ホントウの勇者

さとう

オボロートニ雪山①/雪の手がかり・再開



 「オボロートニ雪山…ここにも〔白牙狼〕の集落があるんだよな?」
 《そうネ、でも…場所までは分からないワ》


 魔導車の中でクロと会話する……〔セーフルーム〕だとルーチェとティエルのケンカに巻き込まれるのでクロはこっちにいる。どうせ後で引っ張られるけどな


 〔ラソルティ大聖堂〕を出て4日…旅は順調に進んでいた


 ティエルのことはこの4日でだいたい分かってきた
 基本的にしっかり者だが、クロのことになるとダメに…というかフワフワした物に目がない。ルーチェの部屋にあったぬいぐるみを物欲しそうな目で見たり(今度買ってあげよう)、モルの柔らかさに目を輝かせたり……ギャップが激しい


 入ってすぐに部屋の掃除をしたり、アグニの酒やルーチェ達のお菓子なんかも管理し始めた。決められた時間に決められた量のお菓子しか食べることが出来なくなり、ルーチェはぶーたれてたが、クロがコレに同意したために我慢せざるを得なくなり項垂れてた…なので俺がこっそりルーチェの部屋にお菓子を送ってやってる


 アグニの酒も管理し、飲み過ぎるとキツイお叱りがアグニを襲った。コレを見てたクライブが大笑いしてアグニと一悶着あったが問題はなかった……クライブ、いいやつだった……


 そんな生活にも慣れて、ようやく〔オボロートニ雪山〕に到着した


 「まさか雪山を3回も登るハメになるとは……」
 《文句言わないノ…あ、獣人が出てきたらワタシは引っ込むから》
 「はいよ、まぁ出なくてもそのうち引っ込むことになるだろうけどな」
 《……………》


 クロは俯いて黙り込んでしまった……




 さ、さーて…3度目の登山といきますか!!




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 少しだけ雪がパラついていたがたいして問題はない
 3つの雪山の中でこの山は一番なだらかで、人間が通るための街道も整備されている


 その証拠に道幅がやけに広く、魔導車が通ったわだちもあるし…このまま魔導車で進めるだけ進もう。3度目の登山は楽でいい……すると、あり得ない物が視界に飛び込んできた




 「おいクロ……これって……」
 《……何かあったのネ》




 そこには……大破した魔導車が止められていた


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 止められていた、というよりは乗り捨てていった…のほうがしっくりくる。魔導車はワゴンタイプで俺のと似ている。運転席の後ろに居住スペースがあるタイプのこの世界では高級なタイプの魔導車だ


 車体はひどい有様だった。傷跡からみてかなりの大きさのモンスターに襲われたようだ……巨大な爪で引き裂かれたような跡が付いている。それに周囲には大きな足跡…形からして4足歩行の獣のようなモンスターだろう


 《ジュート…コレ……》
 「これは………」


 そこにあったのは不自然な地面の盛り上がりが3つ………墓だ


 地面を掘り返して誰かを埋めたのだろう。そこには岩の墓標にこの辺りに咲く花が添えられていた


 《フム……雪の積もり具合から見て、1日は経過してるワネ》
 「ああ。ここで戦って死んだんだ……」


 この魔導車を運転してた人達だろう…この人達を埋めた人は仲間なのか、それとも通りすがりの親切な人なのか……


 俺は酒ビンを取り出して墓に酒をそそぐ……そして新しい酒を開けて墓に供えた


 「どうか安らかに……」




 祈りを捧げて、俺たちは出発した




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 しばらく進んでいるとそれ・・はあった


 「………コイツか」
 《そうネ……間違いないワ》


 それは……モンスターの死骸だった。あの魔導車の持ち主を襲った奴で間違いないだろう。だが……コイツは死んでいた


 外見は巨大な狼みたいなモンスターだ。しかし顔つきは凶悪でいかにも肉食ってかんじだな。コイツを見て疑問に思った事がひとつ


 「コイツ、解体されてるな」


 そう、解体されているのだ
 しかし全てではない。牙と爪、瞳と心臓。位置からして内蔵の一部と毛皮も切り取られている。コレはまさか…この辺りに住んでいる〔白牙狼〕の仕業かな?


 《イヤ、違うワネ。仮に〔白牙狼〕だったらこんな中途半端に解体しないワ。自分たちの住処に持って行って解体するはずヨ》


 ごもっとも。俺もそう思う…って事は


 「考えられるのは……解体がここまでしか出来なかった、全ての解体が出来ない、でも素材は持って行ってる…………そうか、荷物を増やした・・・・・・・くなかった・・・・・


 《恐らくネ。コイツはSレートモンスターの〔ブライトロンリーウルフ〕…爪や牙は武器になるし、内臓は薬にもなるワ。きっと限界まで解体して諦めたんでしょうネ》


 そういうことか。じゃあ少なくともコイツを仕留められるだけの腕を持った冒険者か傭兵って事か?


 《足跡が消えてるワネ…かなり先に進んでるみたいネ》
 「このまま行けば会えるかもな」




 とにかく先に進むか……




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 そのまま進むこと半日……周囲が暗くなってきたので野営する


 木々に囲まれた割と広めの地形に、近くには大きな岩場がある。ここなら大丈夫だろう


 結局クロはティエルに連れて行かれた
 ルーチェとの長い話し合いの結果、一緒に寝るのは交互にという決まりだ。片方がクロを抱くときはもう片方がモルを抱いて寝る、というルールも決められたみたいだ……クロとモルの意思は?


 とにかく今日は一人だ……さて、外に行くか












 敵を始末しないとな……


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 俺はゆっくりと魔導車のドアを開けてわざと大きな音を立てて閉める


 そして小さな石を拾い、岩場に向かって投げつけた


 「………そこか」


 全くの見当違いの場所に投げた石は岩場にはじかれ、俺の行動に僅かに反応した気配を探り……今度こそその場所に石を投げつけた


 「………っ!?」


 いない!?………そうか、上か!!」


 一瞬で気配が消えて今度は頭上に殺意を感じる…だが甘い
 襲撃者の武器は大剣…この身のこなしは獣人か


 俺は武器ではなく〔マルチウェポン〕のアンカーショットを放ち、ワイヤーが襲撃者の身体をグルグル巻きにして拘束、地面に転がった


 俺は魔力を流してウインチを起動し、襲撃者をたぐり寄せる




 「悪いな、アンカーショットはこういう使い方もあるん……え!?」
 「チィっ……油断し……あん!?」




 魔導車から漏れる光が襲撃者を照らした




 「レ…レオパール…?」


 「まさか…ジュートかい?」




 〔オボロートニ雪山〕の頂上付近で俺は、〔激獣兵団シバテリウム〕総団長・レオパールと再会した



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