ホントウの勇者

さとう

王都ブライトネーション⑧/決意の行方・みんなで



 …………あれ?
 俺、今なんて言った?
 エルルとクルルの両親……あ、やべぇ


 思考がまとまらなかった。思わず口に出た言葉
 すると……エルルとクルルはポカンとしてた


 「お兄さん?……どう言う意味ですか?」
 「お兄ちゃん?」


 メチャクチャ聞いていた。しかも視線はばっちり俺に向いてる…しかもクルルはぴったりくっついてるからしっかりと聞こえたみたいだ


 「お兄さん……説明して下さい」
 「お父さん?……お母さん?……ホントの……」


 こりゃもう誤魔化せないな……素っ裸で言うことじゃなかった


 「わかった…風呂から上がったら説明する」


 俺は立ち上がり風呂場を後にする




 エルルとクルルも上がる……2人は押し黙ってしまった……なんてこった




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 俺の部屋ではなくレオパール達の部屋で話すことにした


 風呂から上がった2人に冷たい果実水を出してやり、俺も1杯飲み干しおかわりを注ぐ…エルルとクルルにもおかわりを注いだ


 「それで……どういうことでしょうか?」
 「………………」


 クルルは黙ってしまった…少し俯いて辛そうな顔をしてる


 「実は………」


 俺はバザルドとクエーナさんの事を説明した


 「そうですか………」
 「…………」


 エルルは落ち着いているが、クルルは俯いてる


 「お兄ちゃん……わたし達にもお父さんやお母さんがいたんだね」
 「クルル……大丈夫か?」
 「……うん」


 クルルは顔を上げて俺に言う…いや、エルルにも言う


 「あのね…ブランが本当のお父さんやお母さんに会うって言って…すごく難しい顔してた。わたし……今ならブランの気持ちわかるよ。なんか、胸がもやもやする」
 「クルル……」


 今度はエルルが俺とクルルに言う


 「お兄さん。私達の両親は…【黄の大陸】の村の獣人の方ではなかったんですね?」
 「ああ、あれはきっと赤ん坊のお前達を育てるための奴隷獣人だ」
 「……そうですか」


 成り行きで言ってしまったが、これだけは確認しないと


 「エルル、クルル……これだけ聞かせてくれ」


 「……はい」
 「……なに?」


 「お前達を産んだ本当の両親に、会いたいか?」


 これだけは聞かなくては…俺としてはバザルド達に会って欲しい。クエーナさんはきっと今でも子供達の事を思っている


 「……………」
 「……………」


 沈黙……


 まだ心の整理が追いつかないのだろう……俺は本当にバカだ、なんであんな事を


 「ゴメン……今回の休暇は俺がレオパールに頼んだ。お前達の両親はきっと、お前達2人が生きてると信じてる。だから会わせてやりたかったんだ、けど……お前達に最初に話すべきだった」


 ホントにそうだ…会うのは俺じゃない。エルルとクルルだ…一体俺は何様だったんだ?


 「行くか行かないかはお前達が決めてくれ。行かないならそれでいいし、そのときはお前達の事をバザルドに伝えるだけにしておく」


 もし、エルルとクルルが行かないと言ったら、俺だけで〔ウールブル雪山〕に行こう。そこでバザルド達にエルルとクルルは立派になって戦ってるって報告してだけおく


 「じゃあ…おやすみ」


 俺は部屋を出て自分の部屋へ向かう




 外は、しんしんと雪が降っていた




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 朝になると雪はやんでいた。外には除雪用の魔導車が数台走っているのが見えた


 朝食を食べるためにエルルとクルルを誘う…すると、部屋から出てきた2人は、笑顔で俺を出迎えた


 「おはようございます。お兄さん」
 「お兄ちゃん……ふぁぁ…おはよ~……」


 エルルは笑顔、クルルは笑顔だが眠そうだ。あれ、レオパールは?


 「お母さんならまだ寝てます。出発するなら起こしてくれと言ってました」
 「そ、そうか……」


 アイツどんだけ吞んだんだよ……まぁいいか


 「よし。ご飯にしよう」
 「はい」
 「は~い」




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 朝食を終えると、エルルとクルルが俺の元に来た


 「………どうした?」


 俺の質問に、エルルとクルルはしっかり答える。どうやら答えは出たようだ


 「お兄さん。私達…昨日話し合って決めました」
 「うん、だから夜更かししちゃったんだ」
 「そうか、それで……どうする?」




 「行きます。ホントの両親に会わせて下さい」




 エルルとクルルの強い決意が伝わってきた


 「いいんだな?」
 「はい。どんな人か気になりますし……その、やっぱり両親ですから」
 「お父さん、お母さん……えへへ……でも……」
 「ん?…どしたクルル?」


 「ホントウに……大丈夫かなぁ…わたしとお姉ちゃんのこと、分かるのかなぁ」


 クルルの心配はもっともだ。突然現れた子供が自分の娘、なんて言われて納得できるかどうか……でも、間違いないと思うんだよなぁ。エルルの性格はどちらかといえばバザルドに似てるし、容姿なんて2人ともクエーナさん似だもんな


 「大丈夫。心配すんな……あ、そうだ」


 出発の前に、レンカ先生の所に行かなきゃ!!


 
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 そんなわけで魔導車に乗ってやって来たのは〔スノウ孤児院〕


 いきなり休みくれ!! なんてどうなんだろう。社会人としての品性が……あれ? 俺って社会人だっけ。冒険者ってどうなんだろうか?


 とにかく行くか。この時間だと朝食が終わった頃だ…ヤバい、いつもだったら皆とご飯食べてんのに、今日はエルルとクルル、起きたレオパールと一緒だった


 俺は玄関を開けて中に入る……やっぱり朝食が終わってた。皆で食器を片付けてる光景が見えた


 「おはようございます!! スミマセンでした!!」
 「あら? ジュートくん?」


 園長先生が頭を下げた俺を不思議そうに見る


 「遅刻してスミマセン……あと、お願いがあってきました」
 「お願い?……どうしたの?」




 「それと…その子達はどなた?」
 「え?」




 俺の後ろには、エルルとクルル、レオパールがいた




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 「じゃあいくよ~っ!! そりゃっ!!」
 「よっと!! まだまだぁっ!!」
 「あははっ!!」


 クルルが子供達とボール遊びをしてる




 「はい。これでこうして…出来ました」
 「おお、お姉さんすごい!!」


 エルルが女の子達とあやとりをしてる




 「どうした? ほら、かかってきな」
 「いっくぞぉぉぉぉっ!!」


 レオパールが獣人少年達に木剣で稽古を付けている


 「ははは、いいねぇ…大きくなったらウチの傭兵団にきな。可愛がってやるよ」
 「ホント!? よーし!!」


 ついでに勧誘も……どうしてこうなった


 俺は別室でレンカ先生と園長先生に話をしてる


 「と、言うわけで……あの2人のホントの両親の所へ行きます。たぶん2週間くらい留守にしますんで……申し訳ないですが…」


 そう言うとレンカ先生が明るく言った


 「全く…ホントの両親に会えるなんて、そんな嬉しいコトを反対するとでも思ったの? ジュートくん、ちゃーんと2人を連れて行くのよ?」
 「レンカ先生……はい。わかりました!!」
 「ふふ、こう長く孤児院をやってるが…両親に会える子供なんて滅多にいないからねぇ。嬉しいもんだ」


 園長先生も自分のことのように喜んでいる


 「ありがとうございます。よし、今日はここで過ごそう。出発は明日にしよう!!」


 そういってエルルとクルル、レオパールの元に行きその旨を伝える。3人とも了承してくれたので、今日はみんなで孤児院で過ごす


 結局、夕食までごちそうになって宿に戻った


 「出発は明日だ。今日はゆっくり休めよ」


 「はーい」
 「はい」
 「ああ、今日の酒は控えめにしとこうかねぇ」




 部屋に戻りベッドに入る……睡魔はすぐにやってきた




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 翌日、俺たちは門の前に集まっていた


 「よし、じゃあ行くか。目指すは〔オボロートニ雪山〕だ」
 「はい!!」
 「うん!!」
 「ああ」


 各自の気合いはバッチリだ。魔導車に乗り込んで出発進行!!


 「お兄ちゃん。また孤児院で遊べるかな?」


 クルルが俺の隣で言う


 「当たり前だろ? それに、約束もしたしな」
 「うん」


 クルルはにっこり笑い、俺の膝に頭を乗せる…運転しにくい




 子供達とした約束……またみんなで遊ぶ


 またみんなでワイワイ騒ごうぜ、今度はブランも誘ってな












































































































 しかし、その約束が果たされることはなかった





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