ホントウの勇者

さとう

閑話 【王ノ四牙】②/序列変化・新たな討伐隊



 〔クローノス城〕の通路を歩く一人の美女


 【歌神ローレライ】···現存する僅かな神の一人である


 彼女はゆっくり廊下を歩き、通路の中央にいる人影に気がついた


 「あら···シグムント」
 「やあ、ローレライ」


 二人はそのまま一緒に歩きだした


 「【英雄十三傑ヴァリアントサーティ】···侮れなくなってきましたね」
 「······そうね」


 あまり興味がないのか、ローレライの返事は素っ気ない。シグムントは面白そうに微笑む


 「くくく、楽しいですね。私達を脅かす存在などもう存在しないと思っていましたが······ああ、心がざわめく」


 「分かってると思うけど······殺しちゃダメよ?」


 「分かってますよ。私達はこの大陸から出ることが出来ない···その代わりの兵士を殺すなんてあり得ません」


 「······そうね」


 疑いの眼差しのまま、ローレライはシグムントを見つめていた。こいつは······自分の楽しみの為ならヤりかねない


 ローレライはため息をつき、目的地へ向かい歩きだした




───────────────


───────────


───────




 〔クローノス城〕最上階・〔亡郷の間〕


 この場所はこの城の中で一番広い空間だ。ここには現在全ての〔神の器〕と、各大陸にいる【魔神獣】、そして兵士である【メガゴブリン兵】が集まっていた


 これから始まるのは【英雄十三傑ヴァリアントサーティ】の再編成式


 ここにいる〔神の器〕は、約11人が神器を破壊され戦闘不能に陥ったが死んだ訳ではない。意識は回復し、以前と変わりない状態で式に参加していた


 並び方は、最前列に〔神の器〕、次に【魔神獣】、そして周囲を囲むように【メガゴブリン兵】が並んでいた。そしてステージ状の所には【王ノ四牙フォーゲイザー】が並び、中央の椅子に【魔神】が腰掛けていた


 誰も、一言も喋らない


 そして、【魔神】の言葉が発せられた




 『我々と神獣···そして〔神の器〕、楽園の為に共に戦う同士達よ······全ての準備は順調である。これからも楽園の為に宜しく頼むぞ』


 
 金色のヘルメットから発せられる機械音は、男か女かも分からない。ただ···神としての力は凄く感じている。〔神の器〕達は不思議とこの神を崇拝していた


 そしてその後も激励の言葉は続き、【魔神獣】と兵士は解散した
 そして、残されたのは38人の〔神の器〕…その中で【英雄十三傑ヴァリアントサーティ】の新しい序列が発表された


 【英雄十三傑ヴァリアントサーティ】序列順位


  1位 式場しきば 夜刀やと 【刀神シェイヴァレイザー】
  2位 静寂しじま 書華しょうか 【??????????】
  3位 金村けねむら 剣吾けんご 【剣神ヴァイスキリング】
  4位 真藤しんどう 巌次がんじ 【??????????】
  5位 真城ましろ 真龍しんら 【??????????】
  6位 楠木くすのき 森玖りんく 【??????????】
  7位 弓島ゆみしま 黎明れいめい 【??????????】
  8位 羽蔵はねくら 麻止まとめ 【羽神エルンスフェーダー】
  9位 盾守たてもり 堅硬けんこう 【盾神シュタルマルドゥーク】
 10位 伝堂でんどう 久雷くらい 【??????????】
 11位 風祭かざまつり 風馬ふうま 【??????????】
 12位 達俣たつまた 土丸つちまる 【潜神マオルビルフ】
 13位 鳴見なるみ 治看なおみ 【癒神テラペイア】




 多少の変動はあったが上位は変化していない…クラスメイト達は大いに賑わった。そして、順位の変わった者のマントの刺繍が変化し、新たに任命された者にはマントが配られる
 しかし……一人だけさっさと会場から出ようと後ろを向いて歩き出す


 「どこへ行くのかしら?……式場しきばさん?」


 壇上のローレライがやさしく微笑み諭す


 「……ジュートに……会いに行く」


 その言葉に周囲の空気が変化する
 重く、憎しみが集まり空気が震える……
 この場にいる全員が怒りを覚えていた
 高名氷寒と鳴戸括利……ここにはいない二人の仲間


 無月銃斗に殺された……大事な仲間


 ローレライは優しく語る


 「ダメよ?……まだアナタの出番じゃないわ?」


 「…………」


 式場しきば夜刀やとはその言葉に興味が無いようだ……そのまま振り返り歩き出す










 「ダメよ?」










 強力な「圧」が空間を覆った


───────────────


───────────


───────




 正体不明の圧に何人かの生徒は膝をついた
 【英雄十三傑ヴァリアントサーティ】は全員、式場しきば夜刀やとを止めようと身構えている


 そして……式場しきば夜刀やとからも「圧」が放たれ、ローレライの「圧」を相殺した




 「…………る?」




 式場しきば夜刀やとの一言が、空気を変える




 【英雄十三傑ヴァリアントサーティ】第一位の殺気が空間を支配する


 37人の生徒は息を吞む……これは決して冗談では無いと


 何人かから魔力があふれ出し、彼女を止めるため【神器ジンギ】を発動させようとする


 そして






 『やめよ』






 【魔神エルレイン・フォーリア】がそれを止めた




───────────────


───────────


─────── 




 【魔神】から魔力があふれ出す……そして、式場しきば夜刀やとの身体を鎖が拘束した




 「…ッ!?」


 『少し……反省が必要だな』




 そして、彼女の周囲に紋章が輝き、式場しきば夜刀やとは消えていった


 重苦しい空気が霧散し、一同は一安心だった


 そして、【魔神】は静かに語り出した


 『【銃神ヴォルフガング】の脅威は増すばかり……二人の同胞は死に、被害は増すばかり…なんとしても止めねばならん』


 『ヤツは【白の大陸ピュアブライト】に向かった……ここに討伐隊を任命する』


 『清水しみず水萌みなも鉄間てつま蓮夏れんげ山野やまの虫菜ちゅうな火等かとう燃絵もえ……お前達は【白の大陸】に赴き、【銃神ヴォルフガング】こと無月むつき銃斗じゅうとを始末せよ』


 『準備が出来次第すぐに出発せよ、以上だ……』


 そう言い残し【魔神】は消えていった


 【王ノ四牙フォーゲイザー】も何も言わずにその場を後にする


 残った38人は、しばらく動けなかった


───────────────


───────────


───────




 しばらくして38人は解散し、訓練する者は【神の箱庭サンクチュアリ】へ向かい、新たに【英雄十三傑ヴァリアントサーティ】に任命された者はローレライの元へ。そして、新たな討伐隊は準備に追われていた


 そのうちの1人、火等かとう燃絵もえは、自室を出てミーティングルームへ向かっていた…そして、途中で2人の男子に遭遇した


 「牛地ぎゅうじ刺兼さしがね…どうしたの? 見送り?」
 「まぁそんなとこだ。スマねぇな…俺が戦えれば」
 「しょーがねーよ、とりあえず【神器ジンギ】を治さないとな、まぁ居残りの俺が言うのも何だけど……気を付けろよ」
 「だいじょーぶ。もう……油断しない、負けない」


 火等かとう燃絵もえは変わった


 以前のような見下した、横柄な態度が消えていた
 これには2人とも驚いた、まるで別人だと


 「あたしは…ううん、あたし達は負けないよ。じゃ、行ってくるね」


 そう言って火等かとう燃絵もえは歩き出した


 「……かっこいいねぇ。なぁ、粗某くん」


 「そうだな……」


 男二人は笑顔で見送った



「ホントウの勇者」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く