ホントウの勇者

さとう

〔ラソルティ大聖堂〕/ティルミファエル・アルモニー



 〔氷の町ヒョールデン〕を出て一日、俺が運転する魔導車は林の中を走っていた


 「こんな所に教会なんてあんのかよ?」
 《エエ、もうすぐヨ》


 辺りは薄暗く、真昼なのに木々が多いせいで光が届かない。何とも不気味な感じだった


 そのまましばらく走る······すると


 《見えたワ···アレよ》
 「マジで······?」


 めちゃくちゃ不気味な建物だった


 雪原の薄暗い森の中に建つ灰色の館
 レンガづくりの建物は大体3階建てほどの高さで、確かに教会なのだろう···1番上の塔には鐘が付いている。扉は大きな観音開きの立派な扉だが、ボロボロに朽ちて今にも壊れそうだ


 扉だけじゃない。周りのレンガもボロボロで、至る所に大穴が開いている。雰囲気やシチュエーションからしても心霊番組や肝だめしなんかで利用されそうな所だ


 「な、なぁ···ホントにいるの?」
 《エエ。念話で確認も取れたワ···行くワヨ》


 クロはしたした歩きだす······正直、俺はこの雰囲気に飲まれてビビってた


 「お、おい待てよ‼」


 慌ててクロに着いていく


 こうなったらさっさと行ってすぐ終わらせよう‼




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 ボロボロの観音開きのドアを、少しだけ開けて中に滑り込む。全部開けるとドアが壊れそうな気がしたからだ


 中も案の定ボロボロだった


 参列者用の長椅子は砕け、まともな物は1つもない。周囲のガラスは割れ、元は立派なステンドグラスだった物の名残がある程度だ。司祭用の祭壇はひっくり返って傷だらけだ···内装でかろうじて教会とわかる、何年も放置されたような古めかしさだ


 「ん···なんだ⁉」
 《来たワネ···》


 突如、祭壇の真上に白い紋章が輝きだした······そして、そこから何かが現れた


 《久しぶりね、クロシェットブルム》
 《そうネ···ティルミファエル》


 俺は思わず呟いた 






 「て···天使?」








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 そこに現れたのは天使だった


 サラサラのショートヘアの金髪幼女天使。歳はルーチェと同じくらいで、顔立ちはとても可愛らしいが、キリッと引き締められた表情で俺を見てる。服装は純白の衣にミニスカート、腰に金色のベルトを巻いてそこに装飾された短剣を下げている。額には金色のサークレットを付けていた


 背中には羽が生えていて、その羽を羽ばたかせると、白い光がキラキラ光り周囲を照らす。この薄暗い教会でこの少女だけが輝いていた


 《話は大体聞いたわ、【魔神軍】に新たな〔神の器〕···まさかヴォルフガングの器が現れるなんて思ってなかった》


 見た目は幼女なのにスゴいしっかりした口調だ。今までにないタイプだ···クロやルーチェの話と全然ちがうじゃん


 《そういうコトよ。ティルミファエル···アナタの力を貸して》


 《もちろんよ。以前の戦いでは何もできなかったし···ヴォルフガングのせいでこんな姿になったけど、今度は戦うわ》


 そっか、クロ達はヴォルフガングの死の呪いで本来の力が出せないんだっけ


 《アリガト、ティルミファエル···》


 《ええ。また一緒ね、クロシェットブルム···》


 そう言ってティルミファエルはクロを抱きしめる。クロもそれを受け入れて2匹は空中で抱き合った


 《···············》


 《···············》


 「···············」


 な、なんだろう···なかなかクロを離さない


 「あ、あの〜······ん?」


 こ、この天使···めちゃくちゃ恍惚の表情でクロを抱いてやがる···さっきの凛々しい表情がカケラもない


 《ふぁ〜···ふわふわ。クロシェットブルム〜》


 《······やっぱりネ···ハァ》


 クロは理解してたみたいだ···すると、突然青い紋章が輝きだした


 《あーっ⁉ ずるいティルミファエルっ‼》


 《る、ルーチェミーアっ⁉ な、なんで⁉》


 ティルミファエルはビクッとしてクロを強く抱きしめる···どうやらクロは他の仲間のことを知らせてなかったみたいだ。ルーチェに反応して他の三匹も現れた


 《よう、ティルミファエル》
 《もぐ〜‼》
 《お久しぶりっす》


 三匹はそれぞれ挨拶する


 《アグニードラ、トレパモール、クライブグリューン···まさか、みんな揃ってるの?》


 《いんや、ナハトオルクスとインヘニュール、シロフィーネンスはいないぜ、これから迎えに行く予定さ》


 《そう。じゃあ500年ぶりに【九創世獣ナインス・ビスト】が揃うのね》


 《ああ。今度は俺達も戦うぜ。ヴォルの野郎は俺達を閉じ込めて1人で【魔神軍】とやりあったが、このジュートは弱っちいからな、俺達が必要なんだとさ》


 《へぇ······》


 そう言ってティルミファエルは俺の側に飛んできた


 《はじめまして、私は【白】の【九創世獣ナインス・ビスト】、ティルミファエル・アルモニーよ》


 「ああ。俺はジュート、よろしくな。えーと······」


 ティルミファエル···ティル、ミファ、エル
 ティ···ル、ファ···エル
 ティ·····エル。よし、これだ‼


 「おほん。よろしくな、ティエル‼」
 《は?···ティエル?》
 「ティルミファエルって長いし、俺はティエルって呼ぶからな」
 《変なの、でも······悪くないわ》


 ティエルはくすりと笑う
 俺も釣られてくすりと笑う


 これで6匹目···残りはあと3匹


 まだまだ旅はこれからだ‼




























 《っていうか‼ いつまでクロシェットブルムを抱いてるのよーッ‼ ティルミファエルーッ‼》


 ルーチェが爆発してティエルに飛びかかる


 《きゃうっ⁉ な、なにすんのよルーチェミーア‼ クロシェットブルムが嫌がってるじゃないっ‼》


 《うっさい‼ いいからさっさと離してよーっ‼》


 《あ、アナタ達···やめ···苦し···》


 クロが瀕死になってる···ルーチェがクロの首を掴んで、ティエルがクロのしっぽを掴んで綱引きしてる


 《ははは、懐かしいっすね、この光景》
 《ああ、コイツらはよくこーやってケンカしたもんだ。最後は結局ヴォルが止めるんだよな》
 《もぐもぐもぐ‼》


 「いや止めろよ、クロが死ぬぞ⁉」


 【銃神】の役目って、本人がいないんじゃ俺がやるしかないのか⁉


 俺は頭を抱えてクロの取り合いをしてる2匹を引き剥がすのだった




 こうして新たな仲間、【白】の【九創世獣ナインス・ビスト】 ティルミファエル・アルモニーことティエルを仲間に加えて、俺達の旅は続くのだった





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