を付ける………あの」
 「なんだ?」


 ミモザは一呼吸置いてから俺の目を見た


 「ジュートはこれからどうするの? 吸血鬼と……その、戦うの?」


 ミモザは俺が〔神の器〕と知ってる
 しかも俺がギィーレレロを倒したことも知ってる


 「ああ。吸血鬼との戦いは親玉のヴリコラカスを倒せば終わる……お前も知ってるだろ、バールベロやエレルギーンさんみたいないい吸血鬼がたくさんいるって。悪い奴はほんの一部……これは人間と変わらない」
 「そうだね……私、もう一度エレルギーンさんの所に行ってお礼がしたい」
 「できるさ。俺がヴリコラカスを倒せば、吸血鬼との親交も持てるようになるはずだ。その時改めて行けばいい……今度は家族でな」
 「うん……ジュート、ありがとう」


 ミモザは微笑むと部屋を出て行った。どうやら夕食の準備を手伝うらしい


 「さて、ヴリコラカスか……」




 俺はベッドに寝転がる……いろいろ考えてみるか




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 これまでのことをまとめると、〔闇と影の舞踊ブラックハーケン〕の制度を作ったのはヴリコラカスということだ


 「そもそもヴリコラカスはなんで〔闇と影の舞踊ブラックハーケン〕を作ったか……」


 可能性としては「質のいい生気」


 〔闇と影の舞踊ブラックハーケン〕の入隊条件が30歳未満の女ということ、さらに孤児を引き取って王都の外の施設で訓練させていること
 これ自体は不思議じゃない……むしろ国の為の兵士を育てらるし国にとってプラスになる


 「だけど……脱走者がいる」


 オニキスが言うには、荷物も持たずに忽然といなくなる
 いくら脱走と言っても着替えも持たずに逃げ出すだろうか?
 攫われて、そのまま食料にされた可能性はないとも限らない


 「ヴリコラカスはなんで自分を探すように指示をしたか……」


 そもそも吸血鬼の親玉がヴリコラカスというのはどこから来たんだろう
 まさかヴリコラカス本人が漏らすはずがないし……可能性としてはひとつ


 「ギョロメガラ……最後の眷属、か」


 ヴリコラカスの名前を漏らしたのはギョロメガラ……まさかな
 漏らすんだったら名前だけじゃなく居場所や正体もバラすはず、それをしなかったのは……自分の正体もバレるから


 「でもヴリコラカスを倒してなんのメリットがある?………まさか」


 ある。もしかしたら……と言うかここまでの全てが推測だが






 「ギョロメガラは王の座を狙ってる……?」






 ヴリコラカスが倒されれば王の座は空く、そしてギョロメガラがその王位に就けば……?


 「1000人以上の〔闇と影の舞踊ブラックハーケン〕と人間を操れる王の地位」


 と言うことはギョロメガラは王に近い立場の人間……可能性はある
 若い女の生気をいつでも吸えるし、何かあっても問題無い。それどころか〔闇と影の舞踊ブラックハーケン〕を使って邪魔者を始末する事も出来る


 全て推測、妄想だ。でも……情報が少ない以上ある程度の考えを持って動かないといけない


 「まずはギョロメガラから攻めるか……明日オニキスに王様に近い立場のヤツをいろいろ聞いてみよう」


 あとは王様の正体……ギィーレレロの語った真実を伝える
 この情報次第ではオニキスが敵に回ることも考えておかなくちゃいけないかもな。用心はしておこう




 「ジュート、晩ご飯だよー!!」
 「ん? ああ、わかった!!」




 ミモザの言葉で我に返り、思考を中断する




 とにかく明日……オニキスと話さなきゃな


  

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