ホントウの勇者

さとう

王都ブライトネーション④/真名・ブーランジェ・クロッシュラ・ピュアブライト



 今日は王城へ行く日……ブランの両親であるこの【白の大陸】の王様の所へ向かう日だ


 朝食を食べてさっそく王城へ向かう…ブランはガチガチに緊張して俺の手を離さなかった


 「ブラン、大丈夫だ」
 「お兄さん…わたし、恐い」
 「大丈夫…俺がついてる」


 俺には声を掛けることしか出来ない…ここを乗り越えるのはブランの意思でだ


 エルルとクルルはすでに仕事モード。真面目な雰囲気で俺達の前を歩いている。レオパールは後方を歩く···ブランの護衛は完璧だ




 そのままブランと手をつなぎ王城へ歩く···がんばれブラン




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 王城は遠くからも見えていたが···近くで見ると立派なもんだ


 外観はまんま城、全体的に雪が積もって白く化粧が施されどこか神秘的な雰囲気を醸し出してる


 「············」
 「ブラン···」


 俺はブランの手を少し強く握る


 「うん······大丈夫。お兄さん、ありがとう」


 ブランは俺の手を外し、しっかりと前を向いて歩きだした




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 王城の門でレオパールが門番と会話してる。すると門番が慌てて門の奥に消えた


 すぐに別の人間が案内してくれる。王城の中に入り、控室に到着···なかなか広くて暖炉が燃えていた


 レオパールが何やら兵士に紙を渡す···すると、何やら年配の法衣を着た人間が、レオパールに何かを渡した


 「エルル、クルル···アタシ達はここまでだ。報酬も貰ったし、このままゲルノ副団長が来るまでこの町で待機だ」


 「······はい」
 「······うん」


 エルルとクルルは明らかに俯いてる。【黄の大陸】からここまでずっと一緒だったのだ。寂しくないはずがない


 「エルル、クルル···ここまでありがとう。2人はわたしの最高のお友達だよ?」


 ブランはそう言って2人に抱きついた


 「私もです···ありがとう、ブラン」
 「ブラン〜〜〜っ‼」


 エルルは涙を堪えクルルは大泣きした。ブランも我慢出来ずに泣き出してしまう


 「やれやれ···2人とも、王都には1月以上は滞在するんだ。会う機会なんていくらでも作れるだろうさ。それにこの王都は〔激獣兵団シバテリウム〕の新しい拠点だ。お前たちがここに残ればそれこそいつでも会えるさ」


 レオパールが慰めると3人は顔を見合わせて笑った···その笑顔は、とっても可愛らしい笑顔だった 




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 いよいよ謁見の間に案内された···中は広い。兵士と文官が多く居て、その中心の玉座に王様と妹王妃がいた


 「マジかよ······」
 「········あ」


 俺は驚いた。よく見ると周りも驚いてる···ブランは王様を見て次にとなりの妹王妃を見て···視線を固定させていた


 王様は若い。多分30歳手前くらいの年齢だ。顔つきもイケメンでどことなく苦労を感じさせる···が、瞳は潤んで手足が震えてる。まるで今にも飛び出したいのを必死で堪えてるように感じた


 王妃は······本当に驚いた。しかも俺だけじゃなく周りの兵士や文官も驚いていた




 王妃は···ブランそっくりだった




 ブランがあと10年も経てばこんな風になんじゃね?···って感じの外見だった。視線はブランに固定され動かない···多分、俺は眼中にないだろうな


 すると、王様が語りだす




 「ブーランジェ···私が父であり、王である···セヴィト・クロッシュラ・ピュアブライトだ」 


 ブランはポカンとして聞き直した


 「ブーランジェ?···わたしの名前?」


 王様は眉を潜めてすぐに微笑を取り戻す


 「そなたの本当の名前だ。ブーランジェ・クロッシュラ・ピュアブライト···今までは何と?」


 「ブラン···わたしの着てた服にそう書いてあったって···イエーナお姉ちゃんが教えてくれたの」


 そういえばイエーナが言ってたな···ブランは名前を貰えずに奴隷商館で働いてたって。そこから逃げ出した時に着てた服は生まれた時にブランを包んでた布を縫い直した服だって···そこに書いてあったのがブランだと。イエーナが言うには服の汚れが酷くてその三文字しか読めなかったそうだ


 「王さま······わたしの、お父さん?」
 「ああ···そうだよ」


 王様の瞳から涙が一筋溢れる···その事を指摘する者はいない
 ブランは王妃を見つめる···そして、何故か俺を見た


 「お、お兄さん···どうしよう、どうしよう······わかんないよ···」


 ブランは涙目で混乱してる。覚悟はしていた···でも、ブランはまだ10歳。この状況についに頭が付いていかなくなったのだ。すると······




 「ヴィエラ······?」


 「············」




 王様の隣に座っていた妹王妃が立ち上がり、ブランの元へ歩き出したのだ


 その表情は凛としており、その歩みはゆっくりだが止まる事はない。きっと今ここで矢の雨が降ろうと止まる事はないだろう


 王妃はブランのすぐ側で止まり···膝を付いて両手を広げた。そして···涙を流して微笑んだ




 「おかえりなさい···愛しのブーランジェ···」




 ブランは混乱してる。でも···その笑顔が自分に向けられた、帰るべき場所だと理解した。そして···王妃の胸に飛び込んだ


 「う、うう···うぁぁぁぁぁあん‼」


 ブランの中に溜まっていた数々の思いが、この瞬間に弾けた


 ブランの涙は止まらず流れ、王妃の瞳からも涙が溢れる


 王様は右手で目元を隠す···が、身体の震えと涙のシミは誤魔化せないだろう




 兵士も文官も、何人かは男泣きしてる···10年間、離れていた親子はこの日···再会した


 
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 再会をした親子は場所を変え、話をすることにした


 場所は豪華な会議中室みたいな場所で、テーブルからソファからすべてが綺麗な装飾を施されている


 ソファには王様と王妃様が座り、王様の膝の上にはブランが座っていた···馴染むの早いな


 「ははは、重くなったな···ブーランジェ。最後に見たのは赤ん坊だったからな」
 「ふふ。それはそうよ、あれから10年も経っているのよ?」


 ブランはすっかり王様に懐き、身体をすっぽりと預けていた。そして、王様の視線は俺に来た


 「そうか、そなたがブーランジェをここまで···」


 厳密には違う。レオパール達と偶然出会って着いてきただけだ


 「そうだよお父さん。お兄さんがわたしを守ってくれたの‼」
 「あらまぁ···」


 王妃様が口に手を当てて言う···そんなに驚くことか?


 「そうか···何か礼をしなくてはな。何か望む物はあるか?」


 そんなこと言われてもな······そうだ。物じゃないけどお願いしてみよう


 「じゃあ···お願いがあります」
 「うむ。申してみよ」


 「実はこの町に、ブランを送ってくれた傭兵団が新しい本拠地を構えるんですが···その中の2人がブランの友人なんです。だから···たまにでいいんで、ブランと遊ばせてやってください」


 「·········それだけか?」
 「はい?」
 「そなたが望む物、と私は言ったのだが···」
 「俺の望みはブランの幸せです。それ以上は望みません」


 俺の答えに王様も王妃様も唖然としてた。俺···変なこと言ったかな?


 「あ、そうだ…実は………」


 「む? 何故だ?」


 「お願いします。気になるんで……」


 「わかった···そなたの望みを叶えよう」


 俺の懸念の保険を掛けておこう……念のためだけど、無駄にはならない気がする


 王様は深く頷く。これでブランはエルルとクルルに会いに行くことが出来る···王様の子供なんてそう簡単に出歩けないだろうしな。これでよし


 俺は立ち上がり···ブランに向き直る


 「お兄さん······」


 「ブラン、忘れるな···お前は1人じゃない。イエーナ、シトリン、エルルにクルル、そして俺···みんながお前を想ってる。だから···幸せになれよ」


 「······うん」


 ブランは立ち上がり、俺に抱きついた
 俺も優しく抱きしめて、頭を撫でる


 「お兄さん···ううん、ジュートさん···大好き」
 「ああ···」


 俺はブランを開放する。すると、ブランが俺の頬にキスをした


 「ありがとう···また会える?」
 「うん。必ず」




 俺は立ち上がりドアに向かい、一度だけ振り返る




 そこには···俺を見送る優しい家族の姿があった




 
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 町に戻り一度宿屋に向かう···すると、部屋にメモが挟んであった


 そのメモはレオパールが残した物で、どうやら副団長がモンスターと戦いケガをしたので、ここから少し離れた町に様子を見に行く、だからエルルとクルルも連れて行く···悪いが暫く空ける


 ということが書いてあった。流石にこれは仕方ない···エルルとクルルは今や〔激獣兵団シバテリウム〕の貴重な戦力だ


 という訳で時間が出来た。よーし、町の散策と図書館へ行こう。俺は頭の中でクロを呼ぶ


 おーいクロ、一緒に行こうぜ


 《······ムリよ》


 なんで?


 《だって···ギニャっ⁉》


 クロの呻き声が聞こえ、さらに何かが聞こえてきた


 《いい加減にしなさいこのバカルーチェ‼》


 《うっさいこのアホ天使ーっ‼ その羽ぜーんぶむしってやるぅーっ‼》


 《なんですってぇーっ⁉ アンタこそ煮込んでスープにしてやるわぁーっ‼》


 《おいやめろ‼ それはオレの酒樽···ああーっ⁉》


 《ギャぁぁぁぁぁーっ⁉ 助けてくれっすーっ‼》


 《もぐーっ‼》




 ああ、ルーチェとティエルのケンカだな···この2匹は些細なことでよくケンカする。暫くすれば収まるからほっとこう




 さーて、町に行きますか‼



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