ホントウの勇者

さとう

閑話 鉄間蓮夏・【鋼神アセロスティナ】



 鉄間てつま蓮夏れんげは、【白の大陸】に向かう船の船室で愚痴をこぼしていた


 「チッ···【門】を使えば一瞬で着くのによ、なんでこんなチンタラ船で移動しなきゃなんねーんだよ」


 「仕方ないでしょ。アレは緊急時にしか使っちゃいけない決まりなんだから」


 そう答えたのは清水しみず水萌みなも。ふわふわしたミディアムヘアの優しそうな少女だった


 「あと数日で着くからガマンしな、アタシだって退屈なんだよ······しかもこの船2回目だし」


 意外なことに火等かとう燃絵もえもなだめる側に回る。以前の彼女だったら同じように愚痴をこぼしていたはずだ


 「···········ふぁ···ねむ」


 山野やまの虫菜ちゅうなは、船室のベッドの上で知恵の輪を解いていた。ベッドの上には大量のパズルと知恵の輪が散乱している


 彼女達4人は【銃神討伐隊】


 【白の大陸】にいる無月銃斗を倒すために【時の大陸】からやってきた少女達だった


 「ねぇ山野さん、真城さんは······」


 「今、潜行させてる。見つけたら言う」


 清水の質問に最低限の返事をして知恵の輪に没頭している。彼女の性格は分かっていたので特に文句は言わなかった


 「退屈だし、あたし外の空気吸ってるわ」


 鉄間てつま蓮夏れんげは船室を出てデッキにあがる。外は明るく風が気持ちいい


 「ふぅ······」


 ため息をついて手すりに寄りかかる。全身に潮風を浴びてこれまでの事を思い返していた




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 学校では悪いことをしたと思う。授業をサボり、校則を破り髪を染めピアスをあけ、制服を着崩して教師には横柄な態度をとった


 高校生なら何人かは必ずいる不良。先のことを考えずに今を楽しみ、後になって後悔する···彼女はまさに後悔していた


 大学に入るには勉強をしなくちゃいけない。彼女は勉強が苦手だ。これから就職、進学するにしても大学には行きたい。親はそのつもりだし、彼女もそのつもりだった


 だから、高校二年の1学期の終わりから真面目に勉強した。友達付き合いや服装や髪は直さなかったが、試験で平均点を取ることは出来た


 でも、全ては無駄になった




 異世界という地獄···いや、天国に来たのだから




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 最初は戸惑ったが、慣れてくるにつれて興奮した
 モンスターとの戦いは最高のスリルだったし、魔術は使わずに素手で戦うのは最高に気持ちよかった


 この世界では試験はない。下らない授業もない。将来を心配して悩む必要もない。必要なのは、【魔神】、そしてシグムントの為に戦うこと···それだけだ


 帰ったらシグムントに愛してもらえる。シグムントは彼女が必要だとベッドの上で熱く語ってくれた。シグムントの為なら何だってする


 無月銃斗を始末するなんて···容易い


 「へへっ···待っていやがれ」




 鉄間てつま蓮夏れんげは不敵な笑みを浮かべた





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