ホントウの勇者

さとう

ウールブル雪山⑤/面影・白き再会



 「お兄ちゃん……ここ?」
 「ああ!!」
 「………ただの藪にしか見えませんが?」


 疑う気持ちは分かる。俺だってそう思うもん……でも、ここが〔白牙狼〕の集落の入り口なんだよなぁ


 俺たちは〔氷の町ヒョールデン〕を経由し再び〔ウールブル雪山〕にやって来た


 〔氷の町ヒョールデン〕では、エルルとクルルが興奮したために2日掛けて観光、お土産もたくさん買ってかなり喜んでいた。レオパールも観光地ならではの酒場で盛り上がっていたので…まぁいいか


 そんなわけで〔白牙狼〕集落へ行こう。藪をかき分けひたすら登る~っと!!


 「エルル、クルル……用心しな」
 「はい…」
 「うん…」


 しばらく進むと、周囲に気配を感じる…どうやら現れたか


 「大丈夫、俺に任せろ」


 俺は大声で周囲に語りかけた


 「おーい、俺だ、ジュートだ!! いつぞやは世話になったな。長老に挨拶させてくれ!!!」


 出来るだけ大声で合図する……すると


 「ジュート殿!! お久しぶりです!!」
 「いつぞやはホントウに…」
 「ウマい酒をありがとうございます!!」


 いきなり獣人が3人も現れた。しかも、俺のことをちゃんと覚えてる


 「……こちらの方々は?…お二人は同族の方ですな?」
 「うん。さっそくだけど、長老に会わせてくれないか?」
 「分かりました。客人共々ご案内いたしましょう」


 レオパール達はポカンとしてたが、なんとか集落に案内して貰った


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 集落の中は以前と余り変わりが無かった…すると


 「あ、おにいさんだ」
 「ひさしぶりー」


 小さな3歳くらいの獣人の子供がじゃれついてきた。かわいい


 「よーしよし、元気だったか?」
 「わふ…うん」
 「くぅん……」


 気持ちよさそうに目を細める姿は犬みたいにかわいい、しっぽも左右に揺れてる


 「むむむ…」
 「くぅん……」


 エルルとクルルが物欲しそうに見ていた


 「凄いねぇ…全員〔白牙狼〕か。まさかこんな所に集落があったなんて」
 「内緒だぞ?」
 「わかってるよ」


 一応、レオパールに釘を刺しておく…すると、目の前から誰かが走ってきた。あれは…


 「あんちゃーんっ!!」
 「おわっ!? ギンガか?」


 飛びついて来たのは8歳くらいの少年。白い犬耳としっぽの元気少年、長老の孫のギンガだった


 「あんちゃんが来たって言うから急いできた!! あそぼーぜ!!」
 「落ち着けって、用事を済ませたら遊んでやるから」
 「ううん…わかった。あれ?」


 ギンガの視線はエルルとクルルに…っていうか降りろよ


 「同族? どこの山の人?」
 「えっと、私達は…」
 「わかんないね?」


 まぁそうだよな……


 「まぁいっか。ねえちゃん達も一緒にあそぼーぜ!!」
 「お、いいね!! 遊ぶ遊ぶ!!」
 「こら、クルル。今お兄さんが言ったばかりでしょう?」


 エルルに怒られたクルルはしょんぼりしてた。やれやれ
 しかたないのでギンガをひっつけたまま長老の所へ行く


 「たっだいまーっ!!」


 ギンガの声が部屋中に響いた…そして


 「コラ、ギンガ。ジュート君から降りなさい!!」
 「いや…ギンゲルさん、お久しぶりです」


 降りようとしないギンガは置いて挨拶する


 「いやはや、申し訳ない……おや、そちらの女性は…同族の方と、豹獣人の方ですか?」
 「そうです。お話があってきました。長老は…?」
 「はい、どうぞこちらに……」




 そして、部屋に通された




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 「そういうことですか………」
 「ま、まさか。そんな………キミ達が!?」


 事情を説明すると、長老とギンゲルさんは驚いていた。長老はよく分からんけど


 「あの、バザルドとクエーナさんは…?」
 「バザルドは狩りに出かけてる。クエーナさんは自宅にいるはずだ」


 そっか。どうする……?


 「エルル、クルル……どうする? 行くか?」


 それはクエーナさん…母親に会いに行くか? という俺の問いかけだった


 「………」
 「………」


 二人とも俯く……決意が鈍ったのか、ここに来て


 「まぁゆっくりで」
 「行きます」


 俺の言葉を遮ってエルルが言う


 「いつまでも逃げている訳にはいきません。自分たちの過去に向き合う……お母さんに会います」


 エルルは決意したみたいだ。クルルは……


 「わたしも行く。お母さん……会ってみたい」


 クルル……こっちも大丈夫そうだ




 「じゃあ、早速行きますか」




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 今、俺たちはバザルドの家の前にいる


 メンバーは俺、エルルとクルルとレオパール。ギンガは引っぺがして置いてきた


 「まずは俺が行く。呼ぶまでここで待ってろよ」
 「……はい」
 「うん」


 意外と落ち着いてる。よし……行くか


 「こんにちは~!! クエーナさんいますか~っ!!」
 「は~い。あら、ジュートくんじゃない!! 久しぶり~っ。あ、バザルドに会いに来たの?」
 「えーと、まぁそんな所です」


 う~ん。この感じ…なんだかクルルに似てるな……家の中に上がってお茶を貰う


 「ふふ、今日はどうしたのかしら?」
 「えーと、その……お二人に大切な話があって……」
 「そうなの?…でも、バザルドは夜にならないと帰ってこないわよ?」
 「そうですか……あの、その~……」


 ヤバいな…なんて言えばいいんだ。いきなりだと緊張する


 「あ、身体は大丈夫ですか? その後何か変わりありませんか?」
 「ええ。健康そのものよ。バザルドが美味しい物をたくさん獲ってきてくれるからね!!」


 そんな感じで雑談は続く……俺が家におじゃまして15分が経過した


 「………ところで、大切なお話って? 私が先に聞いちゃダメ?」
 「…………その、驚かないで下さい」
 「ふふ、何かしら?」








 「クエーナさんとバザルドの娘……エルルとクルルを連れてきました」










 クエーナさんは笑顔のまま硬直した




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 「…………………」
 「く、クエーナさん?」
 「フフフ、ジュートくんったら…冗談がウマいんだから」
 「…………」
 「…………」


 俺はマジメに黙り込む……クエーナさんも俺の視線に気がつく


 「………ホントなの?」


 消えてしまいそうなか細い声……もちろんウソじゃない


 「ホントウです……呼びます」
 「待って!!………ああ、私…どうすれば」


 クエーナさんは少し混乱してる…どうする、時間をおくべきか


 「クエーナさん。どうしますか?」


 クエーナさんは……ポツリと呟いた




 「お願い、連れてきて……」


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 「エルル、クルル。行こう…レオパールも」


 「は、はい……」
 「……うう」


 二人は緊張してる……でも、行くと決めたのは二人だ


 「アンタら、シャンとしな!!」


 レオパールの怒号が響く。エルルとクルルはビクッとして前を向いた


 「行きな、立派になった姿を見せてやりな!!」


 「「は、はいっ!!」」


 そして、バザルドの家に入った


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 家の中では、クエーナさんが立ち上がって入ってきたエルルとクルルを見つめていた


 「あ……」
 「…………」
 「…………」


 クエーナさんがポツリと呟きあとは無言……どうしよう。何か言った方がいいかな


 すると、クエーナさんがエルルに近づいた


 「あなたが……エルルね?」
 「は、はい……」


 クエーナさんは近づいてエルルの匂いをかぐ


 「懐かしい。変わらない匂い……あなたは間違いなくエルルだわ……」
 「あ……」
 「あなたは覚えてないけど…あなたを抱っこしてよく山に登ったのよ?」
 「………そう、ですか……」


 エルルは複雑そうだ……そりゃそうだ。最後に会ったのは1歳だもんな
 クエーナさんはクルルの元に


 「クルルは生まれたばかりだったわね…私も、バザルドの事も知らない…私が、守ってあげられなかったから……」
 「…………」


 すると今度はレオパールの元に


 「あなたが、この子達の母親ですか?」
 「……よしてくれ、そんなんじゃない。母親はアンタだ」
 「いえ、きっとあなたがこの子達を強くした…そう感じます」
 「………フン」


 レオパールは面白くなさそうにそっぽ向いた


 「強く…たくましく成長したのね。嬉しいわ……ホントウによかった。バザルドにも会ってあげてね」


 クエーナさんは優しく、寂しそうに微笑んだ




 「ごめんなさい、少し気分が悪くて……バザルドは夜に帰ってくるわ。それまで…休ませて貰うわ」




 そう言ってクエーナさんは奥に引っ込んでしまった……身体の震えは、まるで誤魔化せていなかった




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 俺たちはバザルドの家から出た、そして……


 「………エルル、クルル。これでいいのかい?」


 「……わかりません」
 「うん……」


 レオパールは家を見上げて……何かに気がついた


 「あの人はきっと…今のアンタ達には居場所があるって事を感じたんだ。だから再会の挨拶だけして身を引こうとしてんだよ……」


 「私もなんとなく分かりました。でも……どうすれば」
 「………わかんないよ」


 「行ってやんな……そんで、抱きしめてやんな」
 「え?」
 「そ、それだけ?」


 「ああ。それにアンタ達、肝心な事を言い忘れてる」
 「……?」
 「な、なに?」




 「アンタ達……あの人のこと、お母さんって呼んだのかい?」




 「……それは」
 「お、お母さんは……」
 「言っとくがアタシはアンタらの仮の母親だよ。ホントウの母親はあの人しかいないんだ」
 「それは……でも、あの人は…もう、私達のことなんて」
 「うん。少し……冷たかった」
 「アタシにはそう見えなかったけどね……」




 「じゃあなんで……あの人は泣いてるんだい?」




 レオパールは耳をピクピクさせて家を指さす。そういえばレオパールの耳の良さは獣人の中でもトップクラスにいいらしい




 「いいじゃん、別に」


 「え?」
 「ふえ?」
 「あん?」


 「なぁエルル、クルル…母親が2人いてもいいじゃん。むしろ凄いことだぞ?」
 「……えっと」
 「お兄ちゃん?」


 「まだ会ったばかりで気になるかも知れないけど…俺からみればお前達は間違いなく親子だよ……もう一度、行ってこいよ。今度はお母さんっていいながらな」


 そう言うと、エルルが俯いて語る


 「……私は、なんとなく分かりました。あの人が私の匂いをかいだ時……なんか、懐かしい…優しい匂いを感じました。まるで、昔どこかでかいだような……あの人の匂いだったんですね」


 「わたしはわかんない…でも…不思議なつながりを感じるの。なんだろ?」


 「行ってこい。もう一度…その思いをぶつけてこい!!」


 「わかりました。お兄さん」
 「うん。行ってくるね!!」


 エルルとクルルは、顔を見合わせて家の中に突撃していった。


 ここから先は親子の時間……俺とレオパールは顔を見合わせて苦笑した





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