ホントウの勇者

さとう

吸血鬼の町グラボロ②/正論・明るくても暗い



 俺は【アウトブラッキー】を飛行形態にして全力で飛ばし、2時間でグラボロの町に到着した


 「はやくみんなに服を買わないと……あとはメシだな」


 牢屋生活はどんな物だったかは知らないけどきっとろくなモン食べてないはず
 身体のあったまる優しい食べ物……シチューなんていいかもな


 でも人数は約50人。さすがに食材が足りないのでマッハで帰ってきて正解だ
 ホントにマッハ出てたかも……なんてな


 「でもどうしよう。女物の服……下着もだよな」


 さすがにコレはお手上げだ
 男物は何とでもなるが女物はムリだ、まさか俺が〔セーフルーム〕に乗り込んで金髪の女の子に頼むワケにも……あのときは緊急事態だったからしょうがないけど、〔セーフルーム〕には全裸の女の子が30人以上いる
 しかも何人かは妊婦だし……どうしよう


 「どうしよう……服屋、ここだよな」


 俺はこの町で一番大きな服屋に着いた。しかし……足が止まる


 「とりあえず男物……いや、女の子が先の方が……ああもう!!」






 「あれ、ジュートさんじゃないですか!!」
 「あらら~?」






 その声に振り向くと……バールベロとエレルギーンさんがいた




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 「いやージュートさん、〔デューラの宵山〕から帰ってきたんですか? まさかこんなに早く会えるとは……良かったら食事でもどうです?」
 「えっと、2人は何を?」
 「ああ。私たちはショッピングですよ。愛するエレルギーンに似合うアクセサリーを買いにね」
 「やだわバールベロ、アナタに似合うステキなベルトも買ったじゃない? 改めて好きになっちゃったわぁ~」
 「私の方が愛してるさ!! キミよりもず~っとね!!」
 「まぁ、そこは譲れないわ!!」
 「私だって!!」
 「………あははははッ!! エレルギーン、キミには適わないな」
 「ふふふっ、私もよ。バールベロ」


 「………………」


 はぁ……服をどうしよう。このままだとマズいな……ん?


 「ジュートさん、ウチでお茶でもいかがですか?」
 「ええ、おいしいクッキーを買いましたの」


 そうだ、この2人なら……特にエレルギーンさん




 「あの、協力して欲しいことがあるんだけど」




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 場所は変わりバールベロの家


 「まさか……ジュートさんがギィーレレロを……」
 「あらまぁ……」
 「頼む。今、俺の異空間に50人の人間がいるんだ。特に女の子が30人ほど裸で……エレルギーンさんに洋服や下着を買って貰いたい。あと、食事の準備も手伝って欲しい。費用は全部俺が持つから」


 俺は殆どの事情を話し協力をお願いした
 できればここで服と食事を済ませておきたい……ここから王都まで【アウトブラッキー】を飛ばして8時間ほどあるし、ここでみんなを安心させてあげたかった


 「もちろん構いません。困った時にはお互い様ですよ!!」
 「わたしもいいですよ? それで、女の子達の様子は?」
 「……………大変申し訳ないんですけど、その…みんな吸血鬼に攫われてひどい目にあったので、いきなりエレルギーンさんが行くとパニックになるかと」


 おそらく俺の予想は当たる。しかも今いるのが吸血鬼の町だなんて知ればどうなるコトやら


 「そうですか~……せめてみんなの様子が分かればねぇ?」


 まてよ?……あの金髪の女の子ならいけるかも


 「ちょっと待ってて下さい……少し様子を」


 そう言って俺は少しだけ入口を開き、中を見ないように呼びかける


 「おーい……金髪の女の子いる?」
 「それって私のこと?」 


 いた。思ったより近くにいるみたいだ
 よし。小声でこの子にだけ聞こえるように


 「あの、実は今……吸血鬼の町にいるんだ」
 「はぁぁ!? ど、どう言うことよ!?」
 「実はみんなの服を買ったり、食事の準備をするのに一番近いのがここだったんだ。でも、ここの吸血鬼たちはみんないい人だ。みんなを攫った連中とは一切関係がない」
 「で、でも……吸血鬼は」
 「それを言うなら人間だってそうだろ? いい奴もいれば悪い奴もいる。それと同じだ」
 「………わかった、それで私に何を?」
 「ちょっと出てきて欲しい。それで女の子の服を買いに行くから着いてきてくれ」
 「わかったわ……」
 「よし、じゃあ行くぞ」
 「あ、ちょっと待って!!」


 俺は入口を拡張し、女の子を呼び出した


 「えっと、この子と一緒に行きま……ってしまったぁぁぁぁぁっ!?」
 「きゃぁぁぁぁぁっ!?」
 「あら~? えいっ!!」
 「あがっ!? え、エレルギーン……なにを!?…ぐはっ……」


 俺は素っ裸の女の子をリビングに召喚してしまった
 女の子は身体を隠して蹲り、エレルギーンさんはバールベロの首を90度回転させて女の子を見えないようにした。首からヘンな音したけど


 「ごごごゴメンっ!? ど、どーしよどーしよ!?」
 「うう~っ……バカ」
 「はいはい。さぁお嬢さん、こっちにおいで」
 「は、はい……スミマセン」


 エレルギーンさんが女の子を連れて奥へ


 「ば、バールベロ……なんかゴメン」
 「い、いえ……エレルギーン以外の裸を見るわけには……ははは」


 
 首を曲げたままバールベロは呟いた……マジでゴメン




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 「おまたせ~」
 「………どうも」


 エレルギーンさんと女の子が戻ってきた……おお、いいね


 「それって、キミのお古かい?」
 「そうよ~? サイズがぴったりでよかったわ~」


 女の子の服装は、薄い黄色の厚めのワンピースだった
 長い金髪に櫛をいれて整え、左右で二つに結っていた。うーむ…似合ってるな


 「よし、後はみんなの服だ。エレルギーンさん、さっそくお願いしていいですか?」
 「もちろんよ、ジュートくんとバールベロは男の子の服をお願いね~」
 「はい。じゃあ行くか」
 「うん。あ……名前、ジュートって言うの?」 
 「ああ、よろしくな」


 「私はミモザ、よろしくね」




 そう言って女の子は微笑んだ……ミモザか、助けられてよかった




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 その後、4人で服屋に出かけて大量の服を購入
 ミモザに〔セーフルーム〕に運んでもらう。男は俺が運んだ


 「あとはメシだな。どこかいい場所あればな······」
 「それならいい場所があるわよ〜、町の外れに大きな公園があるの。そこで炊き出ししましょ」
 「よーし、私とジュートくんで釜を作って火を起こそう。エレルギーンは食材を頼む」


 そして町の外れの公園へ行く
 そこは遊具などないただの原っぱで、人は誰もいなかった


 俺とバールベロは石窯を作り火を起こし、俺の持っていた業務用の大鍋を全部出して湯を沸かした


 「さて、そろそろ······お」
 「エレルギーンさ······ん?」


 エレルギーンさんは両手に袋を抱えて戻って来た······20人ほど引き連れて


 「ただいま〜。ふふ、事情を話したらみんな手伝ってくれるって〜。50人ですもの、人手が多い方がいいわよね〜?」


 いや、まぁそうですけど······まぁいいか


 「じゃあ準備しますか、ミモザはみんなに事情を話してくれるか?」
 「わかった。みんなオナカ空いてるし···期待してるから」
 「おう‼」




 入口を開いてミモザを送る······さぁて、料理タイムだ




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 献立はメインがシチュー、サイドに野菜や果物、スープなど
 あとは男もいるので肉を多めに焼き、パンを大量に準備する
 手伝いの女性吸血鬼が料理、男性吸血鬼はイスやテーブルを運び会場の準備をしていた。なぜか酒樽が大量に運ばれていたが······それにどう見ても席が100以上あるし、なぜかステージみたいなのが設営されてる
 イヤな予感······まさかな


 すると頭の中で声が響く···ミモザだ


 「ジュート、みんなご飯食べるって。なんとか説得できた」
 「わかった、じゃあ入口を開ける」


 エレルギーンさんに料理を確認すると、準備が出来たということなので入口を開ける
 すると着換えを済ませた50人が一斉に現れた


 「お、おい···吸血鬼だ」
 「う、ううう···やっぱり怖い」
 「でもいい匂い·····オナカへった」


 案の定戸惑っていたが、俺は笑顔で大声を出す


 「お〜い、メシの準備出来たぞ〜‼」


 辺りに漂ういい匂い。肉の焼ける音、シチューの優しい香りがみんなの腹を刺激する


 「さぁみなさ〜ん、たくさん食べてね〜」
 「おかわりもたくさんあるわよ〜」


 女性吸血鬼たちが女の子たちを優しく迎え


 「ほら兄ちゃんたち、美味い肉がたくさんあるぜ‼」
 「酒はいけるか? どうだい?」


 男性吸血鬼が男たちを引っ張っていく


 戸惑いを見せてた男女たちは、空腹に負けて食事に手を付けて······涙をこぼす


 男も女の子も、顔を涙でぐしゃぐしゃにし、鼻水を垂らしながら料理を頬張る
 その姿を笑うものはなく、ただ笑顔が溢れ出す


 人間・獣人・吸血鬼······種族の垣根を超えて、宴会が始まった


 特設ステージで踊り、歌い出す吸血鬼。負けじと踊る獣人たち
 騒ぎを聞きつけた町の住人が増えていき、寂れた原っぱは町一番の賑わいを見せる


 宴会の途中、ほぼ全ての男女が俺の所へ来てくれた
 そして······感謝と謝罪をしてくれた




 俺は思う···「救えてよかった」と





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