ホントウの勇者

さとう

シャヘルの黒森/森の出会い・吸血鬼の思い



 〔シャヘルの黒森〕……そこは吸血鬼が住むと言われた曰く付きの森


 漆黒の大樹に囲まれたその森は、凶暴なA~Sレートモンスターの住処であり人間は決して近づかない
 仮に凶暴なモンスターが出ても、そこに住む吸血鬼のごちそうとして捕獲される
 故にこの森は冒険者ですら近づかない恐ろしい森として【黒の大陸】では知られていた


 そんな森を俺は1人で歩いてる……真っ暗だし、道が細いので【アウトブラッキー】も使えない
 空を飛んでいく手段もあったけど、なるべく使わずに歩きや魔導車で行くと決めたので使わなかった


 【流星黒天ミーティア・フィンスター】を使う手も考えたが、道が入り組んでるのでこれも却下
 仕方なくのんびりと歩くことにした………が、恐い!!


 「おいクロ、出てこいよ」


 俺は一番の相棒に声を掛ける……が


 《ムリよ……今ワタシの隣にルーチェミーアとティルミファエルがいるワ……この2匹が離してくれないと動けないのヨ……ハァ》


 マジかよ……すると今度は別の声が聞こえる


 《おぅ兄ちゃん、もしかしてビビッてんのかい? なんならワシが一緒に歩いてやろうかのぉ?》
 「ふざけんな、お前のガイコツ顔見たら失神するわ!!」
 《カッカッカ、そりゃそうじゃのォ!!》


 このガイコツはこんな感じで俺をからかってくる……こういうヤツはいなかったのでなんか新鮮に感じる




 とにかく……さっさとここを抜けよう




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 「…………」


 キィキィと謎の生物の鳴き声が聞こえる


 「…………」


 ホーホーとフクロウの鳴き声が聞こえる


 「…………」


 グルルルル……ガウガウ!! と謎の生物が吠えている


 「…………」


 木の上に、逆さにぶら下がる巨大コウモリがいる


 「…………」


 目の前を、小さなコウモリが……………あれ?


 「…………」


 なんだろう、何かヤバい存在を見てしまったような……気のせいか?


 「………ははっ、まさかな」


 俺は頭上を確認する
 俺の真上には大きな木の枝が伸びている
 まさかこんな所に巨大コウモリがいるなんて……小さいのは結構いたけどな


 「………………」
 「………………」


 うーん。気のせいか何かいるな……しかもバッチリ眼が合ってしまった


 「……………こ、こんばんわ」
 「……………あ、こ…こんばんわ。ハハッ」


 うん。礼儀正しい返しだ
 なんか引きつった笑いが聞こえた気がするが


 「あ、あはは……いい天気ですね」
 「そ、そうですね……ははは」


 うーん。この人なんで逆さになってるんだろう
 肌は真っ白で眼が赤いし……まるで吸血鬼みたいだな


 「…………」
 「…………」




















 「ぎゃあぁぁぁぁぁぁっぁぁぁっぁっ!?!?」
 「ほぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁっ!?!?」


















 俺の絶叫と吸血鬼の絶叫が、森の中にこだました






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 吸血鬼は驚いて木の上から落下……ドズンと頭から落下た


 「いったぁぁぁぁぁっ!?」


 頭を押さえて転げ回る吸血鬼……なんだコイツ、やべえ気がする……倒すか


 「くっそ、相手になってやる。来やがれ!!」
 「ちょ、チョットまって下さいよ。私は夕飯を仕留めに来ただけで……」


 吸血鬼は手をブンブン振ってアピールする……マジかよ


 「ホントですって、それに私は人間を襲ったことはありません!! そんなバカなことする吸血鬼じゃありませんよっ!!」


 両手を組んでペコペコ頭を下げる吸血鬼……たしかにコイツは弱そうだ。見た感じ俺の敵じゃない


 「ホントか?……ヴリコラカスの仲間じゃないだろうな、それとも眷属か?」


 その問いに吸血鬼は憤慨した


 「あんな連中と一緒にしないで下さいよ。アイツらのせいで罪のない吸血鬼たちは迷惑してるんですから!!」


 迷惑……たしかにそうかもな
 まてよ、コイツから吸血鬼のこといろいろ聞けるかも
 よく考えたら俺、吸血鬼のことなんにも知らないしな


 「わかった。狩りの邪魔して悪かった……お詫びに狩りを手伝ってやるよ」
 「え!? ホントですか。助かりますよ!!」
 「ああ、それとついでにヴリコラカスのこと教えてくれ」
 「ええ、勿論ですよ。はぁぁ、強い人間がアイツら滅ぼしてくれないかなぁ……」


 ため息をつきながらとんでもないコト言うな。仮にも最強の吸血鬼なんだろ?




 とにかく、狩りに付き合うか




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 「いやージュートさんのおかげで大漁でしたよ。はっはっは!!」
 「まぁ気にすんな。それより……ホントにいいのか?」
 「もっちろん。逆になんでダメなのか聞きたいですよ、私たちの町に人間が来るなんて」


 そう、俺は今この吸血鬼……バールベロの家に招待された


 この〔シャヘルの黒森〕はバールベロの住む〔グラボロの町〕の入口で、この森にはよく狩りに来てるそうだ
 バールベロは恋人と同棲中の22歳。長い金髪のイケメン吸血鬼で、狩りをして生計を立てているらしい
 もうすぐ結婚をするため、昼夜問わず狩りをして稼いでるそうだ


 「いやー人間のお客さんなんて何年ぶりだろう。最後に来たのは私が子供の頃だったかなぁ?」


 それにしてもコイツ、よく喋る
 性格が底抜けに明るくとても吸血鬼には見えない……が、きちんと牙は生えてるし、背中には羽を広げても平気なように服に細工がしてあった


 「もうすぐ町に着きますよ、そしたら食事にしましょう」
 「えっと、モンスターの生気を吸うのか?」
 「まっさか!! 生気なんて吸わなくても生きていけますよ。それに生気を吸いすぎると〔魔性化ましょうか〕の兆候が出ますからね……あんな姿になったら吸血鬼としておしまいですよ」


 うーん。新事実が明らかになっていく…吸血鬼は生気が食事じゃなかったのか?


 「吸血鬼も人間と変わりませんよ、普通に食べて寝て……恋をして。ただ違うのは血と生気が吸えるくらいですよ。もちろん大多数の吸血鬼はそんなことしませんしする必要が無い。全員が平和主義者ばかりです」
 「そっか……俺の聞いた話と随分違うな」
 「ああ、それはきっとヴリコラカスのせいですね……ヤツには吸血鬼一同が迷惑してます。吸血鬼の大陸支配なんて望んでるのはアイツの眷属とその配下ぐらいのモンですよ。むしろ我々は人間達との共存を望んでいるのに……悲しいです」


 バールベロは俯く……きっと本心で言ってるな
 そういえばギャルマガも言ってたっけ……ヴリコラカスを倒せば共存の道が開かれるって


 「なあバールベロ、もっと吸血鬼のこと教えてくれよ」
 「もちろんです!! その代わり私にも人間のこと教えて下さいよ」




 町に向かいながらバールベロといろんな話をする。コイツは裏表のないいい奴だと思った




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 バールベロから聞いた話は新鮮なものばかりだった


 まずは〔魔性化ましょうか〕……これは吸血鬼の間では禁忌とされている
 なぜなら変身には大量の生気が必要で、1回の変身で人間100人分以上の生気が必要となる
 変身できるのは長年生気を吸い続けた吸血鬼で、現在ではヴリコラカスとその眷属のみが使用できるらしい


 ヴリコラカスは最強の吸血鬼とされ、生まれてすでに300年は経過している古の吸血鬼
 昔から【黒の大陸】は吸血鬼が支配していた土地で、人間や他の種族は吸血鬼のエサとして生きるべき…というふざけた思想を今でも思っているらしく、今も戦い続けている
 その成果はすさまじく、すでに大陸の7割を手中に収めている


 「バカですよね、外の大陸にはまだまだ強い種族がいくらでもいるのに……私たちに必要なのは支配ではなく共存ですよ。古い吸血鬼の考えは理解出来ません」


 と言うのがバールベロの意見だった
 俺も同感……やれやれ、やっぱりヴリコラカスにはご退場していただくしかなさそうだ


 そろそろ町に着きそうな所でバールベロが言う


 「さて、良かったら私と婚約者のエレルギーンの愛の巣に泊まって行きませんか?」
 「……………いや、遠慮しとく。庭だけ貸してくれ」
 「残念、なら料理でおもてなししましょう」




 愛の巣って……泊まりにくいわ!!





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