ホントウの勇者

さとう

雪と温泉の町フォワイエ③/防寒具・たまにはのんびり



 宣言通り、俺は朝一で帰ってきた


 朝日が雪に反射してキラキラ光り、とても幻想的な雰囲気の中を走って来た。クロはすぐに宿屋に転移してしまい、俺も着いて行こうとしたら既に居なくなったあとだった···残念


 町が遠目から見えるくらいの距離になると、町から湯気が出ているのがわかる。ギルドに報告して素材をジェリーさんに渡したら、朝風呂に入るのもいいかもな


 素材を渡してから防寒具の完成までは2日…それまで町を見て回ろうかな


 そんなことを考えながら、俺は町へ向かって車を走らせた


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 町へ着きギルドに向かう。時間はだいたい朝の7時


 ギルドはかなり混んでいた、相変わらず獣人ばかりだ。受付に並び順番を待つ…すると、何人かの獣人グループが話しかけてきた


 「お、おい…あんた、昨日の朝Sレートの依頼受けたヤツだろ? ここにいるってことは……」
 「いやまてよ、いくらSランクでも単独でSレートを倒せるはずないだろ。それこそ伝説の勇者じゃあるまいし……なぁ」
 「ちょっと待ちなよ、お兄さん…その袋ってもしかして」


 俺はニヤリと笑い袋を掲げて見せる……すると


 「「「うおぉぉぉぉ~~~!!!」」」


 周囲から歓声が上がった……なんか恥ずかしいな
 受付は進み俺の順番になる。そして、袋の中身の〔ブライトワイルドベア〕の瞳と毛皮の一部を見せると、奥の部屋に案内された


 そのまましばらく待っていると、奥から一人の男性が現れる……40代前半くらいの筋肉質なおっさんだ


 「はじめまして、俺はこの〔フォワイエ冒険者ギルド〕のギルド長、リラルゴ・ガガムドだ、まさかこんな辺境の町にSランク冒険者が来るとはな、しかもSレートのモンスター退治までしてくれるとは」


 顔は岩みたいにゴツゴツしてるがかなり人のよさそうなおっさんだ、ギルドマスターってことはこの人もSランク冒険者だよな…なんか納得


 「はじめまして、俺はジュートです。モンスターの件は気にしないでください。それと……倒した〔ブライトワイルドベア〕を町の外に置いてあるんですけど、解体して毛皮をもらうことはできますか?」


 俺の言葉にリラルゴさんは驚いていた


 「なに!? まさかモンスターを持ってきたのか!? よ、よしわかった確認しよう。ああ、素材はお前のものだ、好きにするといい…おお、これから場所を案内してくれんか?」


 リラルゴさんは興奮気味に言う…あの、そんなに近づかなくても聞こえますから
 ちなみにモンスターはまだ亜空間にしまってある。町の外に近づいたらこっそり出す予定だ。その前にモンスター討伐の報酬をもらう


 「よーし。俺は職員に声をかけてくる、先に外で待っててくれ。ははは、Sレートの解体なんて久しぶりだ。楽しみだぜ!!」


 正直、俺は毛皮以外はいらない。なのでリラルゴさんに伝える


 「あのー、俺はある程度毛皮がもらえればそれでいいんで、あとはギルドに寄付します」


 「はぁぁぁ!? いや、お前…Sレートだぞ!? 部位を売って金にすれば10年以上遊んで暮らせる額になるぞ!?」


 はぁ、そうですか…ところで俺の全財産いくらか聞きますか?……と言いたい衝動に駆られたが我慢する。いやマジでお金はもういらない


 なんとかリラルゴさんを説得して外に出た。倒したSレートのモンスターを寄付するなんて、未だかつてあったことがないそうだ。まぁそうだよな


 さて、町の外へ行きますか


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 外でリラルゴさんと合流して町の外の適当なところへ案内する。離れた場所にモンスターを転移させ、その場所に案内すると、リラルゴさんと職員の方々は驚いていた


 「なるほどな…魔術で一発か。しかもこれは上級魔術…お前さん、上級魔術師だったのか、でも魔術でコイツをこんな簡単に……うむむ。まぁいいか、とにかく毛皮だな!!」


 上手い具合に勘違いしてくれたのでそういうことにしておく。すると、同行していた職員がいろいろな道具を取り出した、のこぎりや鉈みたいな物から、明らかに剣のような物までいろいろだ


 「ここである程度解体していく。腕や足をバラさないと運べないからな。お前さんの毛皮もここで渡せるぜ」


 「助かります、じゃあお願いします」


 リラルゴさんは毛皮を最優先で解体してくれた。かなり大きめに切りなめした毛皮を大きめの袋に入れて俺に渡してくる。受け取るとそこそこ重いが運べないことは無い


 「本当にいいんだな?」
 「はい。俺に必要なのはこれですから」


 毛皮の袋を掲げてにっこり笑う。これさえあれば後はどうでもいい


 「やれやれ、狩った獲物を寄付するなんて前代未聞だぜ…まぁ、困ったことがあったらいつでも来い、力になるぜ」
 「はい、ありがとうございます」


 俺は一礼してその場を後にした




 「あの若さでたいしたもんだ…まるで勇者だな」




 そんな声が聞こえてきた


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 毛皮を手に〔ホワイト洋装店〕に向かう。やっとこれで防寒具を作ってもらえる
 しばらく上機嫌で歩き店の前に着いた。店の前には3人の人影…ロジーさんとジェシーさん、それと知らない男性が1人いた


 「あら?…あ!! 帰ってきたわ!!」
 「ああ、よかったわぁ、心配したのよ」


 ロジーさんとジェシーさんが迎えてくれる。ロジーさんの腕の中にはクロがいた


 「えーと…ただいまです」
 「おかえりなさい」
 「お帰り……あら、それ…もしかして」


 ジェシーさんは俺の荷物に気がついたようだ。俺は袋を開けて中から毛皮を取り出す


 「これ、〔ブライトワイルドベア〕の毛皮です。これなら防寒具を作れますか?」
 「………こりゃたまげたね。お客さん、ホントに倒したの?」


 ロジーさんが驚きながら質問する。まぁ倒したけど


 「はっはっは!! たいしたもんだよ、久しぶりにあたしの本気を見せようかねぇ…お兄さん、もう一度細かく身体のサイズを測らせておくれ。そっちの猫ちゃんもね」


 ジェシーさんは豪快に笑い力強く微笑む。


 「はは、お客さん、朝食はまだかい? よかったら準備するよ?」
 「え、あ…はい、お願いします」


 突然ずっといた男性に話しかけられたのでビックリした。えーと、アナタは?
 俺の疑問に答えたのはロジーさんだった


 「ああ、この人は私のダンナのラル。〔ゆきんこ亭〕の料理人でもあるのさ」
 「ラルです。よろしくね」


 俺もラルさんに挨拶して握手もする。するとジェシーさんが


 「さぁ、さっさと計っちまおうかね。お兄さんの腹の為にもね」


 そうだな…腹も減ったし、さっさと済ませますか




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 身体のサイズ、装備品、足のサイズなど、とにかく全身のサイズを測った。裸になって測定したのでメチャクチャ恥ずかしかったが、ジェシーさんは全く気にしていなかった……うう、でも恥ずかしい


 完成は2日後、それまではこの町でゆっくり出来る
 宿の追加料金を払い部屋でゆっくりする。外はハラハラと雪が降り始め、外出するには向かない天気だ
 クロもベッドの上で丸まってるし、俺もソファの上でぼんやりしていた


 こういう時こそ本を読みたい……今までが今までだったので、本を探す暇も読む暇も無い。せっかく2日もあるんだし、この町に図書館でもないかな…異世界の物語、あああメッチャ興味がある!!


 「よし!! クロ、ちょっと出てくる」
 《……?……行ってらっしゃい》


 クロはぼんやりしながら俺を見送ってくれた


 俺は1階に降りてロジーさんを探す……あ、受付にいる


 「ロジーさん、ちょっといいですか?」
 「ん? ああお客さん。何か用? おやつ食べる?」
 「あ、ありがとうございます。あの~、この町に図書館なんて無いですか?」
 「図書館?……う~ん、この大陸だと〔王都ブライトネーション〕に大きいのがあったと思うけど、この町にはないねぇ…」
 「あ~……そうですか、わかりました」


 俺は肩を落として部屋に戻った




 「ただいま……」
 《……?…おかえり》


 俺はクロの隣で横になり昼寝をした


 王都の図書館か……機会があったら寄ろう




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 それから2日間はのんびり過ごした


 嫌がるクロを無理矢理温泉に入れてほっこりしたり
 別の温泉施設をめぐってゆでだこになったり
 土産物屋で、動物の素材のネックレスやブレスレットを買い、氷寒と括利…ついでにマフィのお土産を買ったり
 町の露店を巡ってお腹を膨らませたり


 できる限りの観光をしてこの町を楽しんだ


 そして、ついに防寒具が完成し〔ホワイト洋装店〕に赴いた


 「こんにちはー…ジェシーさんいますか?」
 「ああ、お兄さんいらっしゃい。できてるよ」


 ジェシーさんが、壁に掛けてある防寒具を指さした


 「おおお……か、かっこいい」
 《これがワタシの……》


 まず俺のは全身のコートに膝まであるブーツだった。コートの中はモコモコして柔らかくふっくらで温かそう、分厚いフードも着いているので雪が降っても安心だ。さらに凄いのは、腰の部分にホルスターが付いていて、ここに【雄大なる死グロリアス・デッド】と【死の輝きシャイニング・デッド】を納める事ができることだ


 早速着てみると、少しサイズが大きいので動きに余裕がある。【雄大なる死グロリアス・デッド】と【死の輝きシャイニング・デッド】も装備して動くが問題無い。ブーツのサイズもぴったりだ


 「この素材はSレートのモンスターの毛皮だからね、頑丈さも保証するよ。繊維の一本一本が頑丈で火にも強い。最高の素材さ」
 「はい。最高です…ありがとうございます」


 クロの防寒着はかなり特殊だった。まず顔以外は全身がすっぽり覆われている。耳も尻尾も毛皮で覆われていて、耳の部分はメッシュになっているので音もちゃんと拾える。足の部分は靴のようになっていてそれぞれ滑り止めが付いているので歩くのは問題無い。着るときは上から着ぐるみのように中に入るようにして着るみたいだ


 《……最高ネ!!》


 めっちゃ満足してる。嬉しくてジェシーさんの足に身体をこすりつけてるし


 「いやぁ…いい仕事したよ。所で余った素材はどうする? これだけ余ればもう5着ぐらいは作れるけど」
 「いや、いいです。よかったら使って下さい」
 「は!? いや、Sレートモンスターの素材だよ!?」
 「はい。どうぞ」
 「………はは、わかった。ありがたくいただくよ」


 俺はジェシーさんに別れを告げて宿に戻った




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 今日は宿に泊まって明日出発する。次の目的地は…


 《次は山を越えるワ。〔ツァガーン山脈〕を超えて〔ユルセド村〕に行くワヨ》
 「山越えか…魔導車は使えないかな」


 この宿での最後の食事、温泉を堪能してゆっくりと休んだ




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 翌朝……ロジーさんが見送りしてくれた


 「お客さん、また来てね」
 「はい、お世話になりました」


 ロジーさんに別れを告げて出発する。町から出たところで魔導車を出し、〔ツァガーン山脈〕へ向けて走り出した


 「山越えか……大丈夫かな」
 《平気ヨ……フウ、あったかいワネ……》


 クロは満足そうに助手席に座ってる。毛皮に包まれてご満悦だ
 そういう俺も全く寒くない。身体がポカポカして気持ちいいくらいだ




 さぁて…はりきって行きますか!!





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