ホントウの勇者

さとう

オボロートニ雪山②/まさかの再会・ブランの憂鬱



 「で……何でこんなことを?」


 とりあえず拘束を解いて事情を聞く…コイツが理由もなくこんなことするはずがない


 「悪かった…とにかく今は事情を説明してる暇がない、あたし達を助けておくれ!!」


 なんか切羽詰まってるな…いつもの余裕がないぞ?
 それに、コイツがいるって事はエルルとクルル、ブランもいるって事か


 「分かったから落ち着け…エルル達もいるんだろ?」
 「ああ。ブラン姫が熱を出してね…とにかく来ておくれ」


 そう言われて行かないはずがない。ブランが熱?…急ごう!!


 「わかった、早く案内してくれ」


 ブラン……待ってろよ




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 歩いて10分ほどの所の岩場と岩場の間の空間に、エルル達はいた


 「お、お兄さん!?」
 「おにいちゃん!!」


 エルルは驚いて硬直し、クルルは涙ぐんで飛びついてきた……よしよし
 俺はクルルの頭を撫でながら奥を見ると……いた。ブランだ


 ブランは布にくるまれて苦しそうにしていた…可哀想に


 「とにかく移動しよう。みんな俺の魔導車の中へ」


 すぐ近くに魔導車を転移させて、4人を中に案内した




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 3人が見守る中、俺は魔術でブランの治療をする……すぐに体調は良くなり、呼吸も規則正しくなった。これで大丈夫だろう


 「それで…なんでこんな山奥に?」


 レオパールに事情を聞く…すると


 「そりゃこっちのセリフさ、あたしとしてはアンタがここにいる方が不思議でならないんだが……まぁとにかく事情を説明させておくれ」


 4人がけテーブルに座って温かい果実湯をエルルとクルルに、強めの酒をレオパールに出してやる


 「おっ…済まないね」
 「ありがとうございます、お兄さん」
 「ありがと、おにいちゃん」


 レオパールはさっそくちびちび飲み始め、エルルとクルルもフーフーしながら飲み始める。それにしてもさすが獣人…こんな雪山でもけっこう薄着だ。レオパールなんてお腹が出てるし…


 「おにいちゃん、これスッゴくおいしいよ!!」
 「そっか、おかわりいるか?」
 「うん!!」
 「エルルは?」
 「……え、えっと…だいじょぶです」
 「ん?…遠慮すんなよ」
 「い、いえ…ホントにだいじょぶです」


 何だろう、エルルの雰囲気が少し変わったな……以前だったらクルルと一緒にベタベタくっついてきたのにそれがない。今だって俺と目を合わせようとしない、クルルはこんなにべったりなのに


 とにかくクルルにおかわりを渡し、その頭を優しく撫でてやった


 「わふ……くぅん…」
 「よしよし……元気にしてたか?」
 「うん……気持ちいい…」
 「エルルは?……ほら、おいで」


 エルルに声を掛ける…いつもなら喜ぶが…


 「はい…元気です。お兄さんもお変わりなく……」
 「お、おう…?」


 エルルはそっぽ向いたまま返事した…何だろう、避けられてるような?


 「さーて、簡単に事情を説明させてくれ。もし良かったらアンタにも手を貸して貰いたい」


 話題を変えるようにレオパールが語り出した




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 端的に言うと、【黄の大陸】の王都で王様から依頼を受けて、ブランを【白の大陸】の王都に連れて行く途中らしい


 【黄の大陸】では、ブランとシトリンが涙の別れをし、次はエルルとクルルが涙の再会をしたそうだ。そこからは魔導車で【緑の大陸】に入り、観光しながら【白の大陸】を目指していたそうだ


 【白の大陸】に入り、ここでは寄り道をせずに王都に向かっていた。その途中で事故があり、街道が通行不能になったのでやむを得ず〔オボロートニ雪山〕を超えて向かうことにしたらしく。しばらくは順調だったがブランが体調を崩し、そこでさらにSレートモンスターの〔ブライトロンリーウルフ〕が現れて魔導車を破壊された。そこで魔導車の運転手の3人が死亡……レオパール達はブランを交互に担ぎながら山登りをしたそうだ


 しばらく進んでいると、〔ブライトロンリーウルフ〕が戻ってきた。3人で協力し倒し、周囲に血の臭いをなじませて他のモンスターをおびき寄せる餌としてモンスターを解体し、他のモンスターの注意が死体に集まっている隙に登山を続けるが、ブランの体調が悪化……このままではマズイと思いレオパールが魔導車強盗に及ぶ……そこで俺の登場……ってわけか




 「そういうことさ……頼む。王都まで、とは言わない。近くの町まで送ってくれ。もちろん報酬は払う」
 「奇遇だな。俺も王都に用があるんだ、一緒に行こうぜ」
 「………わかった。ありがとう」


 ホントは用なんてない。俺が王都を目指していたのはコイツらに会うためだ
 しかしここで手を貸さないのはなんかいやだ。嬉しそうにしっぽを振るクルルの頭を撫でながら俺は言う


 「報酬は後で払って貰う。今日はゆっくり休んでくれ……メシはまだだろ?」
 「うん。お腹すいた!!」
 「そうだね……世話になるよ、ジュート」


 素直なクルルと頭を下げるレオパールに俺は笑顔で返す




 エルルはずっと黙っていた……マジでどうしたんだろう?




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 この3人はよく食べるので、夕食は豪快に肉を焼いた
 肉だけではなく魚も焼き、パンも沢山出して3人に振る舞った


 「ウマい!! いやぁ、朝から何も食べてなくてね…本当に助かるよ」
 「おにいちゃんおかわり!!」
 「……………」


 エルルは黙々と食べていたがクルルは沢山お喋りしてる
 ここに来るまでにブランと沢山遊んだことや、モンスター退治にブランも付き合ったこと、町で食べた美味しい物などいろいろだ


 俺はブランが起きてもいいようにお粥を作った。温めるだけですぐに食べれる


 4人の晩餐は少しやかましく……楽しかった


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 疲れていたのか…エルルとクルルはすぐに寝てしまい、レオパールは魔導車の助手席で見張りをすると行って移動した。見張りくらい俺がやると言ったら頑なに拒否された…これ以上の借りを作るのはまっぴらゴメンだそうだ


 しばらく起きていると……ブランが眼を覚ました


 「ん……あれ、ここどこ?」


 寝ぼけ眼で辺りをキョロキョロしてる…
 俺は近づいて頭に手を乗せた


 「大丈夫か、ブラン…気分はどうだ?」
 「…………あれ?…お兄さん?……まだ夢なのかな?」


 俺はブランのほっぺたをさすりながら優しく言う


 「夢じゃないぞ…ほら、温かいだろ?」
 「……うん。気持ちいい……」


 今だにブランは夢見ごこちだ……俺は水を注いでブランに渡した


 「ほら。ゆっくり飲んで…お腹空いただろ?」
 「……え?…お、お兄さん?…なんで?」


 ようやく現実を理解したようだ。俺はコレまでの事情を簡単に説明した


 「そっか……お兄さんが助けてくれたんだ……ありがとう」
 「気にすんな、このまま王都まで送ってやるよ」
 「うん。あの…ちょっとだけいい?」
 「ん?……ああ」


 ブランが両手を伸ばしてきたので俺は優しく抱き上げる…軽いな




 俺はブランをしばらく抱きしめていると……ブランは静かに嗚咽を漏らした




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 しばらく抱きしめていると、ブランのお腹がきゅるると鳴った


 「えへへ…お腹すいちゃった…」
 「ははは、お粥作ったから一緒に食べよう」
 「うん」


 俺は木の器を2つ用意し、お粥の鍋を再び温める。そして木のコップに果実水を満たし、お粥と一緒にトレイに乗せてブランの元へ持ってきた。俺も一緒に少し食べることにした


 ブランはきれいにお粥を平らげた。この様子ならもう心配ないな。すると……深刻な顔で俯き、自身の心情を吐露した


 「わたし…ダメだな…【白】の魔術師なのに、ケガしたみんなを治すのが仕事なのに……一番最初にわたしが倒れちゃって…レオパールお姉さんのお友達を治せなかった……」


 レオパールのお友達……あそこで大破した魔導車のそばに埋められていた人達だな


 「わたし···本当のパパやママがここにいるって聞いて、うれしかったの······でも、みんなに迷惑かけて···」


 ブランは弱気になってるみたいだ······


 「ブラン、ここで弱気になっても仕方ないぞ。エルルやクルル、レオパールはお前を守る為に···お前を家に送り届ける為に頑張ってるんだ。お前はお前で頑張るしかないんだぞ」


 少し強く言う···ここでブランが投げ出してしまえば、死んだ人たちは無駄死にだ


 「お兄さん······うん。ごめんなさい···わたし、がんばるね。もっとがんばって強くなる」


 「ああ。ブランなら出来るさ」


 俺は優しく頭を撫でる···ブランが安心するように


 「さ、お腹も膨れたし朝までゆっくりおやすみ。明日からは俺も一緒だからな」


 「うん。おやすみ」




 ブランは毛布に包まって再び眠りについた。さて、俺も寝る前にレオパールの所へ行くか




 エルルとクルルの両親···バザルドとクエーナさんの話をしないとな



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