ホントウの勇者

さとう

雪と温泉の町フォワイエ②/ルーチェと一緒・獣達の喧騒



 さて、朝飯も食べたしギルドに行くか


 「クロ、お前は·········」
 《いってらっしゃい》


 布団の上で丸まったまま動こうとはしなかった。仕方ない、一人で行くか


 昨日に引き続きロジーさんの旦那の上着を借りて出かけることにする。さて、冒険者ギルドに向かいますか




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 早朝だがギルドは賑わっていた。ほぼ獣人の冒険者だったが、受付に並んで依頼を受けている


 俺は依頼掲示板の中にある討伐依頼の欄を見た


 〔ブライトワイルドベア〕 Sレート 報酬1800万ゴルド


 よーし、あったあった。こいつを剥がして受付に持っていけばいいんだよな


 俺は依頼の紙を剥がして受付に持っていく
 冒険者確認でドッグタグを出し、少し驚かれた···まさかSランク冒険者とは思われていなかったからだ。 
 Sランクのドッグタグの色は黒、俺はこの色が好きだった。周囲から注目されるが気にしない、さっさと倒して防寒具を作って貰おう


 俺はさっさとギルドを出た




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 〔ブライトワイルドベア〕の住処は町を出て西にある雑木林の中の洞窟らしい。魔導車で行くか


 俺はさっそく魔導車を出して向かう。車の中は寒いので、行く前に露店で甘酒を購入し、ちびちび飲みながら走る


 西に向かうに連れて雪が深くなり、スパイクタイヤの魔導車でも何度もハマってしまう。このままでは夜になってしまうので俺は周囲を確認した


 このあたりは平原で遮蔽物がほとんどない。遠くのほうには白い山や岩場や雑木林が見えるが、まだ数キロはあるだろう
 俺はためしに車から降りて、1つの魔術を使った


 「【白】の上級魔術、【活性光筋アクティブ・ドライブ】‼」


 すると俺の身体が白く発光し、身体能力が上昇する
 この魔術は身体強化。魔術の力で筋力を増大させ、それにかかる負担を魔術で回復する


 俺は軽くジャンプして雪の上を本気で走る······


 「おおぉぉぉっ‼ 行ける行けるっ‼」


 雪を蹴散らしながらかなりのスピードがでる。時速50キロは出てるかも···しかし、これは曲がったりするのが出来ず、直線的な動きしか出来ない···訓練すれば出来るかもだけど


 俺はひたすらダッシュした




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 「よーし···着いた」


 俺は雑木林の入口に着いた
 ここからは慎重に行こう···どこに潜んでるか分からないからな。よし、念のため······


 俺は〔マルチウェポン〕のアンカーショットを使い、木の枝に着地する。ここは木が生い茂っているので地面を進むよりは進みやすい


 「確か···奥にある洞窟が住処なんだっけ?」


 俺は確認するように呟く。一人は辛いぜ···すると


 《ジュート、わたしが手伝うよ‼》


 俺の隣に青い紋章が輝く
 表れたのは···5歳くらいの幼女人魚のルーチェだった


 「お前は寒くないのか?」
 《うん。他のみんなも誘ったけど寒いからヤダって言ってる》
 「まぁしょうがないか···ありがとな」
 《あ······えへへ》


 俺は優しくルーチェの頭を撫でてやる


 「よし、終わったらケーキを食べよう。もちろんみんなでな」
 《ホント⁉ やったぁ‼》


 ルーチェは嬉しそうに俺の周りをグルグル飛ぶ
 やれやれ、見た目通りの子供だな


 俺はルーチェと共に、森の奥へと進んでいく






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 俺とルーチェは、木の上から洞窟を見下ろしていた


 《ジュート、あそこからは何も感じないよ?》


 どうやら留守みたいだ···だからこそここで待っている
 外では警戒してるはずだが、自分の家ではきっと油断するはず···そこを叩く‼


 そのまま一時間ほど待っていると···来た


 《あれだね···うわぁ、かわいそう···》
 「しーっ······」


 〔ブライトワイルドベア〕は体毛が真っ白のきれいな毛並みの熊だった。大きさは7メートルほどで、手や足、顔の部分は地肌が見えているが真っ黒だった。顔はどちらかと言えばサルに近い。指先は太くゴツく、掴まれたらかなりヤバそうだ


 その手には、数匹の〔ブライトウルフ〕が掴まれており、首がねじ切れて死んでいた···確かにかわいそうだけど、コイツも生きるために狩りをしてるんだ···そこを責めるつもりはない


 俺は毛皮が欲しいので一撃で仕留める


 「ルーチェ······頼む」
 《うん、いくよ》


 ルーチェが水の塊を作り、木の上に飛ばす···すると、木の上の雪が大量に落ちてきて、〔ブライトワイルドベア〕の頭の上にドサドサ落ちてきた


 「ゴルルル···?」


 〔ブライトワイルドベア〕は上を向いた───今だ‼




 「【紫】の上級魔術、【稲妻落雷ブリッツシュラーク】‼」


 上空に突然現れた【紫】の紋章から、威力を凝縮した1本の紫電が〔ブライトワイルドベア〕の顔面に降り注ぎ、体中の機能を停止させながら通り抜けた


 即死


 〔ブライトワイルドベア〕はそのまま倒れた




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 《やったね、ジュート‼》
 「ああ、ルーチェのおかげだ」


 俺はルーチェの頭を撫でてやる


 《えへへ···ありがと》


 ルーチェは気持ち良さそうに目を細める···かわいいヤツめ


 「えーと、依頼達成条件は目玉と毛皮の一部か···マジかよ」


 また目玉をくり抜かなくちゃいけないのかよ、これマジでシンドいんだぞ?


 俺は吐き気を堪えながら何とか片目をくり抜き、毛皮の一部を袋に入れる。残りの体は亜空間にしまい、素材が取れたらジェリーさんにあげよう


 さーて、暗くなってきたし帰るか




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 雑木林を出た頃には辺りはかなり暗い···まだ時間的には4時を過ぎたくらいなのに···雪国の夜はホント早いな


 「仕方ない。今日はここで泊まって、明日の朝一で帰るとするか」
 《そーだね、じゃあ今日は〔セーフルーム〕でご飯にしよ‼ クロシェットブルムも呼んでケーキ食べよ‼》
 「はいはい···約束だもんな」


 俺は〔セーフルーム〕の入口を開き中へ入る···すると


 《ぎゃはははは‼ さぁ飲め飲めぇ‼》
 《ちょっ···アグニードラさん、おいらもう···》
 《ああん? クライブグリューン、てめぇオレの酒が飲めねぇのか、あぁん⁉》
 《ヒィィ⁉ い、いただくっすーっ‼》


 ··········何これ?


 《あーっ‼ アグニードラ、クライブグリューンをイジメちゃダメってクロシェットブルムに言われてるでしょ‼ ヒドいことすると言いつけるからね‼》
 《何ィ⁉ それは勘弁してくれや、また酒が飲めなくなっちまう‼》
 《·········もう遅いワヨ》
 《く、クロシェットブルムさぁん‼ 助けてくれっすーっ‼》
 《てめぇクライブグリューン‼ 待ちやがれ‼》
 《ヒィィィーっ⁉ 助けてぇぇぇーっ‼》
 《わわっ、トレパモールこっちこっち‼》
 《もぐーっ‼》


 こ、コイツらやかましすぎる······


 アグニが部屋を飛び回るクライブを捕まえようと、辺りをブンブン飛び回っている。ルーチェは巻き込まれないようにモルを抱えて俺の側に避難、クロは·········ヤバイ、怒ってる


 《アグニードラァァァッ‼ いい加減にしなサーイッッ‼》


 次の瞬間、カラの酒樽がアグニとクライブの頭の上に転移し、そのまま二匹を押しつぶした······すげぇ、飛び回る二匹にピンポイントで命中させた


 《う、うぉぉぉ···いてえ》
 《な、なんでおいらまで······?》


 クロが落ちた二匹に向かって説教する


 《アグニードラ、アナタ···今度暴れたら禁酒って約束したわよネ? 罰として10日間、アナタは禁酒ヨ‼》
 《うぉぉぉん、勘弁してくれやぁぁぁぁっ‼》


 アグニの魂の叫びが聞こえてくる···まぁ自業自得だな


 《ジュート、ごはんごはん》
 「あ、ああそうだな」


 本来の目的をすっかり忘れてた···タイミングが悪すぎたな


 今日のメニューは······カレーでいいか
 俺は手早くカレーを作り、全員の前に並べる


 「おーいみんな、ごはんだぞー」
 《今いくワ》
 《うぉぉぉん···オレの酒がぁ···》
 《ごはんごはんっ‼》
 《もっぐもぐ‼》
 《うう、おいらって一体···》


 うーん、なんかクライブが可哀想だな


 「なぁクライブ、お前の好きなものって何だ?」 


 みんなの好きな物はだいたい把握している


 クロは魚
 アグニは酒
 ルーチェは甘い物
 モルはミミズ
 クライブは?


 するとクライブは嬉しそうに言う


 《好きな物っすか、そりゃもちろん樹液っすね‼ 特に〔聖樹メーディアス〕の樹液は最高でしたよ、知ってます? 樹木によって樹液の味が違うんっすよ‼ あの甘くてトローッとした······》
 「わ、わかった···わかったよ」


 すごい食いつきだった。しかし···樹液か、適当な木を傷つけて蜜を手に入れるしかないか




 俺達は楽しく談笑しながら食事を楽しんだ


 

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