ホントウの勇者

さとう

BOSS BATTLE②/【銃神ヴォルフガング】VS【魔神獣・バッファボーン】/狂った聖女・はじめてのしょけい



 「面倒なことになったわね……」




 ウィゼライト・クラックは一人、王城の通路を歩いていた


 理由は簡単。この国の王、セヴィトに呼ばれたからである


 セヴィトに呼ばれた理由は恐らく、前線での戦闘行為だろう。本来のウィゼライトの役目は後方支援。主に怪我人の治療である。それを無視して前線での戦闘を行った……処罰されても仕方が無い


 15万のモンスターは謎の力・・・によって滅ぼされた…恐らくバッファボーンは死んだだろうが、念のための〔魔導核〕は爆破させておいたので秘密が漏れることは無いだろう


 問題は…ブーランジェ姫が使ったと言う魔術


 聞いた話だが、ブーランジェが使った魔術は、怪我だけでなく毒に侵された身体や病気なども治してしまったらしい。ウィゼライトの【特級魔術】は怪我だけしか治せない……明らかに格上の魔術だ


 このままでは【特級魔術師】の称号は奪われる…しかも、ブーランジェは巷では〔真の聖女〕などと呼ばれている……腹立たしい事だった




 「まぁ…最悪、私の魔術はこの【白の大陸】以外でも役立てる。王の処罰次第じゃここに見切りを付けた方がよさそうね……」




 全てが水の泡になり初めからの出直し……それも仕方ない。資金はいくらでもあるし、やり直すのは面倒だが問題無い。【黒の大陸トレマブラック】などは【白】属性が全くいないと聞く、そこでやり直すのもいい。むこうの王族にここの王族の悪評を流してやるのもいい




 そんなことを考えながら謁見の間にたどり着いた




───────────────


───────────


───────




 「よく来たウィゼライト。楽にしなさい」
 「は、失礼いたします」


 ウィゼライトは跪いた状態から立ち上がった


 「…………?」


 ウィゼライトは疑問を感じていた
 何故なら護衛の兵士がいない。しかも文官もいない
 いるのは王族の3人…セヴィト王、ヴィエラ王妃、ブーランジェ姫のみだ


 ウィゼライトの視線を感じたのか、セヴィト王が告げた


 「現在、兵士達は町の復興に参加してる。一人でも多くの人手が必要なのでな、文官も忙しい。家屋の保証や死亡者の見舞金などの算出でてんてこ舞いだ。私も町にでて復興を手伝いたいのだが……」


 セヴィト王はこういう人間だ。止める人間がいなければ間違いなく作業着を着て廃材や砕けた石壁などを汗水垂らしながら運ぶだろう


 護衛がいない……好都合かも知れない


 「して、ご用とは…? やはり先日の騒動の件でしょうか?」


 「うむ。そうだ」


 「そうでございますか。持ち場を離れ戦闘行為を行った事は言い訳しません…治療が遅れ亡くなった方には深くお詫び申し上げます。私はどんな処罰をも受け入れたいと思います」


 「そうか…だが、そなたを呼んだのはそのことではないのだ」


 「は?…では、一体?」


 「うむ……」




















 「そなたがこの騒動の首謀者…その件で話を聞きたいのだ」




















 「…………は?」




───────────────


───────────


───────




 ウィゼライト・クラックは硬直していた


 「実は…非常に信用できるある人物・・・・から、そなたを見張るように助言を受けたのだ。最初は半信半疑だったが、そなたが裏で【魔神獣バッファボーン】と繋がってることや、奇跡を起こし我ら王族を始末してこの国の王となろうと画作してることも掴んだのだ」


 「…………なるほど」


 「実に残念だよ、ウィゼライト……今、そなたの自宅や別荘、財産を全て押収してる頃だ。残念だがそなたはここで終わりだ」


 「なっ……!?」


 ウィゼライトは驚いた。まさかろくな証拠ないのにこの国王がここまで動くとは……だが


 「セヴィト王、私が【特級魔術師】と言うことをお忘れでしょうか? ここであなた方を殺害して逃げることなどたやすいこと、私の力は生かすべき所で生かそうと思います。兵士を復興に送ったのはハズレでしたね……さようなら」


 ウィゼライトが右手を掲げると魔力が集中し始める……彼女は【白】の初級魔術・【光弾ライトボム】を使い、王達を跡形も亡く吹き飛ばそうとした


 王は立ち上がり剣を抜き、王女は姫を、姫は王妃を守ろうとした




 「ふふふ……む・だ」


 「そうだな……」




 王に向かって微笑み……魔術を発動させた




















 が、右腕が切り落とされ魔力が霧散、魔術は発動しなかった




















 「………は?」


 切り落とされた腕から鮮血が吹き出した


 「ぎっ、ぎゃああぁぁぁぁぁっ、うでっ、うでぇぇっ!?」


 ウィゼライトは転がり腕を拾おうとする、くっつければ魔術で治療できる…が


 「ひぅっ!? あ、ひぃぃぃっ!?」
 「悪いね…手が滑っちまった」


 空からいきなり大剣が落下……落ちていた右腕を貫通し地面に突き刺さる


 「はぁっ、はぁ…はぁ……」


 ウィゼライトは右腕を押さえながら周囲を見る


 まず目に付いたのは2人の獣人。見た目はそっくりの少女でそれぞれ両手に短剣を持っている。耳と尻尾が白い珍しい獣人の少女だった。右腕を切り落としたのはこの少女たちのようだ


 大剣の持ち主はこちらも女性獣人。尻尾と耳は黄色く、恐らくネコ科の獣人だろう。恐ろしい形相でウィゼライトを睨み付けている。命令があれば今にでも首をはねそうな勢いだった




 「ふむ、ウィゼライトよ。確かに兵士はおらんが……護衛がいないとは言ってないぞ?」




 セヴィト王が、とぼけたように言った




───────────────


───────────


───────




 「悪いがそなたの処刑は決まっている。町の人間にはそなたは戦場で戦死したと伝えておこう」


 「あ、あ…あああ」


 ウィゼライトは後悔した。ここに来るまでに彼女は用心していた…だから余計な人間との接触は控えていたのである。すぐにでも逃げ出せる準備が仇となった


 「アンタのことはウチの副団長が常に見張ってたんだよ。この町で戦闘が始まる前からずっとね……アンタ、自分が疑われてるなんてちっとも思ってなかったんだろ?」




 ウィゼライトはゆっくり後ずさる……逃げられるわけがない。自然な防衛反応だった


















 が、猛烈な殺気が背後からウィゼライトを襲った


















 そこにいたのは、両手、両足が欠損…ぼろ切れのようになった【魔神獣バッファボーン】を引きずる漆黒の少年……






 「…………よう」






 呪・殺・死・怨、凶、全ての感情を込めた瞳で睨み付ける、無月銃斗だった




───────────────


───────────


───────




 人間とは、ここまで暗黒に染まった瞳が出来るものなのか


 ここにいるのは無月銃斗をよく知る者達、温厚で優しく、笑顔が絶えない少年の放つ究極の殺気に、この場にいる全員が圧倒されていた


 エルルとクルルは真っ青になり腰が抜け、レオパールは震える手を必死で押さえてる。セヴィト王は腰が抜け玉座に崩れ落ち、ヴィエラ王妃とブランは気を失った


 ウィゼライトは…失禁し崩れ落ちた


 「コイツから全部聞いた、お前の私利私欲の為にこんなこと起こしたことをな」


 無月銃斗はつまらなそうに【魔神獣バッファボーン】の頭を踏み砕いた。脳ミソが飛び散り地面を汚す……が、銃斗は全く気にしなかった


 銃斗はギョロリとセヴィト王を見た……すると




 「い、今からここで行われる事に対して我々は、何も見ていない、聞いていない。たとえ地面が砕けようが天井が落ちようが……それは最初からそうなっていた、と言うことだ」




 「どうも。セヴィト王……」


 今の銃斗は逆らえば死ぬ……そんなことを感じるくらい恐ろしかった




 「さぁ……処刑の時間だ」




───────────────


───────────


───────




 次の瞬間、俺の姿は変わっていた。闇のような黒衣に


 「か、〔神の器〕!? まさか、ジュートが!?」
 「お、お兄さん……」
 「お兄ちゃん……」


 レオパール、エルルとクルルが何か言ってるが、今はどうでもいい。まだこんなモンじゃ足りない。俺は腰から一本のマガジンを取り出し……装填、放つ




 「『第二神化セカンドエボル銃神覚醒ヴォルフガング・アウェイクン』」




 俺はさらに変化…【第二神化形態だいにしんかけいたい】へ強化変身する




 「子供達と園長先生……レンカ先生の痛みを思い知れ……!!!」


 「い、いや…いやだ…死にたくない……わ、わたしは…有名に」


 「起きろ、『魂喰いの左腕ソウルイーター・アルマイト』」


 「いやだ、いやだ。いやだぁぁぁぁ!!!」




 俺の左腕は濡羽色の実体を持たない腕。巨大に変化しウィゼライトを包み込む。そして、王城の壁を破壊し上空に本気でぶん投げた


 さらに俺は『冥錬鉄の無神銃エクセレーナ・アイゼン・ブラスター』を抜いて空中を泳ぐウィゼライトに照準を合わせる……その顔は、恐怖で歪み……狂ったような笑みを浮かべていた。どうやら発狂したようだ




 「『三魔赤装填トリニティ・レッドチャージ』」




 『冥錬鉄の無神銃エクセレーナ・アイゼン・ブラスター』に赤い紋章が3つ刻まれる……チリも残さずこの世から消えろ




 「【煉獄審判・溜撃ティタノマキア・フルショット】!!」




 銃身から赤い紋章が輝き赤い光弾が発射……空中を泳ぐウィゼライトに着弾、大爆発を起こし、ウィゼライト・クラックはチリ一つ残さず消滅した






 俺はこの日初めて人を殺した




 驚くほど何も感じなかった


 

「ホントウの勇者」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く