ホントウの勇者

さとう

暗闇の町ブラッギィ①/闇の中で・恐怖の夜



 「………ここでお別れなのか?」


 〔カルバーナの森〕から5日
 街道を突き進み町の近くまで走ると、そこまで一緒だった夜刀が急に帰ると言い出し、俺はアウトブラッキーを停車させた


 「うん。私は一度〔クローノス城〕に帰るね。もっと強くなるには【王ノ四牙フォーゲイザー】が必要だから……ジュート」


 夜刀は身体を預けてくる……この5日間、夜刀とはずっと一緒だった
 食事も、風呂も、寝るときも。寝るときは毎晩必ず夜刀を抱きパスを繋げようと努力したが……夜刀は変わることがなかった


 「夜刀……」
 「ジュート……」


 顔を合わせ、自然とキスをする
 俺は夜刀を帰したくなかった
 ずっと、一緒にいてほしかった


 「夜刀、好きだ……行かないでくれ」


 ポロリと零れた言葉……コレは間違いなく俺の本心
 夜刀は悲しげに微笑んだ


 「私も好き、愛してる……でも、「心」がそれを許さない。私と「私」が混ざり合って……ジュートを殺したいほど愛してる。だから戦うの……」


 夜刀の言葉は自分でもよく分かってないみたいだ
 ここまで言ってもダメなら……俺も覚悟を決めよう


 「わかった。じゃあ…【時の大陸】で決着を付けよう。それで俺が勝ったら……」
 「……………」


 俺の決意を夜刀に伝える
 これで俺は絶対に負けるわけにはいかない




 「俺が勝ったら。この世界で結婚してくれ」




 夜刀は必ず、俺のモノにする
 夜刀の答えは、俺の思った通りだった




 「はい。私が勝ったら……この世界で結婚してもらうわ」




 純粋な、俺の知ってる夜刀の笑顔で答えてくれた




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 そう言って夜刀は消えた
 【門】を開いて〔時の大陸〕へ帰ったのだろう。それと同時にクロが現れた


 《恐ろしい女の子ネ……》
 「そうか? かわいいだろ」


 クロは俺の答えに納得していないが、特にツっこんではこなかった
 そのまま次の町まで案内して貰おう


 「次の町はこのまま真っ直ぐだよな?」
 《エエ。確か……〔暗闇の町ブラッギィ〕だったかしらネ?》
 「なんだよ、珍しく曖昧だな」
 《【黒の大陸】はあまり来たコトがないのヨ……》


 そんな会話をしながら数時間……町が見えてきた


 「おお!!」
 《ヘェ、綺麗ネ》


 さまざまな色のランプ魔道具が町全体を照らしていた


 町に近づくとさらに明るさが増す…まるで夜の飲み屋街みたいだ
 周囲には冒険者グループが歩き、それ以外はおそらく住人
 この町になれているのか町を歩く人達に迷いがない


 俺はさっそく町に入る
 すると、周囲の人達がなぜか俺に注目した気がする。気のせいか?


 今の時間はだいたい午後の1時でお昼を少し回ったところ
 それなのに夜の町を歩いているようで落ち着かない…とりあえず宿をとろう


 町の中央にある宿に入る
 不思議だ。この町に入ってからいくつか視線を感じる
 敵意はない、まるで…値踏みされるような。少し不快な視線だ


 「そういえばここ、暗闇の町なのに全然明るいな」


 宿の受付でついそんなことを口走ると、受付のおじさんが答えてくれた


 「そうだね。旅の人には夜にならないと分からないと思うけど、この町は夜の12時になると全てのランプ魔道具は機能を停止するんだ。その時の町はまさに暗闇……慣れないと恐いかもね」


 ふーん。真っ暗なのか···俺は別に暗いのは平気だけど


 とりあえず部屋に入り再び街へ
 食料や日用品などの買い物を済まし、ついでにその辺の露店で腹を満たす


 「········やっぱり」
 《········妙ネ》


 やはり視線を感じる、しかも······複数


 この町にも冒険者や傭兵がいるが、雰囲気でコイツらじゃないとわかる
 むしろコイツらは気が付かないフリをしてるような得体のしれない何かを感じる


 「クロ、この町なんかヤバくないか?」 
 《そうネ······明日には出まショ》




 俺とクロは、警戒しながら宿へ戻った




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 食事は外で済ませたのでそのまま部屋へ入り、今後のことをクロと話し合う


 《ナハトオルクスは〔亡者の断崖〕にいるワ。あそこはSSレートモンスターの〔バイオレットガーゴイル〕がいるから気を付けテ》


 SSレートか。そういえば戦うのは初めてかな


 《SSレートモンスターは、数ある【神獣】の中で神の最高傑作と言われるモンスターネ。基本的に住処から動かずに眠り続け、神の命令があるまで動かないと言われてるワ。住処に侵入した者には容赦しないと言われてるワネ》


 クロの説明はわかりやすくかった…いつもありがとう


 《ナハトオルクスの所へは幾つか町を越えないと行けないワ。明日には出発しまショ》


 「分かった。さて···今日は休もう」




 俺とクロはベッドに入り休むことにした




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 ベッドに入り窓を眺めていると、町の明かりが一斉に消えた
 そういえば12時になると魔導ランプが消えるって言ってたな


 「······ふぁ」


 眠い······最近は毎晩遅くまで夜刀を抱いてたからな、少し寝不足ぎみだ


 「······ん?」


 微かだが人の気配がする
 気配を消して忍び足で歩いてる······宿泊客がトイレにでも行くのかな?


 《······ジュート》
 「ああ」


 気配は俺の部屋の前で止まる
 俺は瞬間的に目が覚めベッドの中にナイフ2本を隠し、クロが部屋の鏡を俺の位置からドアを見えるように移動させた


 俺は何食わぬ顔で狸寝入りし、侵入者を確認する


 「·········」
 《·········‼》


 クロは何かに気がついたようだ。確認する暇がないが···侵入者は男かな? 
 身長は高く、着てるものはコートみたいな上着、暗いから顔は見えないが···対応しだいでは容赦しない


 ソイツはゆっくりと俺に近づく
 物取りなら部屋の荷物などのを探すが、ソイツは一直線に俺のベッドにやって来た


 ソイツは俺のベッドの真横に来た
 俺は怪しまれないように寝息を立てるフリをして、ソイツのアクションを待った




 「······いただきます・・・・・・




 次の瞬間、俺の【灰】魔術の鎖が侵入者を拘束した




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 「さて、アンタ誰? なんか用?」


 俺は魔術で部屋を明るくし、うつ伏せに倒れてる侵入者に問いかけた
 ソイツは全身黒い服でどことなく親近感を覚える
 顔を見るために腹を蹴ろうとすると、ソイツの身体が影に沈んだ


 「これは···【床闇ノ沼ダスク・マーシュ】⁉」


 鎖ごと身体が消えて何も残らない。するとクロが叫んだ




 《気を付けなサイ、ソイツは〔吸血鬼〕ヨ‼》




 そして、俺の頭上から何かが襲ってきた




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 ソレ・・は赤い瞳をしていた
 病的な白い肌。吸血するために進化した牙に、背中のコートを突き破り羽が生えている


 吸血鬼は口を大きく開けて襲ってきた
 恐らく俺に噛み付いて血を吸うためだろう
 武器は持っていない、さーてどうするかな


 「とりあえず寝てろ‼」


 俺はカウンターで拳を合わせ顔面を殴りつける
 すると鼻血を吹き出しながら吹っ飛んだ


 ゴロリと転がりソファやテーブルをなぎ倒す
 そしてソイツはくるりと回転し立ち上がり、鼻血を拭う···すると、折れ曲がった鼻が瞬間的に治った


 《夜の吸血鬼の回復力は尋常じゃないワ、気を付けなサイ‼》


 ふーん。ケガしてもすぐに治るのか······まぁやり方なんていくらでもある
 どうやらコイツは【黒】属性。だったら、相反属性の【白】で仕留めればいいか




 「【白】の中級魔術、【光の聖槍ホーリーランス】‼」




 吸血鬼を取り囲むように白い紋章が浮かび上がり、そこから光の槍が飛び出して吸血鬼を串刺しにした


 「ギャアアァァァァッ⁉⁉」


 全身を貫かれ身体から鮮血が飛び散り、ブクブクと泡となって消えていった


 「……死んだのかな?」
 《そうネ、相反属性魔術で倒せたワ。【黒の大陸】には【白】の魔術師が全くいないから、きっと倒すのに相当苦労するワネ》


 確かにな、でも倒して良かったのかな
 こんなに騒いで魔術も使ったのに、誰一人ここに来る気配がない


 「なんか目が冴えちまったな···本でも読むか」


 俺はソファとテーブルを直して座り、魔術の明かりで読書した




 不気味な町だ······さっさと出発しよう





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