ホントウの勇者

さとう

炭鉱都市ベックガーゴ①/炭鉱・危機



 旅を順調に続けながらアウトブラッキーを走らせること4日…ついに〔鉱山都市ベックガーゴ〕が見えてきた


 「あそこは炭鉱の町なんだよな?」
 《そうネ。住人の男の殆どが炭鉱に務めてるワ》


 〔炭鉱都市ベックガーゴ〕はその名の通り炭鉱の町
 町を歩くのは男ばかりでみなガタイがいい
 手にはスコップ・ツルハシが当たり前、頭には安全ヘルメットの姿はこの町では常識……この町では石炭が多く採れ、石炭以外にも鉱石や原石なんかも採れるまさに産業の町だ


 採掘方法は主にスコップ、ツルハシ、たまに魔術
 魔術を使える人間が僅かしかいないので、普段はギルドに務めており、ホントに助けが必要な場合のみ魔術で掘削をする


 この世界のエネルギーは魔術がベースだが、石炭などのエネルギーもないわけではない
 どちらかというと庶民にはなじみ深くもある
 たとえばランプや簡単な湯沸かしは魔道具で済むが、火を起こし維持させるために石炭を投入するのはどこでも珍しくない
 絶えず魔力を供給できるワケではないので、着火のみ魔力を使い、炎を維持するのは石炭のチカラなのだ


 さらに重要な情報。この町は人間の管轄……つまり吸血鬼はいない
 ここにいるのはガタイのいい男ばかりで、若い女はそんなにいない
 娼館などにはいるが微々たるもの、吸血鬼がここを襲う理由はほとんどないのだ




 さて、さっそく町を冒険するか




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 炭鉱の町、というからに町はオシャレとは無縁な感じだ
 町を歩くのは主に炭鉱夫ばかりで男臭い
 女性もいるけどあきらかに冒険者、どうみてもこの町の出身じゃない


 町には出店が多く、いろいろな店も出てる……あとは酒場が多いな
 男たちのたまり場に酒場は外せないんだろうな


 町の中央はおなじみギルドに各商店
 とりあえず宿をとってから買い物して、観光は……この町に見るべきものなんてあるのかな、宿屋で聞いてみるか




 と、いうワケで宿屋に行きますか




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 この町で一番大きな宿屋は冒険者で満室だったので、町のやや外れにある中規模の宿屋を紹介され、そこに向かって歩いていた


 「ここか」


 クロは俺の肩に乗って降りる様子はない。そのまま宿に入り受付に行く


 「いらっしゃい。お泊まりかい?」


 にっこり笑ういかにもなお母さんが迎えてくれた


 「はい、1人と1匹で」
 「1匹…ああ、ネコちゃんね。大丈夫よ」


 受付を済ませ支払いも済ませる……すると、宿の女将さんが受付の裏に向かって叫んだ


 「モーリエ、お客さんを部屋に案内しな!!」
 「はーい。今行きまーす」


 どこか間延びした声が聞こえる。すると女将さんが


 「全く、あのコはまた……ああ、ごめんなさいねぇ。あのこは料理に夢中でねぇ…」


 女将さんは、ヤレヤレ…と言いそうな表情をしてるが、どこかうれしそうだ


 「お待たせしましたー。じゃあ部屋に案内するね!!」


 やって来たのは俺と同い年ぐらいの女の子だった
 茶色い髪の毛を三つ編みにし、エプロンを着けていた
 料理の途中だったのか身体からとてもいい匂いがした


 「お、かわいいネコちゃん。こんにちわー?」
 《……にゃ》


 俺の肩にいたので逃げ場のないクロは、大人しく撫でられていた


 「あ、ごめんなさい。お部屋はコッチね」
 「うん。よろしく」


 部屋の案内してもらいカギを受け取る
 すると女の子は期待するような眼で見てきた


 「ねぇねぇお兄さん。あ、あたしはモーリエね。晩ご飯はどうする?……ウチで食べない?」


 すごく期待するように俺をのぞき込んでくる……そういえば料理に夢中って言ってたな


 「じゃ、じゃあここで食べるよ。えーと…料理長はキミなの?」
 「まぁね!! お父さんは炭鉱で働いてるから。あ、モーリエでいいよ、歳も近そうだし」
 「そうなのか、じゃあ晩ご飯は期待してる。ああ、俺はジュートだ」


 ここまで言うからには相当な腕なのだろう。こりゃ楽しみだ




 モーリエは嬉しそうに階段を降りていく。俺は町に買い物に出ることにした




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 炭鉱の町と言うから商店の規模は期待してなかったが、商品の品揃えはなかなかだった


 最近は酒の消費が早い
 アグニとナハトが連日宴会を繰り広げ、酒の消費が2倍になったからだ
 意外なことに酒のつまみはティエルが作ってる……実は料理に興味があったそうで、俺の中から俺の料理を見たり、町の料理人の腕を見て覚えたそうだ


 そんなわけで酒を大量に購入
 炭鉱夫にとって酒は命なので、種類は豊富に取りそろえてあった
 が、お菓子は少なく余り量を確保できなかった……まだまだ予備があるけど、足りなくなったらティエルに作って貰おう


 「さーて、どうしよっかな」


 女将さんに聞いてみたら、やはりこの町には観光名所などない
 どちらかと言えば職を探しに来てそのまま炭鉱で働くような人が来る町なので見所はないそうだ


 「仕方ない。宿に帰ってのんびり……ん?」
 《アレは……モーリエ、ネ》


 買い物かごを手にモーリエが道具屋に入っていく
 どうやら食材を買いに来たみたいだな


 「せっかくだし行くか。どうせヒマだし買い物を手伝うのもいいな」
 《アナタも暇人ネ……好きになサイ》




 と言うわけで再び道具屋へ




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 「よう、モーリエ」
 「ありゃ、ジュートじゃない?」


 かごの中に食材を放り込んでたモーリエに挨拶する
 するとモーリエはため息をついて言う


 「ああ、この町…炭鉱しかないし遊ぶとこもないし……町で会うのは当たり前か」
 「そうかもな。良かったら買い物手伝うぞ?」
 「いいの?……でもジュートは冒険者でしょ、ギルドには行かないの?」


 あ、そういえば俺……冒険者だっけ。たまに忘れるな


 「別にいいよ。今日はゆっくりするつもりだったし」
 「そーなの? じゃあお願いしよっかな」


 にっこり笑い買い物かごを押しつける。以外と重い……ぐふ


 「この町は炭鉱の町だからさ、野菜や果物はぜーんぶ商人が持ってくるの。自分たちで作ってみたいけどね」
 「そうなのか?」
 「うん。あたしとしては出来れば新鮮な取れたて野菜なんかを使って料理したいけどね、あと魚や肉も」


 そんな料理談義に花を咲かせながら買い物する……俺もこの世界で幾度となく自炊してきた
 料理には多少の自信があるのでなかなか面白かった


 買い物が終わり、宿に向かって歩きながら会話をする


 「ジュートは魔導車で来たんでしょ? ってことはだいぶ稼いでるんだ。しかも……一人で?」
 「ああ、ホレ……これだ」
 「ウッソ!? S級冒険者……初めて見た」


 俺は黒いドッグタグをモーリエに見せる


 「普通、S級冒険者はパーティーを組んでいるけど……シングルのS級冒険者なんて初めて見たよ」


 そうなのか? まぁ別にランクなんて俺にはどうでもいいけどな
 するとモーリエが思い出したように言う


 「あ!! ならさ、この町のギルドにSレートモンスターの依頼があるんだけど、ジュートが受けてみない?………なんちゃって」
 「……Sレートモンスター?」


 どうやら本気ではなさそうだが、一応聞いておくか


 「い、いや…冗談だよ? 本気にしないで!!」
 「わ、わかったよ」


 どうやら俺が本気で受けるかも知れないと考えているんだろう
 これ以上は聞かずに明日ギルドで確認するか




 そんなことを考えながら、宿に向かった




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 宿屋に到着した俺とモーリエを迎えたのは、狼狽した女将さんだった


 「ああ、どうしたら…ああ………」
 「ど、どうしたのお母さん!?」


 女将さんは顔を押さえて狼狽え、モーリエの言葉に顔を上げた


 「も、モーリエ…あの人が、あの人が……」
 「あの人?……お父さんがどうしたの!?」


 モーリエは女将さんの肩を揺さぶる
 すると宿泊客だろうか、数人の男女が声を掛けてきた








 「先ほど、炭鉱で落盤事故が起きたらしい。何人も閉じ込められてるって話だ」










 その人達は冒険者なのだろう。よく見ると装備がしっかりしてる……落盤事故か


 「う、ウソ……お父さん!!」
 「あ、おい!! モーリエ!!」


 モーリエは走って出て行ってしまった。仕方ない


 「女将さんをお願いしますッ!!」




 俺は冒険者に女将さんを任せ、モーリエの後を追った





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