ホントウの勇者

さとう

炭坑都市ベックガーゴ③/予兆・見えない敵



 炭坑の入口は閉鎖されていた


 「昨日の今日だしなぁ、仕方ないか」
 《冒険者は入れるみたいネ》


 入口にはギルドの職員がいたので、ギルドから貰った依頼書を見せる
 するとあっさり中に入れた


 「じゃあクロ、頼むぜ」
 《任せなサイ》


 クロが迷路のような炭坑の案内猫となり先へ進む
 分かれ道ではしばらく考え込み進む


 「さっすがクロだな。クロがいれば迷うことないぜ」
 《フフン》


 あ、しっぽが揺れてる······嬉しいんだな




 そんな感じでゆっくりと進んでいく




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 ギルドの案内によると、〔ブラックジャイアントダルボ〕は炭坑の奥深くで巣を作り、エサとなる生物を確保するために縦横無尽に穴を掘りまくっているらしい
 ここで言うエサとは人間のことで、すでに何人かの炭坑夫が犠牲となっている


 炭坑夫たちは、〔ブラックジャイアントダルボ〕の来ない手前の炭坑のみで採掘をし、すでに掘りつくされた岩盤をムリに掘り返した為に崩落事故が起きてしまった······と、言うのが今回の事故原因だそうだ
 なのでモンスターさえ退治すれば問題ない、また炭坑奥で作業が出来る


 「問題は···いつもみたいに奇襲が出来ないんだよなぁ」


 そう。今回は正面から挑むしかない···もちろん負ける気はしないが、リスクは減らしたい


 ここはモンスターのホームグラウンド
 モグラは耳がいいので俺がいることもすでにバレてるはず···このまま巣に向かうのはマズいかも


 
 考えても仕方ない。間もなく巣に到着だ




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 《もぐーっ‼》
 《······トレパモール?》


 突然モルが現れて俺の肩に着地、何かを訴えていた


 「どうした?」
 《もぐもぐ‼》
 《自分に任せろって言ってるワ》


 そう言ってモルは地面に潜る。そしてそのまま消えてしまった


 「お、おいモル⁉」


 《大丈夫、トレパモールに任せまショ》




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 モルが消えて数分···突然炭坑内が激しく揺れ始めた


 「な、なんだなんだぁ⁉」
 《コレは······トレパモール⁉》


 クロの案内で炭坑の奥へ進む···すると、黒くデカいモグラが壁を突き破ってきた


 「グモォォォォォッ‼」
 《もぐーっ‼》


 それは、逃げるモルを食べる為に巨大なモグラが追いかけている光景だった 


 「モルーッ‼ この黒モグラぁっ‼」


 俺は瞬間的に戦闘態勢を取る
 が、物凄いスピードで地面を掘り進み見えなくなる


 「ちっくしょおっ‼」
 《ジュート、向こうヨ‼》


 クロは炭坑奥へ走って行く。俺もクロを追い抜く勢いで走り、炭坑最深部···〔ブラックジャイアントダルボ〕の巣へやって来た


 「どこだ······出て来い‼」


 振動は感じるが姿が見えない···地面を掘り進んでいるのは間違いない。こうなったら作戦は1つ


 「モル‼ ヤツをここにおびき寄せろ‼ 出て来た瞬間を狙う‼」
 《トレパモール‼ ココよ‼》


 俺とクロの呼びかけ···モルにきっと届いてるはずだ‼


 《もぐーっ‼ もぐっ⁉》
 「モルっ⁉」
 《トレパモールッ⁉》


 モルが天井を突き破って現れた
 そして···それを追うように現れた〔ブラックジャイアントダルボ〕の前足に思い切り弾き飛ばされ、壁に叩きつけられて動かなくなった


 「グモッグモッグモッ‼」
 「こんのヤロォォォォォっ‼」


 あざ笑うかのような声出すモグラに俺はキレた
 魔術を忘れてナイフ二刀流で斬りかかる···が


 「グモッ‼」
 「ッチ‼···クソがっ‼」


 すぐに地面に潜られて対処出来ない
 振動音だけじゃ動きが読めない


 「クロ、モルは⁉」
 《平気ヨ、気を失ってるダケ》


 振り返らずに確認···とりあえずは安心。じゃない、なんとかしないとマズいな······よし


 「【土壌探索グランサーチ・ソナー】······マズいな、速すぎて捉えられない‼」  


 物凄いスピードで掘り進んでる
 どうやらかなり刺激してしまったみたいだ
 俺たちを追い詰めて食べるつもりだろうな
 神器は······ダメだ、規模が大きすぎてまた落盤を起こすかも


 「クソっ‼···甘く見てた、かなりヤバいぞ‼」


 姿が見えない恐怖、大きくなる振動······なんとか逃げるしかない




 「クロ、モルを連れて······ッ⁉」


 《ト、トレパモール······⁉》




 振り返った俺が見たのは、黄色く瞳を輝かせたモルだった




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 《······もぐ》




 俺とクロは、モルから信じられない圧力を感じた




 《······モ···グ》




 手のひらサイズしかない、愛嬌のある黄色いモグラ
 背中には亀の甲羅を背負っているおかしな生き物




 《···オ···オ···オ···》




 そのモルが、恐ろしかった。怖かった




 《オオォォォォォォォォォォッ‼‼》




 モルは自ら掘った穴に飛び込み姿を消す
 そして······恐ろしい振動が炭坑内に響き渡る


 「く、クロ······何が」
 《まさか···呪いが⁉》




 次の瞬間、轟音と共に巨大な何かが地面を突き破り、黒い何かが飛んできた


 俺の前に落ちたのは······〔ブラックジャイアントダルボ〕の頭部
 何かに食い千切られたようにズタズタの断面だった


 目の前には巨大な···黄色い、何か塔のような物
 長さは5メートルはありそうで、先端にはカエシがついていた。まさかこれって······ウソだろ?




 《トレパモールの······爪》




 クロがそう言った途端に爪は溶けるように消え、目の前には巨大な穴が残った
 そしてその穴の1つから




 《もぐっ?》




 モルがちょこんと現れた




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 「モルっ‼」
 《もぐ〜っ⁉》


 俺は両手でモルを掴んで抱きしめる···モルは苦しそうだったが構うもんか


 「よかった···でも、1人で飛び出すなよ‼ 何かあったらどうすんだ‼」
 《······もぐ》


 俺は再度モルを抱きしめる
 ホントに無事でよかった···けど、気になることがある


 「な、なぁ···さっきの」
 《もぐっ?》
 《······封印が一時的に解けたのネ。アレは本来のトレパモールの姿だったワ》


 マジかよ
 こんなにかわいいモルがあんなに巨大な姿に?······まぁ考えても仕方ない。ここから出よう


 「一応、持っていくか」


 俺は持参した革袋に〔ブラックジャイアントダルボ〕の頭部を入れて帰路についた




 モルの真の姿······ありゃかなりヤバいな




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 炭坑から出ると目の前にたくさんの人がいた


 「な、なにこれ?」
 《······さぁネ》


 すると入口にいたギルド職員が、俺の持っていた袋···〔ブラックジャイアントダルボ〕の頭部が入った袋を見て、確認してきた


 「それは···もしかして」
 「あ、はい···依頼の品です。これだけですけど」


 俺は袋を開けて中を見せる···やっぱグロいわ


 「はい、それではギルドへお越し下さい。報酬をお支払い致します」
 「はい。あ、あの〜、これって一体?」


 俺の視線の先には大勢の人だかり
 めちゃくちゃこっち見てる······冒険者や傭兵、住人や炭坑夫。全員揃ってる


 「ええ、先程ここで大きな地震がありましてね。皆さんこの炭坑の様子を見に来られたのです」


 
 なるほど。そこでタイミングよく俺が出て来たってとこか
 このままだと目立つな、さっさとギルドに行くかね




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 ギルドの受付でモグラの生首を出すわけにもいかず、案の定、ギルドの中に通された
 しばらく待つとドアが開かれ、ガタイのいい作業員みたいな男が出て来た


 「おう。オレがこの〔ベックガーゴ冒険者ギルド〕のギルド長、ディバンだ。よろしくな‼」
 「は、はい。よろしくです」


 デカい
 まるで毛むくじゃらの熊みたいな大男が現れて、ソファにドカリと座る
 その重さでソファが軋んだ


 「どーれ、フムフム······こりゃ大したモンだ。単独でコイツを始末するとはかなりの手練だな。ほれ、報酬だ」
 「ど、どうも」


 ディバンさんはゴルド入金の機械を机の上に置き、俺はカードをスキャンさせて入金した
 するとディバンさんが興味深そうに俺に言った


 「お前さん···炭坑救助の魔術師だな?」
 「·········なぜですか?」
 「ハッハッハッ‼ そりゃ認めてるようなモンだぞ?」


 うぐ。確かにな


 「なーぜ名乗り出ん? 町では冒険者や傭兵が好き勝手名乗っておるぞ?」
 「えーと、目立つのは好きじゃないんで」
 「なーるほどなぁ······若いのに随分と謙虚だな」


 そんなこと言ってもな······こればかりは性格だし


 「ふん、まぁいい。所で次の目的地はどこだ?」 
 「次ですか、次は······」


 おいクロ、次はどこに行くんだ?


 《次は〔シャヘルの黒森〕を抜けて〔王都ブラックオルス〕へ向かうワヨ》


 オッケー。頭の中で会話出来るの便利だな


 「次は〔シャヘルの黒森〕を抜けて〔王都ブラックオルス〕へ向かいます」
 「〔シャヘルの黒森〕か···気をつけろよ、あそこで吸血鬼が目撃されたこともある」
 「ええ⁉······わ、わかりました」




 ディバンさんの忠告を受けてギルドを出た。マジかよ···ここで吸血鬼とはな




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 宿に戻るとモーリエが出迎えてくれた


 「おっかえり〜」
 「おっす。少し早いけど晩ごはんにしてくれる?」
 「いいよ。すぐに出来るのからね」


 本日のメニューも素晴らしい物ばかりで、全部キレイに平らげてしまった


 「ジュート、依頼は···?」
 「ああ、無事に終わったよ」


 なんの依頼かまでは言わない。別に答える必要ないしな


 「明日には出発するよ。朝ごはんは頼むな」
 「そっか、行っちゃうのか···せっかく仲良くなれたのにな」
 「悪いな、また来るよ」
 「うん。その時はも〜っと美味しいご飯作れるように腕を磨いておくからね‼」


 そしてモーリエと会話しながら、最後の夕食を食べた


 翌朝···美味しい朝食を食べて出発の時間。モーリエが見送りに出てくれた


 「じゃあジュート、元気でね」
 「ああ、モーリエもな」
 「ネコちゃんも元気でね〜」
 《······にゃあ》


 モーリエと別れ、町の出口に向かって歩きだし町を出る
 街道をしばらく歩いた所でアウトブラッキーを出して乗り込んだ


 「じゃあ次は〔シャヘルの黒森〕だな。飛ばして行くかね」
 《暗いから安全運転ネ》


 クロに言われて仕方なくゆっくり走りる···もうすぐ王都か、吸血鬼の情報、どうなったかな




 吸血鬼のことを考えながら、街道を走り続けた





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