ホントウの勇者

さとう

黒き森カルバーナ②/夜の刀・黒の瞬刃



 そんなワケで俺の魔導車に夜刀を上がらせお茶を入れる


 「ふ~ん……おっきくてキレイ。しかもお風呂まで付いてる」
 「凄いだろ?……ほら」


 お茶とクッキーを出して一服
 一杯目を飲み終えてから質問した


 「夜刀……いつ戦うんだ。ここでか?」


 自然と構え相手の出方を伺う
 いつの間にか俺は戦闘モードになっていた


 「ここで? ううん。私とジュートが戦うのは【時の大陸】でだよ?」
 「………どういうことだ?」


 俺には夜刀の考えが理解出来なかった
 どういうことだ? 時の大陸? 俺の思考がまとまらないうちに夜刀は語る


 「私もジュートもまだまだ強くなれるわ。ここで戦うのはもったいない……ジュートはいずれ、【時の大陸】に戻ってくるんでしょ? だったら戦うのはその時。ジュートを殺すのは私……これは誰にも譲れない」


 夜刀は真剣そのものだ。でも……ホントに俺を殺すつもりなのか。どこまで夜刀は本気なんだ? 
 俺が学校で喋っていた夜刀は、恥ずかしがり屋で少し引っ込み思案。ここまでハキハキ物事を言えるタイプじゃない。ましてや俺を殺すだなんて


 「わかった……お前は、それを伝えに来たのか?」
 「うん。そうしたら【王ノ四牙フォーゲイザー】に捕まって城の地下に幽閉されちゃったの。でも、スキを見て『固有属性エンチャントスキル』で逃げてきたわ」
 「おいおい、それって大丈夫なのか?」
 「さぁ?…帰ったら怒られるかもね」


 軽いな……どうやらたいしたことないらしい


 「なぁ夜刀。なんでお前の服は黒いんだ?」
 「ああコレ? クラスで最強だからだって、私は興味ないけど……」


 なるほどな……あともう一つ、これだけ聞いておこう


 「夜刀……お前は俺が憎いのか?」


 コイツの態度を見てると…どうも違う。普通の夜刀がベースでなにかが混じってるような
 ああわからん。とにかく違和感を感じる


 「別に? 他のみんなはアナタを憎んでるけど私は感じないわ。でもアナタを殺す……この感情だけは誰にも負けない。でも、ここじゃなくて最高の舞台で、最高の状態で戦いたいの」


 やっぱりおかしい、このこだわりはなんだ?
 神の意志なのか? それとも……






 「あ、そうだ。ジュート…この【黒の大陸】に〔神の器〕が5人送り込まれるって。死んじゃダメだよ?」






 それとも……なんだって!?




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 「マジで?」
 「うん。こっそり聞いてた」


 5人……またか。今度は誰だよ?
 ……まぁ、まとめて倒せばいいか
 問題は〔第二神化形態〕だな。錐堂でさえ変身できたって事は、ほかのみんなも習得してる可能性があるって事だ。
 それに、鳴見さんの能力……神器の修復があれば何度でも向かってこれる。コイツはヤバいな


 考えても仕方ない。俺は前に進むだけだ


 俺は飲み終わったティーカップをシンクに運び、洗い物をしながら夜刀に聞く




 「夜刀、お前今日はどうするん─────」




 そこから先は言うことが出来なかった……なぜなら






 「ん……んっ……」
 「……っ!?」








 夜刀の唇で俺の口がふさがれたからだ


 柔らかい唇が俺を支配する
 夜刀は俺に体重を預けて身体を押しつけ、俺が逃げられないように両手で首をガッチリとロックしてる
 舌を滑り込ませて絡みつけ、嬲るようにねっとりと……まるで俺に挑むかのような表情で俺を………


 俺は夜刀の挑戦を受ける……長く、永いキスをする


 「……っぷは…」
 「……はぁ…」


 お互い顔を見合わせて確認
 もう言葉はいらなかった


 俺は夜刀を抱き上げベッドに連れて行く
 まだ使っていない新品のベッド、さっそく試させて貰おう


 念のため遠隔操作で【アウトブラッキー】のステルスをオンにする
 これで邪魔は入らない




 こう見えてもコッチ方面は鍛えられてる……悪いけど遠慮しないぜ




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 行為は1日…24時間ぶっ続けで行った
 この行為は欲望を満たすだけじゃなく、希望もあった
 それは、夜刀とパスを繋ぐことで正気に戻せるかも知れない、と俺が考えたのだ
 結果は……どうだろうか?


 「夜刀、大丈夫か?」
 「……うん。ジュート、スゴかった」


 夜刀はにっこり笑い俺に身体を預けてくる
 その温かさ、柔らかさを堪能し、俺は夜刀を抱きしめる


 「あったかい……しあわせ……」
 「ああ。俺も気持ちいい……」


 ウソじゃない。夜刀は身長も高くスタイル抜群だ
 パスの事を忘れて夜刀に夢中になったのは言い訳しない
 俺と夜刀は身体の相性はバッチリだった


 「ねぇジュート。行きたい所があるの」
 「ん……どこだ?」
 「カルバーナの森の最深部」
 「えぇ? なんでそんな所に?」
 「見て貰いたいものがあるから……ダメ?」


 そんな顔で言われて断れるワケがない


 「わかった、行くよ。案内は頼むぜ」
 「うん。任せて」


 パスの効果はあったのかな……わからん




 とりあえず、夜刀が見せたい物の所へ行こう




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 来た道を戻るのはなかなかめんどくさい
 でも夜刀の頼みじゃ仕方ないよなぁ……


 とにかくひたすら道を走る
 夜刀の案内で来た道を戻りつつ、違う道に入っていき森の最深部を目指す
 そして、途中で休憩を挟みながら約4時間……ようやく着いた


 「ここが最深部か……」


 森の最深部は巨大な絶壁がそびえ立っていた


 普通に考えたら行き止まりで戻るのだろうけど……ここに何があるんだ? 
 秘密の通路でもあんのかな。俺は夜刀に聞こうと顔を向け……そして気がつく


 「ジュート、気を付けて」
 「……ここは何なんだ?」


 俺が感じたのは殺気……しかも一つじゃない、無数にある
 よく見ると絶壁には無数の穴が空いており、その中から赤い瞳がギラリと光る
 すると、夜刀が説明してくれた


 「ここはSレートモンスターの〔ブラックオークコング〕の住処。気性が荒く、住処に近づく者には一切容赦しない。このモンスターの特徴は、集団で狩りをすることなの」


 メチャクチャ落ち着いていた。なんだってこんなとこに


 「私は……ううん、私達〔神の器〕は、全員がジュートのチカラを知ってる。でもジュートは私達のチカラを知らない……私と戦うのにそれはフェアじゃない。だから私のチカラを見せてあげる」


 その言葉に俺は、パスを繋げなかった事を理解した




 「ここは私に任せて、下がっててジュート」




 こうして……式場しきば夜刀やとの戦いが始まった




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 〔ブラックオークコング〕は、身体はゴリラで顔は厳ついブタという感じだ
 下半身にのみ黒い体毛が生えていて上半身は鍛え抜かれている筋肉
 大きさは約4メートル、俺の2倍以上の身長でしかも数は20匹以上いるぞ




 「手を出さないでよく見てて……コレが私の【神器ジンギ】」




 夜刀の周りに黒いもやが集まって形となっていく。その形は……「カタナ
 長さは約1・5メートルと長く細い漆黒の刀……ものすごいチカラを感じる




 「コレが【刀神シェイヴァレイザー】の神器・『夜刀神闇色夜叉ヤトノカミアンジキヤシャ』よ」




 夜刀は刀を構える……独特な構え方
 右手で刀を持ちそのまま顔の左側に持っていき、左手の掌で刀の柄を押さえる
 不思議とスキのない構え……なんてヤツだ


 俺は夜刀を見てゾッとした
 その表情は恐ろしく研ぎ澄まされており、俺自身も流れる汗を止められない
 この夜刀は俺とベッドで繋がっていた夜刀とは全く別人だ




 「……【飯綱星いずなぼし】」




 夜刀と〔ブラックオークコング〕の距離は約10メートル
 前に出てきているモンスターは5匹……そのうちの一体が、縦に裂けた


 俺には何が起きたか分からなかった
 気がつくと縦に裂けて身体が3つのパーツに別れて倒れた
 そのくらいしか分からなかった


 〔ブラックオークコング〕は仲間意識はないらしい
 突如倒れた仲間はどうでもいいのか残りの4匹がいっぺんに突っ込んでくる
 どうやら知能もたいしたことなさそうだ




 「……【鴉星からすぼし】」




 そして、4匹は一瞬でバラバラになった
 俺は見た……小さく輝く何かが、モンスターの身体を駆け巡ったのを
 そして、俺は夜刀のチカラの正体が分かった




 「そうか、いつでもどこでも好きな場所に「刀」を生み出す事ができるのか」
 「さすがね。大正解」




 夜刀は嬉しそうに微笑む
 自分のチカラがバレたのに全く気にしていない




 「正確には「ヤイバ」を作る事ができるの。私は「刀」がイメージしやすいからそうしてるだけ。今のは切っ先を具現化して切りつけたの」




 やっぱりそうか。錐堂を切りつけたのも切っ先…しかも超高速での斬撃だ
 俺には全く見えなかった……この感じ、間違いなくザンクより強い
 すると残りのモンスターが15匹、そのうちの10匹が飛びかかってきた




 「さらにこんな事もできるのよ?………【御影星みかげぼし】」


 夜刀は刀をシャン、と縦に振り下ろす
 すると、モンスター10匹が同時に動きを止め苦しみ出す
 そして……無数の黒い刀身が身体を突き破って現れた
 当然モンスターは即死……何をしたんだ?




 「コレが私の『固有属性エンチャントスキル』……『影法士かげほうし』よ。闇の中に潜んで闇の中なら好きな場所に刀を作れる。この【黒の大陸】で私に勝てる者はいないわ」




 恐ろしいチカラだ……影は誰にでも存在する
 身体の内側なんて防御できるワケがない……しかし、これは




 「まぁ、対象を視認しないといけない制約はあるけどね。たいした問題じゃないけど」




 夜刀はイタズラっぽく笑う。恐ろしい……まだ夜刀は一歩も動いていない
 その能力だけでSレートモンスターをほぼ全滅させてる
 最後の5匹はさすがに襲ってこない……ここまでやられてやっと気がついたみたいだ




 「そして……これが最後の力よ。よく見てて、ジュート」




 それは最強のチカラ……〔第二神化形態〕だった




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 「『第二神化セカンドエボル刀神覚醒シェイヴァレイザー・アウェイクン』」




 その言葉と同時に夜刀から膨大な魔力があふれ出し周囲を覆う


 その魔力は天を突き破り、黒い雲を一時的に吹き散らし空を移す
 時間は約午前11時。光が差し真下にいる夜刀を照らした


 そこにいたのは〔第二神化形態〕の夜刀。その姿は大きく変わっていた


 姿は着崩した着物……足は膝上まで見えており草履のような下足を履いてる
 着物の色は黒生地に金の刺繍、袖が長く胸元が開いていた
 髪型も乱雑にまとめられ、飾りとしてかんざしが付けられている
 はっきり言って脱ぎかけの着物みたいだ


 そして手には刀……右手には1・5メートルの刀、左手には1メートルの刀の2刀流
 差し込んだ光が夜刀を照らし、その恐ろしくも美しい姿にモンスターも、俺も見とれていた






 「『夜刀神闇色夜叉ヤトノカミアンジキヤシャ天津甕星アマツミカボシ』よ。一撃で決めるわ」






 無慈悲な言葉が辺りに響いた




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 夜刀はゆっくりと刀を構える
 モンスターは死期を悟ったのか、ただ動けないのか…とにかく動かずにその挙動を見守る
 夜刀は右手を頭の左側に、左手を右脇にゆっくりと持っていく。その挙動はどこまでも美しい






 「終わりよ……【絶技ぜつぎ倶利伽羅不動星くりからふどうぼし】!!」






 夜刀の動きは全く分からなかった
 恐るべき魔力の奔流。しかし、その剣は無音。気がつくと終わっていた
 岩場、木々などが全て消滅……ただの更地になっていた


 「ふう……おしまい」
 「…………………」
 「見てくれた、ジュート?」
 「…………ああ」


 コイツは危険だ。今の俺じゃ〔第二神化形態〕でもヤバい
 マズいな……もっと強くならないと


 「じゃあ、帰ろっか。私の〔第二神化形態〕は5分しか持たないの。その後は15時間、神器が使えなくなっちゃうから……ジュートが守ってね」
 「ああ。任せとけ」


 こうして俺と夜刀は魔導車で来た道を引き返した




 カルバーナの森の6割が消滅したと知ったのは、しばらく後の事だった





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