ホントウの勇者

さとう

閑話 山野虫菜・【蟲神ラルヴァアンセクト】



 山野やまの虫菜ちゅうなは、魔導車の後部座席で1人パズルを解いていた


 メインは知恵の輪で、立体パズルや積み木のような組み合わせパズルや、オセロや将棋、チェスなどのボードゲームもあった


 これらは全て彼女が【灰】の魔術で制作した物で、娯楽の少ないこの世界での彼女なりの暇つぶしだった


 「ねぇ山野さん、道はこっちでいいの?」


 そう聞くのは清水水萌しみずみなも。この部隊のリーダーであり魔導車の運転手だ


 「うん。そのまま前進」
 「で、でも···このまま進むと川に落ちちゃうよ?」
 「じゃあ左折」
 「ホントに大丈夫なの⁉」


 彼女は知恵の輪に没頭しながら言う
 すると、鉄間蓮華てつまれんげが昼寝から起きた


 「ふぁ······まーだ着かないのかよ〜···」
 「まだかかりそう。アタシも寝よっと」


 今度は火等燃絵かとうもえが座席で丸くなる


 「ねぇ〜、誰か運転変わってよ〜‼」




 清水水萌しみずみなもの声は、誰にも届かなかった




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 山野虫菜やまのちゅうなは助手席に移動してドライバーの清水に指示を出していた


 「もうちょっと先で左折、これはホント」
 「その言い方だとさっきのはウソってことになるけど···」


 そんなことを言いながら魔導車は進む···




 清水は、山野に質問してみた


 「山野さんって、真城ましろさんと仲がいいの?」
 「うん。家が近所」


 シンプルな答えだった


 「あたしは小さい時から家に篭りがちで、真龍しんらはそんなあたしを外に連れ出してくれたの」
 「へぇ·········」


 山野が嬉しそうにしてるのは、清水の気のせいではないだろう




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 山野虫菜やまのちゅうなは引っ込み思案な少女だった


 成績はトップクラスで、テストの総合順位は常にトップ5に名前を連ねているが、彼女は人付き合いが苦手だった。学校が終わるとすぐに自宅に戻り、ネットやマンガ、アニメなんかを見て過ごすのが日常だった


 しかし、そうではない日もあった。近所に住む幼馴染み、真城真龍ましろしんらが、彼女を遊びに誘う日が週に2回ほどあったのである


 最初は断ったりもしていたが、強引な真城に無理矢理連れて行かれたりもした。町に買い物に出て、山野に似合う服がある、なんて言われて買い物に付き合ったりもした。ゲームやマンガを買うために逆に付き合ってももらったりもした……そんな思い出がいくつもあった


 元気いっぱいで誰にでも明るく接し、男女問わず人気のある真城真龍ましろしんらは、山野にとって一番大事な友達でもあった……もちろん、こんな恥ずかしいことを本人には言えるわけが無かったが


 「多分もうちょっとで着くよ……あたしの合図にも気がついたみたいだし」
 「そうね。合流したらさっそく作戦を考えましょう」
 「うん………そうだね」


 そう言って山野は再び知恵の輪を弄り出す。その様子を見た清水は質問した


 「あの……楽しいの、それ?」
 「うん。いい暇つぶし」


 それだけ喋りまたカチャカチャ知恵の輪をいじる


 「はぁ……運転かわってほしいなぁ……」


 清水の呟きは、やっぱり聞き流された


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 「ここなのか?」
 「うん」
 「なんもないけど……?」
 「う~ん。山野さん、どういうこと?」


 4人の少女は、真城真龍ましろしんらがいる場所に来ていた……が、そこには誰もいなかった


 「おいおい山野……場所間違えたんじゃねーの?」
 「そんなはずない」


 鉄間蓮夏てつまれんげの問いにノータイムで答えた。彼女は自分が間違えたはずがなないと、何度も心の中で思っていた


 「どーすんの? ここで待つ? それとも探す?」
 「う~ん……」


 火等燃絵かとうもえが質問し、清水水萌しみずみなもが考え込んだ時だった


 「ん?………おい、何か来るぞ!?」
 「えっ!?」


 鉄間蓮夏てつまれんげの呼びかけに全員が反応……上空を確認した、すると


 「な、なんだ…全員よけろ!!!」
 「きゃあっ!?」
 「……っ!?」
 「チッ!!」


 上空から何かが大量に落ちてきた…しかもそれは一つではない


 「コレは……モンスター!?」


 白い翼を生やした10メートルほどの大きさの、トカゲと鳥を組み合わせたようなモンスター


 Sレートモンスター、〔ブライトグライダー〕の死骸が大量に降ってきたのだ


 その数……50以上


 「おいおい、何だよこりゃあ!!」
 「ね、ねぇ…アレ見て!!」


 清水水萌しみずみなもが上空の一点を指さす……そこに何かがいた






 「あ……あれって………「りゅう」…?」






 火等燃絵かとうもえが信じられないように呟いた




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 上空を何かが優雅に泳いでいる


 それは………「りゅう」だった


 全長50メートルは間違いなくある。姿は東洋の細長い蛇のような姿で色は全身が黄色、生物らしい肉感は一切無い。どう見てもロボットのような機械の形状で、まるで子供向けのヒーロー番組に出てくるような物だった


 そして、その頭頂部に誰かが乗っていた




 「なーっはっはっはっはっはぁぁぁぁっ!!!!!」




 おびただしい咆吼、聞こえるのは少女の声


 長い髪の毛をポニーテールにし、手には装飾された長い黄色の棒…如意棒を持っている


 その姿はまるで孫悟空のような、そんなふうに見えてしまう






 【英雄十三傑ヴァリアントサーティ】序列5位 真城真龍ましろしんらが上空から現れた




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 「やーごめんごめん。ここで待ってたら空におっきな鳥が群れで飛んでてさ、ケンカ売られちゃったから買ってやったんだ、まぁアタシの見事な勝利だったけどね!!」


 「そ、そう……あの、真城さん」


 「あー真龍しんらでいいよ、アタシもみなもっちって呼ぶからさ!!」


 「えぇ!? そ、それはちょっと」


 「いーじゃんいーじゃん、お!! ちゅーなじゃん、元気だった?」


 「うん。真龍も元気そう」


 「とーぜんっしょ!!」


 「おい、真城。話は聞いてんだろ?…無月をぶっ殺しに行くぞ」


 「おっけー。まぁ無月は強そーだし………退屈しなさそうじゃん!!」


 「……っ!?…なぁ真城……」


 「なに? もえっち」


 「その呼び方やめろ……コレは何だ・・・・・?」


 真城の後ろには先ほどの巨大な龍が、とぐろを巻いて鎮座していた


 「あ、ゴメンゴメン。これ、アタシの【神器ジンギ】ね。また後でね、『鎧龍王アルマドゥーラ』」


 そう言うと【神器ジンギ】は静かに消えていく……この姿を見ただけでも、彼女は規格外だと分かった




 「そんじゃ行きますか!! あ、なんか食べ物あったらちょーだい、お腹減った!!」




 規格外のバケモノ…【英雄十三傑ヴァリアントサーティ】序列5位を加えて、【銃神討伐隊】は無月銃斗の元へ進むのだった





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