ホントウの勇者

さとう

王都ブライトネーション⑦/先生として・告げる真実



 俺は落ち着いたレンカ先生といろいろな話をした


 俺とクラスメイト達が召喚されたこと、友達を助ける為に戦ってること、ザンク達ととの出会い、エルフの地で戦ったこと、ザンク達の目的、力を奪って無力化したこと···レンカ先生は黙って聞いていた


 「そっか···ザンク達はまだ諦めてないんだ···」


 どこか悲しげに呟くレンカ先生···先生は俺に向き直り改めて自己紹介した




 「改めまして···私は花海はなうみ連華れんか。【花神ヌーヴェマリーエ】の〔神の器〕です。よろしくね」




 レンカ先生は優しく微笑んだ




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 レンカ先生はこの世界に来てすでに10年、ザンク達とは共に行動していたが、神の力の強大さ、自分が戦いには向いていないと自覚し、ザンク達から逃げ出したそうだ


 そして、この〔王都ブライトネーション〕で園長先生と出会い、もともと子供好きだったのもあり、全ての力を捨ててこの孤児院に生涯を捧げる決意をしたそうだ


 「ザンク、サソリ···クイナ、マイト···みんな元気かなぁ。逃げ出した私が言うことじゃないか···」
 「先生は···神の力に精神を侵食されないんですか?」
 「······少しづつね、戦うことを辞めてから私の中の神が侵食を始めたの···でも、わかるの···【花神】は望んでないって」
 「どうしてですか?」
 「【花神】は···子供好きだからね。10年も一緒だからわかるのよ、この子は認めないだろうけどね」


 そう言ってレンカ先生は胸に手を当てる。そこに神の意思があるかのように


 「たぶん、神の意思じゃなくて「力」そのものが私の身体を侵しているんだと思う。「力」を使わなければ普通に生きられるわ」
 「そうですか···よかった」
 「私のことより、ジュートくん···あなたのほうが···」
 「俺は大丈夫です。ちゃんと仲間を救いますから」
 「······強いのね。私とは大違い···」


 レンカ先生は悲しげに微笑む。俺にはキチンと言うべきことがあった


 「レンカ先生···本当にごめんなさい。先生を苦しめるようなことを···約束します、この事は誰にも言いません。俺が会ったのは心優しい子供達のお母さんのレンカ先生です」
  「······ありがとう。本当にありがとう···」


 レンカ先生は頭を下げて礼を言う···話してよかった


 「私じゃ何の力にもなれないけど···ごめんなさい」
 「いいんです。これは俺の戦いですから」


 これは本心だ。レンカ先生を巻き込むことは絶対にしない


 「じゃあ帰りますか。だいぶ時間経っちゃったし、子供達が腹お腹空かせて待ってますよ‼」
 「そうね···よーし、帰りは走って帰ろっか‼」




 レンカ先生は走り出す···俺も負けじと走り出した




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 いつも通りに食事をして、子供を寝かしつけて宿に帰る…すると、俺の部屋から人の気配がした


 「おかえり~っお兄ちゃん。あとただいま!!」
 「こらクルル、お兄さんを困らせないの」


 扉を開けて出迎えてくれたのは、仲良し姉妹のエルルとクルル。クルルは俺に飛びつき顔をこすり付け、エルルはそんなクルルを引っぺがす


 「あん、お姉ちゃ~ん。何すんの~?」


 引っぺがされたクルルは不満顔だ。それを無視したエルルが言う


 「もう…あなたも年頃の女の子なんだから、もう少し恥じらいを持ちなさい。いくらお兄さんでもくっつきすぎよ?」


 エルルの言うことはもっともだ。しかしクルルは不満を隠そうともしない


 「お兄ちゃんならいいもん。お姉ちゃんはお兄ちゃんにくっつきたくないの?」


 そういってクルルは再び俺にくっつく。仕方ないので頭を撫でて耳の裏をカリカリしてやる


 「わふぅ……きもちいい……」
 「くっ……わ、わたしは……」


 エルルは葛藤してる…どうやら発情期は過ぎたようだな、俺に対する明確な拒絶がない…すると、ここにいた第三者が呆れた声をかけてきた


 「あんた達…もういいかい?」


 レオパール…すまん。お前には気づいてたけど、俺にとっての優先はエルルとクルルだ


 「まったく。ジュート、話がある…いいかい?」
 「ああ。わかった」


 クルルをあやしながらレオパールに頷いた


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 レオパールの部屋に移動すると、一人の獣人男性がいた……デカい、2メートル以上ある。耳としっぽからしてクマの獣人だ。しかも背中にバカでかい斧を背負ってる


 「こいつがウチの副団長のゲルノさ。さぁ、挨拶しな」


 ゲルノと呼ばれたクマ獣人は一歩前に出る……なんか怖い
 そして手を胸に当てて挨拶した…どうやら傭兵式の挨拶らしい


 「初めましてジュート殿。吾輩…いや、私はゲルノ。この〔激獣兵団シバテリウム〕の副団長を務めております、以後お見知りおきを」


 わがはい……リアルでそんなこと言う人初めて見た。よく見ると腕と足に怪我をしている…そういえば副団長がケガしたって言ってたっけ


 「あんたに話しておきたいのは、コイツが戦ったモンスターについてさ」
 「どういうことだ?…あ、その前に」


 俺はゲルノさんの怪我を魔術で治す。怪我人がいたら治さないとな…俺の気分の問題だ


 「おお……」
 「ああ、済まないね」


 レオパールは今気がついたように言う。ゲルノさんは驚いていた




 「ありがとうございますジュート殿…それでは早速……」




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 ゲルノさんが言うには…どうやらこの辺りのモンスターが活発に行動してるようだ。この辺りに生息しないモンスターがいたり、やたらモンスターの統率がとれていたり…今までこんなことは無かったそうだ


 「考えられるのは……【魔神獣】でしょうな」
 「なるほどね、でも【魔神獣】は討伐されたはずだろ?」
 「いや、それは【白の特級魔術師】の報告のみで、だれも死体を確認していない。もしかしたら……裏があるかもしれません」
 「ふむ…用心が必要かねぇ……」


 要は……気を付けろって事か?


 「ジュート、アンタなら心配ないと思うが気をつけな。なーんかきな臭い…アタシの勘がそう言ってる」
 「わかった。まぁ【魔神獣】がいたら始末しとくよ」
 「………アンタならホントにしそうだね」


 エルルとクルルはポカンとしてる……このタイミングで言うって事は…


 「ジュート、アタシ達は新拠点の件でしばらく町に留まる。エルルとクルルを預けるからアンタの用事・・・・・・を済ませちまいな」


 それは……エルルとクルルをバザルド達に会わせるって事か。でもそれには必要なことがある


 「そうか…でもそれはアンタも一緒だ。そこだけは絶対に譲れない」
 「……………」


 レオパールは顔をしかめてる


 「アンタは母親だ。どんな結果だろうと見届ける義務がある…悪いけどどんな手を使っても連れてくぞ」
 「…………ハァ」


 レオパールはため息をついてゲルノさんの方を向く


 「ゲルノ、アタシ達はしばらく留守にする。新拠点の件はアンタの決定に従うよ」
 「だ、団長!? それはどう言う……」
 「頼む……」
 「……………あんたのそんな顔は久しぶりだな。迷うような、子供のような……よく分からんがここは吾輩が決めていいんだな? 後で文句言うんじゃねぇぞ?」
 「ハッ、アンタとはもう40年の付き合いだ。今更アンタの決めたことにガタガタ言わないよ」


 ゲルノさんの話し方が砕けたようになる…きっとこっちが本来の姿なんだろう


 「よし。出発は明日だ…エルル、クルル、明日から休暇だよ!!」


 今まで蚊帳の外だったエルルとクルルはここで覚醒した


 「ホントっ!? やったぁ!!」
 「お休み……嬉しいです」


 エルルは小さく喜びクルルは全身で喜ぶ。対照的な姉妹だな……


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 話は終わりレオパールとゲルノさんは町の酒場に繰り出していった…どうやら団員が何人かいるらしく、その人達と宴会をするようだ


 そして俺たちは……


 「お兄ちゃんっ温泉はいろーっ!!」
 「おう。じゃあ行くか」


 部屋でのんびり。するとクルルが温泉に入りたがったので一緒に行く…すると


 「だ、ダメよクルル!! お兄さんとは別にしなさい!!」
 「え~…なんで?」
 「お、男の人と女の子は別に入るの!! 昨日は許したけど…今日はダメ!!」
 「ヤダ」
 「…………」


 ヤバい。エルルとクルルの空気が変わっていく


 「あーそうだな。エルルの言うとおりだ、昨日一緒だったから今日は別にはいろう、な?」
 「え~…お兄ちゃんはお姉ちゃんの味方なの……?」
 「そうよ。ねぇクルル、私と一緒に入りましょう?」
 「…………うん」




 と、言うわけで……今日は1人でゆっくり入るか




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 1人でのんびりと湯船につかる……すると


 「お兄ちゃ~~んっ!!」


 クルル……まぁそんな気はしてた


 「クルル…エルルはどうした?」
 「お姉ちゃん? 今頃1人で温泉はいってるよ」
 「……………」


 クルル…けっこうやるな、あのエルルを出し抜くとは


 「お兄ちゃん、頭と身体あらって~っ!!」
 「はいはい……」


 クルルは巨乳を揺らしながら洗い場に向かっていく。仕方ないな……


 「ほら、背中…動くなよ」
 「くすぐったい~~っ…あははっ!!」


 「しっぽもいいか?」
 「うん。あ、優しくね?」
 「はいはい」


 クルルのしっぽはフサフサで柔らかい。手触りもよくずっと撫でていたくなる


 「ううん……あ、んっ」
 「どした?」
 「くすぐったい……あふ」


 しっぽを洗い、次は二の腕…そして


 「ほら、前は自分で洗いなさい。あと足もキレイにな」
 「え~~っ!! お兄ちゃんが洗ってよ~~っ!!」
 「ダメ、いいか。女の子は男に簡単に身体を触らせちゃダメなんだぞ?」
 「それお姉ちゃんも言ってた。お兄ちゃんはいいのに…」
 「俺はお前とエルルの兄だからな。まぁ今だけだけどな」
 「お兄ちゃんはいいの?」
 「今だけな。これからは1人で洗えよ?」
 「う~~っ…お兄ちゃんが言うなら…わかった」


 クルルはしぶしぶ納得した。これでエルルも安心かな


 「よし、頭を洗うから耳を閉じてな」
 「は~い」


 耳をパタンと閉じた状態で頭を洗う…クルルは気持ちよさそうにしてる


 「はい、おしまい」
 「ありがと、お兄ちゃん」


 クルルはにっこり笑う……この笑顔を曇らせたくない。バザルド達との出会いがこの姉妹にどんな影響があるか……ん?


 「クルル~~~っ!!」




 怒りのエルルが現れた……素っ裸で




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 「クルル、アナタねぇ……私を出し抜くなんていい度胸してるじゃない!!」
 「わわわ、助けてお兄ちゃん!!」


 そう言ってクルルは俺の後ろに隠れる…こら、くっつくな


 「お兄さん!! クルルを渡して下さい!!」
 「いいけど、ほら」
 「やだぁ!!」


 エルルは素っ裸で仁王立ち。胸とか下半身が丸見えだ、しかもしっぽがピンと立ってる…こりゃかなり怒ってるな


 「クルル、お姉ちゃんとの約束を破ったのは悪い事だ。ちゃんと謝りなさい」
 「……は~い」


 そう言うとクルルは俺の後ろから出てエルルに向き直る…素っ裸で、というかここにいる全員が裸だ。俺も前を隠してねーし


 「お姉ちゃん……ごめんなさい」
 「……はぁ、もう…謝ったからよし。ここまで来たらもういいわ、お兄さんと一緒に入りましょ」
 「……うん!!」


 エルルはクルルの頭を優しく撫でている。やっぱり姉なんだなぁ…


 「っ!? お、お兄さんっ!! 前を隠して下さいっ!!」
 「ん?……まぁ気にすんな。ほらエルル、湯船につかる前に身体洗え。ほら、こっちおいで」
 「えっ…あ、ううう……」


 エルルは顔を赤くして悶えてる……どうしたんだ?


 「お、お願いします……」
 「おう、ほら後ろ向いて」


 俺はクルルにしてやったように身体を洗う。しかしエルルは身体を丸めてしまい洗いにくい


 「エルル?…大丈夫か?」
 「…………はい」


 か細い声で返事する…どうしたんだ?
 クルルを見ると、湯船でリラックスしてた


 「じゃあ頭な」
 「あ、はい…」


 頭を洗うとなぜか嬉しそうだ。気持ちいいからな……


 「よし、終わり」
 「ふう…ありがとうございます」


 俺も適当に身体を洗い湯船に……すると、クルルがくっついてきた


 「ん?……どした?」
 「ん~~……なんとなく」




 俺たちはしばらく無言で湯船につかっていた……




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 温泉につかりながらこれからのことを聞く……


 「なぁ、お前たちはこれからどうするんだ?」


 「私達ですか?……私達はこのまま【白の大陸】の新拠点で活動します……ブランがいるから王族はお得意様になるって、お母さんが言ってました……」


 エルルの答えは途切れ途切れだった……どうやら温泉が気持ちいいらしい…わかるわ~……


 温泉は気持ちをもおおらかにさせる……




 「なぁ、エルル…クルル……」


 「はい………?」
 「ん~~~?」








































 「実の両親に会いたいか?」


















 そんな質問が出てしまった





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