ホントウの勇者

さとう

王都ブライトネーション⑤/図書館・レンカ先生



 町で食材などの買い物を済ませ、俺は颯爽と図書館にやって来た


 近くまで来て気づいたが、図書館の隣には本屋が併設されている···ちくしょう、なんてこった···この町は最高すぎる


 入館料を払いさっそく中へ······すると


 「おお·········」


 想像通り···そこは蔵書の海だった


 体育館が丸ごと図書館になったような場所だった。階層は前部で3つ、階段がありそこを登ると細い通路にでるようだ。全体的に吹き抜けで、1階からでも3階の様子が見える


 本のジャンルは様々で、物語もあれば絵本とかもあるし、モンスターの生態やお偉いさんや冒険者の自伝、大陸の地図や魔術書などキリがない···どこから攻めるべきか悩む


 ここにいる人はみんな、魔術師や学者っぽい人など、インテリタイプの人ばかりだ。みんな黙りこくって本を読んでる




 俺はとりあえず···物語から攻めてみるか




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 気が付くとお昼を過ぎていた


 ここの物語はどれも新鮮だ。勇者が無双する物語や、神を題材にしたお話、1人の男が王になるまでを書いた物など飽きが来ない。これ程とは思わなかった···この町は素晴らしい


 俺は立ち上がり、腹ごしらえをするために図書館の別スペースに移動する。ここは飲食可能なスペースで、近くには軽食販売何かもやっている。俺はそこで焼いた肉をパンに挟んだ簡単なサンドウィッチと、果実水を購入して食べた


 さて、読書を再開しますか




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 気が付くと3時を回っていた···ふむ、このくらいにして本屋にでも行くか


 久しぶりの読書は実に心地よかった。ここ最近、登山や戦いばっかりで疲れていたが、久しぶりの文学は俺の心をキレイにしてくれた


 「········うん」


 次は···静寂さんと羽蔵さんを連れて来よう


 少しだけ寂しい気持ちで、俺は本屋に向かった




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 本屋の規模はそんなに大きくなかったが、俺としては大満足だった


 ジャンルは物語や絵本、この世界の純文学などで、広さは教室くらいで、壁一面の本棚に本が敷き詰められていた


 この世界の文字が読めてホントによかった···


 暫く本を物色し、気に入った物を5冊ほど購入···〔セーフルーム〕にある俺の自室の本棚に転送した


 ホクホク顔で本屋を後にする···そして




 「おわっ⁉」
 「きゃっ⁉」




 本屋の出口で、女の人にぶつかってしまった。女の人が抱えていた数冊の本が地面に落ちる


 「す、すみません。ボーッとしてました‼」
 「いえ、大丈夫です」


 女の人はニッコリ笑い屈む···それより早く俺が本を取り、女の人に差し出した


 「ありがとうございます···」
 「いえ···ホントにすみませんでした」


 そして、女の人は去って行った


 うーむ、少し浮かれ過ぎた···気をつけよう···ん?


 俺の足元に何かが落ちていた。これは···サイフかな
 紫の折りたたみのサイフ。もしかしたら今の女の人が落としたのかも···マズいな。届けないと‼


 俺は急いで本屋を出て辺りを見回す······いない


 どうしよう···中を見るのはマナー違反だし、警察なんてここにはない。遺失物届けなんてあるわけがない


 サイフをよく見ると刺繍がしてあった···花の模様が縫われてる。これは···バラみたいだな


 とりあえずサイフをポケットにしまい町を歩く···可能性は少ないが、さっきの女の人を探す為だ




 参ったな···見つからなかったら明日また来よう




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 この日は結局見つからなかった···仕方なく宿に戻り、温泉につかる···やっぱ気持ちいいわ〜···明日もう一度、探してみるかぁ〜···




 風呂から上がりベッドに横になる······すぐに睡魔が襲ってきた。今日はよく眠れそうだ···




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 次の日···本屋で時間を潰しつつ、例の女の人を探す。特徴は長い黒髪に大人しそうな25・6歳の若い女の人だ。顔は覚えてるからすぐにわかるだろう


 しかし······この日も現れることはなかった。はぁ···どうしよう


 仕方なく宿屋に戻る···すると、途中で小さな男の子が辺りをキョロキョロしてるのを見かけた。しきりに辺りを見回してウロウロしてる······これってもしかして


 俺は近づいて男の子に話しかけてみた


 「こんにちは。何か探し物かな?」
 「ひっ⁉······うう」


 ヤバい、泣きそうだ···よし


 「あ、あそこに美味しそうなパンが売ってるよ。食べようか?」
 「············うん」


 よし。食べ物作戦は無事に成功だ‼
 じゃあさっそくパン屋へ行こう


 俺は男の子の手を引いてパン屋へ。そして、焼き立てのふわふわパンを買って、男の子と2人で分けて食べた


 「ふぅ···ごちそうさま」
 「ごちそうさまー‼」


 お腹が膨れた男の子はすっかり元気になったようだ。今ならいろいろ聞けるかも


 「所でキミ···ドコから来たんだい?」
 「······わかんない」


 あちゃー···やっぱり迷子か


 「お家はわかる?」
 「······わかんない。レンカ先生とはぐれちゃったから···どうしよう···」


 レンカ先生。キーワードは先生か···ってことは学校? それとも何かあるのか?


 「よし。じゃあ俺と一緒にお家を探すか‼」
 「うん···ありがとう」


 俺は男の子の手を引いて歩き出す。町は広いけど座っててもしょうがない。ここは行動あるのみだ‼






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 町をぶらつくこと一時間……進展はない


 手がかりは「レンカ先生」のみなので、町の人から聞き込みしながら歩くが、正直かなりキツイ……この町は道具屋や服屋が多く、お客さんの入りが多い店のため期待していたが、今のところアタリはない。まいったな……そんな時だった


 「レンカ先生?…ああ、知ってるよ。〔スノウ孤児院〕の先生だろ?」


 よっしゃぁ!! アタリを引いたぜ。8軒目くらいの道具屋でそれらしき先生の情報が手に入った。さっそく孤児院の場所を聞いてそこへ向かう……っていうか、この子は孤児だったのか


 「じゃあ行こうか。大丈夫?…疲れてないか?」
 「うん。早くいこ!!」


 子供に引っ張られて孤児院へ…場所はこの道具屋から歩いて10分ほどの場所だった。近くに公園があり親子で遊んでいる光景や、子供達が雪遊びなんかしている。なんとも平和な光景だった


 その公園の隣に〔スノウ孤児院〕はあった


 規模は大きくもなく小さくもない。2階建てのレンガ作りで、入り口には大きな雪像が建っていた…子供達の作品だろうな。庭は狭くなにもない、どうやら遊び場は専ら公園みたいだな


 「ここで間違いないか?」
 「うん!!」


 よかった…じゃあ早速行くか


 俺は子供と手を繋いで〔スノウ孤児院〕へ入っていった


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 「ただいまーっ!!」


 子供が玄関で大声を出す……すると、奥から1人の高齢女性が駆け込んできた


 「ポリオ!! ああもう…アナタはこんなに心配かけて……」
 「う……ご、ごめんなさい…」


 女性は子供に近づき……優しく抱きしめた


 「無事で良かったわ……ほら、中へお入り。みんなでおやつを食べましょ」
 「おやつ!! やったーっ!!」


 ポリオと呼ばれた少年は靴を脱いで中へ駆け出す…すると途中で立ち止まり、俺に向かって笑顔で答えた


 「お兄ちゃんありがとっ!!」
 「ああ、もう心配かけるなよ」


 ポリオはニカッと笑うとそのまま奥へ消えていった……やれやれ


 「あの…アナタがポリオをここまで……?」
 「はい。それじゃあ俺はこれで……」


 そのまま立ち去ろうと振り返り、玄関の引き戸を開けた……すると




 「うおっ!?」
 「きゃあっ!?」




 デジャブ……なんか覚えがある光景だ




 俺の目の前に黒髪の女性が立っていた




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 女性は俺より少し背が低い…なので少し見上げる感じで俺を見ていた…が、すぐに後ろの高齢女性に話しかけた


 「園長先生!! ポリオが見つかりません…どうしましょう。このままじゃ、ああ……」


 うろたえてる……ポリオって俺が連れてきた子だよな? すると高齢女性、いや…園長先生がほっこりとした顔で告げる


 「安心なさい、レンカ。立った今こちらの方がポリオを送り届けてくれた所さ」
 「え?……ええっ!?」


 この人がレンカ先生か……あれ?…どこかで……あああっ!?


 「あ、あの…以前本屋にいらっしゃった方ですよね?」
 「え?………ああああっ!?」


 どうやら気がついたようだ。そういえばこの人が買ってたのは絵本だったよな…ここの子供達に見せるために買ったのか?


 「まさかこんな所で……あ、そうだ!! これ、拾ったんですけど」
 「あ、ああーっ!! 私のサイフっ!?」


 やっぱり。でも運がよかった…まさかこんな所で再会できるとは。これで用事が二ついっぺんに片づいた。今日はよく眠れそうだ


 女性にサイフを返す…すると園長先生が言う


 「やれやれ、レンカ…あなたはホントにそそっかしいんだから」
 「うう…反省します」


 この人がレンカ先生か…表情がコロコロ変わる明るい人だ


 「あの…よろしかったらお茶でもいかがですか?…お礼もしたいので」
 「あー…いや、お礼はけっこうです。じゃあお茶だけで」


 お礼はお茶で結構。実はのどが渇いていたのでお茶だけ貰って帰ろう。ごちそうになります


 「それじゃ上がって下さい。ふふ、熱い果実湯を入れますね」




 明るく微笑むレンカ先生の後に続き、俺も上がらせていただいた




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 「へぇ、じゃあジュートさんは【赤の大陸】から来たんですね」
 「はい。そこから各大陸を回ってるんです。この前は【緑の大陸】でした」
 「おやまぁ…若いのにたいしたもんだ」


 別室で温かい果実湯をごちそうになりながらいろいろお話をする。不思議と居心地が良く話は弾み、気がつくと一時間も経っていた


 「ここはレンカ先生と園長先生でやってるんですか?」
 「そうですね。子供達は20人ほどなので…王都から支援を受けてやってます。親を失った子供はどこにでもいますから……」


 レンカ先生は悲しそうに呟く


 「さぁて、そろそろ子供達がお昼寝から起きる頃だ。あたしは夕食の準備に取りかかろうかねぇ」
 「はい。じゃあ私は子供達の相手をしますね」


 園長先生もレンカ先生もいきいきしてる。ホントに子供達が好きなんだなぁ…


 「あの、俺も子供達と遊んでいいですか…?」


 自然とそんな言葉が出ていた


 「えっ?…いいんですか?」
 「はい。さっきの…ポリオでしたっけ。その子に挨拶もしたいですし」
 「……ふふっ。じゃあ一緒に行きましょうか!!」


 レンカ先生と一緒に子供達のいる大部屋に行く。するとすでに子供達は起きて布団を片付けていた。凄いな、しっかり教育されてるな


 「あ!! お兄ちゃん。どうしたのー?」


 ポリオが俺を見つけて近寄ってくる。他の子供達は見知らぬ男が入ってきたので警戒してる…しかし、ポリオがなんのためらいもなく近づいてきたので今度は興味を示していた


 「ああ、せっかくだし遊びに来たんだ」
 「ホント!? よーし、じゃあみんなで鬼ごっこしよう。お兄ちゃんがオニね!!」
 「え?…ちょ、マジで?」
 「みんな逃げろーっ!!」


 わーっと子供達が散っていく。大部屋の中をぐるぐる駆け回り俺を挑発し、楽しそうに駆け回る


 「わーっ!!」
 「か、レンカ先生…?」


 レンカ先生も子供に戻ってはしゃいでる………いいぜ、上等だ!!




 「行くぜぇっ!! 俺から逃げられると思うなよぉっ!!」




 鬼ごっこが始まった……俺も子供に戻ってはしゃごう!!




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 鬼ごっこはなかなか過酷だった。飛び回る子供達に踏みつぶされたり、1人を追い詰めたら集団で飛びついてきたり……挙げ句の果てにレンカ先生に裏切られたり……疲れた


 「さぁ、夕食の時間だよ。みんな手を洗っておいで!!」


 園長先生の一言で遊びの時間は終わり、夕食タイムに


 「もちろんジュートさんも食べますよね?」
 「は、はい」


 なんかレンカ先生が恐かった。ここでさよならは流石にできない


 「おれ兄ちゃんのとなりーっ!!」
 「あ、ずるいずるい!!」
 「わたしもっ!!」


 子供は俺の隣を奪い合ってるし……やれやれ


 「ほーら、ケンカすんな。俺の席は……ここだっ!!」


 俺は園長先生とレンカ先生の間に滑り込む


 「あーっ!! レンカ先生ずるいーっ!!」
 「園長先生もいいなぁっ!!」
 「ちょっ、ジュートさん!? 私が子供達に恨まれちゃいますよぉっ!?」
 「おやおや…こりゃまいったね」




 こうして夜は更けていった………




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 夕食も終わり今度は寝る時間…すると


 「はいみんな。自分の身体は自分でキレイにしましょうね」


 レンカ先生がそう言うと全員が生活魔術で身体を消毒した。そして布団をしいて全員が潜り込み、おやすみの挨拶をして明かりを消す……


 「今日はありがとうございました。こんな時間まで……」
 「いや、俺も楽しかったです。それにしても、レンカ先生は魔術が使えるんですか?」


 何気ない質問だったが、レンカ先生は身体を強ばらせた


 「ま、まぁ…その、中級魔術師程度の力ですが。簡単な生活魔術を子供達に教える程度のレベルですけど」


 恥ずかしいのかな?……でも、中級ってそこそこの強さだぞ?


 「と、とにかく…ありがとうございました」
 「は、はい…あの」


 なんでこんな気持ちになったんだろう…自分でもわからない


 「明日も…来ていいですか?」


 そんな言葉が俺の口から出た
 子供達と騒ぐのは楽しかった…1人で本を読むのもいいけど、やっぱり誰かと一緒に遊ぶのは楽しい。それに、子供達が楽しんでるのは気のせいじゃないはずだ


 「構いませんよ。むしろこちらからお願いしたいくらいですわ」


 そう答えたのは園長先生だった。にこやかに微笑んでいる


 「そうですね。ジュートさんがよければ…」
 「はい。町を出るまでにまだ時間がありますんで」


 レオパール達が戻ってこないと次に進めない。エルルとクルルの両親…バザルドの元へ行かなくちゃいけない




 こうして俺は、この孤児院の臨時職員として過ごすことになったのだった





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