ホントウの勇者

さとう

閑話 【王ノ四牙】③/諦め・更なる討伐隊



 「なあ……」
 「なんだよ……?」
 「………」


 〔クローノス城〕の廊下に3人の男子が歩いていた。その表情は……暗い


 「なんで俺たちが【黒の大陸】に行かなくちゃいけないんだよ……」
 「しらねーよ。それをこれから聞きに行くんだろうが」
 「………」


 3人が向かっているのはローレライの待つ部屋
 この3人はこれから【銃神】の討伐任務に向かうため、ローレライから話を聞くために部屋に向かってる最中であった


 「なーんで俺らなんだ?……直接戦闘タイプの連中ならもっと強い奴らがいるだろ、錐堂みたいなバカはともかくよ……鳴見に神器を直してもらって全員が復活しただろうが」


 そう言って頭を掻くのは読坂よみさか供恩くおん
 少し垂れ下がった目のやる気のなさそうな少年だ


 「さぁな。でも……はっきり言ってオレらじゃ無月にゃ勝てねーぜ。前の討伐隊のメンバーですら相手にならなかったんだ。支援タイプの俺ら3人じゃ天地がひっくり返っても倒せねーよ」


 こちらは少しツリ目の三途さんず玲弥れいや
 彼は自分の実力が火等燃絵や鉄間連夏に圧倒的に劣っていることを自覚していた


 「ふぁ……たしかにな。しかも真城のヤツがもう再起不能らしいぜ。身体は平気だけど心がやられちまったみたいだ……自分の部屋で怯えて泣いてるって聞いたぜ」


 眠そうにしながらあくびをする特徴のない少年…… 篠原しのはら幻想げんそうは、のんびりしながら言う。その足取りはゆっくりだ




 読坂よみさか供恩くおんは、悲しそうに呟いた








 「俺たちじゃ、清水と山野のカタキはとれねえよ……」








 その言葉に、3人は沈黙した




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 ローレライの待つ部屋に到着し、読坂はドアをノックする


 「どうぞ……」


 中から聞こえるのは妖艶な美女の声
 声だけでも男を惑わす色香が感じられ、3人の少年は緊張しながらドアを開けた


 「失礼します」
 「こんにちはー」
 「………」


 3人の反応はぞれぞれ違う
 中に入るとすでに誰かがいることに驚いた


 「楠木?…なんでお前がここに?」


 三途さんずの質問は最もだった
 【英雄十三傑ヴァリアントサーティ】である楠木くすのき森玖りんくがここにいることは3人にとっては想定外だった




 「それは簡単さ。ボクが君たち3人を【銃神討伐隊】に推薦したからさ」




 芝居ががった表情と手ぶりで3人を迎える


 サラサラの黒髪に微笑みを張り付ける彼は、かなりの美少年だった




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 【白の大陸】に向かった【銃神討伐隊】が壊滅
 5人の内2人が死亡、うち一人が再起不能と言うニュースは、クラスメイト達に衝撃を与えた


 ある者は泣き崩れ、ある者は怒り、ある者は肩を落とした……この3人は肩を落とした人間だった
 しばらく前から感じていたことが真実味を帯び、現実となって彼らを襲っていたのだ




 無月銃斗は強すぎる




 彼ら3人はわかっていた
 無月は確かに憎い…できることなら抹殺し、エルレインのために排除したい
 だが……自分たちの力ではそれができない。3人はその絶望がしだいに無力感へと変わっていき、最後には諦めに変わっていた


 これでクラスメイトの4人を失い、しかも無月は確実に強くなりこの【時の大陸】に復讐に来るだろう
 その時自分たちはどこまで戦えるのか? 36人の仲間と【魔神】そして【四王ノ牙フォーゲイザー】だけで戦えるのだろうか?……そんな考えばかり浮かぶ


 そんな考えや不安が表情となって表れたのか、ローレライが優しく言う


 「アナタ達にはこれから【黒の大陸】に向かって貰います。そして【銃神】の始末を」


 すでに分かっていたことだが疑問が浮かび、篠原しのはらは聞かずにはいられなかった


 「あの…なんでオレ達なんですか。オレ達は全員がサポートのチカラしか持ってないですし、直接戦闘が得意なヤツは沢山いるはずです。それに……オレ達はまだ〔第二神化形態〕にも目覚めていませんし……」


 読坂も三途も声こそ出さなかったが同意見だった
 その問いに答えたのは、微笑を絶やさない中性的な少年、楠木くすのき森玖りんくだった


 「さっきも言ったけど、キミ達のチカラが必要だからさ。ボクの【神器ジンギ】とキミ達の能力は相性がいい……無月クンを倒すのにはもってこいなのさ」
 「ふーん。でもオレも読坂も三途も、魔術はニガテだぜ? それに……直接攻撃はお前に任せることになるけど……」


 その問いに楠木は微笑む……暗く、怪しい微笑みで






 「アイツを始末するのに力はいらない。殺すのは……「心」さ」






 読坂たちは、その笑顔にゾッとした




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 「ふう………」




 ローレライは1人、誰もいない部屋でため息をついた




 「【黒】に【紫】に【灰】に【時】……順調ね」




 その言葉は誰に向けた言葉か、わかる者は誰もいない




 「あのコを殺して………【女神】様を復活させる」




 歌うように呟き、祈るように歌う




 「それが出来るのは……【銃神ヴォルフガング】だけ」




 まどろむように目を閉じて、囁くように語る




 「【女神】様が愛した……【銃神】だけ……フフフ」






 ローレライは羨むように微笑んだ





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