ホントウの勇者

さとう

石の町ダクレム②/工房へ・デザイナー



 「おはよ、ジュートくん。朝ご飯はたべた?」
 「おはようございますシェイナさん。もちろん食べましたよ」


 俺と宿の受付お姉さん……シェイナさんは、町の中央で待ち合わせをした


 シェイナさんは20歳のお姉さんで、赤い髪の毛をポニーテールにした美人のお姉さん
 今日はシェイナさんの案内でこの町の宝石職人のもとへ連れて行って貰い、そこでプレゼントのアクセサリーを作って貰う予定だ


 「ふふふ、職人の腕は保証するわ。なんて言っても私のアニキだからね」
 「え、そうなんですか?」


 そりゃ意外、シェイナさんのお兄さんが宝石職人だったとは


 「アニキは小さい頃から宝石職人になりたがっていたしね。ジュートくんの原石見たらきっと大喜びで仕事してくれるよ!!」


 そりゃありがたい。でも問題が一つ


 「あの……俺、女の子に渡すアクセサリーの知識がなくて……どんなの渡せばいいのか…」
 「そこはお姉さんに任せなさい!!」


 胸をドンと叩くシェイナさん。年上のお姉さん……なんて頼りになるんだ!!


 「さぁ、アニキの工房へ行きましょうか」




 こうしてシェイナさんの案内で工房へ向かうのだった




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 シェイナさんのお兄さんがやってるお店は、町からやや外れにある小さな工房
 レンガ造りの小さな建物でドアは木製。看板には〔ウィルター装飾品店〕と掲げられていた
 さらにドアには「本日定休日」という小さな掛け看板が下がっていた


 シェイナさんは迷うことなくドアを開けて大声を上げる


 「アニキーッ。お客さんだよーっ!!」


 お店の中はそんなに広くなかった
 8畳ほどの広さでコの字型にショーケースが置かれ、その中にアクセサリーが展示してある
 宝石のついたブレスレットやイヤリング。ネックレスやアンクレットなど、男の俺には分からないような物もたくさん置いてあった


 そして、カウンターの奥から1人の男性が出てくる
 歳は20後半くらいの少し疲れた感じのお兄さんだった


 「シェイナ。表の看板が見えなかったのか?…今日は定休日だ」
 「まぁまぁアニキ、今日は凄いモノを持ってきたんだ」


 シェイナさんは俺の肩を掴んで前に出す


 「この子はジュートくん。そしてコッチが私のアニキのウィルターだよ」


 お互いに紹介してくれた……俺もウィルターさんもなんとなく苦笑い


 「ふふん、アニキもコレを見たら驚くよ。ささジュートくん、例の物を」
 「は、はぁ……」


 なんか疲れるテンションだ……俺は鞄から5つの原石を取り出してカウンターに置く
 するとウィルターさんの目の色が変わった


 「コレは!?……ジュートくん、だったね。コレをどこで?」


 俺はシェイナさんにしたのと同じ説明をする


 「まさか〔レセルバ鉱山〕とは、完全に盲点だったよ……いま発掘されている鉱山は枯渇が始まり、発掘業の人間は新しい採掘鉱山探しに躍起になってるがすでに掘り尽くした〔レセルバ鉱山〕を掘ろうなんて考えるヤツはいない。これはいいことを聞かせて貰った」


 ウィルターさんはアゴに手をあててにやりとしてる
 なんかこの表情はシェイナさんにスッゴく似てる……兄妹なんだな


 「それでアニキ、情報料金としてジュートくんにアクセサリーを作ってあげてほしいんだ。女の子にプレゼントするんだって」


 「もちろん構わない。最高のモノを作ってあげよう」




 ありがたいね、さっそく作って貰おう




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 シェイナさんと話し合った結果、作って貰うのはシンプルなネックレス
 好みの問題もあるし初めてのプレゼントなので派手なモノは避けておこう、ということにした


 シルバーのチェーンに研磨した宝石を台座に取り付ける簡単なモノだが、宝石の研磨に4日ほど掛かるらしい。俺はその間町で買い物を済ませることにした


 【アウトブラッキー】のおかげで必要なモノは殆ど食料だけになった
 あとはお酒とお菓子をいつものように大量に買ってクロのもとに送る……これでよし


 宿屋に戻るとシェイナさんが俺に言った


 「ねぇジュートくん。よかったら……〔レセルバ鉱山〕まで案内してくれない? 口頭の場所だとわかりにくくて、もちろん報酬は払うわ」


 まぁ4日もあるし、ここから〔レセルバ鉱山〕までは1日で行けるしな


 「いいですよ。所でお仕事は……?」
 「ああ。休暇を貰ったの、大丈夫よ」


 それならいいけど


 「じゃあ明日出発ね。魔導車は私が手配しておくから、明日迎えに来るわ」
 「はい。待ってます」




 そんなわけで〔レセルバ鉱山〕へ逆戻り。シェイナさんの案内役だ




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 〔レセルバ鉱山〕は一度来たので案内は簡単だった
 モンスターもいないしな……シェイナさんは印を付けながら歩き迷わないように徹底してる


 「ここはもう100年以上採掘が行われていて、5年ほど前に全ての鉱石は取り尽くしたって言われてね…それ以来誰も近づこうとしない廃坑になったの。私もここに来るのは10年ぶり……お父さんに連れられて来たとき以来ね」


 印を付けながらシェイナさんは言う
 どうやら少しの思い入れはあるみたいだ……そして


 「この下ですね」
 「こ、こんな所に……?」


 モルが開けた穴と俺が垂らした鎖がそのままになっていた
 俺は魔術で周囲を照らし、シェイナさんに向き直る


 「じゃあ行きますか。先に行きます?」
 「え、えっと…ジュートくん、お先にどうぞ」


 やっぱ少し恐いみたいだ
 まぁ俺も恐かったし…じゃあ行くか
 俺は懸垂下降で下に降りる……すると、少し後でシェイナさんが降りてきた


 「ここに原石が……」


 シェイナさんは持ってきた大型の魔導ランプを付けて真ん中に置く。すると周囲が明るく照らされた


 「じゃあさっそく……そりゃっ!!」


 俺は持ってきたツルハシを壁に向かって叩きつける。すると……簡単に壁が砕けた


 「シェイナさん、ここの壁かなり柔らかいですよ……ん?」


 そして、キラキラ光る石……原石を見つけた
 それを見たシェイナさんは原石に飛びつき、ランプの近くで眺める
 そしてルーペを取り出してさらに観察した


 「すごい……これほどの石はなかなか出ないわ。まさかこんな最深部にこれだけの石が…しかも地盤も柔いから私でも掘り出せそう」


 すごく嬉しそうに原石を眺めてる
 俺がその様子を見てることに気がついて頬を染めた


 「あはは……その、実は私アクセサリーデザイナーになるのが夢で……それでいい石を見るといろいろひらめきがあるの。最近は原石も高くてね、純度の低い安物ばかり見てたから。それでいい石を買おうと宿屋で働いていたんだけど、ジュートくんの持ってた原石を見てついね」


 シェイナさんは恥ずかしそうに語る


 「私とアニキは小さい頃から宝石好きで…アニキは加工、私はデザインで仕事してたんだけどね。いい石が手に入らなくて生活が苦しくてね。両親はもういないし……でも、ここの鉱石があればまたいい仕事ができそう……ありがとう」


 シェイナさんはにっこり笑う。よーし、なんかやる気出てきた


 「じゃあたくさん掘りましょう。俺が掘りますからシェイナさんは引き上げをお願いします」
 「りょーかい。頑張ろっか!!」




 よし、がんばって掘りまくってやる!!




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 「よーし。こんなものね」
 「あ~~~……疲れた」


 俺は穴の下でへばっていた
 かなり掘ったけど……これがもう面白いくらいでてくる
 しかも壁が柔らかいから止まることなく掘り続けられた


 俺は鎖を登りシェイナさんと合流する
 するとそこには麻袋に詰まった原石が約20袋……かなりの数だ


 「コレを見つけておいてよかったわ」


 そう言って指さしたのがリヤカー、この坑道内に放置されていたものだ
 さっそくリヤカーに乗せて引き返す……けっこう重たい


 「ふふふ。なんか楽しい、これだけあればかなりのアクセサリーが作れるわ。よーし、いいデザインを考えなくっちゃ!!」


 シェイナさんはうきうきしながらリヤカーを押す。ちなみに俺は引っ張る係


 「じゃあ、俺のアクセサリーのデザインもお願いしますね」
 「もっちろん!! 期待しててね!!」




 俺とシェイナさんは来た道を引き返し、魔導車に戻り麻袋を積み直す




 そして再び町に向けて走り出すのだった







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