ホントウの勇者

さとう

大樹都市ウィル・ティエリー⑦/思い出を刻み込んで・彼女がくれた花束



 部屋に戻り休んでいると…静かにノックされた


 「はーい……ん? あ、アウラ!?」
 「しーっ!! 黙るのじゃ!!」


 アウラがキョロキョロしながら部屋に入ってくる
 そのままベッドに座り、話しかけてきた


 「久しぶりじゃの···身体は平気か?」
 「そりゃこっちのセリフだ」


 俺は備え付けの木の椅子に座り、アウラに向かい合う


 「わらわは平気じゃ···その、礼がまだだったの······助けてくれてありがとう···なのじゃ」


 アウラは顔を赤くしてそっぽ向く···恥ずかしいんだな


 「気にすんな、お前を守る契約だったからな。本当によかった」
 「·········ふん‼」


 アウラは一息つくと、真面目に言う


 「おぬしの目的は果たせたのか?」


 ああ、クライブの事か······今は〔セーフルーム〕で宴会中だ。お菓子に果物にマスターのケーキを出してやったし、アグニは果実酒をみんなに振る舞っていたしな。朝まで続きそうだ


 「ああ、終わったよ······これで、契約は終了だな」
 「·········うむ。ご苦労だったのじゃ」


 アウラは寂しそうに微笑んだ


 「明日···王宮で、わらわの王就任の式がある。それで、おぬしにも出てほしいのじゃ···いいかの?」


 「もちろん‼······それを見届けたら、俺は行くよ。いつまでも居ると···辛いからな」


 「···おぬしなら、そう言うと思ったのじゃ」


 アウラは、服の中から布に包まれた···花を取り出した
 ベッドから立ち上がり、それを俺に手渡してくる


 「これは、わらわの魔力で咲かせた花じゃ。自然に咲く花と違って、魔力で咲かせた花は枯れる事がない。おぬしの旅に···連れて行ってくれ」


 俺は椅子から立ち上がり、アウラから花を受け取る
 茎は白く、花びらは緑のきれいな花が5束ほど紐で括られている。森のような優しい香りがした


 アウラは優しく、聖母のような笑みを浮かべる


 「ジュート···わらわは、おぬしを愛しておる···大好きじゃ。でも、明日からは王女なのじゃ···思い出が、欲しいのじゃ」


 「······アウラ」


 アウラの告白は、俺の胸に突き刺さる
 俺も···同じ思いだった


 「俺も同じだ。でも俺は成すべきことがある。それが終わっても···俺は、誰かを愛するなんて···」


 「············」


 「俺は···誰かに愛せるほど立派な人間じゃない。俺はさ···女の子を助けるって理由で、その子達を抱いてるんだぜ? 特に気にしてなかったただの友達を。こんな俺が···愛される資格なんてあると思うか?」


 「············」


 「お前の気持ちは嬉しい。幸せだ、だからこそ俺が辛い」


 「············」


 「ありがとうアウラ、お前は幸せに」


 「ハァ···舐められたもんじゃの」


 「······え?」


 「おぬしの事情は知らんが···その女の子達は、一度でもおぬしが嫌いといったのか?」


 「············い、いや」


 「おぬしが抱いた時···どんな顔をしとった?」


 「············」


 「考えすぎじゃ。相手の幸せを願うなら責任を取れ。おぬしの下らん事情など捨ててしまえ。その女の子達の···わらわの気持ちを侮辱するな。男なら···全てに責任を取るのじゃ」


 「あ·········そうか」


 責任を取る······幸せにする
 氷寒、括利は俺が好きだって言ってくれた···でも、俺は口先だけ好きと伝えて、本心は別にあった
 俺はウジウジ悩んで···そんな資格がないって決め付けてた。それは…二人に対する裏切りだ、そんなの男らしくない。なら···俺がするべき事は1つ






 「ありがとうアウラ···俺、決めた」


 「うむ。いい顔じゃ···さすがじゃの」


 「ああ、アウラ···好きだ」


 「わらわもじゃ······ん」






 俺はアウラにキスをする···深く、とろけるような


 アウラをベッドに押し倒し、服を脱がせ裸にする


 俺も服を脱ぎ···アウラの肌に触れる、そして










 俺達は1つに結ばれた


 行為は何度も繰り返され、やがて力尽き睡魔が襲う


 俺はアウラを抱きしめ、そのまま深く眠りついた
















 朝起きると、すでにアウラはいなかった




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 朝起きて、魔術で身体を清めて着替えを済ませる。すると、侍女が簡単な朝食を運んでくれたので残さず食べる


 この日はアウラの王就任式


 先代のエルフ王からその跡を次ぐ大事な儀式が、国や周辺の集落を挙げて行われる。すでに集落から続々とエルフが集まり、大樹の周りをエルフが埋め尽くしているのが上空からでもわかった


 朝食を下げに来た侍女が、式の会場に案内してくれた。場所は、最上枝にあるこの〔大樹都市ウィル・ティエリー〕で一番の会場


 この日は快晴で雲も無く、下の景色がよく見えた
 ここからでもかなりの歓声が聞こえてくる


 会場には、先代エルフ王にその王族、集落の代表に護衛の兵士、大樹都市のお偉いさんが集まり、たいそう賑わっていた
 やはり全員がエルフの伝統的衣装で正装している。マニャーナさんやヨルナもすごく可愛い。ラルシドやフェリーナもきっちり武装して、王族親衛隊の場所にいた


 俺は会場の端で、クロと一緒にこの光景を眺めてる 
 ヨルナ達やラルシド達に誘われたが遠慮した。どう見ても俺は部外者だし、エルフの神聖な式に異物を混ぜたくなかったからだ


 そして···式が始まった




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 正装したアウラが会場に入ってくる


 誰もがその美しさに目が離せない


 髪を整え、化粧をし、王としての佇まいを見せる少女


 エルフ王女 アウローラ・フィールディング


 それぞれの支持派や集落の代表者、アマルティやマニャーナさんも理解した


 彼女こそが···新しいエルフ族の希望となる、と


 アウラはエルフ王の元で足を止め一礼、跪き頭を下げる


 現エルフ王 ラルド・フィールディングは、アウラの頭に王の証の冠を被せる


 この瞬間、エルフ王 ラウド・フィールディングは、だだの王族ラルドとなり、静かに肩を落とした


 アウラのスピーチが始まる


 魔術によりその声は拡声され、ここにいる全てエルフが聞いていた




 「わらわは新たなるエルフ女王、アウローラ・フィールディングである‼」


 「わらわは約束しよう。全てのエルフに新たなる時代の到来を‼」


 「エルフ族に栄光あれ‼ 未来あれ‼ 幸あれ‼」


 「「「「「オオオオオォォォーッ‼」」」」」




 爆発的歓声が辺りに轟く


 エルフ族はこれから変わる


 アウラがきっと、変えるはずだ




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 王宮に戻り、アウローラ女王が玉座に座る
 その周りにはアウラの親衛隊が護衛を努め、近くにはアウラの家族が並んでいた


 俺は玉座の前に跪いていた
 隣にはクロもいる


 エルフ族の王女となったアウラに、親しく話しかける訳にはいかない。俺なりの誠意をアウラは汲み取ってくれた


 アウラは王女としての姿で俺に言う


 「ジュートよ、そなたには世話になった」


 「もったいないお言葉···ありがとうございます」


 俺も丁寧に返事をする
 アウラは優しく微笑み語る


 「そなたに礼をしたいと思う。何か望む物はあるか?」


 望む物······
 1つだけある
 それは······別れの言葉


 俺はここで、アウラに別れを告げる
 二ヶ月間、共に過ごした仲間に


 アウローラ女王ではなく、一人の女の子のアウラに




 「1つだけ······ございます」


 「·····申してみよ」






 「私がこれから言う事を···聞かなかった事に・・・・・・・・して頂きたい・・・・・・






 その場にいる全員が、理解不能な顔をした
 きっと、俺の言う意味が分からないのだろう、でも···アウラに伝わればいい




 「···········言え」
 「···はい」






 俺は立ち上がり、アウラを見つめる
 アウラは···女王の顔のままだった










 「アウラ」


 「っ‼」








 「お前といたこの二ヶ月···楽しかった」


 「俺の作った料理をバクバク食べて、一緒に町を回って、買い物して···強くなる為にモンスターを倒して···お前だけじゃなくて、俺も強くなれた」


 「お前と旅した思い出は、これからもずっと俺の中にある。アウラとはここでお別れだけど···お前の想いは、連れて行く」


 俺はアウラの花束を胸から取り出し、抱きしめる




 「ありがとう、アウラ···またな」


 「············あ」




 アウラの足元にクロがいた


 そのまま足に身体を擦り付ける···まるで別れの挨拶のように






 《······元気でネ···アリガト》






 俺はそのまま背を向けて歩き出す


 静寂の中···俺の足音だけが響く


 扉を開けて、最後に振り返りアウラを見た




 その顔は···エルフの女王のままだった




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 王宮を出て広場に出る
 いちいち手順を踏むのが面倒なので、ここから飛び降りようと枝の先端に歩いていく···すると






 「ジュート‼」


 「アウラ⁉」






 アウラが来た。その顔は、俺と旅したアウラの物だった




 「······また来い‼」
 「え⁉」


 アウラは泣きながら叫ぶ


 「おぬしが次に来る頃には、この街···いや、全てが変わっているのじゃ。その時は歓迎する···だから、また来い‼」


 「···ははっ。ああ、必ず来る。その時は、この国で作ったケーキを食わせてくれよ‼」


 「ああ、約束なのじゃ‼」


 アウラは俺に飛びついてキスをする
 俺もそれに精一杯答えた


 「元気でな、アウラ‼」
 「またなのじゃ、ジュート‼」




 俺はそのまま枝から飛び降りた


 アウラの笑顔が見えなくなるまで、枝先を見つめていた




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 地面に着地して【流星黒天ミーティア・フィンスター】を出し跨がる···今日からまた一人乗りだ


 
 「次は【白の大陸ピュアブライト】だな」


 《そうネ、森を出て南に進めば〔グーツ大橋〕へ着くワ。橋を渡れば【白の大陸】ヨ》


 「じゃあ···行くか‼」


 《エエ、行きまショ》




 俺とクロは走り出した。次は〔アンチフォース列島〕の【白の大陸】···やっと半分を超えた


 まだまだ旅は続く···頑張らないとな‼


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 しばらく進み、大きな広場に出る


 後ろを振り返ると大樹が見える


 俺は懐から花束を取り出し、胸に当てる










 「頑張れよ······アウラ」










 俺の呟きは、風に流され溶けていった





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