ホントウの勇者

さとう

吸血鬼の町グラボロ①/誤解・暗くても明るい



 「〔グラボロの町〕へようこそ、ジュートさん。歓迎致します‼」


 バールベロが両手を広げて案内してくれる
 こんなに熱烈に歓迎されるとは、やはり吸血鬼を誤解してたかもな


 町の中は賑わっていた
 露店などで買い物してる人もいれば、遊んでる子供、井戸端会議してるおばさんや商人風の男性など様々だ
 建築物もなかなか立派で、洋風なレンガの建物だった


 「へぇ······すごく賑わってるな」
 「ええ。複雑な気持ちですが、大陸の7割が吸血鬼の町ですからね。交流が盛んで賑わっていますよ」


 バールベロは、嬉しいのと悲しいのが同時に来たような顔で言う


 「まずは私の家に向かいましょう。そこで愛するエレルギーンの手料理をごちそうしますよ」
 「·········うん。よろしく」


 なんだろう。氷寒たちに会いたくなってきた


 町を歩きながら進むと、いろいろな人に出会った
 まず最初に酒屋のおじさんに挨拶された


 「ようバールベロ。お客さんかい?」
 「やぁモーガン。そう、なんと人間のお客様さ‼」
 「に、人間⁉ ほぉ〜〜···最後に来たのは15年前くらいかな。こりゃめでたい、持っていきな‼」
 「いいのかい? ありがとうモーガン‼」
 「あ、ありがとうございます」


 つい俺も礼をしてしまった
 バールベロは高そうな酒を1本布に包んでもらい手渡されていた


 「いやぁありがたい、今日は飲み明かしましょう‼」
 「······そうだな」


 次に会ったのはパン屋のおばさん


 「おやバールベロ。どうだい、焼き立てパンがあるよ」
 「やぁマーナ。そうだな···貰おうか。ジュートさん、選んでもらえますか?」
 「いいのか?」
 「はい。お好きなのをどうぞ」


 なら遠慮なく······よし。このフワフワのクロワッサンと砂糖をまぶしたヤツにしよう


 バールベロが会計に向かうと、おばさんが話しかけてきた


 「バールベロ、こちらの方は?」
 「ああ、森で出会った人間のお客さんさ。これからウチでディナーをご一緒しようと思ってね」
 「人間⁉ こりゃひさしぶりのお客さんだね、よーしこれはあたしからのサービスさ。持っていきな‼」


 そう言っておばさんは紙袋に追加のパンを入れてくれる。なんかみんないい人ばかりだな


 「それじゃ行きましょうか。ウチはすぐそこです」


 パン屋を出て歩き出す
 その後もいろいろ声をかけられ、家に着くのが遅くなってしまった




 ハラ減ったな···でもいっか




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 「我が家へようこそジュートさん。歓迎致します」
 「あ、ああ。ありがとう」


 バールベロの家はレンガ作りの洋風建築。2階建ての普通の家だった
 家の縁側には広い庭までついてる


 「それではどうぞ」
 「お、お邪魔します」


 土足のまま家に上がる。すると奥から1人の女性が出て来た


 「おかえりなさい、バールベロ。あら?···そちらの方はどなたかしら?」
 「ただいまエレルギーン。こちらはジュートさん。森で出会った人間の方で、狩りを手伝ってくれたんだ」
 「まぁ、それはそれは。はじめまして、私はバールベロの妻のエレルギーンと申します」
 「やれやれ、式はまだ挙げてないだろう? このせっかちさんめ」
 「いいじゃない。もう決まってることなんだからぁ」
 「それもそうか、はははははっ‼」
 「うふふふふふっ‼」


 「···············」




 さて、帰るか




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 俺はこの家の脱出に失敗し、リビングに連れて行かれてバールベロと話をしていた
 イチャつきはムカついたがバールベロは信用できる。細かい話は抜いて簡潔に聞いた




 「ヴリコラカスを倒したいんだけど、場所しらね?」




 簡潔すぎたのかバールベロはポカンとしてる


 「ヴリコラカスを倒す······そんなこと出来るんですか?」
 「ああ。そのために旅してるからな」
 「確かに、ジュートさんはお強いですからねぇ〜」
 「それで場所は?」
 「わかりません。居場所を知ってるのは眷属の中の運搬係のみと言われています。確か名前は·········ギィーレレロ。最強の女吸血鬼ですね」
 「そいつの居場所は?」
 「うーん、そこまでは······運搬係は常に飛び回って、他の眷属が調達した獲物をヴリコラカスに運んでいるそうですからね」
 「なるほど。それにしてもなんでそんなに詳しいんだ?」
 「ははっ。こんなこと吸血鬼なら誰でも知ってますよ」


 うーん···新情報ばかり手に入る
 多分オニキスたちは捕らえた吸血鬼に拷問なり尋問なりして情報を引き出してるんだろうけど、普通に仲良くなって話せばこんなに楽なんだな
 するとキッチンから声が聞こえてきた


 「バールベローっ、お料理運ぶの手伝ってちょうだーい」 
 「ああ、今いくよ。ジュートさん、お話は後ほど···お席でお待ち下さい」


 バールベロはキッチンに歩いていく




 俺も席に座ってるか。ハラ減った




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 エレルギーンさんの食事は凄くうまかった


 バールベロが自慢するだけはある、店を出せそうなレベルの味付けで、肉を焼くだけでも違う
 肉をタレのようなものに漬け込んで柔らかくしてから焼き上げ、焼きあがる寸前にアルコール度数の強そうな酒をかけてフランベしたりしてた……ありゃプロだ


 「いやぁ…やはりエレルギーンの料理は最高だよ。私は世界一の幸せ者で、ジュートさんは世界で2番目の幸せ者だ」
 「やだ、バールベロったら」


 あーねむくなってきたなーもうねよっかなー


 「ジュートさん。ホントに庭でいいんですか?」
 「ああ。庭に魔導車を停めておいたから」
 「え?………あれっ? いつの間に。もしかしてジュートさんの魔術ですか?」
 「ああ。一応な」
 「いやー…人間の魔術は凄いですね。モノを出したりしまったりできるなんて」
 「……まぁな」


 まぁそういうことでいいだろう。説明も面倒だし


 「じゃあ今度はジュートさんの話を聞かせてくださいよ。いいお酒もありますし……今夜は楽しんじゃいましょう!!」




 仕方ない……付き合ってやるか




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 「ふぁぁぁ……なんだか眠くなってきましたね~」
 「だなぁ……あふ」


 酒を吞みながらバールベロと話をする……武具大会のことや人魚の町のこと、アウラの出会いやエルフの戦いをフィクションを混ぜながら話してやった
 するとバールベロだけでなくエレルギーンさんも食いつき、時間はすっかり深夜になっていた


 「じゃあ俺は寝るわ……さすがに疲れた」
 「分かりました。私たちも寝ようか、エレルギーン」
 「そうね、明日の…時間的には今日ね。朝食は遅めにするわ」
 「そうしてくれ、それじゃジュートさん、お休みなさい」
 「ああお休み~……ふぁぁ」


 あくびをしながら魔導車へ入り、念のため魔術でカギを掛ける
 このカギは神であるマフィが作った物なので、そう簡単には開けられない


 俺は生活魔術で身体と服を清め、肌着のままベッドイン……すぐに眠りに落ちる




 いろいろ情報は手に入った
 探すのはギィーレレロ……この吸血鬼を捕まえてヴリコラカスの元に案内して貰おう




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 少し酒は入っていたが警戒していた………が、それは無駄だった
 なぜなら何も起こらずに朝になったからである


 「おはよう……ふぁ」
 「おはようございます。よく眠れましたか?」
 「ああ、おかげさまで」


 さわやかな笑顔で挨拶するバールベロ
 キッチンの方からいい匂いがするので、エレルギーンさんは朝食の準備中だろう


 「ジュートさん、これからどうするんですか?」
 「ああ。とりあえずギィーレレロを探すよ。そいつを捕まえればヴリコラカスに近づけるからな」
 「そうですか……それなら〔デューラの宵山〕へ向かわれては?」
 「………何かあるのか?」 


 バールベロはあまり自信がなさそうに言う


 「実は……前に狩りをしたときに見たんです。凄い速度で飛んでいく吸血鬼を……もしかしたらアレがギィーレレロだった可能性も。申し訳ありません、はっきりしなくて」
 「いや、手がかりがあるだけありがたい。所で何でそれがギィーレレロだってわかったんだ?」
 「はい。ギィーレレロは吸血鬼最速と言われています。吸血鬼であの飛行スピードはあり得ませんでしたので……もしかしたらと思って」


 なるほど、その〔デューラの宵山〕に向かった可能性がある……そういうことか


 「〔デューラの宵山〕は凶暴なモンスターが多く生息して、私たち吸血鬼ですら不用意に近づきません。どうかお気を付けて……」
 「わかってる。ありがとな」


 バールベロの言葉はホントウに俺の身を案じる響きがあった。するとそこでエレルギーンさんの声が響く


 「みなさ~ん、ゴハンですよ~」




 俺とバールベロは顔を見合わせて頷く……さぁて、美味しいご飯を食べますか




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 「それではジュートさん、お気を付けて」
 「ああ、いろいろありがとう。また来てもいいかな……?」
 「もちろんですよ。楽しみにしてます!!」
 「エレルギーンさんも、お料理美味しかったです」
 「ふふふ、ありがとう。楽しかったわ~」


 バールベロとエレルギーンさんに別れを告げて歩き出す
 目指すは〔デューラの宵山〕か。本人がいるとは思えないし、バールベロの見間違えかも知れないけど何かはあるはず




 「よし、行くか」




 気を引き締め、俺は町を出た





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