ホントウの勇者

さとう

閑話 三途玲弥・【霊神プリズラーク】



  三途さんず玲弥れいやたちは【黒の大陸】の森の一つ、〔プレマの森〕を歩いていた


 「おいおい……不気味だぜ」


 辺りを見回しながら語るのは読坂よみさか供恩くおん、少し垂れ目の慎重な少年だ
 彼は中腰で歩きながら隣にいる少年に話しかける


 「なぁ篠原しのはら、お前のチカラでなんとか明るくしてくれよ」


 そう言われてめんどくさそうに篠原しのはら幻想げんそうは振り返る


 「ヤダよめんどくさい、それになんで歩きなんだよ。ここは轄俥かつぐるまの出番だろ?」


 少し困ったように振り向くのは轄俥かつぐるま盛輪じょうりん
 彼は申し訳なさそうに言う


 「さっきも言ったけど…ここは木々が密集してるから、俺の神器は使えないんだよ。ここから出たら走れるからさ、我慢してよ」


 そう言ってみんなを励ます
 この少年はこの中の誰よりもみんなを気遣っていた


 「そーそー、いいからいこーぜ」


 ニカッと笑い三途は全員を促す
 すると、真ん中を歩いていた中性的な美少年が歩みを止めた


 「お、どーした楠木?」


 三途は立ち止まった少年、楠木くすのき森玖りんくに話しかける
 三途はこの美少年の考えがいまいち分からなかった
 けどチカラは本物なので信頼はしている






 「…………フム、吸血鬼。しかも……10体。内1体はSSレート並か」






 何かを感じた楠木は近くの樹に手を当てて何かを感じ取り、そしてにやりと笑う


 「みんな、ここから東に360メートル先に吸血鬼の団体がいる。ボクの作戦の実験をしよう」


 その問いに真っ先に答えたのは三途だった


 「いいねいいねぇ!! こっちは薄暗い森の中で退屈だったんだ。いっちょやろうぜ!!」


 普段の気は弱いがノリに乗ると強気になる
 それが三途の長所であり短所でもあった


 「………まぁ実験は必要か」
 「そうだな。ぶっつけ本番だと恐いしな」
 「じゃあ俺は下がってるよ」


 読坂・篠原・轄俥も同意した。そして、楠木が笑う






 「さて、吸血鬼には悪いけど……地獄を見て貰おうか」






 こうして「心」を砕く攻撃は始まった










 そして誰も知らないまま、ヴリコラカスの眷属・「吸血鬼ギュステビオン」は消滅した




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 三途たちは吸血鬼たちの死骸の元に向かい、それを見た


 「おーおー……見事なまでに争ってやがる」


 死因は同士討ち
 全員がお互いの武器で倒されていた
 中でもとりわけ大きい吸血鬼には無数の剣が刺さり、自分で自分の心臓を抉った形跡があった


 「うん、実験は成功。これならイケるね」


 楠木はにっこりと全員に微笑みかける


 「そーだな。じゃあさっさとここから出よーぜ。ハラも減ったし、出たらメシにしよーぜ!!」
 「そうだな。今日は……三途、お前が食事当番だ」
 「わーってるよ、料理は得意だぜ!!」


 無数の死体を前にしても彼らは笑顔でいる
 〔プレマの森〕に少年達の笑い声が響き渡った




 彼らは気付いていない


 彼らの始末した吸血鬼が、ヴリコラカスの眷属だということを


 この吸血鬼の軍団が、これから近くの集落で狩りを行おうとしていたことを






 彼らの行いが、結果的に【黒の大陸】に平和をもたらしたことを







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