ホントウの勇者

さとう

戯れの世界よ我が手の中に④/水の心・蟲の魂



 そんなワケで休憩室へ……休憩室のドアを開けると、清水さんと山野さんが座っていた。もちろん服は着てるし拘束されてるワケでもない


 「……私達をどうするの」
 「………」


 清水さんは警戒し俺を睨み付け、山野さんは押し黙ってる。まるで覚悟を決めたような感じだ


 「あのさ、俺は何にもしない。信じてくれとは言わない…でも、ここに最後までいてほしい」
 「最後?」


 間髪入れずに山野さんが質問してくる


 「うん。俺が……【魔神軍】を倒すまで」


 その言葉に2人とも仰天していた。そして……清水さんは怒りを露わにした


 「ふざけないで…今度は誰を殺すの!! 氷寒や鳴戸さん…仮にも同じクラスメイトだったじゃない!!」
 「それは俺もなんだけど……それに、2人は死んじゃいない」
 「え?」


 山野さんがポカンとして……休憩室のドアが開いた


 「……水萌」
 「やっほ~」




 そこにいたのは…高名氷寒たかなひょうか鳴戸括利めいとくくりだった




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 「ウソ。なんで……ローレライ様は、死んだって、【銃神】に殺されたって……」
 「…………生きてた?」


 仰天してる……死んだと思ってたから尚更だ


 「……私達はジュートに助けられたの。そしてわかったの、【魔神軍】が間違えてるって」
 「だからあたしたちはジュートと一緒にいるの。このまま帰れば間違いなく洗脳されるからね~。あ、もう帰るつもりなんてないけどね~」


 清水さんと山野さんは動揺してる……すると


 「……っつ!?……うう、ああ」
 「水萌っ!? 大丈夫!?」


 清水さんが突然胸を押さえて苦しみだし、それを氷寒が支えた。するとマフィが清水さんの身体を再び調べるためにレーザー光でスキャンする


 「やはり揺らいだか……ヒトの心と神の魂がせめぎ合ってる。おいお前」
 「………はい」


 マフィは痛みで胸を押さえてる清水さんに質問した




 「お前、ジュートに好意を抱いてるな?」




 とんでもない質問だった。清水さんは真っ赤になり俺を見て手をブンブン振る


 「ななな何を!? わ、私は…はうっ!?」
 「落ち着いて、深呼吸して……」


 清水さんは肩を上下させてる……少し落ち着いたみたいだ


 「間違いないな。今の質問でヒトの精神が大きく揺らいだ…このままなら神の力を押さえられる、よし…ジュート、この女とパスをつなげ」


 「おいおい……いきなりだな。相手が何にも理解してないしこんなのおかしいだろ。せめて事情を説明してからにしろ」


 「やれやれ、そんな時間はないぞ? お前を憎んでるはずなのにお前に好意を抱いてる……この相反する感情を抱えたままだと精神が崩壊する可能性もある。さっさとしろよ、精神崩壊を起こしたら神の力も暴走する、その時はお前が始末出来るのか?」


 「事情を説明してからだ」


 「……私が説明するわ」


 「ああ。たのむ氷寒」




 こんな話、男の俺から話しにくいしな。こういうとき女の子の存在はありがたい




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 「·········ウソ、そんな。で、でも······洗脳?···パス?···無月くんに、だ···抱かれるって、わ、私が?」


 目に見えて混乱してる。このまま【時の大陸】に戻ったら間違いなく記憶を消されること、洗脳される可能性があることなどを説明した。【魔神軍】はこの世界の人間は悪だと決めつけ、神の楽園を作るために人間を滅ぼそうとしてることも伝える


 「············」
 「水萌······大丈夫?」


 氷寒が優しく肩を抱く···が、果たして言葉は届いているのか。すると、清水さんがポツポツ喋りだした


 「なんか···ヘンなの。最初は、正しいことを···エルレイン様のために戦えたのに······今はわかんない。私の中の何かが、叫んでるの······やめろって。無月くんは敵じゃないって······わけわかんないよぉ···」


 頭を抱えて苦しみだす清水さん。精神が揺らいでいる


 「チッ、マズいな···精神が揺らいでいる。このままだと心が壊れるぞ。この女の中の神を抑えるにはお前とパスを繋ぐしかないぞ。この状態でお前の左腕で神を剥がせばヒトの魂まで引っ張られるな」


 マジかよ···俺が考えた最後の手段、何も言ってないのに封じられた


 「······仕方ない、最後の手段だ」
 「マジで⁉ まだ方法があんのか⁉」
 「ああ。と言うか最初からこれしかないと踏んでいた」


 なんだよ。そんな方法あんなら最初から出せよ···と思っているとマフィがニヤリと嗤った












 「ジュート、お前がその女を落して抱け。あとは任せた」












 そう言って全員消えた。まさかの丸投げ




 ······あの野郎、絶対泣かす




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 どうしよう···目の前には清水さん。頭を抱えて苦しそうにしてる······こうなったらやるしかない。責任はどんなことをしても取る‼


 「大丈夫······?」
 「あ······」


 俺は優しく清水さんを抱きしめる。清水さんは······嫌がらずに受け入れてくれた


 「·········」
 「·········」


 言葉はなく体温だけが伝わってる。もしかしてこのままでもイケるんじゃ






 「·········いいよ?」






 ふいに、清水さんがそんなコトを言った


 「へ?」
 「その、ぱ、パスを繋げないとダメなんだよね。私なら大丈夫。お願いします」
 「で、でも···パスを繋ぐってことは」
 「うん。大丈夫······なんだろ、今は気分がいいの。それに······無月くんなら全然イヤじゃない」
 「·········清水さん」
 「私、変なこと言ったかな そ、その···ごめん」


 だいぶ落ち着いてるみたいだ。でもこれで良いのかな···清水さんが望むなら俺は、でもこれだけは聴いておきたい


 「清水さんは俺のこと···その、好きなの?」
 「え、えっと。いつも挨拶してくれるし、図書室の本の整理手伝ってくれたり。いつのまにか、その······うう」


 清水さんは顔を赤らめて目をそらす。その姿はなんか···可愛い


 「清水さん······」
 「無月くん······」




 視線が重なり唇が近づいていく······唇が触れた時、俺はもう止まれなかった




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 行為を終え、俺と清水さんは服を着て部屋を出た


 「清水さん、大丈夫?」
 「うん。あ、水萌でいいよ」


 うん。かわいいな······俺もジュートって呼んで貰おう


 清水さんの体はどうやら安定したみたいだ。よかった···後は マフィたちを探そう。おそらく遊技場だな


 俺と水萌は並んで歩く···俺はさり気なく水萌の手を握った


 「·········」
 「·········」


 なんか恥ずかしい···さっきまでもっと恥ずかしいコトしてたのに


 でも、手は離さず歩く···どこにも行かないように




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 「ぐっ······ぬぬぬぬぬっ⁉」
 「まだ?···おっそ」
 「だ、黙れこの···!···ふん、これでどうだ‼」


 遊戯場のドアを開けると、山野さんとマフィがソファに座って遊んでいた。マフィの手には知恵の輪が握られてる


 「じゃあ次はコレ」
 「なっ、何ィィィィっ⁉」


 そう言って山野さんは木箱から知恵の輪をジャラジャラ机の上に落してマフィを驚愕させた。何やってんのコイツら······


 「······おかえり。水萌、平気?」
 「あ···うん。ありがとう、氷寒」


 音もなく近づいて来た氷寒が水萌を気づかう。そういえばこの2人仲がいいんだっけ。それはそうと······


 「なぁ、あの2人何やってんの?」


 マフィと山野さん。おんなじメガネ少女として通じる物があるのかもしれない。聞くとあの知恵の輪は山野さんが魔術で作った物らしい


 「あたしや氷寒ちゃんもいるからもし暴れても平気だしね〜」


 そう言って括利がひょっこり現れる。するとそのまま水萌の所へニヤニヤしながら近づいてポソリと呟いた


 「キモチよかった?」
 「なぁっ⁉···········うん」


 水萌は顔を赤くして小さく頷く。すると、マフィと山野さんがやって来た


 「終わったか。どれ·········うむ、パスは繋がれたな。ひとまず大丈夫だろう」


 マフィはメガネをキラリと光らせ水萌の状態を確認する。そのメガネすげーな
 所で問題が一つ




 「あたしはどうするの?」




 そう、山野さんだ


 「······お前は今の所は安定してる。もちろんパスを繋げばより安心だが、ジュートに抱かれる覚悟はあるのか?」
 「···········」


 沈黙······そりゃそうだ。女の子の大事な物を、好きでもない男にやるわけにはいかない。しかもそれが敵として戦った相手ならなおさらだ。とりあえず現状維持で








 「いいよ。無月くんと2人にして」








 現状維持が······なんだって?




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 マフィが指パッチンをすると景色が代わり、ベッドルームに移動した。もちろん俺と山野さんの2人きり


 「あ、あの」
 「············責任とって」
 「はい?」
 「み、見られたから」


 何をだ?······俺、知らない間にとんでもない物を見たのかな?


 「お、おしっこ·········」
 「·········は?」
 「無月くん、あたしのおしっこ見た‼」


 大声で、顔を真っ赤にして叫ぶ山野さん。おしっこ···ああ、あの時のおもらしか


 「あの時は、その······ごめんなさい」
 「いい、だから責任とって」
 「ええー······」
 「それに、あたしはまだ死にたくない‼」


 ポロリと涙が溢れる。きっとそれがホントの理由···だから安心を得るために理由が欲しかったんだ。俺に抱かれる······その理由がおもらしだとしても


 「山野さん······怖いんでしょ?」
 「········うん」


 だったら俺は安心させてやろう。優しく、包むように···怯えなくて済むように


 「安心して、俺が側にいるから······」
 「·········うん」




 山野さんを抱きしめて押し倒す······ああ、溜めておいて良かった




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 この世界に来て······女の子を、しかも同級生のクラスメイトを抱く···しかも4人。地球じゃあり得ないことだ、あったとしたら最低のクズ野郎だな


 でも、ここは異世界···氷寒と括利とは将来を誓いあったし、重婚してもどうやら許されるらしいな。どうせ帰れないならこの世界で幸せになろう


 ここで新たに2人···水萌と虫菜を入れて4人。幸せに暮らすために戦おう




 目的を成し遂げて、幸せになる




 レンカ先生の言葉が頭の中に響いていた





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