ホントウの勇者

さとう

デューラの宵山①/山の中で・秘密の岩場



 「……………イヤな空気だ」
 《気を付けなサイ……いるワヨ》


 〔デューラの宵山〕に足を踏み入れた俺たちは、得体の知れない重圧を感じていた
 コレは……強いモンスターが俺たちを監視でもしてるのかな


 「とにかく山を登ってみるか……クロ、何か感じたら教えてくれ」
 《分かったワ》




 と、言うわけで……山登りと行きますか




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 さすがに危険地帯と言うだけあってモンスターが山ほど出た


 「こんのっ!!」


 俺は今、上空を旋回する黒いカラス……〔ブラックカーグ〕3体と戦っていた


 「あーもうすばしっこい!! こうなりゃ魔術で!!」


 何発か〔マルチウェポン〕の短弓で狙ってみたが当たらない
 しかも時折こちらに向かって急降下して攻撃してくる……めんどくさい


 「【紫】の上級魔術、【雷電放電ライディン・スパーキング】!!」


 魔術を発動させると空中で放電が起き、カラス3匹に命中。そのまま落下してくる……が、死んではいない
 相反属性じゃないから効果はイマイチなのかな?
 でも俺の魔術でそんなことはあんまなかった。このカラスが意外と強いのかも


 「まぁいいか……そりゃッ、おりゃッ!!」


 落下してきた3匹を【死の輝きシャイニング・デッド】でタイミングよく切り裂く
 胴体を真っ二つにされたカラスは絶命した


 「ふぅ、こんなのばっかだな。かれこれ20匹は倒したぞ……カラスばっかり」
 《そうネ、でもおかしいワネ……空のモンスターがこんなに活発にヒトを襲うなんて、もしかしたら空中でなにかあったのカモ》
 「なにかって……例えば?」
 《例えば……自分より大きな生物に出会ったり、仲間をやられたり》
 「クロ……まさか」
 《吸血鬼が空を飛んでいたとか?……この危険地帯を? ナゼ?》
 「可能性はあるな。クロ、どんな小さな気配でも見つけたら教えてくれ」
 《……わかったワ》


 現在位置は山の中腹……このまま慎重にすすもう


 《ジュート、次に戦闘になったら魔術はダメ。何かいるとしたら気付かれる可能性があるワ……逃げるか、気付かれないように仕留めなサイ》
 「ムチャ言うぜ、あのカラスすばしっこいんだよ」
 《なら逃げなサイ》
 「………そうするか」




 次にあのカラスに出会ったら逃げる、そうしよう




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 《…………ジュート、ビンゴ…見つけたワ》


 山を登り始めて3時間
 辺りがさらに暗くなり夜になる頃、クロが言う


 「マジかよ、何を見つけたんだ?」
 《…………コレは》




 《吸血鬼ネ、しかもかなりの数……この感じ、薄い?》




 クロは何かを探るように黙りこくる
 ネコの鋭敏な感覚で必死に探りを入れてるようだ


 《………………まさか……洞窟?……フム、吸血鬼だけじゃナイ?》
 「おいクロ、大丈夫か?」


 クロはブツブツ何かを言ってる……魔術ではなく、クロの感覚を全開にしてるため俺の声が届いていないのかな?


 現在時刻は約5時……マズいな、吸血鬼の能力が上がる時間帯だ


 「クロ、今日はここまでだ。アウトブラッキーのステルスを使ってここで休もう」
 《…………………》


 クロは集中してるため聞いてない……俺はアウトブラッキーを取り出しクロをだっこして中に入る
 この魔導車には保護色機能も付いていて、周囲の景色に同化することも出来るようなので、この車は外からは大きな植え込みにしか見えないはず


 「ふう……疲れた。今メシにするからな」
 《………………ナルホド、そういうことネ》




 クロはもうほっとこう。とりあえず今日は……カレーだな!!




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 食事が終わりのんびり過ごす……この中は安全だし、完全防音なのでいくら騒いでも大丈夫
 俺はラフな服装でベッドに横になった


 「ふぁぁ~……眠い」


 俺がうたた寝をしてるとクロがお腹に飛び乗ってきた


 《ジュート、わかったワヨ。吸血鬼の居場所が》
 「マジ!? それで、どこだ!!」


 俺はクロを掴んでベッドから飛び起きる


 《確証はないケド…この山に洞窟と地下があるハズ、そこに大量の吸血鬼と人間がいるワ。恐らくこの山は大規模な人間貯蔵庫ヨ》


 その言葉は俺の眠気を吹っ飛ばすダメージがあった


 《何人か強い気配も感じたワ、恐らくコレが眷属とやらネ》
 「じゃあココにギィーレレロが……?」
 《サァ、目的の吸血鬼かどうかは知らないワ》


 眷属は4体。ギャルマガ・ギィーレレロ・ギュステビオン・ギョロメガラだ
 この内ギャルマガは倒したからあと3体……そのいずれかがいるかもしれない


 「よし、明日になったら行こう。案内よろしくな」
 《エエ。油断しないコト、いいワネ》
 「もちろん!!」




 よし、今日はゆっくり休んで明日に備えるか




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 翌朝、クロの案内で山の中を彷徨い、目的地へと辿り着く


 「······ここか」
 《そうネ······気をつけて》


 見た目は小さな洞窟。入口は狭く見方によってはただの裂け目にしか見えない
 周りは木々が生い茂り道もないので見つけるのは困難···俺もクロがいなければ辿り着けなかっただろう


 「見張りは······いないのか?」
 《······ココに誰かが来るコトを想定していないのかもネ》


 しかし油断はしない。慎重に進もう


 「入口からはやめて、別の入口を探そう」
 《そうネ、ワタシは下がってるワ······気をつけて》
 「ああ、任せろ」


 クロはそのまま消える。ホントに頼りになるネコだぜ


 「さて···どこから行くかね」


 洞窟の崖を登って上から行くか、洞窟の周囲を探って手薄な入口を探すか······まるでスパイみたいだな


 「よし、周囲を探ってから上を目指すか。吸血鬼がいるのは間違いないし、見つからないように進もう」




 行動方針は決まった······スパイとして行きますかね




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 洞窟の周りは人の気配すらなく入口はなかったが、正面入口の反対側には大きな裂け目の出口があり、ここではじめて吸血鬼を見た


 しきりに辺りを警戒し、武装も完璧な2体の吸血鬼······何かを守ってるのは間違いない
 吸血鬼のお宝といえば······やはり人間か?


 「やっぱ上から行くか」


 洞窟の広さは小さい
 クロの言うとおり地下に通じているのほ間違いないな······上から順に調べて行こう


 「夜までに決着をつけないとな。さすがに正面からは行けないし······人間を盾にでもされたら厄介だ」


 俺は周囲を確認し、岩場の上に向かってアンカーショットを射出する


 「·········よし」


 アンカーを一気に巻取り岩場の上に、さすがに緊張する······入口を探さないと


 「ここから行けそうだな」


 岩場のすぐ近くに、大きな割れ目を見つけた
 探ってみると、風を感じる······行けそうだ


 「さぁて、気を引き締めろ······行くぞ」




 俺はゆっくりと割れ目を降りていった




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 裂け目をゆっくり降りて行くと通路に出た
 幅が狭く、天井も低い······隠れる場所がない
 どうやらホントにただの通路で、メインは下層のようだ


 「とはいえ、ココを進まないとな······覚悟を決めるか」


 俺は裂け目から飛び降りて通路に着地、射周囲を確認してすぐに壁に沿って警戒した


 「ふぅ〜、緊張する」


 ほんの少し前までただの高校生だった俺がスパイの真似事······この体験を本にしたら売れるかもな


 そんなことを考えながら壁に沿って歩くと······いた


 「吸血鬼······1体か」


 恐らく見回りの吸血鬼
 吸血鬼の装備は漫画やアニメで見るようなローブではなく、実戦的な装備だった。身体を覆うのは軽く動き易い軽鎧、武器は狭い通路でも使えるナイフが2本腰に収められてる


 俺は気配を消して呼吸数も減らす···こちらに向かって来る吸血鬼には悪いが消えてもらう
 そして······俺の潜む曲がり角に差し掛かった


 「悪いな」
 「っ⁉」


 俺は左腕を心臓に当てギミックナイフを発動···心臓を破壊して吸血鬼は息絶えた


 死体は······仕方ない、〔セーフルーム〕に入れておこう
 魔術を使うと気付かれるかもしれないしな


 「·········ごめん」 


 俺は今、こんなにも簡単に命を奪った


 この吸血鬼にも家族がいたかもしれない、大切な人がいたのかもしれない。でも殺した


 もしこの先に人間が入れば、俺は助ける為に戦いを選ぶだろう
 その時にはもっと殺す······わかっていたが慣れるものではない、というか絶対に慣れたくない


 救う為に戦い、殺す
 殺されたくないから戦い、殺す······なんか、アホらしいな




 俺は死体をしまい、先に進んだ





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