ホントウの勇者

さとう

雪と温泉の町フォワイエ①/雪の中で・熱燗



 「それにしても真っ白だな……」
 《ウウウ……さ、寒いワ…し、死ぬゥゥゥ!!》


 俺とクロは【白の大陸ピュアブライト】に入り、魔導車で雪道を走っていた
 魔導車のタイヤはスパイクが付いてるので雪道もスイスイ進むし、タイヤがハマっても一度亜空間に魔導車を収納し再び出せば問題無い。車にはワイパーも付いているが……暖房だけが付いていない


 後ろの居住スペースには暖房魔道具が付いているが、運転スペースには付いていなかった


 《ね、ネェ…ワタシ、後ろに行くワ》
 「ダーメ。俺、道わかんないもん、町に着くまで我慢してくれ」


 クロは助手席で毛布にくるまっている…寒いんだね


 「町に着いたら上着を買おう。クロの分の防寒着も作ってもらえるかなぁ?」
 《作りなサイ!! 絶対に!!》


 こんな必死なクロ初めて見た
 やっぱりネコは寒さが苦手なんだな


 穏やかに降り積もる雪を眺めながら、魔導車はゆっくり進む




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 町に到着し早速中へ入る
 魔導車で途中まで入りそこから歩き出す。俺の靴にはスパイクが装着されているので滑ることは無いが、雪が圧雪されているので埋まりはしない


 この町は雪と温泉が有名な【白の大陸】の入り口の町だ。メインの道路はきちんと除雪されていて、所々に湯気が上がり、ほんのりと硫黄の香りがする。町の中央には各ギルドや商店がならび、よく見ると洋服屋や土産物屋なんかもある……田舎の山奥の観光地みたいな温泉街って感じだ
 周りにはけっこうな人がいる。しかしみんな毛皮のようなもこもこの防寒着を着て雪かきをしたり、子供達は外で雪だるまやカマクラを作って遊んでいた
 道行く人で薄着なのは獣人だけだ……見た目は人間で、見分ける方法は尻尾と耳だけなのに、寒くないのは何故なんだろう………っていうか


 「さ…さむい…ヤバいなこりゃ」
 《…………》
 「ん?…お、おいクロ!?」
 《………ハっ!?…死ぬ所だったワ》


 クロは俺の肩の上でぐったりしている…死ぬなよ?
 まずは宿だな、それから防寒具を買おう




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 「宿はここにしよう。いいか?」
 《どこでもいいワ!! はやく中に入りなサイ!!》
 「おまえ…キャラが変わってるぞ」


 俺とクロは〔ゆきんこ亭〕という宿に入った
 この町の建物は全て三角屋根になっている。積もった雪が自動で滑り落ちるようになっていて、朝になって雪かきをして、夜のうちに雪が積もって落ちて、朝雪かきをする。というサイクルが出来てるそうだ


 「こんにちは~」
 「はーい、いらっしゃーい!!」


 出迎えたのは20代中盤くらいの女の人が出迎えてくれる。元気のいい働き盛りのお姉さんって感じだ


 「あの~、お泊まり大丈夫ですか?」
 「もちろんいいよ!! ウチは料理に温泉が自慢の最高級の宿さ!!」
 「おお。あ、ネコも大丈夫ですか?」
 「ああ、大丈夫だよ」
 「じゃあお願いします」


 取りあえず料金を払い一番高い部屋へ案内して貰う
 部屋は3階の特別室で、なんと部屋に温泉が付いていた。しかも露天風呂
 部屋は和室チックで、床はフローリングだったがその上にカーペットが敷かれ、ちゃぶ台みたいな机に柔らかいソファ、フワフワ布団のベッドに暖房魔道具が付いていた
 魔道具はすでにスイッチが入っていて、部屋は凄くあったかい……やばい、もうこの部屋から出られん…が、買い物に行かないと


 《……ワタシはここで待ってるワ…いってらっしゃい》
 「ダメ、お前も行くんだよ。お前の身体のサイズ測んないと防寒具作ってもらえないぞ」
 《……………》
 「あきらめろ……いくぞ」
 《うにゃあ………》


 俺たちはロビーに降りていった


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 「お兄さん、買い物かい?」


 受付のお姉さんがニヤニヤしながら話しかけてくる…まるで分かってましたと言わんばかりの態度だった


 「はい、防寒具を買いにいってきます」
 「やっぱりねぇ、服装でだいたい分かるんだ。旅人か商人か旅行客か…お兄さんは冒険者だね?」
 「は、はい……流石っすね」
 「ははは、流石に10年も受付やってりゃねぇ? いい店を教えようか?」
 「マジすか!? お願いします……あの、猫用の防寒具も作ってくれるところで……」


 そうして受付のお姉さんに店を教えて貰い、出かけることにした···というかお姉さんも付いてきた


 そのまま宿を出て歩いて10秒…って言うか宿の隣の服屋、〔ホワイト洋装店〕に到着……お姉さんが声を張り上げる


 「お母さーん!! お客さんだよーっ!!」
 「え?」


 お母さん?…と思っていると、店の奥から50代くらいの女の人が出てきた


 「いらっしゃい……ん? ロジー…あんたまた冒険者を引っ張ってきたのかい?」
 「い、いいでしょ別に…悪い事はしてないでしょ?」
 「全く…ああ、スミマセンねお客さん。娘がご迷惑を」
 「い、いえそんな…あの、防寒具をお願いしたいんですけど。コイツの分も」


 俺は肩で震えていたクロを抱っこしておばさんに突き出す


 「あらあら可哀想にこんなに震えて……わかったわ、あなたとネコちゃんの分、しっかり作ってあげる」
 「お願いします」
 「じゃ、あたしはこれで…」
 「ロジー、ラル君によろしくね」
 「はーい。じゃあお客さん、買い物してくれたお礼に今日の夕飯はサービスするからね!!」
 「マジすか!? やったぜ!!」


 ロジーさんはニカッと笑い、宿に帰っていった


 「さて、サイズとデザイン、色を決めようかね」


 ロジーさんのお母さんがはりきって言い出した


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 防寒具の完成には2日ほどかかるそうだ
 この辺に出没するBレートモンスター〔ブライトウルフ〕の毛皮を使って作るらしい。ロジーさんのお母さん…ジュリーさんが言うには、猫用を作ったことが無いのでしっかりしたのを作りたいから時間をくれ、と言うことで2日になった。まぁそれまでは買い物したりしてゆっくり過ごそう


 一度宿に戻りクロを置いて買い物に出かける、するとロジーさんが上着を貸してくれた…旦那さんのらしい


 今日の買い物は、肉・野菜・小麦やパン、果物や酒などを買う。後は魔導車に入れておく水なんかかな


 道具屋で買い物を済ませて酒屋に行く
 この町は夜はだいぶ冷え込むので、ビールやワインなどではなく米酒…つまり日本酒を熱燗にして飲むのが主流らしい。露天風呂でよく吞む人もいるそうだ


 酒屋で日本酒を樽で沢山買い、亜空間に送る。すると頭の中で声が聞こえる


 《おいジュート。酒買ったんだろ? 早くくれや!!》


 おいおい、クロの許可が無いとダメだろ?


 《大丈夫だって、アイツは寒くてダウンしてんだろ? クックック、いい気味だぜ……って、イテテテテ、スマン、冗談だって…ギャアアアアぁぁぁ!!》


 あらら…聞こえてたみたいですね、ご愁傷さま


 《ジュート、樽を1本だけ送ってチョーダイ》


 はーい…どうぞ


 《アリガト……ホラ、アグニードラ…吞みなサイ》
 《ううう、スマン、クロシェットブルム》


 なんだかんだ言いつつもクロはやさしい


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 俺はしばらく町を散策していると、中央に来ていた
 そして、一軒の露店からいいにおいがする……これは甘酒のにおいだ
 さっそく1杯購入し吞みながら歩く……はー、暖まりますなぁ


 俺は町を観光しつつ露店の食べ物でお腹を膨らませた


 「そうだ、久しぶりにギルドの依頼でも見てみようかな?」


 ふとそんなことを思い、ギルドに行ってみることにした。冒険者ギルドはすぐ近くにあったのでそのまま中に入る


 中には獣人の冒険者ばかりだった。人間では寒さで身体が動かないし、雪の上で体力やスピードが出せないので、この辺りの依頼は獣人の冒険者が殆ど受けるらしい……まぁ俺には関係ないけど


 「へぇ…けっこうあるな、しかもモンスター討伐ばっかり」


 依頼掲示板には討伐系の依頼が充実している
 レートはB~Sまで幅広く、1個だけSSもある。防寒具が出来るまで受けてみようかなぁ、身体も温まるだろうし


 とりあえず今日はいいか…宿にもどってこれからの事をクロと相談しよう




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 宿に戻ると宿屋の前にロジーさんとジェシーさんが困り顔で何かを話していた
 俺の姿を見つけると、申し訳なさそうな顔をしてる…どうしたんだろう?
 近くに行くと話しかけてきた


 「ああ、お兄さん…スマンねぇ。防寒具が作れなくなっちまった」
 「えええ!? 何でですか!?」
 「実は………」


 ジェシーさんによると、材料である〔ブライトウルフ〕の数が減少し、素材が入荷しないらしいのだ。この近くにSレートのモンスター〔ブライトワイルドベア〕が住み着き、〔ブライトウルフ〕を餌として大量に喰らっているかららしい……そういえば依頼掲示板で見たな


 「あの、他の素材では作れないんですか?」
 「この辺りじゃ〔ブライトウルフ〕が主流でねぇ…それこそ〔ブライトワイルドベア〕の毛皮でもいいくらいさ、誰か退治してくれんかねぇ」
 「なるほど……わかりました、俺が退治してきます」


 「「ええ!?」」


 俺の一言に、ロジーさんとジェシーさんがハモる


 「えっと、俺こう見えてもSランク冒険者なんで」


 「「Sランク冒険者!?」」


 あ、またハモった


 とりあえず今日は休んで明日以来を受けますか


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 食事は部屋でゆっくり食べることができた。メニューはなんと海鮮鍋。この辺りには川が流れていて、1年中ずっといい魚が泳いでいる。その魚と野菜を煮込んで作った栄養タップリの鍋だった
 クロには魚を2匹とごはんだった。もちろん別料金


 ご飯を食べた後は露天風呂でほっこりと……
 雪がハラハラ降っていたが、東屋のおかげで身体に当たる事が無い。むしろ風情があり最高のシチュエーションだった


 「おーい、クロお前も入れよ。あったまるぞー…はぁぁぁ」


 《イヤよ…毛が張り付いてキモチ悪いのヨ》


 残念。クロも猫なりの悩みを抱えているようだった


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 風呂からあがり今後の話をする 


 《ティルミファエルは〔ラソルテイ大聖堂〕にいるはずヨ。あそこは既に朽ちた教会···あのコがヴォルと出会った思い出の場所ネ》
 「ふ〜ん。ここから遠いのか?」
 《エエ。いくつか村町と山を超えて行くワネ······ハァ》 


 まぁ仕方ない。我慢してくれ···すると


 《おいジュート、ちょっと来てくれ‼》


 ん?···なんだよアグニ?


 《いいから、頼みがあるんだ‼》


 わかったよ、ちょっと待ってろ


 「クロ、ちょっとアグニの所に行ってくる···お前も来るか?」
 《······そうネ、心配だから行くワ》


 というわけで〔セーフルーム〕へ·····




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 《おう来たか、へへっ》 
 「んで、何か用か?···そろそろ寝たいんだけど」


 〔セーフルーム〕中央部屋にはアグニしかいなかった


 〔セーフルーム〕は教室ぐらいの大きさの中央部屋に、周りの壁にそれぞれの色の紋章が刻まれている。この紋章が各個人部屋の入口で、全部で10色の色がある


 9色はアグニ達の部屋で最後の色は俺の部屋···濡羽色だ。中央部屋にはテーブルやソファ、魔導コンロや冷蔵庫に水場が設置されている。ここから外の様子を見たり、みんなで談笑してるらしい···アグニはよくここで酒を飲んでいた


 ちなみにそれぞれの部屋は自由にカスタマイズしてある
 アグニは酒樽が散乱し正直酒臭い。あとは藁を敷き詰めた寝床があるだけだ
 ルーチェは大きなハンモックがぶら下がり、そこに沢山のクッションを敷き詰めて寝ている。テーブルには大量のぬいぐるみが飾ってあり、とても女の子らしかった
 モルは···部屋の半分が土で埋まっていた。初めて入ったときは正直驚いたわ。モグラだから地面のほうが落ち着くらしい···でも、よくルーチェと一緒に寝てるみたいだけど
 クライブは森だった。部屋は沢山の樹木や止まり木が設置され、いかにもな部屋だった。入ったときにクライブは止まり木で昼寝していたのは可愛いかった


 まぁとにかくアグニの用事だな


 《あのよ···「あつかん」って何だ?···美味い酒なんだろ、作ってくれや‼》
 「········そんだけ?」
 《おう‼》
 「············」
 《············》


 う〜ん···まぁいいか。ここまで来て帰るのもアレだし


 俺は小さい鍋に水を入れて湯を沸かし、その間に戸棚から徳利を三本と、冷蔵庫から魚を取り出し捌き、刺し身を作る。
 徳利に日本酒を入れて燗をして···刺し身とお猪口と徳利をお盆に載せてアグニに出した


 《おほ〜っ‼ 刺し身付きかよ、気が利いてるじゃねぇか‼》
 「熱燗は風味が強いからな、ゆっくり飲めよ」
 《サンキュ〜‼ 頂きま〜す‼》


 アグニは熱燗をゆっくり飲む


 《くぅ〜···効くぜ···こりゃいいわ、身体がポカポカしやがるぜ‼》


 そう言いながら刺し身も食べる···完全におっさんだな


 「じゃあ俺は寝るわ···作り方は簡単だからあとは自分でやれよ?」
 《お〜う。サンキュ〜···‼》


 あらら、もう酔っ払ってる···


 《ハァ······やれやれネ》


 クロも呆れて頭を振る


 まぁいいか、明日はモンスターの討伐と行きますか‼





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