ホントウの勇者

さとう

閑話 ???? 【?? ?????】



 「ハァっ···ハァっ···大丈夫か、サソリ」
 「ハァハァハァ······ええ」




 〔ワウドゥ古代森〕を歩く二人の男女


 切華きりはな斬駆ざんく甲金こうがね蠍理さそりが、森の中を彷徨っていた


 全ての力を失い、ただの一般人となった彼らは、仲間と合流するために【紫の大陸】を目指している。そこに、自分達と同じくらい強い〔神の器〕が存在した


 「これから…どうするの?」
 「…………」


 力を失った彼らに出来る事は多くない。戦いになれば圧倒的に不利だし、魔力がないので生活魔術すら使えない。この10年で、体術や武術はかなり強くなったので、その辺の一般人には負けることはないだろう


 「とにかく……戸噛とがみたちと合流しよう。今の僕たちにしか出来ないこともきっとあるはずだ」
 「ええ……そうね」


 サソリは不安そうに下を向く…心配でしょうがないのだろう


 「………もし」
 「え…?」






 「もし、必要とされないなら……別な生き方を一緒に探そう」






 ザンクはまじめな顔で言う
 サソリには分かった…本気だと


 「別な生き方?……私とあなたで?」
 「そうだけど………」


 まるでプロポーズだ……と、サソリは思った
 そんな当たり前の女の幸せ。ザンクと結婚し子供が生まれる。子供の世話をしながら仕事に出かけたザンクのために料理をする。そして、子供と3人で食卓を囲む……


 悪くない、と思う自分が少しおかしかった


 「それにしても…無月君の力は一体何だったんだ?」
 「わからないわ…神の力を喰らうなんて、人間じゃ無いわね」
 「うん、せめてこのことだけでも戸噛とがみたちに伝えよう」
 「ええ…」




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 「もうすぐ出口だ…確かこの先に進むとヘレルマートに通じるはずだ。そこで馬を手に入れよう」


 「そうね……ザンク、さっきの事だけど……」


 「ん?…ああ、返事はいつでもいいよ」












 しかし、その返事は永遠に聞くことは叶わなかった


 何故なら……


















 「えっ…な!? ぐあぁぁぁぁぁ!!!」
 「はうっ………」














 彼らの身体に、数十本の矢が刺さったからである


 ザンクは……聞いた


















 「お疲れさまでした、先輩」




 どこまでも明るい声を




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 血だらけになり地面に仰向けで転がったザンクは、自分の身体を視線だけで見た


 両腕、両足、腹部、胸部に大量に「矢」が刺さっている
 おびただしい血液が地面をぬらしていた


 ザンクは悟る……自分は死ぬと




 視線を隣に移し、サソリを見た


 「さ…そ……!?……ああ、あ」


 サソリは既に死んでいた


 身体中に、そして頭部に矢が刺さっている……即死だ
 薄れゆく意識の中で、ザンクは涙を流した


 そして、白い何かの声が聞こえた








 「ありがとうございます。先輩…おかげでジュートは強くなれました」


 「本来は粗某くん達の仕事だったんですけれど、まさかあなた達に先に挑むとは思わなかったので…でも、結果的にジュートは次の段階、『魂喰いの左腕ソウルイーター・アルマイト』を目覚めさせることができました」


 「本当ならあなた達は見逃して、来たるべき日に【時の大陸】で迎え撃つ予定だったんですけれど…今回は仲間をやってくれたんで、ここで死んで貰う事にしました」


 「ジュートの性格だときっとあなた達を殺す事は出来ないと思ってたので…ここで待ってて正解でした」




 ザンクは薄れゆく意識の中で、この〔神の器〕が何を言っているのか理解出来なかった




 「あ、そうそう…あなた達4人の動きは【王ノ四牙フォーゲイザー】がしっかり監視してますよ。最後の1人は消息不明らしいですけど……シグムント様が、生かしておけば利用できるって言ってたんで、残念ですけど…スミマセン」


 「先輩達は【神器ジンギ】の扱い、そして神の浸食に打ち勝ち、さらに強くなった〔神の器〕。そのデータは今の〔神の器〕達に利用させていただいてます。人と神の魂の完全融合……〔神化〕のさらに先にある強さ…我々はさらに強くなりますよ」




 ザンクは、残り全ての力を振り絞る


 こんなことを願うのは筋違いだ…しかし、願いたかった


 自身の仲間ではなく、自分と戦った黒い少年に


 復讐のために戦い続けた自分と彼女の無念を託すように




 「無月…く…ん……あと、は……た、の…む……」




 そして…ザンクの瞳から光が消えた










 「さよなら…先輩」










 ザンクとサソリに刺さった矢が発光し、白い炎となる


 二人の身体は燃え尽きて、そこには何も残らなかった




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 「終わったよ……帰るね」


 『お疲れさまでした』


 頭に響くのは…【英雄十三傑ヴァリアントサーティ】序列2位 静寂しじま書華しょうかの声


 『急ぎ帰還して下さい…その後、【英雄十三傑ヴァリアントサーティ】の再編成を行うそうです。現在の戦闘可能人数は28人。達俣君と盾守君も復活したのでこれから全員を招集し、エルレイン様からお話を賜ります』


 「わかった。ジュートはどうする?」


 『……放っておきなさい。彼は【第二神化形態だいにしんかけいたい】を手に入れた……まともに戦えるのは、現【英雄十三傑ヴァリアントサーティ】上位5人と【王ノ四牙フォーゲイザー】くらいでしょう…それに、『魂喰いの左腕ソウルイーター・アルマイト』に捕まれば最後……終わりです』


 「そうだね。じゃあ、帰還します」


 『はい、それでは』




























 『また後ほど…弓島ゆみしま黎明れいめいさん』






















 【英雄十三傑ヴァリアントサーティ】序列8位・弓島ゆみしま黎明れいめいは通信を終える




 そして、空を見上げて呟いた








 「今度は会おうね……ジュート」








 そう言い残して消えていった





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