ホントウの勇者

さとう

犯罪都市ペナルクライム②/闇と影・お相手





 「こちらです。ジュート殿」


 アミールの案内で町外れの住宅街へやってきたが、案内されたのはボロっちい小屋だった


 アミールの後ろに俺、その後ろにルーミアが続き、1列になり小屋に入る
 小屋の中もボロく、蜘蛛の巣が張ってあり生活感は全く感じなかった


 「しばしお待ちを」


 そう言ってアミールは奥へ、俺とルーミアが残された


 「············」
 「············」


 会話なし
 少し気が重い······まぁ仕方ないよな、あんなに驚かしたら嫌われる


 「ねぇ」


 ルーミアが横目で俺を見る。なんか怖い


 「オニキス様と······したの?」


 ········なんですと?
 まぁしたけど、うん。あれはヤバかった
 かなりのテクニシャンでこの俺がやられそうになった。俺は何を考えてるんだ?


 「············」


 答えは沈黙で返す
 答える義務はないし、まだ俺はコイツらを信用してない
 するとアミールが戻って来た


 「それではご案内いたします。こちらへどうぞ」


 アミールの後に続き歩き出す、そしてついたのはキッチンだった


 「······ここ?」
 「はい」


 アミールはキッチンのカーペットをめくり床板を外した
 なるほど、秘密基地か···かっこいい


 「参りましょう」




 アミールの後に続き秘密基地へ、さて···何があるのやら




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 中はまんま秘密基地だった


 天井は低く、中は魔導ランプが照らされて明るい
 通気口から新鮮な空気が流れ込んでいるらしく、息苦しさは感じない
 広さはだいたい教室くらいかな、イステーブルに水瓶と携帯食料くらいしか置いてないみたいだ


 そこには5名ほどの女の子···みんな忍者みたいな服装だ
 俺を見て明らかに警戒してる


 「どうぞこちらへ」


 アミールがイスを勧めてくれるので遠慮なく座る
 そしてアミールが1人に目配せすると、その1人がコップに水を入れて出してくれた


 「それでは、説明させていただきます」


 アミールが語り出す。緊張してるようだ


 「まずは、ジュート殿を尾行した件ですが···あなた様の実力を図ること、オニキス様が認めたあなたを知るためでした。これについては大変ご無礼をかけました」


 なるほどな。要はオニキスのそばにいた俺が気になったのか




 「そして、我々〔闇と影の舞踊ブラックハーケン〕についてご説明させていただきます」




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 〔闇と影の舞踊ブラックハーケン〕は〔王都ブラックオルス〕の王族直轄の組織
 任務は主に戦闘・暗殺・偵察・探索・調査など幅広く、それぞれのスペシャリストを育て配置させている


 隊員は全て女性
 理由は男より女の方が情報を集めやすく、時には身体を使い誘惑し獲物に近づくなど様々な理由からだ


 彼女たちは基本的には孤児
 王都が極秘に作った施設で訓練をし、一定期間の訓練教程を終えた者を部隊に配属させる
 隊員数は総勢250名。内50名が精鋭とされ、オニキスの命令で各地に渡る
 それ以外にも訓練生という見習いも存在している


 オニキスは歴代最強の戦士で10歳で特級魔術師となり、かつての団長を一騎打ちで破り団長の称号であるオプシディアンの名字を賜った
 ちなみに現在17歳、タメだった


 オニキスは〔ヴリコラカス〕の情報を得て、単身で宿屋に泊まりワザと捕まることでヴリコラカスに近づこうとしたのだ
 そこで俺と出会ったのだ




 なるほどな、だいたいわかった




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 「なるほど、それで頼みってなんだ?」


 アミールの話を聞いて本題に入ることにした


 「はい。この町には無数のギャンググループがあるのはご存知ですか?」
 「ああ。道具屋で聞いた」
 「そうですか。それでは〔ポイズンダーク〕と言うグループを聞いたことは?」
 「ああ。それも聞いた、なんでも吸血鬼と繋がりがあるとか」
 「話が早い、実はその通りなのです」


 やっぱそうか
 コイツらが吸血鬼を追ってるのは知ってたからな


 「我々の情報によると、〔ポイズンダーク〕はヴリコラカスの4人の眷属の1人〔ギャルマガ〕と繋がりがあります。ギャルマガを捕獲すればヴリコラカスの居場所がわかるかもしれません」


 ギャルマガ···エロい本みたいな名前だな


 「ジュート殿には是非、ギャルマガ捕獲を手伝っていただきたい。もちろん報酬は支払います」


 吸血鬼ギャルマガ···なんか笑えるな
 とにかくこの子達じゃムリだな
 オニキスの特級魔術があるならともかく、生身で吸血鬼と戦うのは厳しいだろう


 「······わかった、いいよ」
 「おお‼」


 アミールは嬉しそうに手を組む。俺は立ち上がる


 「ギャルマガは質のいい人間をヴリコラカスに献上するために、〔ポイズンダーク〕を使って人さらいをさせています。攫った人間を品定めするために一度町の人間倉庫に足を運ぶ···そこを狙います」
 「決行日は?」
 「3日後の深夜です、それまではお休み下さい。ルーミア‼」


 アミールの呼びかけでルーミアが前に出た


 「ジュート殿は町に慣れぬ身、決行日までルーミアを護衛に付けます。お泊りは魔導車でございますよね? 掃除や炊事、性処理などお申し付け下さい」
 「わかった······ん?」


 なんだろう、聞き間違えかな
 まぁいいか…って、ちょっと待て、いらねーよ⁉


 「い、いや俺は1人でいいよ。そっちも大変だろ?」
 「いえ、こればかりはお譲りできません。ジュート殿に何かあればオニキス様に顔向けできません」


 あー···こりゃ面倒なパターンだ。仕方ないな


 「わかったよ、じゃあ借りてくよ」




 俺はルーミアを連れて外へ出た




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 俺とルーミアはアウトブラッキーに戻って来た
 場所はギルド裏の魔導車専用駐車場、金を払えば好きなだけ利用が出来る


 ワゴンタイプの魔導車にルーミアは特に関心を見せなかったが、ドアを開けると


 「···え⁉」


 そりゃ驚くよな
 ドアを開けたら物凄いロイヤルスイートルームがあるんだもん、しかも風呂付き


 ルーミアは外へ出て魔導車の周りをぐるぐる歩き、再び中に入るを繰り返した


 「おーい、もういいか?」
 「う、うん···」


 ルーミアは基本タメ語だ
 俺としてはアミールみたいな堅苦しい言葉よりルーミアみたいなフレンドリーな感じがいい


 《アラ、おかえり》
 「ただいま、クロ」


 ベッドの上にいたクロが出迎えてくれた
 ルーミアを見て俺を見た


 《······ダレ?》
 「吸血鬼関係でこれから3日間一緒に過ごす。まぁ気にすんな」
 《へぇ、じゃあワタシは引っ込んでるワネ》
 「お、おい」


 するとクロは運転席へ行ってしまった
 恐らくもういないだろうな···するとルーミアが言う


 「そろそろご飯にする?」
 「そうだな。何食べる?」
 「あたしが作る、食材借りるね」


 そう言ってルーミアはキッチンに入る
 冷蔵庫から手早く食材を出して調理······あれ?


 「なぁ、食材が少なくないか?」


 手元にあるのはどう見ても1人分、まさかと思うが


 「うん。あなたの分だけだし」
 「······お前の分は?」


 そういうとルーミアはポケットから何かを取り出す
 それは乾パンみたいな携帯食料だった。おいおい


 「あーもう。ダメ、料理は2人分、お前と俺の分な」
 「···でも」
 「いいから、ちゃんと栄養あるの食えよ」
 「······わかった」


 そんな感じでルーミアは調理を進める
 そして出来上がった料理はパンと野菜スープ、野菜炒めにサラダと野菜中心
 肉は一切なし、ヘルシーだ


 「よし。ほら座れ、いただきます」
 「いただきます」




 ルーミアの作ったご飯は野菜中心、味も薄味だったけどうまかった




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 食事と片付けを終え、ルーミアが淹れたお茶を飲んでまったりしてる
 俺は何気なく聞いてみた


 「お前とアミールってさ、いつから〔闇と影の舞踊ブラックハーケン〕にいたんだ?」


 その質問に、アミールはお茶を啜りながら答えた


 「あたしとお姉ちゃんは孤児で、王都の施設に拾われてこの隊に入ったの。お姉ちゃんは2番目、あたしは3番目に強くなれたから、オニキス様の側近になって働いてるの」


 うーん。2番目、3番目ってかなりすごいのに淡々としてる


 「あたしはこんな性格だからお姉ちゃんの後をついて行くだけ···そしたらいつの間にか強くなってた。だからお姉ちゃんはすごいし、尊敬してる」


 確かにルーミアはちょっとのんびりしてる
 大人しくてアミールが引っ張る感じだな


 しっかり者の姉、大人しい妹······俺の中には2人の姉妹が浮かぶ
 白いしっぽに白い耳、俺を兄と呼んだかわいい妹獣人


 俺がウィゼライトを処刑した日…〔神の器〕とバレた日から会ってない
 別れも言わずにこの大陸に来た


 エルルとクルル···あの時の眼、俺が変身した時の表情
 驚きと悲しみ、そして······怯え


 出来ることならもう会いたくない。拒絶されるのが怖かった


 「ジュート、どうしたの?」
 「······あ、何でもない」


 いつの間にか考え込んでたみたいだ……今は忘れよう
 すると、ルーミアが質問してきた


 「あたしも聞きたいことがある」
 「なんだ?」






 「ジュートは、オニキス様を抱いたの?」 






 ······うーん。どうしたもんか
 まぁウソついてもバレるしな


 「ああ、したよ。あの時は看守をごまかす為にホントに繋がった。間違いない」


 間違いなくホントだ
 あの時は外の看守をごまかす為にした。まぁ熱中したのは言い訳しない


 「そっか···いいなぁ。まぁあたしもこれからしてもらえるし、お姉ちゃんより先に進めるからいいや」


 するとルーミアは服を脱ぎ出す
 おいおいなんだよ、何考えてんだよ⁉ 
 なんで俺をベッドに連れてく⁉


 「じゃあ、夜のお相手を務めさせていただきます。初めてですので上手くないかもしれませが、ご容赦下さい···っと」


 めちゃくちゃ棒読みだった
 まるでカンペを読んでるようなセリフだった


 「おいおい、ちょっと待てよ⁉」
 「どうしたの?」
 「どうしたのって···お前」
 「······したくないの?」


 おいおい、なんで泣きそうなんだよ。俺が悪いみたいじゃねーか


 「あたしじゃダメ? オニキス様がいいの?」
 「·········」


 裸で迫られてイヤなワケがない
 むしろ戦闘準備は確実に進行してる。このままだとヤバい


 「······おっきくなってる」
 「う···これは」




 「お願い、お相手させて?」




 俺ってヤツは······なんでこうガマン出来ないんだよ




 結局、やってしまった 





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