ホントウの勇者

さとう

炭鉱都市ベックガーゴ②/救助魔術・豪華ディナー



 モーリエのスピードは信じられないほど早く、付いていくのが精一杯だった
 これが火事場のバカちからってやつなのかもな


 「おいモーリエ!!」 
 「お父さーんッ!!」


 炭鉱入口には人が大勢溢れていた


 炭鉱の関係者の家族や、近くの鉱山の作業員、冒険者や傭兵に至るまで大勢の人間で溢れている
 その中でチカラのある人間は炭鉱入口に集まって何か作業してる


 炭鉱はトロッコで運搬が出来るように線路が引いてあり、入口は完全に土砂で埋まっていた
 中の様子は全く分からない……出口はココだけなのか?


 「おいモーリエ、炭鉱の出口はココだけなのか?」
 「う、うん。確かそう、あああ……お父さん、お父さん」


 モーリエはパニック寸前だ
 よく見ると大勢の家族連れが集まってる……女の人と子供
 そっか、旦那さんが閉じ込められているのか


 「とりあえず中の様子を確認してみるか」
 「……え?」


 俺は炭鉱前に張られたロープをくぐり抜ける


 「おい、ここから先に入るんじゃねぇ!!」


 作業員のオヤジ達が俺を睨むが無視
 俺は魔術を発動させ、しゃがみ込んで地面に右手を付けた


 「【黄】の上級魔術、【土壌探索グランサーチ・ソナー】!!」


 久しぶりに使うこの魔術
 ソナーのように周囲を確認……心拍数、位置、人数を確認……後はこの炭鉱の土壌成分を確認……よし、これならいけそうだ


 俺がいきなり魔術を発動させたのでオヤジ達はビビっていた


 「あの、この中にいる人数は……59名で間違いないですか?」
 「え、ああ。今日の出勤名簿にはそう書かれている」


 よし。心拍数は59人分ある
 でも、いくつか不安定な心拍数も確認出来る。早急にここから出してやらなくちゃな


 「あの、入口にいる人達に離れるように言ってもらえませんか?」
 「あ、ああ……おうお前等ぁ!! そこから離れろや!!」


 俺が喋っていたのはどうやら親方のようだ
 若い作業員が駆け足で離れていく


 背中には無数の視線を感じる
 ここで【黄】魔術以外を使うわけにはいかないな
 あと、呪文を喋ってるように口パクしておかないと……よし




 
「【黄】の上級魔術、【粘溶粘土クレイ・グリーナ】!!」






 俺が狙いを定めたのは道をふさいでいた土砂と岩
 その土砂たちがドロリと溶解し粘土になる、そして俺が魔力の流れを止めると、粘土は一瞬で固まり地面と同化……炭鉱の道は開かれた


 「……っと、こんなモンかな、お?」


 すると入口が開かれたので、近くにいた炭鉱夫が何人か出てきた


 「な、何が起きたんだ!?」
 「いきなり土砂が溶けたぞ!?」
 「た、助かった……のか?」


 大歓声が上がり、俺の後ろから何人も走ってくる気配がした
 そして、出てきた炭鉱夫と抱き合って喜んでいる


 「お父さ~んっ!!」
 「も、モーリエ?…コレは一体……?」


 モーリエのお父さんも無事だったみたいだ、よかった




 さて、女将さんに報告しなきゃな




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 「ホ、ホントなのかい。あの人は無事なんだね!?」
 「はい。そのうちモーリエと戻ってきますよ」


 俺は炭鉱から戻ってきて女将さんに報告。すると女将さんは崩れ落ちた


 「ちょっ!? 女将さん!?」
 「あああ………よかった」


 気が抜けたように座り込んでる……こっちも良かった


 俺は女将さんを立たせてイスに座らせ、水を汲んできて女将さんに渡す
 すると女将さんは水を一気飲みして落ち着きを取り戻した


 「ふぅ……ありがとねお客さん」
 「いえ、気にしないで下さい」


 女将さんは仕事を始める
 どうやら帰ってくるまで普通に仕事をするようだ




 俺も部屋でのんびりするか……あ、晩ご飯…大丈夫かな?




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 クロと一緒に部屋でのんびりしてると、1階ロビーが騒がしくなる
 そして、ドタドタ階段を登る気配を感じると、いきなり部屋のドアが開かれた


 「いた〜〜〜〜〜っ‼」
 「お、モーリエじゃん。お父さんは無事だったのか?」
 「え、あ、うん······じゃなくて⁉」


 なんだろう、あわて方がハンパじゃない
 また何かあったのか?


 「なぁ、今日の晩ごはんは作れるのか? ムリそうなら外で食べて来るけど······」
 「そ、それは大丈夫よ。任せて‼」
 「おう。多めで頼むわ」
 「うん、わかった」


 そう言ってドアが閉じられる······が、再びバタンと開かれた


 「って違う‼ ジュート、ドコ行ってたのよ‼」
 「はい?」
 「炭坑救助の魔術師がいきなり消えたから、みんなパニックよ‼ あなたにお礼を言いたいって人が総出で町を探してるわ‼」


 マジかよ······なんか大変なコトになってるな


 「それで······ドコ行ってたの?」
 「いや、女将さんに報告しに帰ってたんだよ」
 「·········それだけ?」 
 「それだけって、大事なコトだろ」
 「う、まぁそうだけど······」


 現に女将さんは安心して仕事してる
 俺はあの場で出来るコトはしたし、後は他の救助の人に任せてもいいと思ったからここに来たのだ


 「ハァ···わかった。それでどうするの、名乗り出るの?」
 「えぇ···いいよ。それに目立つのは好きじゃない」
 「わかった。でも、町にいた何人かの魔術師が、あの魔術は自分が使ったって言いふらして、何人かは英雄扱いされてるよ?」
 「ふーん。それより晩ごはん頼むわ」
 「はいはい······ふふっ」


 なぜか嬉しそうにモーリエは出ていった




 なんだかんだでハラ減った······今日はたくさん食べるぞ‼




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 夜になり、待ちに待った晩ごはん······それは素晴らしい物だった


 「おおおおお······スゲぇ」
 「今日のお礼よ、たんと召し上がれ‼」


 俺はさっそく食べる······う、ウマイ  


 分厚いステーキは程よく焼かれ、ナイフを入れると肉汁が溢れてくる
 そこにモーリエの特製ソースが絡みつきなんとも言えない味となる


 パンも手作りだろうか、表面はパリッとしているが中はふんわりモチモチ
 バターをつけて食べてもウマイし、ステーキソースをつけてもウマイ


 スープもすごい。山の幸のダシがふんだんに溶け込んだ濃厚な野菜スープ
 ダシを摂った後にさらに野菜を煮込んであるので、野菜の歯ごたえも残りとてもウマイ


 「いやーサイコーだよモーリエ」
 「でしょ?」


 自身満々のモーリエの笑顔。この宿にして大正解だったな


 こうして俺は最高の晩餐を楽しんだ
 明日はギルドで依頼を探そう




 モーリエの言ってたSレートモンスターの依頼があるかもしれないからな




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 「ジュート、今日もご飯はここで?」
 「当然だろ?」


 モーリエの作った朝食を食べながら会話する
 部屋の中は俺とクロしかいないので、モーリエは遠慮なく座って見てる


 「ふふ、ネコちゃん美味しい?」
 《···にゃあ》


 ご飯を食べるクロを眺めるモーリエ。クロも仕方なく鳴いたみたいだ


 「今日はギルドに行って依頼を探すよ」
 「そ、そう···気をつけてね」


 食事が終わり、トレイを下げる為に立ち上がるモーリエに告げる
 どうやらモーリエは俺が危険なモンスター討伐に出ないか心配なようだ


 「じゃあ行ってくる。晩ごはんよろしくな」
 「いってらっしゃい‼」




 モーリエに見送られてギルドへ······そんじゃ行きますかね




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 この町の冒険者ギルドは、主に採取・採掘関係の依頼が多かった
 モンスター退治もあることはある···例えば鉱山や炭坑を掘り進むと出て来るモグラみたいなモンスター、〔ブラックダルボ〕なんかが多い
 しかしこのモンスターはすばしこく臆病なので、人に出会うとすぐに逃げてしまう


 けど、〔ブラックダルボ〕の肉は上質で、町の料理店なんかでは高級品として愛されてる
 戦闘力は低いが捕獲が難しいモンスターとして、Aレートの価値がついていた


 しかし、俺が見つけたのはそれではない


 「コイツがモーリエの言ってたモンスターか」
 《······そうみたいネ》


 〔ブラックジャイアントダルボ〕Sレート・報酬1500万ゴルド


 中々の値段だな。よーし、コイツを受けよう


 俺はさっそく依頼書を剥がし、受付のお姉さんに渡す
 すると、お姉さんが俺を見て眉を潜めた


 「······あの、あなたはもしかして昨日の炭坑の?」
 「えーっと、違います。あの、まだですか?」
 「あぁすみません······はい、それではお気を付けて‼」


 ふぅ。なんとかごまかせた


 《別に隠さなくてもいいんジャないノ?》
 「目立ちたくないんだよ。いいから行こうぜ」


 指刺されて騒がれるのはごめんだぜ




 さーて、モンスター退治と行きますかね‼





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