ホントウの勇者

さとう

閑話 清水水萌・【水神マイアワティル】



 清水しみず水萌みなもは1人、通路を歩いていた


 向かっているのは会議室……これから討伐隊4人で作戦を考えるため、話し合いをし、それから【白の大陸ピュアブライト】へ向かうのだ


 他のメンバーはすでに待っているはずだ。彼女はローレライに呼び出され、4人のリーダーとして指揮をとれ、と命令された。彼女はあまり自信が無かった


 清水しみず水萌みなもは、ミディアムヘアの柔らかい髪にぱっちりした瞳、スタイルもよく胸は同級生の中では大きい方だ。部活は所属せず、図書委員として放課後は過ごしていた


 クラスの中では比較的おとなしめで、弄られることも無ければ特に話題になる感じでも無い。実家も普通の家庭で今の生活に特に不満も無い、まさに普通の女子高生だった


 高名氷寒と鳴戸括利が死んだ後から胸の痛み・・・・も収まり、【神器ジンギ】の扱い、魔術も特に問題の無い中堅の実力者として、パーティーを任されたのだった


 「でも…鉄間てつまさんと山野やまのさん、火等かとうさんかぁ……みんな女子なのは安心だけど……」


 彼女が心配していたのはチームワーク
 個人の実力は申し分ないが、チームとしては不安が残る。しかもそれぞれが曲者ぞろいだ


 「とにかく…まずは話し合わなきゃね」


 彼女は会議室前に到着、扉を開けて元気よく挨拶した


 「みんな、遅くなってゴメ……」


















 「なんだとテメェ!! もう一度言ってみろ!!!」


 「何度でも言ってやるよ、無月に会うことすら出来なかったヤツが役に立つのか? なぁ山野やまの?」


 「………別に」


 「おもしれぇ……燃やしてやろうか?」


 「やってみな? 出来るもんならね」


















 「…………なにこれ」


 清水しみず水萌みなもは頭を抱えた


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 ここの会議室は教室ぐらいの広さがあり、テーブルとソファが設置されているシンプルな部屋だった


 その部屋は現在、所々に火が付き、壁に亀裂が入っている。この状況を作ったのは2人の女子


 鉄間てつま蓮夏れんげ火等かとう燃絵もえ


 火等かとう燃絵もえの身体から炎が吹き荒れ鉄間てつま蓮夏れんげを襲うが、炎を彼女は素手でなぎ払い壁に焦げ跡を作る。その様子を興味なさそうに山野やまの虫菜ちゅうながドア付近で見るという構図ができあがっていた


 「ぬるいね、こんなたき火じゃあたしは燃やせないよ?」
 「ああ、アンタ程度ならこのくらいで十分と思ってたんだ」


 ヒートアップする2人……そのとき






 「いい加減にしなさーいっ!!!!」






 大声が響き、2人の頭上から大量の水が流れてきた
 当然、2人はびしょ濡れで清水しみず水萌みなもを睨み付ける


 清水しみず水萌みなもは全く動じずに、腰に手をあててプリプリ怒る


 「全く、あなた達2人は何をやってるのよ。これから【白の大陸】に向かって【銃神ヴォルフガング】を倒そうって時に仲間割れ? いい、私達はチームなのよ。エルレイン様に任命された【銃神討伐隊】のメンバーなの、あなた達が足を引っ張り合って自滅でもしたら馬鹿らしいわよ。仲良くしろとは言わないけど、この任務中だけでもケンカしないで。いい、分かった?」


 「「は、はい……」」


 「よろしい。では会議をはじめましょ」


 にっこり笑い焦げたソファに座る




 山野やまの虫菜ちゅうなはポツリと呟く








 「アンタが一番恐いよ……」


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 「で、これから【白の大陸】に向かうんだろ? とにかく無月を探してぶっ殺せばいいだけじゃん。作戦とかいらなくね?」


 そう語るのは鉄間てつま蓮夏れんげ。金色に染めたベリーショートヘアに、いくつかピアスを開けた耳、身長172センチの大柄なスタイル抜群の少女が、ソファの上で退屈そうに足を曲げた


 「ダメよ、侮ると……負けるわ。【銃神】は『第二神化形態』を手に入れてる。ヤツを倒すには個人じゃダメ、私達の力を合わせなきゃ」


 清水しみず水萌みなもが強く語る。『第二神化形態』の恐ろしさは一度見て理解している


 「そーいえばアンタ、金村の集団模擬戦に参加してたんだっけ?」


 「うん…だからわかるの、『第二神化形態』はケタが違う。まともにぶつかって勝てない……けど、弱点は必ずある」


 「………弱点?」


 そう答えたのは山野やまの虫菜ちゅうな。ゆったりしたロングの三つ編みに丸めがねを掛けた少女。胸の大きさはクラスでもトップクラスの彼女の手にはスライド式パズルがあり、手を動かしたまま視線も合わさず質問した


 「うん。金村君の『第二神化形態』は時間制限が10分だったの。その後は3時間ほど【神器ジンギ】が使えなくなる副作用があった……きっと【銃神】にも何かあるはず」


 「ふーん、それにしても『第二神化形態』か……アタシ達も使えないかねぇ?」
 「確かに、それがあればもっと強くなれる。そうすればシグムント様も……」


鉄間てつま蓮夏れんげは、すでにシグムントに洗脳された女子の1人だった。彼女は定期的にシグムントの部屋に呼ばれて、神の寵愛を受けていた


 「…………ねぇ」


 山野やまの虫菜ちゅうなは手を動かしながらこの場にいる全員に質問する。彼女はこの世界のパズルや知恵の輪などを好み、暇があれば手を動かしていた。彼女の質問に全員が注目した


 「真龍しんらが【白の大陸】にいる……手伝ってもらおう……」


 「えっ?…まさか、真城ましろさん? でも彼女は【英雄十三傑ヴァリアントサーティ】よ。しかも今回の任務とは関係ないわ」


 「かもね、でも……無月を倒すことは無関係じゃないよ。死んじゃった高名さんと鳴戸さんのこと、みんな悔やんでる。だったら協力してくれる」


 その名前が出てきた瞬間に、火等かとう燃絵もえの雰囲気が変わった


 「括利くくり……カタキは討つ」
 「……へぇ」


 鉄間てつま蓮夏れんげは、火等かとう燃絵もえの表情を見て考えを変えた。コイツは復讐に燃える女だと、無月と戦う事すら出来なかった無念を痛いほど感じていると…鉄間てつま蓮夏れんげは理解した


 「火等かとう、さっきは悪かった。謝るよ」
 「はぁ?」


 突然の謝罪に火等かとう燃絵もえは訝しんだ


 「まぁ細かいことは気にすんな。お互い暴れようぜ」
 「……よくわかんないけどいいわ、乗ってあげる」


 火等かとう燃絵もえ鉄間てつま蓮夏れんげの悪意の無い笑顔に全てを許した。2人はハイタッチして微笑んだ


 「ふう……わかった。じゃあ【白の大陸】に向かいつつ真城ましろさんの協力を仰ぎましょう。でも、居場所は……」


 「私が探すよ……任せて」


 山野やまの虫菜ちゅうなは初めて顔をあげてピースサインをした




 「それじゃあ…【白の大陸ピュアブライト】に出発ね!!」




 清水しみず水萌みなもの一言で全員が立ち上がる








 【銃神討伐隊】の戦いが始まった





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