ホントウの勇者

さとう

王都ブライトネーション⑩/降り積もる涙雪・思い出と笑顔と愛の花

 
 ウィゼライト・クラックの処刑から3日……俺は魔導車で寝泊まりしていた


 エルルとクルル、レオパールには会ってない。俺の正体にショックを受けてたし、これ以上関わらない方がいいと感じたからだ


 クロ達とも喋っていない。俺の完全な私情で【神器ジンギ】を使い、あまつさえ人間を殺したのだ……もしかしたら愛想を尽かしてしまったのかも知れない


 町の復興は順調に進んでいる。一度〔スノウ孤児院〕跡に行かないと、あそこには皆が埋まっている……


 俺は事前にセヴィト王に頼み込んで〔スノウ孤児院〕跡地を買い取った。このままだと国が没収し、どういう扱いをされるか分からなかったからだ


 そして町の噂で聞いた話だが、ウィゼライトは名誉の戦死を遂げ、新たな【白の特級魔術師】にブランが任命されたらしい


 この3日間、ろくに寝てないし食べてない……だけど行こう。皆をちゃんと弔ってやろう


 俺は身体を起こし魔導車を出る


 「あ………」




 外は雪が降っていた




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 町は徐々に復興が始まっている


 木材や石材を積んだ魔導車が行き交い、大工みたいな獣人がなにやら図面を見て作業してる。町の中央には巨大な石碑が建てられ、沢山の花が添えられていた。泣いてる人も沢山いる


 他には露店が建ち並び、通常価格の半値で売っていた。どうやら商売だが追悼の意を込めて安く売ってるらしい……こんな中でも商売とはたいしたもんだ


 俺は亡霊のようにゆっくり歩く……そして、着いた




 〔スノウ孤児院〕……今は跡地、か




 孤児院が焼け落ちてから俺が行ったのはまず、死体は全員丁寧にシーツに包んだ。もちろんレンカ先生も…そして魔術で大穴を開けて孤児院の残骸を地中奥深くに埋めて、その上に丁寧に遺体を埋める……そしてキレイに地面を整地し、墓石変わりに大きな石碑を建てた


 俺は……石碑に1人ずつ名前を彫った


 涙を流しながら名前を彫る……一人一人を心に刻みつけるように


 天国でも……みんなが愛した〔スノウ孤児院〕と園長先生、レンカ先生が一緒にいられるように




 「うううっ…う…ちくしょう……」




 涙は止まらない。石碑の前でしばらく泣く……頭と肩に雪が積もるが涙は止まらない


 思い出が蘇る……みんなで雪合戦をした、子供達がクッキーを作ってくれた、俺の事を先生と呼んでくれた、レンカ先生と買い物に行った、園長先生がこっそりおやつをくれた……数え切れない思い出が俺の中に溢れ、それは嗚咽となって出てきた




 「みんな……うう、俺……会いたいよ……」




 初めて失った大事な人。石碑に寄りかかり涙を流す……すると




 「こら、いつまで泣いてるのかな?」


 「……え?」




 そこにいたのは……笑顔のレンカ先生だった




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 「れ、れんか…先生?」


 「全く、ジュートくんがいつまでも泣いてるから…来ちゃった」


 「あ……ゆ、夢?」


 「そ、夢・マボロシ。君の心が見てる幻覚かな? でもこれはホントウの奇跡かもね。ほら」




 周囲には誰もいない。まるで時間が削り取られたような……しかも、そこには孤児院があった




 「ジュートせんせ~っ!!」
 「げんきでね~っ!!」




 子供達が手を振っている。園長先生が微笑んでる




 「ジュートくんが私達のことを引きずって悲しんでるのはわかるよ、でも……立ち止まっちゃダメ」


 「……でも」


 「だ~め、悲しむなら歩きながら、ね。私達は死んだ……それは変えられない。なら、生きているジュートくんはどうするの?」


 「俺? 俺は……」


 「私達が願うのは…あなたの幸せ。あなたには生きる目的がある。それを成し遂げて……幸せになりなさい」




 孤児院の前に子供達が全員並んでいる。俺の方を見て微笑み…手を振っている。園長先生の隣には、知らない子供が嬉しそうに寄り添っていた


 レンカ先生は振り返り歩き出す……子供達の待つ孤児院へ




 「ジュートくん…あなたに会えてよかったわ。ホントウにありがとうね」


 「先生……レンカ先生!!」




 レンカ先生は振り返り、とびっきりの笑顔を浮かべた。その笑顔はいつもの……俺や子供達に浮かべる最高の笑顔だった






 「私達はずっとあなたの心の中にいるわ。思い出として、決して枯れない花として……ね」




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 石碑に座り込んだ俺は目を覚ました……頭と身体に雪が積もってる。どうやら寝てたらしい




 「レンカ先生っ!!」




 当然、返事はない。あれはマボロシだったのだ、俺も理解はしてる…けど、叫ばずにはいられなかった


 孤児院は当然無い。俺が整地した更地のままだ




 「…………立ち止まらず歩きながら、か」




 レンカ先生の言葉……キツイな、それに厳しい




 「……俺の目的は、友達を助けること……そして、【魔神軍】をぶっ倒すこと」




 俺は石碑に手をあてて誓う……みんなに、レンカ先生に




 「俺も……みんなに会えて良かった。みんなとの思い出は、俺の中にある。これからもずっと一緒に……枯れずに咲き続ける」


 「俺……行くよ。立ち止まらずに……歩き続ける」




 俺はポケットからある物を取り出す……レンカ先生がくれた花の種だ




 「アウラが言ってたっけ……魔力で咲かせた花は枯れることがないって」




 俺は種を植え全力で魔力を流した。すると、桃色の花…この世界のピンクのチューリップ。花言葉は確か……「誠実な愛」が、孤児院の敷地全てに咲き誇った


 柔らかで、どことなく甘い香りが俺の心を優しく包む。俺は確信した…この花は決して枯れない。燃えることも、折れることもなく、永遠に咲き誇るだろうと




 「行ってきます……みんな」




 俺は歩き出す、止まらずに前を向いて




















 ───────いってらっしゃい、ジュートくん




















 そんな声が、聞こえた気がした




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 俺は魔導車を運転し、王都を脱出した


 エルルとクルルはもう大丈夫だろう。これからますます強くなるだろうし、きっと好きな人も出来る…もう俺は必要ない。後はレオパールとバザルドやクエーナさんに任せよう


 「次は……」


 《次は【黒の大陸トレマブラック】ネ。あそこには【黒】の【九創世獣ナインス・ビスト】、ナハトオルクス・セバスチャンがいるワヨ。まずは東の関所を抜けまショ》


 「く、クロ!? ビックリさせんなよ!?」


 《フン、アナタなんてワタシがいなければすぐに迷子ヨ?》


 「ぐっ……反論できん。その…いろいろゴメン」


 《いいのヨ。アナタは人間だもの……許せないコトぐらいあるでショ?》


 「うん……ゴメン」


 《後で皆にも謝りなサイ。それで良いワヨ》


 「わかった……ありがとな、クロ」


 《エエ、行くワヨ!!……とは行かないワネ》


 「え? なんでだよ」




















 《この感じ……〔神の器〕ネ、しかも…5人》




















 この【白の大陸】で、最後の戦いが始まろうとしていた







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