ホントウの勇者

さとう

ウールブル雪山②/白牙狼・白き平穏



 「ここがおれたちの集落さ。あんちゃん」
 「おお……」


 案内された集落はそんなに大きくなかった
 木を組み合わせた簡素な家、中は木の上に布を敷いただけの作り。集落の中央にはキャンプファイアーみたいな櫓が組まれていて、炎がごうごうと燃えている……よく見ると大きなモンスターが丸焼きにされている


 俺は今〔白牙狼〕の集落に案内されていた。メンツは俺、ギンガ、バザルド、ギンゲルさん、ガルモン長老だ。バザルドは長老の護衛という名目で着いてきてる……俺が暴れるとでも思ってんのかね?


 そこら中から視線を感じる……まぁそうだよな、周りには誰もいない…どうやら家の中に避難してるみたいだ。はぁ……こんなことになるとはな


 《ワタシはこのまま〔セーフルーム〕にいるワ。頑張ってネ》


 クロの声が頭に響く……くそう、1人かよ


 「さぁどうぞ…何もない所ですが」


 長老の家に上がらせて貰いお茶をごちそうになる。すると長老が頭を下げてきた


 「改めまして、我が息子・・・・ギンゲルを救っていただき誠にありがとうございます。アナタには感謝してもしきれません。なにかお礼をしたいのですが……」


 「いやいや、そんなの気にしなくていいですよ。俺もその…ここに勝手に入り込んじゃったんで」


 …っていうかギンゲルさんって長老の息子…ってことはギンガは長老の孫か


 「いやそんな…と言うかどうやってココを見つけられたので?」
 「えーと…何というか怪しい岩場と亀裂を見つけたので、つい出来心で……」
 「はははっ、やっぱあんちゃんスゲーな。そんなんでこの隠れ家を見つけるなんて!!」


 いやぁ…クロが怪しい気配っていってたから、ただ入っただけなんだよね…すると、黙っていたバザルドが俺を睨み付けながら言う


 「ふん。人間は信用ならん…何を企んでいるか知れたもんじゃない。おいお前、用が済んだならさっさと出て行け…今度は本気で潰すぞ?」


 ………カッチーン。俺…キレちまったよ…すると、ギンゲルさんがバザルドをしかりつけるように言う


 「バザルド…いいかげんにしろ!! お前まだあの時のこと……」
 「当たり前だ!! 人間など、滅びてしまえばいい!!」


 そう言ってバザルドは出て行ってしまった……あれ?


 「申し訳ない、バザルドが失礼を……」
 「いえ、気にしないで下さい」


 何かあったのか気になるけど…プライベートだから踏み込むべきじゃないな
 とにかく、用は済んだし帰るとするかな


 「良ければ泊まって行かれませんか?…今日は大物が取れたので宴を開催する予定でして……」
 「うーん、でも…人間の俺がいて大丈夫なんですか?」


 当然の疑問をぶつける。するとギンゲルさんが笑顔で返してくれた


 「問題無いでしょう。アナタのことは警備隊の連中が広めています。怪我を治したことも含めてアナタを嫌う者はいませんよ、よかったら集落を見ていって下さい」


 そう言われて断れるはずもない
 しかたない……ごちそうになりますか


 「よっしゃ、あんちゃん行こーぜ!!」
 「そうだな。案内頼むギンガ」




 俺はギンガと一緒に家を出たのだった




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 「それにしても…あんちゃんがこっち・・・の集落に来てくれてよかったよ」
 「……こっち?」
 「うん。俺たちの集落は3つあるんだ」


 集落を散歩しながらギンガが教えてくれる


 〔白牙狼〕の集落は3つある。それぞれ〔ツァガーン雪山〕・〔ウールブル雪山〕・〔オボロートニ雪山〕の3つだ。それぞれの集落は800人前後の集落で、それぞれの山脈で生息するモンスターが違うために交流は欠かさないらしい


 ギンガはまだ8歳。身体はこれから順調に成長するが、まだ年相応の子供。〔ツァガーン雪山〕にいたのは狩りの訓練のためで、12歳で独り立ち出来るように子供の頃から父親と一緒に狩りをするのが習わしらしい。ギンガはあと4年掛けて3つの山脈で狩りの勉強をするそうだ


 「へへっ。おれも早く一人前になって最強の戦士を目指すんだ」
 「そっか、ギンガならなれるさ」
 「うん。いつかバザルドより強くなって〔三浪牙〕になってみせるぜ!!」
 「……〔三浪牙さんろうが〕?」
 「うん!!……あ、〔三浪牙さんろうが〕っていうのは……」


 〔三浪牙さんろうが〕は白牙狼が納める3山脈でそれぞれ最強の戦士らしい。この〔ウールブル雪山〕ではバザルドがそれに当たる


 「あんちゃんもスゲーよね。あのバザルドを追い詰めてたもん」
 「いやー……アレは強いわ、危なかったよ」
 「そうかな~…」


 そんなことをいいながら集落を歩く…よく見ると獣人達は表を歩き始めていて、俺とギンガを遠巻きに見つめていた


 「あんちゃん、こっちこっち」
 「ん?…なんだ」


 ギンガは1軒の家の前に行く


 「おばちゃーん、こんにちはー!!」
 「はいはい、おや…噂の人間かい?」


 初老の獣人が出迎えてくれる。この人も白耳しっぽの白牙狼だ


 「おばちゃん、果実湯ちょーだい。あんちゃんにも」
 「はいはい、ちょっと待ってね」


 おばちゃんは奥に引っ込んでしまう


 「へへへ、おばちゃんの果実湯はすっごく美味しいんだ。身体もポカポカあったまるよ!! あんちゃんは人間だから寒いのは苦手なんでしょ?」


 ギンガは俺のためにここに連れてきてくれたみたいだ……うれしいな


 「ああ、ありがとな…」
 「ふわわ…へへ、あんちゃんに撫でられるの気持ちいいな」


 俺はギンガの頭を優しく撫でる……こうしてるとエルルとクルルを思い出すな


 「はーい、どうぞ。熱いから気を付けてね」
 「ありがとおばちゃん!!」
 「ありがとうございます」


 家を出て近くの岩に腰掛け、さっそく果実湯を啜ってみる……


 「……!! こりゃウマいな」
 「でしょ!!」


 味は甘くほんのりすっぱい…リンゴとオレンジとパインとレモンのエキスを混ぜ合わせて温めたようなおいしさだ。こりゃウマい…クセになりそうだ


 コップをおばちゃんに返して集落を歩く……すると


 「やあ、キミが噂の人間か…コレ食べていきな。ウマいぞ」
 「おうおう、アンタ強いんだってな、ほれ、これ持ってけ」
 「あらあら、ギンガちゃんと仲良しなのねぇ…今日の宴が楽しみだわ」


 うーん。皆いい人ばっかりだ。おやつを大量に貰ってしまった
 今は丁度お昼時だしこれだけでお腹いっぱいだな…ん?


 「ギンガにーちゃんあそぼー」
 「わぁ、にんげんだー」
 「髪が黒いね、はじめてみた」


 子供達が群がってきた……みんな4~5歳くらいの子供だ。白い耳にしっぽをパタパタさせて俺とギンガにじゃれつき始めた……かわいいな


 「よし、じゃあ一緒に遊ぶか!!」
 「えっ…いいの、あんちゃん」
 「もちろん。宴まで時間あるしな」


 そんなわけで子供達と2時間ほど遊んだ……雪合戦や雪だるま、カマクラを作ったり、鬼ごっこしたり、木登りをして遊んだ


 意外なことにここの人達はカマクラを知らなかった。雪をドーム状に積み上げて中を空洞にする、そしてその中にゴザもどきを引いて秘密基地にした。それを見た大人が凄く感心してたのを覚えてる


 さらに木登りは子供達も凄かった。みんなスイスイ木の上に登って遊んでる。しかも一番上からフツーに飛び降りてマジでびびった。〔白牙狼〕の身体能力ならこのくらいは普通らしい……恐ろしいな


 ある程度時間が経ち小腹が空いてきた…そうだ、ギンガに果実湯のお礼もかねてケーキをごちそうしてやろう。もちろんちびっ子達にも


 「よーしみんな、おやつにするぞー」
 「おやつ!!」
 「やった!!」
 「今日はなんだろ? 森の果実かな?」


 俺たちは集落中央のキャンプファイアー前に行く。そこは宴の準備のためにテーブルがいくつか用意されていたので少し使わせて貰う


 「あ、あんちゃん…もしかして…!!」


 ギンガは何かを察したのか耳と尻尾がパタパタ動いてる…まぁ焦るな
 俺は亜空間からケーキを取り出してテーブルの上に置く


 「なにこれ?」
 「しろいね」
 「うん…くんくん……ん?」
 「なんだろ?…あまい?」


 匂いに敏感な種族なのですぐに分かったみたいだ。俺はそれを切り分けて皿に移し、子供達に配ってやる


 「おおおお~~っ!! あんちゃん。いただきます!!」


 ギンガはさっそくパクついてる…やれやれ


 「うんまぁ~~っ!! みんなも食べろよ!!」


 子供達はギンガの様子を見て恐る恐る食べ始める……すると、全員のしっぽが同時にピンと立った…おもしろいな


 「おいしい~~っ!」
 「う~~ん、こんなの初めて!!」
 「おかわりしたい!!」
 「おにーちゃん、いい?」


 もちろんおかわりはある。でも1人1回までな。晩ご飯食べれなくなるから


 全員におかわりを1回ずつあげる、するとたちまち完食してしまった
 そのまま全員、広場にある大きめの建物…全員が自由に使える集会所みたいなところに移動して昼寝を始めてしまった。ギンガもお腹がいっぱいになったのか一緒に眠ってしまう…みんな集まり丸まって寝る姿はガルベインを思い出す……みんな元気かな


 子供達にすっかり懐かれてしまい、俺も一緒に昼寝する


 宴までゆっくりするか……ふぁ…おやすみ


 俺の意識は闇へ落ちていった





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