ホントウの勇者

さとう

BOSS BATTLE/【銃神ヴォルフガング】VS【吸血鬼ギャルマガ】/魔性化・敬意



 俺たちは倉庫の真上にいた


 ギャルマガの倉庫までは約500メートル
 下には見張りの吸血鬼が約20人……情報通りの布陣だ


 屋根の上には俺を含めて8人
 内5人は周囲の見張りのザコの始末、アミールとルーミアは倉庫中のザコの始末、そんで俺はギャルマガを弱らせての捕獲だ


 まぁ【白】魔術で弱らせてから【拘束巻鎖バインダー・チェーン】で捕獲すればいい
 実に簡単な………いや、油断は禁物。何があるかわからないし慎重に行こう


 「作戦開始」


 アミールが静かに告げる
 その声に5人の少女が音もなく消えた……マジで消えたように見えた
 屋根から下に降りて気配を消し、吸血鬼の首を狩り、心臓を音もなく破壊してる。こりゃ心配ないな


 「ジュート、あたしたちも」
 「ああ、行こう」




 アミールは無言で頷き先に進む


 俺とルーミアはその後に続いた




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 目的の倉庫の真上に到着……俺たちは天窓から中の様子をうかがった


 「いました。アレがギャルマガです」
 「……デカい」


 中には7人ほどの吸血鬼、その中でひときわデカい吸血鬼がいる
 大きさは3メートルを超えてる、逆立った金髪にギラつく赤目、鋭い牙に服の上からでもわかる筋肉……かなりの強さを感じた


 そして、中には全裸の人間が並べられていた


 メインはやはり女の子……全員が10代半ばで身体を震わせている
 人数は20人以上いるし、男も10人ほど……30人ほどが並ばせられていた


 ギャルマガは1人ずつ吟味する……匂いを嗅ぎ、舌を這わせ、身体を触り……その度に女の子は震え上がり涙を流す。男に至っても同じだった


 「あの野郎……」
 「ジュート殿、殺してはいけませんぞ」


 分かってる。分かってるけど……分からない、自信がない


 するとギャルマガは部下に何かを指示する
 すると、何人かの女の子が別々の檻に入れられていく


 「選別でしょうね。恐らく自分用とヴリコラカス用に振り分けて、残りは部下のエサでしょう」
 「…………いくぞ」
 「ちょ、ジュート!?」




 俺は我慢出来ずに天窓をぶちこわし、ギャルマガと少女達の間に降り立った




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 「……何者だ?」
 「【白】の中級魔術・【光の聖槍ホーリーランス】‼」


 ギャルマガの問いに俺は魔術で返す
 光の槍はギャルマガの周囲に突き刺さり、動きを完全に封じた


 「ほう、【白】魔術……して、お前は何者だ?」
 「通りすがりの冒険者、お前を半殺しにしてヴリコラカスの場所を聞く」
 「なるほど……王都の者か」


 ギャルマガは余裕タップリで俺を見る
 すると左右からザコ吸血鬼がナイフを構えて襲ってきた


 「ハァッ!!」
 「シッ!!」


 しかし、上空から現れた双子の姉妹がそれを阻止
 黒い小太刀で吸血鬼の首を両断した


 「ほう、キサマ等は〔闇と影の舞踊ブラックハーケン〕。なるほど…どうやらヴリコラカス様を本気で始末するようだな。そこで私を狙ってきたのか」


 ギャルマガは余裕タップリに俺たちを見る
 俺は迷わず顔面に【光爆ライトボム】を叩き込んだ


 「バカかお前、なに余裕カマしてんだよ?」
 「ちょ、ジュート!?」


 すると腕を組んだままのけぞったギャルマガがゆっくりと顔を戻す
 その顔は青筋が立ち、怒りに歪んでいた


 「男は私が始末する。女は捕らえ私の檻へ」


 その指示だけで吸血鬼はビクンと背筋を伸ばし、武器を構えて前に出た


 「………ジュート殿、そろそろです」
 「ああ。人質は任せた」


 未だに動けない人質が背後にいる
 しかし……外の吸血鬼を始末した5人が飛び込んできた
 そして30人の人質を保護、アミールとルーミアは周囲のザコを始末しながら檻に向かった


 「来いよ、遊ぼうぜ」
 「キサマ等……!!」




 俺とギャルマガ、タイマンの戦いが始まった




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 ギャルマガは上着を脱ぎ捨て拳を握り特攻してきた


 「ぬうぅぅぅんッ!! おおおおおっ!」
 「よっと、ほらよッ!!」


 鍛えられた拳から繰り出される連打ラッシュを躱し、俺は両手に【雄大なる死グロリアス・デッド】と【死の輝きシャイニング・デッド】を握りタイミングを合わせる


 「くらえぇぇぇいッ!!」
 「そっちが、なぁッ!!」


 ギャルマガは右手を開き掌底を浴びせるように振り下ろす
 俺は一歩だけ下がりその5本指を切り落とした


 「チィィィッ……ふん!!」


 指が地面に落ちると泡のようになって消える……が、すぐに新しい指がボコボコと生えてきた


 「面倒だな。アンタを殺さないようにしなくちゃいけないのに、その回復力のおかげでかなり難しい。さーて、どうしたもんか」
 「ムダだ、夜の吸血鬼は最強……我らが倒れるときは死ぬときのみだ」


 ギャルマガは自信たっぷりだ
 どうやら自分が負けないとでも思ってるのだろう


 「じゃあさ、ヴリコラカスの居場所を教えてくれよ。それさえ聞ければアンタを始末出来るんだからさ」
 「ほう、ならば……私を殺すことが出来たら教えよう」
 「それっておかしくね?」


 ギャルマガはにやりと笑うと拳を握り力をタメ始める


 「ぐうぅぅぅ……おぉぉぉぉぉッ!!」


 すると、身体から黒いもやがあふれ出し……身体に異変が起き始める


 背中から黒いコウモリの翼が飛び出しバサリと広がり、白い肌はみるみる青白くなっていく
 身体がふくれあがり身長が5メートルほどに伸び、ズボンが破れて下半身が体毛に覆われる
 そして顔がグゴゴと音を立てゆっくりせりあがり、牙が伸びて眼が飛び出した


 「マジかよ……バケモンじゃねーか」


 すると檻から少女達を助け出していたアミールが、焦ったように叫んだ




 「ジュート殿、お逃げ下さい!! アレは吸血鬼の〔魔性化ましょうか〕です!!」




 なんだそりゃ? と聞く前にギャルマガがつっこんできた
 そのスピードは恐ろしく早く、踏み込んだ地面がえぐれていた


 「ウッソぉ!?」
 「死ネェェェッ!!」


 パンチではなく手を開いたツメによる斬撃をかろうじて躱す
 俺は返す一撃を放つ


 「食らえッ【拘束巻鎖バインダー・チェーン】・【光の聖槍ホーリーランス】!!」


 二つの魔術の同時行使
 身体に鎖が巻き付きその上空から光の槍が降り注ぐ……が


 「ヌルイワァァァッッ!!!」


 ギャルマガは巻き付いた鎖を引きちぎり、両手を広げてヤリの雨をその身に受けた
 結果は……無傷。おいおい


 「フン。コノテイドカ……」
 「な、【白】魔術が効かない!?」


 全身にヤリの雨を浴びたのに傷一つない
 それに今の攻撃は躱そうと思えば躱せた、コイツ……ワザと受けやがったんだ


 「フフフ、イクゾ!!!」
 「くっそが!!」


 先ほどとは比べものにならない速度の連打ラッシュ
 もう一度指を切り落とそうとしたがまるで分厚い岩を切りつけるような感触で、傷一つ付かなかった


 「ドウシタドウシタァァァッ!!!」
 「く、ううッ!?」


 マズいな、徐々に捌ききれなくなってきた
 何より一撃が重くてまともに受けられないし、躱すのにも体力と精神力が持って行かれる


 「オオオオオオオォォォォォッ!!!!!」


 弱点、弱点は……肌は岩みたいに固くてダメだし、【白】魔術は効かない
 じゃあ他の属性は……ダメだ。上級魔術じゃこの倉庫がぶっ壊れるし大騒ぎになっちまう。どうする!!


 「フン、オレノ肌ハムテキ!! ドンナ攻撃モトオサナイ!!」
 「ちっくしょぉ、この青肌ヤローめ!!」


 まてよ……肌?……もしかして


 「ジュート殿!!」
 「ジュート!!」


 連打から逃れて距離を取った俺の隣にアミールとルーミアが並ぶ
 するとアミールが叫ぶ


 「撤退しましょう。〔魔性化〕した吸血鬼はほぼ無敵……私達では勝てません!!」
 「一度引いて立て直す。ジュート、行くよ」


 ルーミアが煙幕を投げようとし……俺はその手を掴んだ


 「何を!?」
 「アイツ……死なないんだな?」
 「そうです。仮に首だけになっても生きています」
 「そっか、なら……任せろ!!」


 俺は飛び出した
 ナイフをしまい両手に魔力を集中させる


 「フハハハハッ!! イイゾ、コイッ!!」
 「じゃあ遠慮無く!! 【拘束巻鎖バインダー・チェーン】!!」


 鎖がギャルマガに絡みつく……が、すぐに切断される


 「ムダダッ……!?」


 俺の魔術はまだ終わらない


 「おおおおッ!! 【拘束巻鎖バインダー・チェーン】・【拘束巻鎖バインダー・チェーン】・【拘束巻鎖バインダー・チェーン】!!」


 鎖が至るところから飛び出しギャルマガの全身を拘束、顔以外の全身に鎖が絡みついた


 「フンッ、コシャクナ!!」
 「ぐぅぅぅッ!!」


 魔力全開で鎖を維持
 俺はギャルマガの背後に回り肩車のように肩に飛び乗った


 「ナ、ナニヲ……!?」


 困惑のギャルマガ
 俺は〔マルチウェポン〕のギミックナイフを起動


 「確かに皮膚は硬い、でも……中身・・はどうかなぁぁっ!!!」


 俺は左手を思い切りギャルマガの左目に突き刺した


 「ギッギャァァァァァァッ!?!?」
 「おおォォッ!!」


 グチグチと音を立てて俺の左手が眼下に潜り込んでいく。そして




 「終わりだぁっ!!【白】の上級魔術【無垢なる光セイファート・ライフ】!!」




 俺の全力の回復魔術がギャルマガの体内を駆け巡った


 次の瞬間、水っぽい音が響き全身に巻かれた鎖の間から血が吹き出した
 そしてギャルマガの身体は爆散し倒れ、首がごろりと転がった




 「バ……カ……ナ……」
 「悪いな、俺の勝ちだ」




 俺は立ち上がり、首だけのギャルマガに告げた




 戦いは終わった




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 戦いが終わり残務処理……吸血鬼の死体を集めて消滅させ、ギャルマガの生首を鳥かごみたいな入れ物に入れる
 そして30人の少年少女達は保護され、簡単な検査をして元いた場所に帰らせる予定だ


 そして場所は〔闇と影の舞踊ブラックハーケン〕の地下アジト
 テーブルの真ん中にギャルマガの生首が置いてあった……グロい


 「さて、ヴリコラカスの居場所は?」
 「………」
 「捕らえた人間をどこへ運ぼうとした? お前はヴリコラカスと自分用に人間を分けていた。送る場所が合ったはずだ!!」
 「………」


 ギャルマガの生首は黙っていた
 アミールの尋問は完全に無視……ダメだこりゃ


 「おい、お前……名前は?」
 「へ?……俺はジュートだけど」
 「そうか……」


 ギャルマガは突然俺に語りかけてきた


 「お前は俺を殺した。お前の強さに敬意を表する」
 「そっか……アンタ、いや…ギャルマガもかなりの強さだった」
 「フン……」


 なんだよコイツ、話せば分かるんじゃね?


 「人間の送り先は分からん、ホントウだ。運んでいる途中でいつもいつの間にか消える……ヴリコラカス様の居場所は私にはわからん。だが私以外の眷属なら知ってるかもしれん。ギュステビオン、ギィーレレロ、ギョロメガラのいずれかに会うことだ」


 なにその名前?……なんか頭痛くなりそうだ


 「ヴリコラカス様に供物が捧げられなかったか。どのみち私はまもなく消滅するだろう。ジュートよ、最後に貴殿と戦う事が出来てよかった。感謝する」
 「おい、何だよそれ……ギャルマガ」


 ギャルマガは笑う……澄んだような微笑みを


 「ヴリコラカス様は最強の吸血鬼。故に全ての吸血鬼に恐れられる存在でもある……あのお方を倒せば吸血鬼は人間を襲うことはないだろう。共存の道も開かれるはずだ」
 「おいギャルマガ、なんでそんなことを……」
 「ふん。見下し、エサとしか見てなかった人間がここまで私を追い詰めたのだ。最後に……いい物を見せて貰った礼だ」


 ギャルマガの頭が、少しずつ泡となっていく




 「さらばだジュート……お前とヴリコラカス様の戦いを見てみたかった……」




 そう言って、ギャルマガは消滅した




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 「じゃあ、俺はここで」


 俺はアウトブラッキーの前で、アミールとルーミアに別れを告げていた


 「私たちは残務処理が終わり次第、王都へ帰還……次の任務へ向かいます」
 「また会えるよね?」


 ルーミアが俺に言う……俺は自然と頭を撫でていた


 「ああ。俺も王都に行くから、その時会えたらな」
 「うん」




 そう言って2人と別れ、魔導車を発進させた




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 「さ~て、次は……」
 《次は〔亡者の断崖〕……気を付けなサイ。アソコはSSレートのモンスターの住処ヨ》
 「ああ。もうお前にも驚かねぇよ」


 いつの間にか助手席にいたクロの頭をなでる




 次は【黒】の【九創世獣ナインス・ビスト】か……行きますか





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