ホントウの勇者

さとう

黒き森カルバーナ①/刈る・斬る



 俺とクロは現在、闇の中を走っている


 「おいクロ···ホントに大丈夫なのかよ」
 《エエ。気をつけなサイ》


 ここは【黒の大陸トレマブラック】の最初の森、〔黒き森カルバーナ〕である


 【黒の大陸】は常に暗い……その原因は空を覆う黒い雲だ
 この雲は大昔の神の力で作られた雲で、光をほぼ遮断してしまうはた迷惑な雲である


 この大陸は光がほぼない。その為に魔導ランプの技術が8大陸の中で最も高い
 街の中は明るく、遠くや高い所で見る景色はとても美しいそうだ


 この〔黒き森カルバーナ〕は、まず周りの木が黒い。幹も葉っぱもとにかく黒く、光がないため不気味そのものだ。しかもモンスターは生息していない
 この【黒の大陸】事態モンスターが少ないので楽でいい。その代わり鉱山が多く、この大陸は様々な石を輸出してるそうだ


 【アウトブラッキー】のライトはすごく明るく、眩しいほどの光が道を照らす。コイツはいいな


 「もうすぐ出口か?」
 《エエ···》


 クロの案内で森の外へ。ここから先は街道が整備されてる
 あとは街まで一直線だな




 この時はそう思っていた




 まさか、ここでアイツが来るなんて思っていなかった




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 旅は順調である。これも全て【アウトブラッキー】のおかげだ


 辺りが暗く走りにくく、突然のカーブで木にぶつかりそうになったとき強制的に魔力カット・急ブレーキがかかって助かった······どうやら危険感知機能も付いてるみたいだ


 あとは浅い沼地に差し掛かったときに、秘密のボタンを押すと、突然車高が上がりタイヤが肥大化、さらにスパイクまで装備されさしずめ四輪バギーみたいになって驚いた。ホントにすげーよこの車


 隠された機能はまだある···楽しみだ




 そして森の出口にそいつはいた




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 森の出口から街道へ···街道はたくさんの外灯が照らされそこそこ明るい。だから森の出口に人が立っているのにすぐに気づいた




 「あれは······まさか⁉」
 《気をつけなサイッ‼》




 「久しぶりだなぁ···無月ぃぃっ‼」




 「な、なんでお前が···お前は俺が······!?」
 「へっ、オレだけじゃないぜ。お前に【神器ジンギ】を破壊されたヤツは全員復活した。鳴見のおかげでなぁ」
 「鳴見さん?···じゃあ⁉」
 「安心しな、ここに来てるのはオレだけだ。どうしてもこの手でお前をヤリたくてな······!!」
 「マジかよ······」




 なんてこった······俺の今までの苦労が水の泡かよ。これじゃあ神器を破壊しても意味がない。鳴見さんの力は間違いなく回復系······くそ




 「さらにパワーアップしたオレのチカラを思い知れやぁっ‼」




 そしてヤツは襲いかかって来た
 かつて俺が倒した〔神の器〕




 【鎌神ファルクスディヒル】の〔神の器〕・錐藤螳螂きりどうかまきり




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 「いくぜぇぇっ‼ 『第二神化セカンドエボル鎌神覚醒ファルクスディヒル・アウェイクン』‼」


 「ウソぉっ⁉」




 思わず変な声を出してしまった
 第二神化形態⁉······まさか錐堂が⁉
 錐堂の神器は出来損ないのカマキリみたいな姿だったはずだ
 それが変わる……余計なパーツが全て外れ、身体を鎧が覆っていく。そして両手に握られるのは数メートルはある大鎌だった




 「コイツがオレの最強形態。『ドレパノン・プレディカサイズ』だぁっ‼ ギャッハぁーっ‼」




 バカっぽい雄叫びを上げて錐堂は大鎌を構える···確かに強い


 「いくぜオラァァァーっ‼」


 やるしかないか···何回でも復活するならそのつど壊してやるだけだ。いくぜ‼










 「········【刀々寧星ととねぼし】」










  何かが起きた······そして


 
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 「え············?」
 「は············?」


 俺も錐堂も動けなかった。それほど恐ろしい何かが通り過ぎて行った······そして


 「······⁉」


 錐堂の神器が砕けた。身体を覆っていた鎧が粉々に砕け、さらに持っていた大鎌もバラバラになる


 「·········マジで?」


 驚いたのはここから······さらに錐堂が着ていた服や下着も切り裂かれ、さらに髪の毛や下の毛、腕の毛や眉毛や脛毛なんかもバラバラ落ちる。錐堂は素っ裸の毛無しになった


 「ぶっふぉおおーっ⁉」


 思わず大爆笑···錐堂はまだ状態を理解していない


 「······な、なんだテメェ‼」
 「お、おま、おまえ···自分の姿見てみろよ、ぶふぅーっ⁉」


 俺は異空間から鏡を出して錐堂に見せる。ついでに手首のライトを点けて身体を照らしてやった


 「·········なァァァァーっ⁉」
 「あーっはっはっはっはぁーっ⁉」


 ヤバイ、ヤバすぎる。この世界に来てこんなに爆笑したのは初めてだ。腹が痛くて動けねぇーっ‼


 「テメェェェェェーっ‼」
 「俺じゃねぇギャッハハハハーっ‼」


 ライトが頭部を照らすとキラリと光る······ダメだ、殺られる
 俺を笑わせてスキを作る作戦は大成功だ、やるな錐堂‼


 「き、錐堂···ぶふっ、俺を、笑い死にさせる作戦か。くふっ、やるじゃねえか」


 「テメェは絶対に殺ォォォォす‼」










 「うるさい······せっかく会えたのに」










 凛とした声が響き渡った




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 そこにいたのは美しい少女だった
 少し伸びたのか···腰下まである濡羽色の美しい髪
 白ではなく黒の騎士服にボロボロのマント
 腰にはベルトに剣···いや、刀を差してる  
 俺と錐堂の視線の先、初めからそこにいたように振る舞う少女




 【英雄十三傑ヴァリアントサーティ】序列1位・式場しきば夜刀やとがそこにいた




 「久しぶり、ジュートっ‼」
 「おわっ、夜刀っ⁉」
 「うんっ‼」




 夜刀は全身で喜びを表し俺に抱きついてくる
 俺はその勢いに負けそうになり、なんとか抱き返しくるりと回る




 「お前、なんで······?」
 「ジュートに会いに来たのっ‼」
 「そ、そっか···俺も会えて嬉しいよ」
 「ホントっ⁉」


 おかしい。夜刀はこんなにテンションが高い少女じゃない
 俺の知ってる夜刀は恥ずかしがりやだったハズ




 「式場しきばァァァァっ‼ どういうつもりだテメェェェェっ‼」




 あ、錐堂のこと忘れてた。素っ裸のフルチンで怒ってる···ぐふぅっ···わ、笑うな耐えろ


 夜刀は何の感情も篭ってない声で言う 




 「ジュートは私が殺すの。だからアナタは帰っていいわよ」




 こっちもヤバかった······マジでなんなの? 
 【黒の大陸】に入ったばかりなのに修羅場。錐堂がイラつきながら夜刀に言う


 「そもそもお前〔クローノス城〕の地下に幽閉されていたんじゃねーのか!? お前が出てきたなんて聞いてねーぞ!!」
 「それはそうよ、脱獄してきたから」
 「なんだとぉぉぉっ!?」
 「あなた、いちいちうるさいわ……さよなら」
 「ああん!?……おわぁっ!?」


 突如、目の前に大きな門が開き錐堂を飲み込む
 錐堂は素っ裸のままこの場から消えた……くそ、あの姿は夢に見そうだ。ぶふっ


 「ねぇジュート、あれはジュートの魔導車?」


 夜刀は端っこに停車してあった俺の魔導車を指さして言う


 「ああ。そうだけど……」
 「じゃあお茶にしよ。ノド乾いたわ」


 うーん、なんかペースを握られてる。でも、この様子だと今すぐ戦うって感じじゃなさそうだ。それに聞きたいこともあるし、お茶くらいなら出してやろう


 「よし、じゃあ上がれよ」
 「うん。ありがとう」




 そうして、俺と夜刀のお茶会が始まったのだった


 

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