ホントウの勇者

さとう

氷の町ヒョールデン① /氷の情景・手がかり



 魔導車を順調に飛ばし早3日……ようやく見えてきた


 「氷の町……か、こりゃ予想外だな」
 《そうネ……ビックリだワ》


 俺は目の前の光景に驚いていた


 〔氷の町ヒョールデン〕はどんな町なのかこの3日間でいろいろ予想していた。クロも名前と場所しか知らなかったので、情報が少なかったからである


 俺の予想は、氷の町と言うくらいだから町に氷の彫刻があったり、氷で出来た建物なんかがあると言う予想だった……が、全く違っていた




 〔氷の町ヒョールデン〕は……凍った湖の上に出来た町だったのだ




 「どうやって……ん、そうか」
 《ナルホドね……》


 湖の入り口で魔導車を止めて氷の上を見ると、氷の表面がざらざらに削られて滑りにくくなっている。試しに上を歩いてみると普通の地面と変わらなく歩けるようだった


 「うーむ…世界は広いな」
 《そうネ……》




 俺とクロは感心しながら町中へ入っていくのだった




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 町の中は普通に賑わっていた


 周囲の建物は普通の木材建築で、特に何かが変わっているようには見られない。町を歩く冒険者も、傭兵も何の変わりもないし、お店もフツーに営業してる。地面が氷と言うだけで、何の変哲もない普通の町だった


 「とりあえず宿を確保して、〔激獣兵団シバテリウム〕の情報を集めよう。そうすりゃエルルとクルル達がどの辺にいるか分かるかもな」


 《そうネ、傭兵ならギルドで話を聞けばいいかもネ》


 「お、そりゃいいな。じゃあ行きますか」


 俺とクロは町の中央へ歩き出した


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 町の中央には驚きの光景が広がっていた


 「スゲぇ……これって、湖だよな」
 《エエ…綺麗ネ》


 中央広場の真ん中の氷が円形にくりぬかれ、湖が見えていたのだ
 当然、その光景を見るために周囲には人が集まっている。俺も近くで見る…


 湖は綺麗に透き通っていて、湖底までばっちり見えた
 クリアブルーの綺麗な水に、周囲には海藻が漂い様々な生物が見える。岩場に張り付いた貝殻に、モンスターみたいな甲殻類、小さな魚の大群に、それを狙った大型魚。コロコロ変わる景色は見る物を飽きさせない…まるで水族館のようだった


 これがこの町の観光名所…なるほど、コレは見る価値がある
 周りの人は冒険者だけじゃない。観光ツアー客のような集団や、新婚旅行のカップル、気ままな一人旅の男性と幅広い。周囲にも土産物屋や飲食店が並んで行列が出来てる店もある


 普通の町……この町に入った頃の自分に説教したくなった
 ここは間違いなく【白の大陸】の観光名所の一つだった


 「宿は……あそこにしよう。〔レイド・ニーク〕か」


 この町で一番大きな宿屋に入る…見た感じ5階建てくらいの大きな宿だ


 「いらっしゃいませ。お一人様ですか?」
 「はい。あと一匹です」
 「一匹?……あ、失礼しました。お泊まりですね?」
 「はい。ネコも大丈夫ですか?」
 「もちろん大丈夫です。ただし食事は別料金になります」
 「はい。お願いします」


 そういえば……宿に泊まるときネコがダメだった所ないな


 部屋は最上階のスイートルームしかあいてなかったのでそこにした
 階段を使って部屋に入ると…スイートルームに相応しい部屋だった


 「さて……情報集めの前に買い物を済ませるか。クロ、お前はどうする?」
 《……ココで待ってるワ……ふぁぁ》


 眠いのね。部屋は暖かいし、ソファはフカフカだし…俺はクロの防寒着を脱がせてやりソファの上に運ぶ……すると、クロはすぐに寝息を立て始めた


 俺はクロの頭を一撫でして部屋を出た 


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 この町は観光地でもあるのでいろいろな物が手に入った


 まずはお酒…白牙狼の集落で大量に消費したので買いだめする。この町では殆どの種類の酒を買うことが出来た…もちろんすぐにアグニの元に送る


 次はお菓子…クロがいないとルーチェとモルはお菓子をもぐもぐ食べてしまうので、こちらも多めに購入。クッキーやあめ玉、砂糖細工のお菓子やふわふわの甘いパンなど沢山購入し、こちらはクロの元に送る…ルーチェに送るとすぐになくなるからだ。お酒は今回はアグニに送る、殆ど使ったからね


 あとは食材なんかを購入して買い物は終了。なんか食いもんばっかり買ってるな…たまには武器屋でも覗いてみようかな、でも腹減ったからメシにしよっと


 あちこちの露店からはいい匂いが漂ってくる…俺は魚の串焼きと、焼いたエビやカニを購入。どうやらこの湖で取れた新鮮な物らしい


 味も素晴らしかった……魚介の味が口いっぱいに広がり、俺の胃を優しく満たす……こりゃおかわり確定だな。俺は魚介の煮込みスープを追加で購入し、クロのお土産に焼き魚を2本買って亜空間に収納した




 さーて、腹も膨れたし…次はギルドで情報集めかな




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 やって来たのは傭兵ギルド、ここでなら〔激獣兵団シバテリウム〕の足取りが掴めると思ったが······どうしよう?


 いきなり〔激獣兵団シバテリウム〕に会いたいんですけど···なんて言って会えるもんなのかな? とりあえず受付でいろいろ聞いてみるか


 「すみませーん、ちょっといいですか?」


 受付のお姉さんに笑顔で挨拶。第一印象は大事だからね


 「いらっしゃいませ。ご依頼ですか? こちらではご要望に適した傭兵をご用意させて頂いています。依頼内容、料金に応じてランクわけさせて頂き、こちらでご用意した傭兵を選んで頂く事も可能です。お金に余裕があるのでしたら、依頼内容に関わらず高ランクの傭兵を雇うとこも可能です」


 挨拶しただけなのにスゴい説明された···と、とにかくいろいろ聞いてみよう


 「あのー···〔激獣兵団シバテリウム〕に会いたいんですけど、どこに行けば会えますか?」


 「〔激獣兵団シバテリウム〕ですか?···申し訳ございません。そちらの傭兵団は現在依頼をお受けする事ができません」


 「ええっ⁉ えーと、今どこにいるか分かりますか?」


 「申し訳ありません。お答えすることはできません」


 「そこを何とか···俺は団長の知り合いなんですよ。どうしても伝えたいことがあるんです」


 「·········お引き取りください」




 ·········ダメだこりゃ




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 傭兵ギルドを出て近くのベンチに座る


 答えは貰えなかったけど収穫はあった
 【緑の大陸】最強の傭兵団が依頼を受けることが出来ない···それは依頼を受けることが出来ないくらい重要な仕事をしてるから······つまり、【白の大陸】のお姫様であるブランの護衛


 そう考えるとしっくり来る。そして今も依頼が受けれないってことは、現在進行形で依頼の最中なんだ。つまり······王都に行けば会えるかもしれない


 「〔王都ブライトネーション〕か···先は長いな」


 とりあえず目的地は決まった···が、次の目的地は〔ラソルティ大聖堂〕···ここに【白】の【九創世獣ナインス・ビスト】がいるんだよな


 「とりあえず···宿に戻るか」




 帰ったらクロにいろいろ聞かないとな




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 《なるほどネ······》
 「ああ。だから〔ラソルティ大聖堂〕に行ったら次は王都に向かおう。レオパール達ならきっとそこにいるはずだ」
 《そうネ。じゃあ明日出発ネ、ティルミファエルの所まで一日もあれば着くワ》
 「ああ。よーし、メシ食って今日はゆっくり休むか」
 《そうネ······ん?》
 「···どした?」


 クロが何かに反応したようだ。なんだろう?


 《ルーチェミーアが呼んでるワネ···ちょっと行ってくるワ》
 「俺も行くよ、メシまでまだ時間あるし」


 そんなわけで〔セーフルーム〕へ


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 《きたきた、クロシェットブルム···あれ、ジュートも?》


 「メシまでまだ時間あるからな、どうしたんだ?」


 《あのね、もうすぐティルミファエルが来ちゃうから···今のうちにいっぱい抱っこしたくて···》


 何ともかわいい理由だった。抱っこしたいが為にわざわざ呼び出すとは···ルーチェはそんなにティルミファエルが苦手なのかな


 〔セーフルーム〕の中心部屋には俺とクロとルーチェしかいない。他の三匹は自室に居るようだった。いい機会だし聞いてみるか


 「なぁルーチェ···ルーチェはそのティルミファエルが嫌いなのか?」


 《ううん、キライじゃないよ?···でも、クロシェットブルムは渡したくない》


 《アナタ達···ルーチェミーアも、ティルミファエルも···ワタシは物じゃないワヨ?》


 《·········ゴメンなさい》


 本当に子供みたいだ···好きな物を渡したくない、そんなルーチェの気持ちが伝わってくる···すると、クロがルーチェに飛びついた


 《わわ⁉ クロシェットブルム?》


 《一緒に寝まショ? その代わり、ティルミファエルと仲良くしなさいネ?》


 《うん。わかった》




 ルーチェはニッコリ笑い、そのまま二匹は部屋に入って行った




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 俺は宿に戻って夕食を取り、そのままベッドで朝までぐっすりだった。そして町を出て、次の目的地へ向かって走りだした


 「次はいよいよ【白】の【九創世獣ナインス・ビスト】かぁ···早いもんだ」


 すると、頭の中で声が響いてくる


 《ティルミファエルは厳しいけど優しいから大丈夫ヨ。ちゃんと挨拶しなさいネ》


 「はーい。わかりましたっと」




 氷町に別れを告げて、魔導車を発進させた


 

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