ホントウの勇者

さとう

オボロートニ雪山③/再会の約束・いざ王都



 俺は居住区の前部ドアを開けて、運転席に入る。するとレオパールがカッと目を開いた


 「よう。大丈夫か?」
 「ふん、当然さね。アタシを誰だと思ってる?」


 レオパールはニヤリと笑う···こんな顔をしてもその野性的な美貌は輝いている。とても52歳には見えない


 俺はドアを閉めて念の為にカギをかける


 「···なんだい、カギなんか掛けて···ああ、報酬かい? こんな年寄りの身体を欲しがるなんてアンタも変わりモンだねぇ」
 「ちっげーよバカ‼ 話があんだよ‼」
 「冗談さ。くくくっ、相変わらずカワイイ坊やだ」
 「お前な······」


 何にも話してないのに疲れた···この美しい女豹獣人は相変わらずだ
 俺は後部座席に座り込み、レオパールは身体を反転させて俺と向かい合った


 「······真面目な話だ」
 「······ほう」


 レオパールもふざけた雰囲気が消え、足を組んで腕を胸の下で組む···ただでさえスタイル抜群なのに、余計に胸が強調される···が、真面目に話そう




 「エルルとクルルの······両親の話だ」




 レオパールの眉がピクリと動いた




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 「そうかい············」




 〔白牙狼〕の集落で聞いた話をそのまま伝える···バザルドとクエーナさんの馴れ初めから、エルルとクルルの誕生、人間の人さらい集団に2人が奪われるまでを


 「俺は···エルルとクルルを会わせてやりたい。バザルドとクエーナさんは今でも苦しんでる······何とかしてやりたい」


 「············」


 「レオパール······頼む。ブランを送った後で、2人をバザルド達に会わせてやってくれ」


 「·········アタシは···」


 「え···?」


 レオパールが静かに語りだす···顔を伏せたまま




 「アタシは孤児でね···母親の愛なんて知らないまま育った。生きるか死ぬかの戦場で、この大剣を恋人に今まで戦ってきた。こんなアタシが母親なんて言える立場じゃないけど···あのコ達には幸せになって欲しい」


 「本当の父親、母親···あのコ達にはそれが必要だ。アタシの元を離れる時が来た···それだけさ」


 「レオパール······」


 運転席は薄暗い···レオパールの表情は見えない


 「それに、もう会えなくなる訳じゃない。アンタには話しておくけどね、ブラン姫の依頼が終わったら、〔激獣兵団シバテリウム〕の本拠地をこの【白の大陸】に移す予定なんだ。この大陸では獣人の傭兵が少なくてね、今回の依頼料もたんまり貰えるから、王都に新しく本拠地を作る予定なのさ」


 「マジで⁉ じゃあ···」


 「ああ。【黄の大陸】は副団長に任せてアタシは【白の大陸】で家業を続ける···会おうと思えば会えるさ、それに中間地点に【緑の大陸】があればアウラの依頼も受けれるしね」


 そっか、アウラは〔血の契約書〕を持っている。それをギルドに提出すれば〔激獣兵団シバテリウム〕を呼び出すことが出来るんだよな


 「なんだよ、アンタ···抜け目ないな」
 「ふん。この大陸に入ってから覚悟はしてるさ。エルルとクルルのことよりまずはブラン姫を送る事が最優先だけどね」
 「そうだな、そこは俺も協力する」
 「ああ、期待してる。それが終わったら2人を両親に会わせよう」
 「わかった···ありがとな。あ、そういえば」
 「なんだい?」


 俺は気になってたことを聞いてみることにした


 「エルルのことなんだけと···何かあったのか? クルルはいつも通りなんだけど、エルルが何か···避けられてるというか···よそよそしいというか」


 俺の疑問にレオパールは······大笑いで答えた


 「な、なんだよ‼」
 「いや、くくくっ···気にすることは無い。別にお前が嫌われたわけじゃないさ」
 「······どういう事だ?」
 「ふふふ、獣人族のメスなら誰もが通る道さ。クルルはまだだけどね、それが終われば立派な女さ」
 「·········?」






 「発情期、さ」






 あーなるほど、獣人族にもあるんだ···




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 「今のエルルは大好きなお兄さんが、異性の男に見えてしょうがないのさ。クルルみたいにお前にベタベタくっついて頭を撫でて貰いたいけど恥ずかしい···クルルが羨ましい。そんな感情が溢れてどうすればいいのかわからないのさ」


 「ふ〜ん、俺に出来ることあるか?」


 「そうだね···あのコが求めて来たら抱いてやりな、身体はもう成熟してるから子も産める。今はまだ分かっていないが知識を得ればエルルは間違いなくお前との子を欲しがるぞ?」


 「う〜ん······それは」


 正直···俺はエルルとクルルを異性として見たことがない。どちらかといえば可愛い妹だ


 「発情期が過ぎれば落ち着くだろうが、次からは月に一度のペースで発情期はやって来る。これは獣人のメスの本能で抗うことは出来ない、上手くコントロールする術を学ぶしかないね」


 「アンタが教えてやれよ······」


 「もちろんそのつもりさ。けど初めての発情期を押さえ込むのは良くない。身体に発情の感覚を覚え込ませてから制御するのが1番いいのさ」


 なるほどね。「所でアンタにも発情期はあるのか?」なんてデリカシーのない発言はしない。紳士だからね 


 「発情期は60代まで続く。それが終われば老化が始まる···アタシは先週終わったらから問題ないさ」


 「いや、言わなくていいよ······」


 よかった、嫌われたわけじゃないのか···でもどうしよう


 
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 次の日の朝···レオパールが持っていた〔ブライトロンリーウルフ〕の肉を焼いた朝ごはんをみんなで食べる······俺とブランは残ったお粥にした。朝から肉はキツい


 朝食を終えて魔導車を発進させる···クルルは俺の隣でしっぽを振ってる···どうやらかまって欲しいみたいだ


 こういう時は頭を撫でるのに限る···ほーら、おとなしくなった


 ブランは居住区でのんびりしてる。この運転席には暖房が付いていないので、王都につくまでは居住区でのんびりしてもらおう


 エルルは相変わらず素っ気ない。しかしレオパールの話を聞いてからよく見ると、頬が赤くなり口元がもにゅもにゅしてる···まるで耐えてるような感じだ


 これから下山して〔王都ブライトネーション〕へ向かう。そこでブランを両親に引き渡す


 後部座席に座り足を組んでいるレオパールが話しかけてきた


 「ブラン姫はどうやら王の隠し子みたいだね···王妃の妹との間に出来た子供で、生まれてすぐに現王妃に奪われて売り飛ばされたみたいだ」


 何とも胸糞悪い話だ···王妃の態度次第じゃ俺はキレるかもしれん


 「おいレオパール···」


 「安心しな、王妃は病死した。王はブラン姫が売られてからずっとブラン姫の行方を探し続けていた。王妃が死の間際に喋り、そこで【黄の大陸】にいると分かって〔王都イエローマルクト〕に使者を送って捜索をしてブラン姫を見つけたのさ」


 「でもなんでブランなんだよ? 証拠でもあったのか?」


 「さあね、だがブラン姫を見た使者は顔色を変えたそうだよ?」


 ふーん、よくわからんが行けばわかるだろ




 やれやれ···次は〔王都ブライトネーション〕か、そういえば図書館があるんだよな、もしかしたら本屋もあるかも




 俺は期待に胸を膨らませ、無意識の内に魔導車のスピードを上げた



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