ホントウの勇者

さとう

王都ブライトネーション⑨/怒り悲しみ・血に染まる



 「なん、だよ······あれ」


 俺たちが見たのは王都を覆い尽くす紺色の紋章
 紺色······【時】属性。まさか、クラスメイトの誰かが⁉


 そして、俺たちの目の前で紋章から無数のモンスターが降ってきた


 「お兄さん、あれ···モンスターです‼」
 「ああ···ま、町が。お兄ちゃん……!!」


 どう見ても異常事態だ。急いで戻らないと孤児院が危ない!!


 「ジュート、急いで帰るよ‼」
 「わかってる‼」




 俺は全魔力を魔導車に注ぎこんだ




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 魔導車で近づいて行くに連れてわかった


 モンスターは大小様々、巨人タイプも入れば獣タイプ、ゴブリンタイプと様々で、ほとんどが上空から現れている


 「ジュート、あれを見ろ‼」
 「あれは……⁉」
 「あれはAレートモンスターの〔ホワイトギガス〕です!!」


 外壁に白いゴリラみたいな巨人が現れて巨大な棍棒で壁の破壊を始めたのだ···ふざけやがって


 「揺れるぞ、捕まってろ‼」
 「はいっ‼」
 「飛ばせーっ‼」
 「ナメやがって‼」


 外壁にいる白ゴリラに向って飛ばし、距離が近づいた所で魔術を発動させた 




 「【灰】の上級魔術、【灰銀烈槍シルバリオン・サリッサ】‼」




 上空から無数の銀のヤリが降り注ぎ白ゴリラを全滅させる。そしてその間に町に入った




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 町は地獄絵図だった


 死体が散乱し、モンスターが溢れ、冒険者と傭兵が傷だらけになりながら対処している。余りの光景にエルルとクルルは真っ青になっていた


 「エルル、クルル。アタシ達は王城へいくよ。情報通りだと王族が狙われるのは間違いない…急ぐよ‼」
 「あ、あああ……」
 「こんなの……ないよぉ…」


 レオパールの声も届いていない。するとレオパールはエルルの頬をひっぱたいた


 「エルル‼ 前を見な…いいかい、これが戦場だ。血と臓物、死体が飛び交うホントの戦場だ。油断すればアタシ達がこうなってもおかしくない。いいね!!」
 「は、はい‼···クルル‼」
 「お、お姉ちゃん···」
 「行くわよ、王城に」
 「え、あ、うん」
 「ブランを助けるわよ‼」
 「······うん‼」


 ブラン。その言葉を聞いたクルルは力強く頷く


 「ジュート、アンタは!?」
 「俺は孤児院に行く。そっちは任せた‼」


 その時、上空の紋章が消え、大型の紋章が3つ現れた


 「今度はなんだい⁉」
 「ねぇ、あれって······」
 「あれは、まさか······」


 そこから現れたのは3匹の白いモンスター。蛇のような身体に、頭部はドラゴン、身体には氷のような鎧のウロコを纏ったモンスター···俺は叫んだ


 「あれは、Sレートの〔ブライトドラゴン〕だ‼」


 以前戦ったモンスター。単体なら楽勝だったけど3体···どうする、アレを始末するか、孤児院に行くか···ちくしょう


 「アレは後回しだ。エルル、クルル、まずは王城へいくよ。装備を整えてから迎撃する‼ ジュート、アンタも早く行きな‼」
 「……わかった。気をつけろよ‼」
 「お兄ちゃんもねっ‼」


 よし、先に孤児院に行こう。レンカ先生、園長先生···待っててくれ‼




 俺は孤児院へ走り出す。脇目もふらず全力で




















 もう手遅れとも知らずに




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 「·················は?」








 俺が見た光景は、燃え盛る〔スノウ孤児院〕だった








 「············なんで」




 「············どうして」




 「············あれ?」






 思考が追いつかない


 炎に包まれる孤児院


 散乱した死体……恐らくここを守ってくれた冒険者、傭兵


 孤児院の敷地内で大型のモンスターが死体を貪っていた






 それは······小さな、まるで、子供のような・・・・・・






 「あ、ああ···ガァァァァァッ‼‼」


 神器を発動、迷わずに対象を破壊




 「【九創世獣ナインス・ビスト魂融ソウルエンゲージ】ィィっ‼」


 「【土竜神化ソウルオブトレパモール】‼」


 殺す‼ コイツらだけは殺してやる‼


 「『炸裂地石砲ヴェルディ・グラナーデ』、死ねやクソがぁぁぁぁぁっ‼」


 回転式炸裂砲グレネードランチャーが火を吹き、弾速はないが威力は凄まじい大地の榴弾が命中


 風船のように膨らみ爆砕するモンスター、肉片になっても俺は撃ちつづけた






 「はぁはぁはぁ···ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう、ちくしょおォォォォォォォッ‼」






 涙が溢れて止まらない、失った命は戻らない。たとえ【神話魔術】でも、肉体がなければどうにもならない


 そして、草場の影に誰かいるのに気が付いた。それは小さな……余りにも見慣れた姿




 「えん、ちょう···せん、せい……?」




 そこにいたのは、ボロボロの園長先生だった


 「園長先生ぇぇっ‼」


 抱き起こす、僅かだけと息がある。助かる···魔術を使って、怪我を治す……よし


 「園長先生、園長先生っ、大丈夫ですか、怪我は治りましたよ‼」


 園長先生は、ぼんやりと目を開けた


 「おや···ジュート、くん···おか、えり」
 「園長、せんせ······?」


 おかしい、怪我は治ったのに···なんで、死にかけてるんだ?


 「園長先生、何が、何があったんですか⁉」
 「子供、たち···は?」


 子供たち···それは


 「げ、元気です。園長先生のこと心配してます。だから···」


 「ジュートくん······」


 園長先生は微笑んだ……一筋の雫がこぼれ落ちる


 「楽しかったよ······まるで、息子が生き返ったような···そんな、気がした······」


 「なに、いって······ダメだ、ダメだ、ダメだ···死んじゃダメだッ!!」


 「レンカを···助けてやってくれ······あの子を、守って···お願い···」


 「イヤだ、イヤだぁ···園長、先生ぇぇ···あっああぁぁぁっ‼」


 「あり···がと。いま···いく···よ」








 園長先生は静かに目を閉じ……再び開くことはなかった




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 「··············ちくしょう」






 俺は魔術で孤児院の炎を消し、中から全員の遺体を探した


 モンスターに襲われたのと火事で焼死した子供···全員が死んだ


 俺は1人1人にシーツを被せ···名前を呼びながら涙を流した




 《ジュート······》


 「············クロ」


 《中央広場で神の力を感じたワ。恐らく···》


 「······レンカ先生‼」


 《待って‼ 町の外から大量のモンスターがココへ向ってる。数は······少なく見ても10万以上》


 「だからなんだ‼ そんなの俺が蹴散らしてやる、殺し尽くしてる‼」


 《ジュート、落ち着いて···》


 「うるせぇっ‼」


 《聞きなサイっ‼ いい···この【白の大陸】に炎を吐くモンスター・・・・・・・・・はいない・・・・


 「···············」


 《孤児院は燃やされたノヨ。黒幕がいるワ······このモンスターの群れは間違いナク【魔神獣】による統率。イイ、この混乱で最も得をする人間に気を付けなサイ》


 「·········行くぞ」




 黒幕?······そんなヤツがいたら俺は




 そいつを殺す




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 中央広場はほとんど更地になっていた


 建物は全壊、氷漬けの死体やバラバラになった死体などが散乱し、凄惨な光景と化してた








 そしてその中央に、血塗れのレンカ先生がいた








 「せんせぇぇっ!! なんで、なんでぇぇぇっ!!!」


 縋り付き抱き起こす···おかしい、なぜ背中から出血してる? まるでナイフで刺されたような傷だ




 「あ……じゅ、と…くん?」




 薄く、レンカ先生は目を開けた




 「せんせ……どうして、こんな……」


 「こ…ども、えんちょ、せんせ…は?」




 俺は、この時どんな顔をしてただろうか?···ただ、溢れる涙を止めることは出来なかった




 「な、かな…いで。じゅーと、くん」


 「うっうううっ…あ、あああああっ!!!」




 俺は迷わずレンカ先生を抱きしめた。レンカ先生は···物凄く冷たくなっていた


 レンカ先生の手が震えてる···が、何かに操られたかのように動き、俺の手に何かを握らせた




 「せん、せい?………これ?」




 それは、桃色の花の種


 そして……レンカ先生は優しく微笑んだ






 「ありがとう。ジュートくん」






 そして、静かに息を引き取った










 「あ、あ、あ···あああ」










 なんでこんなことに···誰がこんなことを










 「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼」












 悲しみと怒りが、俺の中に渦巻いてた





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