ホントウの勇者

さとう

〔亡者の断崖〕/ナハトオルクス・セバスチャン



 〔亡者の断崖〕は闇の中に存在する【黒の大陸】の中で、最も東に存在する断崖だ


 大陸の最東端に存在する崖は、強力なモンスターの住処でもあり、SSレートのモンスター〔バイオレットガーゴイル〕はその断崖の王
 周囲のモンスターを喰らい生態系を破壊することから王都は討伐を指示、しかし地形の悪さやモンスターの強さから多数の死者が続出……人間が管理する町のギルドの以来掲示板の隅っこに、ホコリを被った依頼書が存在する


 そんな崖の道を俺とクロは歩いていた


 「おいおい……落ちたら死ぬぞ」
 《なら落ちなければいいのヨ》


 道幅は50センチほど、落ちれば崖下の海に真っ逆さまの地獄……こんな所で戦えるワケねぇよ


 「その〔バイオレットガーゴイル〕が出てきたら【銃神砲撃ヴォルフガング・ブラスター】で消滅させるからな。まともに戦ったら真っ逆さま、海に叩きつけられて死んじまう」
 《そうネ、コレばかりは仕方ないワ》


 そんな会話をしながら歩く。いちおう聞いておくか


 「なぁ、ナハトオルクスってヤツはここにいるんだよな?」
 《エエ。この崖下の洞窟で眠ってるワ》


 どんなヤツだろう
 ティエルみたいに人間だといいなぁ……いや、ここでまた変なヤツかもしれない
 うーん、わからん。毎回のことだけどな


 《事情は話してあるワ、さっさと仲間にしまショ》




 そんな感じで進む……はぁ、早く帰りたい




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 そしてついに〔バイオレットガーゴイル〕が現れた


 「クオォォォォォォンン!!」


 身体の色は赤紫、全長は20メートル以上はあるだろう
 ドラゴンのような体躯にコウモリのような羽、醜い顔をしたモンスターがどこからともなく現れた
 そいつの視線は間違いなく俺だ……絶対にエサとして見てやがる


 「じゃあ終わらせますか……そりゃっ!!」


 俺は【神器ジンギ】を発動、崖からジャンプしてモンスターと視線を合わせる


 「悪いな」


 『錬鉄の神銃アイゼン・ブラスター』に〔決戦技弾フィニッシュアーツ・ストレージ〕を装填
 未だに理解をしていないモンスターに向かって引き金を引いた




 「【銃神砲撃ヴォルフガング・ブラスター】!!」




 濡羽色の光線が〔バイオレットガーゴイル〕を直撃
 モンスターはなにもすることなく消滅した。ゴメンね


 俺はクロのいる崖に再び着地


 「よっと、さて行きますか」
 《なんか哀れネ……》




 確かに……でも喰われるのはゴメンだぜ




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 そんなこんなで崖下へ
 そこは洞窟のようになっていて、入口は意外と広かった
 すぐ下が海なので波飛沫が飛んでくる


 「中は意外と明るいな」
 《エエ………ン?》


 中は円形のホールになっていてそんなに広くない……あれは


 「死体だ……」


 影になって見えないが死体がある
 かなり年数が経っているのか白骨化している
 暗くて見えないが、足下がホネなので間違いないだろう


 「ここで死んだのか……供養してやろう」
 《…………》


 俺は白骨死体に近づく
 でもここは岩の地面なので掘ることは難しい……地上に持って帰って供養してやるか


 俺はしゃがんで手を合わせた、すると










 《ヴァァァァァッァアァッァァァァッ!!!!!!》


 「はぁぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?!?!?」










 骸骨が顔を上げて笑い出した


 《ヤレヤレ………》




 クロのそんな声が聞こえた気がして、俺は気を失った




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 「………ん?」


 俺は眼を覚まして辺りを見回した


 《全く、アナタはふざけすぎヨ!!》
 《カッカッカッカ!! スマンスマン、ついつい》
 《こんのクソじじい……ホンット性格最悪ね!!》
 《そう言うなよ、ナハトオルクスなりの挨拶だろ?》
 《でもジュートさん、気絶しちゃったっすよ?》
 《もぐ~~》


 中央でみんなが集まっている……するとルーチェと目が合った


 《あ、ジュートが起きたよ!!》


 その言葉に視線が殺到する
 そして……恐ろしい物を見た




 《おーう、兄ちゃん…ワシはナハトオルクス・セバスチャン。こう見えて【黒】の【九創世獣ナインス・ビスト】をやっとる。まあよろしく頼むわ》




 骸骨が喋っていた




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 どう見ても骸骨……暗くて見えなかったが今は違う
 よく見ると身長はアグニと同じくらいで身体は金色のホネだった
 しかし頭のホネに牛みたいなツノが生えている
 眼下には赤い光が灯り身体には黒いマントを着けていた


 《いやはやスマンかった……なにぶんヒマでなぁ、少し刺激が欲しかったんじゃ。おかげで最高の暇つぶしになったわい。カッカッカッカ!!》


 その言葉に全員が呆れる……なにコイツ?


 《ナハトオルクス。事情は話した通りヨ……力を貸してくれるのネ?》
 《おうよ、構わんぜ。久しぶりにウマい酒が飲めそうだしのぅ!!》


 ナハトオルクスの視線はアグニへ……アグニはにやりと笑う


 《へっ、オレと飲めるのはお前だけだ。歓迎するぜナハトオルクス。今夜は宴だぜ!!》
 《おうよアグニードラ、いい酒そろっとるんじゃろうな?》
 《あったぼうよ!! おいジュート、ツマミ頼むぜ!!》


 おいおいテンションたけーよ
 それにこの骸骨、飲食できんのかよ?


 《ジュート、あだ名あだ名!!》


 ルーチェが俺の服を引っ張る。うーん……ナハトオルクスだから


 「じゃあナハトで」


 《んで、どんな酒があるんだ?》
 《くっくっく、麦酒から果実酒までなんでもございよ!!》
 《ほぉ~っ…こりゃ楽しみじゃ!!》


 全然聞いてなかった……コイツら
 するとナハトが俺に近づく


 《兄ちゃんがヴォルフガングの後釜か。なかなか面白そうじゃのう》


 ナハトはアゴに手を当てる……するとホネをならしながらカタカタ笑う


 《まぁよろしく頼むわ。たいしたモンじゃないがワシの力を使ってくれや》
 「お、おう…よろしく頼む」




 そう言ってみんな〔セーフルーム〕へ。仕方ない、俺も行くか




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 《ぎゃっはっはっは!! いやー懐かしいなぁナハトオルクス!!》
 《おうよアグニードラ、昔を思い出すのぉ!!》


 メチャメチャ騒がしかった
 部屋の中央でアグニとナハトが酒を飲んでいる
 俺もツマミで魚を焼いたり煮物を作ったりしてあげた
 クロも歓迎会と言うことで酒を許し、大量に出していた


 《そーいえばよぉ、ナハトオルクス…おめぇ、寝てるオレの口にクライブグリューンを入れやがったな? あの時はホントに喰っちまう所だったぜ!!》
 《そ~んなこともあったのぅ……カッカッカ。懐かしい…たしかティルミファエルの嬢ちゃんに助けてもらったんじゃのう、クライブグリューン?》


 その言葉にクライブがビクッとする


 《そうっすよ!! あのときはホントに喰われるかと……》
 《そーよ!! あのときクライブグリューンは半分以上食べられてたんだから。アグニードラは起きないし、ヴォルフガングは笑ってるし!!》


 そこでクロが追撃する


 《助け出されたクライブグリューンはともかく……起きたアグニードラがルーチェミーアに炎を吹きかけたのはその時ネ》
 《ひぃぃぃぃぃっ!?》
 《おいおいクロシェットブルムよぉ、蒸し返すなや!!》
 《もぐもぐ~》


 みんなが笑ってる
 楽しそうに……俺が知らない思い出で




 ほんの少しだけ淋しくなってしまい、俺は〔セーフルーム〕を後にした




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 崖下の洞窟にアウトブラッキーを留めて、そこで寝ることにした
 外は星が輝き薄暗い洞窟も少しは明るい


 俺は地面に座り星を眺めていた


 「………ふう」
 《どうしたノ?》
 「おおっ!?」


 慣れたつもりだったが驚く……クロが俺の隣で座る


 「いや……別に」
 《そう……》


 こういう時クロは無理に聞こうとしない
 ただ側にいてくれる……みんなの思い出に俺がいない、それが寂しかったなんて言えるワケがない


 《明日は〔炭鉱都市ベックガーゴ〕へ向かうワヨ。ホントならこのまま【紫の大陸】に向かってもいいんだケド……どうせ吸血鬼のコトが気になるんでショ? ならその次は〔王都ブラックオルス〕に向かいまショ》


 「………うん。ありがとうクロ」


 いろんな意味を込めた「ありがとう」…クロにはきっと伝わった




 俺はしばらく、クロの頭を撫で続けた




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 「よーし、変形!!」


 翌日…俺とクロはアウトブラッキーの変形スイッチを押す
 するとアウトブラッキーは飛行形態へ変形した


 「コイツでここから脱出……街道へ戻ろう」
 《そうネ。所で……運転は平気?》
 「任せとけ!!」


 俺は魔力を流し発進させる……するとアウトブラッキーは大空へ向けて飛び立った


 「おっほーっ!! 飛んだぜーっ!!」


 大空を舞うアウトブラッキーに俺は感動し、しばらく飛行して地面に降り立った


 「じゃあ〔炭鉱都市ベックガーゴ〕に向かうか!!」
 《エエ。ここから4日ほどで到着ヨ》




 こうして俺たちは【黒】の【九創世獣ナインス・ビスト】 ナハトオルクス・セバスチャンことナハトを加えて旅を続けるのだった





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コメント

  • ヒカッチ

    セバスチャンと言う名前なのに執事っぽくない笑笑

    0
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