ホントウの勇者

さとう

BOSS BATTLE①/【銃神ヴォルフガング】VS【魔神獣・バッファボーン】/聖女降臨・天使神化



 王城の1階、ここはダンスホールでもありパーティー会場でもある。そこは現在、臨時の救護施設となっていた


 溢れる怪我人は多様。四肢を失った人間、爪で引き裂かれた獣人、腕を食いちぎられた子供···全てが突如現れたモンスターによるものだった


 そんな地獄の場所で、ブランは駆け回っていた


 「······はい。これで大丈夫」
 「ありがとう、お姉ちゃん」


 【白】の魔術師である彼女は、王族という肩書に関係なく周りの怪我人に魔術治療を施していた


 優先したのは重症者の子供から、そこから一般市民の重症者、冒険者、傭兵、騎士団と振り分けられたが、現在の【白】の魔術師はこの王城に2人しかいない。しかもブラン以外の1人は、魔力の枯渇で倒れてしまった


 「こんな時、【白の特級魔術師】がいれば···」
 「でも、聖女様は前線で戦っておられる‼」
 「しかし、このままでは死者が増えるばかり···」


 大人たちは争ってる···でも、このままでは死者が増えるのは間違いない


 「ブラン···大丈夫?」
 「ありがと、お母様」


 ブランの母にして王妃のヴィエラが、ブランの額の汗を優しく拭った


 「お母様······わたし、もっと力があれば」
 「ブラン、貴女は精一杯やってるわ」
 「でも······」


 そんな時だ、1人の男性が血相を変えてやって来たのだ。その肩にいた人物に、ブランとヴィエラは驚いた


 「あ···あなた⁉」
 「お父様⁉」


 ケガをしたのはブランの父親にしてこの国の王、セヴィトだった


 「すまない···ブラン···治して、くれないか?」
 「ま、まってて。すぐに······っ⁉」


 ブランは気が付く




 魔力が、ほとんど残っていなかった




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 セヴィトのケガの原因は、一般市民の避難中に、モンスターから市民を守ったことによるケガだった


 部下の静止を振り切り、最後まで一般市民の盾となり戦ったケガ···こういう行動が文官の悩みであり、セヴィトが国民に慕われる理由だった


 セヴィトは、よくお忍びで町に繰り出す……行きつけの酒場や喫茶店などで暇を潰すのが彼の密かな楽しみで、今でもヴィエラを連れて町でデートする


 ヴィエラも、そんな子供っぽいセヴィトが大好きで、自分も楽しんでいるので叱るに叱れなかった




 そんなセヴィトが···大怪我をして苦しんでいる




 「セヴィト、セヴィト···しっかりして‼」
 「やぁ、ヴィエラ···今日も綺麗だ」
 「お父様ぁ···ごめんなさい、ごめんなさいぃぃ···」
 「ブーランジェ···気にするな」


 ブランは初めて己を呪った
 考えなしに魔力を使い過ぎた
 セヴィトが前線に出ている以上、こういう可能性はあったのに


 「イヤだよ···イヤだ···せっかく、せっかくお父さんに会えたのに···」


 ブランの中に何かが満ちていく···それは、失いたくないという気持ち


 「わたし、わたし···【白】の魔術師なのに···お兄さん···助けて···」


 ここにはいないジュートに助けを求める。が、当然答えは帰ってこない




 ───お前は1人じゃない。イエーナ、シトリン、エルルにクルル、そして俺。みんながお前を想ってる───




 「あ······」




 ブランは1人じゃない。ジュートの言葉が頭に響く




 「そっか···1人じゃない。みんながいる···」




 ブランは想い、願う




 「みんな···わたしに力をかして···お願い」




 ブランの願いは奇跡となり、魔術となって現れる……ブランの中に何かが流れ込んできた。それが何だったのかは分からない……けど今はその奇跡に願いを託す




 ブランが行った魔術は【白】【白】【白】の融合ブレンド、即ち『固有属性エンチャントスキル


 人間の使う最高の癒しの魔術にして【特級魔術】・『護法聖域プロセドリア・ラプラス


 ブランを中心に広がる聖なる領域は、その場にいるだけで怪我・病気は回復し、領域内にはモンスターの侵入すら許さない


 「あ、あれ?」
 「セヴィトっ‼」


 怪我が治り何事もなかったかのように起き上がるセヴィト。よく周りを見ると同じような光景が至る所で起きていた


 「これは·········あ」
 「········ブラン?」


 ホールは静寂に包まれた


 誰もが目を離せなかった


 聖なる光を放つ、一人の少女


 神に祈る修道女のように手を合わせ、祈りを捧げる一人の魔術師




 ウィゼライト・クラックを遥かに上回る奇跡を起こした、ホントウの聖女の誕生だった




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 《ジュート、いつまでそうしてるの?》


 「·········うるさい」


 《クロシェットブルムが言ってたでしょ、外にはモンスターの大群が······》


 「黙れ黙れ黙れぇっ‼」


 《ティルミファエル···今のジュートはだめヨ》




 俺はレンカ先生を抱きしめたまま動けなかった······動きたくなかった


 たった数時間で、大切な人を何人も失った······恐ろしい喪失感が身体を満たしていた




 《1つだけ言わせて、ジュート···レンカ先生はなんで、この中心部に来て〔ブライトドラゴン〕と戦ったの?》


 「··············」


 《孤児院を守るだけなら、あそこから動く必要はないわ。レンカ先生はなんで子供の側を離れてまで、ここで戦ったのかしら?》


 「··············」


 《レンカ先生は···守りたかったのよ。子供達を、町を、日常を···だから孤児院を離れて、力に侵されながら戦ったのよ》


 「·········う···うあ」


 《立ちなさい、ジュート···レンカ先生の最後の意思を···あなたが果たすのよ》


 「う、うう···あああ···」


 《私の力を託す···さぁ、王都を守りましょう》


 「うっ···ああ······うん」






 レンカ先生は、孤児院が···この町が好きだって言っていた。行き場のない自分を受け入れてくれた園長先生。行きつけの道具屋のおじさん。服屋のおせっかいなおばさん···みんないい人ばかりだって言っていた






 「【九創世獣ナインス・ビスト魂融ソウルエンゲージ】」






 孤児院だけじゃない、この町が···レンカ先生の故郷だった。なら、俺が最後に出来るのは···守ること






 「【天使神化ソウルオブティルミファエル】」






 俺の〔神化形態〕に白の装飾が加わる···まるで、雪のように




 俺は専用武器を取り出した・・・・・




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 王城にいた怪我人は、全員が全快した


 誰もがブランを称え、新たな聖女の誕生を祝福した


 ブランはどうでもいいのか、セヴィトに抱き付いてひたすら泣き、妻を抱きしめたセヴィトは、ブランの頭を優しくなでた


 その時、1人の兵士が血相を変えて来て、大声で叫んだ


 「せ、セヴィト王、外が、外が」
 「落ち着け、何事だ⁉」


 その言葉に全員が首をかしげ、王城から外に出た


 「·········これは、夢か?」
 「·········いえ、現実ですね」


 セヴィトとヴィエラは理解出来なかった


 「······お兄さん?」


 ブランは何故か、そう感じた




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 「あれは······なんだ?」




 バッファボーンは理解出来なかった


 バッファボーンが率いる軍勢は15万。王都を完全に包囲する布陣を敷き、現にあと数分で包囲が完了する


 そして、ウィゼライト・クラックが魔術を使いモンスターを全滅させる···そして彼女が王女となった暁には、他の大陸の制圧に乗り出し、自分を隊長として使う約束だ




 「あれは神の力。まさかあの魔術師が裏切った?···しかし、人間に神の力を使えるわけがない」


  
 そう結論付けて成り行きを見守ることにした




 それは、最悪の選択だった




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 町全体、いや王都の外壁を囲むように、円を描くように純白と黄金の装飾の「壁」が、いや···「城壁」がせり上がっていく


 その全長は数十キロ、高さは数百メートル、究極の守りの壁


 俺はその中心···司令台に立っていた




 「【光輝攻城砲アウレオーレ・グリュンカノーネ】‼」




 その掛け声とともに城壁が展開、現れたのは攻城砲カルヴァリンほう


 その数······5万


 王都を包囲していた15万のモンスターは、一斉に動きを止めた


 俺は司令台の窪みに、『錬鉄の神銃アイゼン・ブラスター』をセット、〔決戦技弾フィニッシュアーツ・ストレージ〕を装填した




 「園長先生···子供たち······レンカ先生」


 「俺がこの町を、守ります」




 引き金を引く




 「【聖光銃撃アークライト・ブラスター】‼」




 砲台から聖なる光弾が連射される


 その圧倒的数量の砲弾は15万のモンスターを蹂躙する




 20秒もかからずに、モンスターは全滅した




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 「バカな···バカなバカな⁉」


 「15万のモンスターだぞ⁉ それを···あんなに簡単に滅ぼすとは···冗談じゃないぞ⁉」


 「クソ、不味い···幸いオレには気付かれていない。なんとか逃げなくては‼」










 「どこに逃げる気だ?」










 「なっ⁉ ぐがぁぁぁっ⁉」


 バッファボーンの両足をハチの巣になるまで撃ちまくる


 「バカかお前? あの砲撃、お前のことはワザと外したんだよ······ん?」


 コイツの心臓近く···コイツじゃない魔力の固まりが見える


 「おい、その心臓······まぁいいか、面倒だ」


 「は?···が、ぐごォォォっ⁉」


 俺は【雄大なる死と絆グロリアス・デッド・リアン】でコイツの心臓付近にある魔力の塊を抉り出し、死なない程度に傷を治した


 「これはなんだ?···お前の魔力じゃないな」 


 「そ、それは······」






 「まぁいい。お前にはいろいろ聞きたいことがある」






 サァテ、タノシイ拷問ノ時間ダ





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